ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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祝、J組のOG参戦! もちろんラフトクランズも出してくれるんですよね?


第百四十四話 やっぱり必殺技にはカッコいい名前を付けたい

イッセーSIDE

 

サイラオーグさんの『騎士』リーバン・クロセル。視界に映した場所に重力を発生させるという神器『魔眼の生む枷』を持った魔法剣士を相手に、俺は見事勝利した。流石にコリアナさんの時の様に無傷の勝利とはいかず重力弾や剣撃を数発もらっちまったが、気にするレベルじゃない。小猫ちゃんがあれだけ頑張ったんだ。先輩である俺が気張らなくてどうすんだって話だぜ。

 

「大丈夫かい、イッセー君」

 

「心配すんな。このくらいなら問題無いぜ。ほら、ダイスシュートが始まるぜ」

 

発表された数字は―――またしても八。けど、今出場した俺は続けて出る事は出来ない。

 

「ゼノヴィア、お願い」

 

「・・・この時を待っていた」

 

戻って来た部長に指名されたゼノヴィアが静かに一歩前に出る。表情こそ澄ましているが、全身から発している怖いくらいの闘気は隠し様が無い。コイツ、今回の試合に並々ならぬ想いをかけてるからなぁ・・・。

 

「そしてもう一人。・・・ギャスパー、お願い」

 

「え、ええ!? 僕ですか!?」

 

「そうよ、ここはあなたに出てもらいたいの」

 

「で、でも、僕でいいんですか? ここは祐斗先輩にした方が・・・」

 

「パワータイプにサポート役をつけるのは基本よ。あなたの邪眼とヴァンパイアの能力でゼノヴィアを助けてあげてちょうだい」

 

「け、けど・・・」

 

「けど、じゃねえよ」

 

俺はギャー助の頭に一発お見舞いしてやった。

 

「痛いっ! な、何するんですかイッセー先輩!?」

 

「いつまでもビビってんじゃねえ。会長とのゲームで最後まで部長を守ろうと頑張ったお前はどこ行っちまったんだ」

 

「ギャスパー君、普段は弱気でも本当のあなたはとても勇気のある男の子ですわよ」

 

「僕達は知ってる。あの開かずの教室を出た日から、キミが自分の力に向き合い、懸命に努力して来た事を」

 

「臆病者だったお前はもういない。私達も、ここにいない小猫も、みんなそう思っている」

 

「みなさん・・・」

 

俺達の顔をぐるりと見渡したギャスパーが体を振るわせる。その目には少しだけ涙が溜まっていた。

 

「ギャスパー。あなたは私には勿体無いくらいの力を持った子よ。お願い、その力を私に、私達に貸してちょうだい」

 

「部長・・・」

 

部長の言葉に、ギャー助は目元を拭って力強く頷いた。ギャー助、今のお前“男”の顔してるぜ。

 

「ゼノヴィア先輩、お供します!」

 

「頼むぞギャスパー。お前と共に勝利を掴み・・・今日こそ、あの忌まわしい蔑称と決別してやる」

 

蔑称ね。どっちかというとみなさん愛称として使ってるみたいなんだけど・・・。本人は相当不満やら鬱憤が溜まってるみたいだし、このゲームでそれを爆発させる気満々みたいだったから仕方ないか。

 

「ゼノヴィア。私はこの試合中に一切指示はしないわ。思うがままに戦いなさい。必ず勝つって信じているわよ」

 

「・・・ありがとうございます」

 

ゼノヴィアとギャスパーが並んで魔法陣へと向かう。それを見送る中で、朱乃さんが部長に尋ねる。

 

「リアス、どうしてゼノヴィアちゃんにあんな事を?」

 

「あなたも知ってるでしょ。前回のゲーム以降、冥界でゼノヴィアが何て呼ばれているか。あの子がその呼び名に悩んでいた事を。さっきあの子が言った通り、今回の勝負はあの子にとって決別の為の戦いなのよ。だから、私はあの子に後悔の無い戦いをして欲しいの」

 

シリアスに答える部長。だが、語る内容は“天嬢さん”についてである。

 

『なお、今回のバトルフィールドですが、予定したフィールドから急遽変更し、この会場から少し離れた場所に位置する浮島となりました。ドーム状に結界を張ってありますので、場外に出る心配はありません。存分に戦ってもらいましょう!』

 

フィールドの紹介から始まり、続けて選手の紹介が始まった。

 

『さあ、両チームの選手の入場です! まずバアルチームからは『戦車』のラードラ・ブネ選手と『僧侶』のミスティータ・サブノック選手です! どちらとも断絶した御家の末裔というとんでもない組み合わせとなりました!』

 

『断絶した元七十二柱のブネ家とサブノック家の末裔ですね。能力さえあればどんな身分の者でも引き入れるのがサイラオーグ選手の考えですので、彼等が眷族になったのも納得ですな。まあ、他の血と交じってまで生き残る家を無かった事にしたい純血重視の上役達には厄介払いと蔑まれているみたいですけどね』

 

『・・・そうなんですか』

 

『おっと、フューリー殿は初耳でしたか。いやあ、私とした事がつい口が滑ってしまいましたな』

 

嘘だ! 絶対ワザとだろ先生! 口元がしてやったとばかりににやけてるからバレバレなんですよ!

 

『続いてグレモリーチームより『騎士』ゼノヴィア選手と、『僧侶』のギャスパー選手!』

 

続いてこっちの二人が紹介された途端、ビックリするくらいの歓声が巻き起こった。

 

『待ってたぜ天嬢さん!』

 

『今日は天井は無いから安心して戦えよー!』

 

『ママー! てんじょうしゃんだよー!』

 

『あらあら、本当ね』

 

大人気だな天j・・・ゼノヴィア! こうして見ると、やっぱりみんな馬鹿にしてるわけじゃなくて、純粋に応援してくれてるだけなんだよ。この歓声を聞けばゼノヴィアもきっと気付いて・・・。

 

『フ、フフフフ・・・ヤッテヤル。ヤッテヤルゾ』

 

ないっぽいですけどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! なんちゅうおどろおどろしいオーラ放ってんだよゼノヴィアさん! 隣のギャー助が中てられて今にもぶっ倒れそうなんですけどぉ!

 

『では、試合開始―――』

 

『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』

 

試合開始が宣言された瞬間、ゼノヴィアは天に掲げたデュランダルから尋常じゃない

オーラを噴出させながら光の刀身を伸ばし始めた。見る見る内に長さを増していった刀身は、なんと上空に展開していた結界に届くほどの長さになった。何やってんだゼノヴィア! それじゃ前回の二の舞じゃないか!

 

『ゼ、ゼノヴィア選手のデュランダルから伸びた光の刀身が結界に激突しました! これはもしやシトリー戦の再現なのかぁ!』

 

『今の私はあの時の私とは違う! デュランダル! 私の想いに応えろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』

 

ゼノヴィアの叫びが届いたかのように、デュランダルから発せられる光がかつてないほど激しいものになった。さらにフィールド全体が大きく揺れ始める。その光景を見て、俺は神崎先輩が新たな力に目覚めたあの場面を思いだしていた。

 

『なんという光だ・・・ミスティータ!』

 

『わかってる! すぐに準備を・・・!』

 

『え・・・え・・・!?』

 

それを見た相手側が慌てたように動き始める。ギャー助はどうしていいかわからずオロオロしていた。

 

後方に下がったミスティータから禍々しいオーラが発せられる。けど、ゼノヴィアのものに比べたらもの凄く小さい様に見える。それだけ、今のゼノヴィアから発せられているオーラはとてつもないものだった。

 

『ラードラ! 完了までの時間を!』

 

『わかっている!』

 

ミスティータを守るように立ったラードラ。その体が突如変化を始めた。ひょろ長い体がどんどん膨れ上がり、尾や翼が生まれ、さらには口元から牙が剥き出しとなり、手の爪までもが鋭くなっていく。

 

変化が終わった時、そこには黒く巨大な存在―――ドラゴンがいた。アイツ、匙と同じ様にドラゴンになっちまった!

 

「なんて事・・・! 確かにブネは悪魔でありながらドラゴンを司る一族よ。でも、変化出来るのは一族の中でも限られた者だけだったはず・・・!」

 

『鍛え上げる事で覚醒させたか。へっ、流石はサイラオーグって事か』

 

やっぱりすげえやサイラオーグさん・・・! そして、それに応えたラードラも・・・!

 

『速攻で決着をつけるつもりだったようだが、その選択は間違いだったな!』

 

ラードラがゼノヴィアに向かって突進していく。マズイ! 今のゼノヴィアは身動きがとれな―――。

 

『・・・間違い? いいや、これでいいのさ!』

 

『何・・・?』

 

『突き破れ、デュランダルーーーーー!』

 

天に向かって咆哮するゼノヴィア。次の瞬間、光の刀身が結界を突き破り、遮る物が無くなった刀身が再び天に向かって際限無く伸びて行く。ア、アイツ・・・結界ぶっ壊しやがったぞ!? ラードラも驚愕したのか動きを止めてしまった。

 

『け、結界が壊れた!? 上級悪魔の攻撃にも耐えられる強度で作られたはずなのに!?』

 

『ははっ! あのパワー馬鹿め。あそこまで突き抜けたら大したもんだぜ!』

 

実況の驚愕の声に重なるように先生の笑い声が木霊する。

 

『解放と収束、そして反発。これが今の私が撃てる最大最強の一撃だ!』

 

『化物め! ミスティータまだか!?』

 

『いける! 聖剣よ、その力を閉じよ!』

 

ミスティータの杖から伸びる怪しい光がゼノヴィアへ向かう。だが、もう少しでゼノヴィアの体に届くといった所で、弾けるように光が消えてしまった。

 

『ば、馬鹿な・・・『異能の棺』が通じない!?』

 

『異能の棺』? まさか神器を使おうとしたのか? けど、それが不発に終わって驚いてるみたいだ。

 

『『異能の棺』は自身の体力、精神力を極限まで費やす事で特定の相手の能力を一定時間完全に封じる神器です』

 

『ですが、ゼノヴィア選手には効果が無いようなのですが』

 

『答えは単純です。ミスティータ選手の体力、精神力はゼノヴィア選手の力を封じるまでには至らなかったという事ですよ。おそらくミスティータ選手は神器を使えるようになってまだ日が浅いのでは?』

 

『ええ、おっしゃる通りです』

 

実況組の解説が聞こえたのか、ゼノヴィアがミスティータへ目を向ける。

 

『残念だったな。いつもの私ならばもしかしたら止められたかもしれない。だが・・・今の私を止められると思うなぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

『く、くそぉぉぉぉぉぉ!!!』

 

そして、ラードラとミスティータはゼノヴィアの振り降ろした一撃の光の中へ消えて行ったのだった。

 

『サイラオーグ・バアル選手の『戦車』一名、及び『僧侶』一名リタイヤ』

 

なんだろう。勝って嬉しいはずなのに、相手に申し訳ない気持ちでいっぱいなんだけど・・・。

 

『あ、あれ・・・僕の出番は・・・?』

 

そんでもってギャー助。あんなに気合い入れて臨んだのにまさかの出番無し・・・。いや、でも、うん、仕方ないな。

 

『ふう・・・ふう・・・。ど、どうだ。これでもう誰も私を天井に負けた女などと言わないだろう』

 

相当な力を消費したのか、肩で息をするゼノヴィアだが、その顔は満足感に溢れていた。

 

『『『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』』』

 

そんなゼノヴィアを称える様に歓声を送る観客達。だが、次に聞こえて来た声にゼノヴィアは表情を凍らせた。

 

『おめでとう、天嬢さん!』

 

『ついに天井に勝ったのね!』

 

『もう『天井に突き刺さって動けなくなったお嬢さん』とは呼べないな!』

 

『ああ! 今日からは『天井に打ち勝ったお嬢さん』で天嬢さんだ!』

 

『さっきのすげえ技、さしずめ天井爆砕剣って感じだな!』

 

『おお! ピッタリだな!』

 

『新天嬢さんの誕生だぜ!』

 

『おめでとう、新天嬢さん!』

 

『おめでとう!』

 

『―――』

 

巻き起こる天嬢さんコールを浴びたゼノヴィアは、声もあげずにその場に崩れ落ちた。

 

『ど、どうしましたゼノヴィア先p・・・ひいっ!? 白目剥いてるぅぅぅぅぅぅぅ! 誰か、誰か助けてくださいぃぃぃぃぃぃ!!!』

 

「・・・リアス」

 

「・・・私が悪かったわ」

 

気まずそうに顔を伏せる部長。場には何とも言えない微妙な空気がジワーッと漂っていた。




えー・・・ゼノヴィア好きな方、及びギャスパーの見せ場を期待した皆さまには大変申し訳ありませんが、今回だけですので大目に見て頂けると幸せです。次回からは真面目路線に戻ります。

お詫びにもなりませんが、最後に本編で出せなかったボツセリフを一つ。

ゼノヴィア「必殺! 天嬢天下天井爆砕剣! 天井爆砕ぃ!」

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