ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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第百三十七話 失敗から立ち上がるからこそ価値がある

花火大会終了後、そのままオーフィスちゃん達とはお別れする事になった。夜も遅いし、もう一日くらい泊まっていけばいいとも思ったが、そういうわけにもいかないらしい。

 

「この浴衣、本当にもらってもいいの?」

 

「ええ。あなた達に合わせて作った物だから、私達じゃ着れないしね」

 

「オーフィスちゃん、絶対また遊びに来てくださいね!」

 

「アーシア、我、約束」

 

最後の別れを済ませ、オーフィスちゃん達は去って行った。・・・なぜだろう。今別れたばかりなのに、近い内にまた顔を合わせる事になる気がする。

 

「とんでもない来客だったけど、終わってみると呆気無かったわね。・・・さあ、みんな! のんびり気分は今日で終わりよ。サイラオーグとのゲームまで残り三日。最後の仕上げに入るわよ!」

 

リアスの言葉に頷く彼女の眷属達。三日後・・・リアスとサイラオーグさんが勝負するのか。今回の勝負の結果は俺にも関係があるからちょっと緊張していたりする。

 

「うーい、ひっく。おお、そういやフューリー、お前に言っておかないといけない事があったんだわ」

 

「なんですか?」

 

「お前、今度のレーティングゲームで・・・」

 

そうしてアザゼル先生の口から語られた内容に、俺やアーシア、黒歌、さらにはレイナーレさん達もそろって目を丸くするのだった。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

レーティングゲーム当日、俺と俺の眷属+アーシアとロスヴァイセ先生は、冥界のアガレス領の都市、アグレアスという所のホテルへ転移魔法でやって来ていた。すげえな、空中都市って呼ばれてるらしいが、本当に空に浮いてるぞここ。

 

「おう、来たなお前等」

 

到着した俺達をアザゼル先生が出迎えてくれた。そのまま用意してもらっているという部屋まで先生に案内してもらう事になった。

 

「先生、兵藤君達は?」

 

「もう来てるぜ。お前等と違ってゴンドラとリムジンでの移動だがな。都市への入り方にはいくつか方法があるが、お前等みたいに魔法陣による転移ってのは特別なんだぜ? 伝説の騎士であるお前だから許可が出たんだ。精々アガレスに感謝しとけよ」

 

先生は他にも色々説明してくれた。試合はこのホテルの隣に建つアグレアス・ドームという所で行われる。会場が開くまでまだ数時間もあるのに、既にドーム前にはたくさんの悪魔のみなさんが集まっているらしい。

 

「それだけリアスとサイラオーグさんの勝負が注目されているという事ですか?」

 

「もちろん、若手実力ナンバーワンの試合が注目されるのは当然だが、理由はそれだけじゃねえ。このゲームのゲストに呼ばれた“皇帝”ディハウザー・ベリアル。そしてフューリー、お前とお前の眷属達を一目見る為にやって来てるんだろうよ」

 

そう、それこそが俺達がここに呼ばれた理由だった。リアス達の試合にゲスト出演してくれ・・・あの夜、アザゼル先生は俺にそう頼んで来た。しかも、俺だけじゃなく、俺の眷属である黒歌達、そして何故か関係の無いアーシアまで呼ばれてしまったのだ。

 

「あ、あの、アザゼル先生。本当に私もお呼ばれしているのでしょうか? 私はリョーマさんと違って神器を持っているだけの普通の人間なのですが」

 

「(神と交信できるヤツを普通とは呼ばん!)戸惑う気持ちはわかるぜアーシア。けどな、実は今、冥界ではお前の人気も密かに上がってるんだぜ。「アーシアちゃんになら退治されてもいい」「アーシアちゃんに罵られながら聖水をぶっかけられたい」「むしろアーシアちゃんの聖水をかけられたい」みたいな感じのファンが急増しているみたいだぞ」

 

「おいコラ胃痛総督。ウチのアーシアの前で変な事言うんじゃないわよ」

 

「誰が胃痛総督だテメエ!」

 

「私の聖水? あ、私の自作した聖水って事ですか?」

 

「アーシアは気にしなくていいっすよー」

 

ミッテルトさんがアーシアを会話から遠ざける。というか、それファンじゃねえだろ。変質者じゃん。今後は冥界に来たらアーシアを一人にしない方がいいな。

 

「その理由だと、眷属でない私がここにいてはよくないのでは?」

 

「お前だって、指導した身としては近くでアイツ等の姿を見ていたいだろ? ゲスト参加させる条件にお前をねじ込んどいた。気にせずコイツ等と一緒に観戦すればいいさ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「ま、それでも気兼ねするっていうんなら、さっさとコイツの眷属になるんだな。お前もそのつもりなんだろ?(ボソ)」

 

「なっ・・・!?」

 

気遣い出来る大人って素敵やん。ロスヴァイセ先生の顔が赤くなったが・・・これはもしやフラグか?

 

「っと、着いたぜ。ここがお前達の控室だ」

 

カードキーで扉を開け中に入る。控室というには豪華すぎる設備が俺達を出迎えた。てか、あの馬鹿でかいベッドは何なんだよ。七~八人は余裕で寝れそうだぞ。

 

「凄い大きさだな」

 

「くくく、使いたければ使っていいぜ。ただし、汚すなよ? 血ってのは落ちにくいもんだからよ」

 

どんな使い方したらベッドの上で流血する事になるのか教えてもらいたいんですけど。暗殺ごっこでもしろってか?

 

「ゲームの開始は夜だ。それまで基本的には自由に行動してもらって構わん。ただし、外には出るなよ。マスコミがネタを探すのに血眼になってやがるからな」

 

そう言い残して、アザゼル先生は部屋を出て行った。まあ、テレビもあるし、時間を潰すだけなら何とかなるだろ。

 

「さてと、可愛い妹の様子でも見に行ってみるかにゃー」

 

「場所はわかるのか?」

 

「あの子の気配を手繰れば余裕にゃ。それじゃご主人様、ちょっと行って来るね」

 

続いて黒歌が退出する。さて、俺は何をしようかな。

 

「アーシアー! ゲーム持って来たから一緒にやるっす!」

 

「は、はい。私でよければ」

 

「神崎様、お茶を淹れましたのでとりあえず一服いたしませんか」

 

「ありがとうございます、レイナーレさん」

 

「い、いえ、お仕えさせて頂く身として当然の事です」

 

そういえば、せっかく眷属になってもらったのに、最近レイナーレさん達とあまり関われなかったな。丁度いい機会だし、色々話をでもしてみようか。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

三十分ほどで黒歌が戻って来た。彼女曰く、小猫も他の子達も落ちついていて、あれならいつも通りの実力が発揮出来るだろうとの事だった。黒歌はこういう事はハッキリ言ってくれるから、彼女がそう言うのなら間違い無いだろう。

 

それからさらに二時間くらい経った頃だろうか、不意に部屋の扉がノックされたので出てみると、そこにはレイヴェルさんが立っていた。

 

「やあ、レイヴェルさん。キミもここに来ていたんだな」

 

「お、お休みの所申し訳ありません、フューリー様。今、お時間はよろしいでしょうか?」

 

「ああ、大丈夫だ。何か用が?」

 

「実は、どうしてもフューリー様にお会いしたいという者がおりまして」

 

そう言って、チラリと物影の方へ目をやるレイヴェルさん。つられてそちらに目を向けるが誰もいない。

 

「・・・少々お待ち下さい」

 

レイヴェルさんが物影の向こうへ消える。

 

「もう、何を躊躇っているのですかあなたは!」

 

「ま、待てレイヴェル! まだ心の準備が!」

 

「いいから行きますわよ!」

 

勢い良く飛び出して来たレイヴェルさん。そんな彼女に手を掴まれて姿を現したのは、見憶えのある男性・・・彼女のお兄さんであるライザー・フェニックスさんだった。

 

「ライザーさん?」

 

「はい、私の兄であるライザー・フェニックスですわ。ゲームの前にリアス様達にアドバイスを差し上げようと参ったのですけれど、フューリー様もいらっしゃると聞いてどうしてもお会いしたいと駄々をこねましたので、こうして連れて来ましたの」

 

そ、そうなんだ。けど、正直あの婚約パーティーを台無しにしてしまった身としてはめっちゃ気まずいんですけど。

 

でも、わざわざ向こうからこうして会いに来てくれたんだから、俺も礼義を尽くさないとな。とりあえず、無難に挨拶でもしよう。

 

「お久しぶりです、ライザーさん」

 

「オッス! お久しぶりですフューリー先輩!」

 

・・・え? なにその体育会系っぽいノリの挨拶? この人こんなキャラだったっけ?

 

「前回のレーティングゲーム見させてもらいました! 土壇場のパワーアップ! それからの無双! やっぱりフューリー先輩は俺の目標です!」

 

誰か! 誰か説明して! 見た目チョイ悪ホストなのに、何でこんなにキラッキラな目をしてんのこの人!?

 

助けを求める様にレイヴェルさんへ視線を向けると、彼女はわかっているとばかりに頷いた。

 

「神崎様、以前ご説明させて頂いておりますが、お兄様は神崎様との勝負に負けて以来、ずっと引き籠っておりました。ですが、最近になって引き籠りを脱却したのですわ。その切っ掛けになったのがあの『鋼の救世主』なのです」

 

またか! ミリキャス君影響力与えすぎぃ!

 

「あの本を読んで俺は思い出した。レーティングゲームに参加するようになったのは、そもそも強くなりたいと思ったのは・・・フューリー先輩の様なヒーローになりたかったからだと! 自己顕示じゃない、かつてのフューリー先輩の様な本物のヒーローになりたかったんだと!」

 

「お兄様は変わりました。いえ・・・本来のお兄様に戻ったと言った方がよろしいでしょうか。多用していたサクリファイスを封印して、各眷属の特性と能力をフルに活用した新たな戦法を確立しました。結果、最近のゲームは連戦連勝。ランキングも急浮上しました」

 

「ははは! 犠牲を前提とした勝利など、ヒーローには相応しくないからな! そうでしょう、フューリー先輩?」

 

「そ、そうですね。ところで、その先輩というのは・・・」

 

「あなたは俺の尊敬の対象であり目標ですからね! その気持ちを忘れない為です!」

 

歯を光らせながらスマイルを見せるライザーさん。以前のような軽薄そうな笑みでは無く、スポーツマンの様に爽やかさに溢れる笑顔だった。

 

「それでは、俺はこの辺で失礼します! いずれリアスやサイラオーグ・バアルとも試合をする事になるだろうし、今から研究をしておかないといけないので!」

 

「あ、お兄様! もう、言いたい事だけ言って帰る所は変わってませんわね。では、神崎様、貴重なお時間を頂きましてありがとうございました」

 

去って行くライザーさんを、レイヴェルさんはぺこりと頭を下げて追いかけて行った。

 

「・・・なるほどな。最近のライザー・フェニックスの変わり様にはお前が関係してたってわけか」

 

物陰からアザゼル先生が姿を現した。ライザーさんもそうだけど、物影から登場するのが流行ってんの?

 

「いつからそこにいたんですか、先生・・・?」

 

「話し中だったから待っててやったんだよ。おかげで面白い話が聞けたから満足だがな」

 

何か用事があるのか尋ねると、先生も俺に話があるらしく、しかも二人で話したいという事なので、先生の部屋へ行く事になった。

 

「早速だがフューリー、お前はバアル家の事をどれくらい知っている?」

 

向かい合って席に着いた所で、先生はそう問いかけて来た。少し悩んだが、ここには俺と先生しかいないのでぶっちゃけさせてもらおう。

 

「くだらない面子やプライドでサイラオーグさんと彼のお母さんを追いつめた連中の集まり」

 

「ハッキリ言いやがるな」

 

「・・・すみません」

 

いま持ってる情報だとそれしか感想が無いんですよ。

 

「上級悪魔ってのは家柄や血筋を重んじる家がほとんどだ。しかもバアルは大王の家。その拘りは他の家の比じゃねえ。悪魔の価値観は独特だからな。人間であるお前には理解出来ねえ所もあるだろう。会場を設定する際にも、現魔王派とバアル家で揉めに揉めてな、それをアガレスが取り持ったからこそアガレス領になったってわけだ。そういうのもあって、今回のゲームを魔王とバアルの代理戦争だという者もいる。こうしている今も、裏では政治家連中が色々動いてやがるんだろうぜ」

 

「それはサイラオーグさんも?」

 

「志や力だけでは魔王にはなれない。ヤツもそれをわかっているからこそ、パイプ作りの為に関係を持っているんだろう」

 

「では、その人達はサイラオーグさんの夢を応援してくれているんですか?」

 

「ところがそういうわけでもない。アイツの背後いる連中が欲しいのは、現魔王に一矢報いる為の駒だ。連中が求めるのはサイラオーグの夢に心酔するものを集め、それを後押しする自分達を支持させる為の言わば政治道具。表向きは協力する姿勢を見せてはいるだろうが、裏じゃサイラオーグの事を蔑んでいるだろうさ」

 

それ本当にバアル家なんですか? 実は本当のバアル家は別にいて、サイラオーグさんはそっちの生まれ・・・とかなんじゃないの?

 

「さらに言えば、その関係はサイラオーグが勝ち続ける事によって続いている。負ければ連中は即座にサイラオーグを捨てるだろう。合理的な考えを持つ悪魔には、利用価値が無いものに用は無いからな。実力だけが価値のある世界・・・それが悪魔業界なのさ」

 

「・・・」

 

「とまあ、色々話をさせてもらったわけだが・・・ここで提案がある。お前、俺と一緒に一芝居打ってみねえか?」

 

その言葉に顔を上げると、アザゼル先生は何やら企んでいる様子の表情を俺に向けていた。

 

「俺は悪魔の考えを否定出来ねえし、するつもりも無い。利用し、利用される。そうやって悪魔は栄えて来たんだからよ。・・・だが、教師なんてやるようになった所為か、懸命に努力する若いヤツ等を見てるとどうもお節介焼きたくなっちまうんだよな。失敗を恐れず、全力で夢に突き進む。そこにくだらねえ年寄り共の思惑が入り込む余地なんて本来あってはならねえんだよ。悪魔だろうがなんだろうがな」

 

そう語るアザゼル先生は、誰が見ても完璧な“教師”としての顔をしていた。俺の知る、時に厳しく、時に優しく指導してくれるアザゼル“先生”がそこにはいた。

 

「乗るかどうかはお前次第だ。やったからと言って本当に意味があるのかどうかもわからねえ。だが、お前が・・・英雄であるフューリーがサイラオーグの夢を応援すると大々的に発言すれば・・・」

 

「やります。やらせてください」

 

それでサイラオーグさんがちゃんと評価されるんなら、名前だろうがなんだろうが何でも利用してくれて構わん!

 

「へっ。最後まで言わせろよ。まあいい。なら打ち合わせをするぞ。いいか? おそらく試合開始前に進行役がグレモリーとバアルの両方についてお前に色々聞いて来るはずだ。そこで、お前がまずこんな風に答えてだな・・・」

 

そして、俺は一時間ほどアザゼル先生と綿密に打ち合わせを終えた所で、自分の部屋に戻ったのだった。




原作を読んであの仕打ちはないだろうとイラッと来たので、ちょっと細工させてもらう事にしました。
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