ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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第百五十話 試験で結果を出したいなら毎日の積み重ねが大事です

リアスとサイラオーグさんのレーティングゲームから数日の間を空け、駒王学園の文化祭は予定通り開催された。オカルト部の出し物も大盛況となり、手伝った身としては嬉しい限りだった。

 

占いやお祓いといった様々なコーナーに加え、仮装した部員と一緒に写真が撮れると聞きつけた子達が殺到して、その整理が大変だった。部員じゃない俺やアーシアまでも巻き込まれてしまい、一体何枚の写真を撮られたかわからない。けどまあ・・・最後の文化祭のいい思い出になった事は確かだった。

 

ちなみに、ダンゴ状態だった女子に比べ、男子は指名の数にバラつきがあった。部外者の俺を除き、一番多かったのが木場君、次がヴラディ君、そして最後が兵藤君だった。その内訳もなかなか面白く、木場君が二年生の女子、ヴラディ君が三年生の女子、兵藤君が一年生の女子とキッチリ分かれていたのだ。木場君はイケメン同級生、ヴラディ君は可愛い後輩、兵藤君は・・・たぶん、頼りになる先輩って感じで見られてたんじゃないかな。

 

そんな文化祭終了後、まず俺がやる事になったのは、リアス達の前でレーティングゲームの総評を言う事だった。おかしいよね。どう考えてもこれってアザゼル先生の役目だよね。

 

「コイツ等はお前の言葉が聞きてえんだよ。何せ・・・ソーナとのゲームはほとんど見てもらえなかったんだからな」

 

あれは見なかったんじゃなくて見れなかったんですよ! とは言えなかった俺はとんだチキン野郎だ。ああ、リアス達の顔が強張っちゃったじゃないですか! ・・・けどまあ、今回は最初から最後までしっかり見させてもらったから胸を張って言えるぞ。

 

「・・・みんな素晴らしかった。これ以上の言葉は必要無いでしょう」

 

本当はもっと色々言いたかった。けど、あの試合はグダグダと言葉を並べて語っていいものじゃない。だから、俺はシンプルにそう言うだけにとどめる事にした。

 

それからが大変だった。安心したように顔を綻ばせる子や、声を出して喜ぶ子がいる中、朱乃とゼノヴィアさんがおどおどした様子で俺に尋ねて来た。あんなみっともない姿を見せてしまった自分達は果たして評価に値したのかと。

 

俺は即座に当然だと答えた。朱乃は俺の素人判断で教えた技を使いこなすどころか自分なりにさらに発展させてたし、バリアすらぶっ壊す様な強力な攻撃を見せたゼノヴィアさんだって凄かった。あれを見てみっともないなんて言える俺じゃないですよ。

 

そう付け加えると、二人が突然左右から抱きついて来た。これはまずいと離れてもらおうとしたら、なんと二人とも泣いていた。何で泣いたのかという理由は置いておいて、とりあえず落ち着くまではこのままでいようと思った・・・のが不味かった。もうね、周囲からの視線が気になってしょうがなかったわ。

 

それから、二人が落ちついた所で、最後にアザゼル先生がMVPを選ぶとしたら誰だと聞いて来た。そりゃ全員でしょと言おうとしたら「全員は無しだぞ」と封じられてしまったので、しばし悩んだ後、俺はヴラディ君の名前を上げた。

 

「ふえぇ!? イ、イッセー先輩じゃなくて、僕ですかぁ!?」

 

仰天するヴラディ君。確かに、兵藤君は凄かった。だけど、成長したという点では、ヴラディ君だって負けてなかった。聞けば、二戦目は自ら志願したらしいし、苦手だと言っていた神器だって自分の意思で使っていた。それはこれまでずっと自分の力と向き合おうとして来た彼の努力の結果だ。だからこそ、俺はヴラディ君にMVPを送りたいと思った。

 

理由を説明すると、リアス達も納得した様に頷き、ヴラディ君を称える為に大きな拍手を送った。

 

「う、嬉しいです! こんな賞、生まれて初めてもらいました! 本当に、本当にありが・・・うえぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!」

 

リアスから花束(いつの間にかアザゼル先生が用意していた)を受けとったヴラディ君が、感極まったのか号泣し始めた。彼へ送られる拍手は、その後しばらくオカルト部の中に響き続けるのだった。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

さて、それからさらに数日が経った今日。俺の家の地下室に設けられたVIPルームにサーゼクスさんとグレイフィアさん。そしてアザゼル先生とオカルト部のみんなを招いての話し合いが行われる事になった。・・・うん、まあこんなにたくさんのお客さんを招く為にはこういう部屋も必要なのはわかるよリアス。でもね、何度も言う様だけど、せめて作る前に教えといてくれないかな。初めて地下室に入った時には、こんな部屋無かったよね? 前にみんなで集まった広間でいいじゃない。ちなみに、その広間では初の地下室に興味深々なスコルとハティが駆けまわっている。正直、俺もそっちに行きたいんだけれど、それを防ぐかのように、俺のすぐ後ろにフェンリルが待機している。しかも、何故かサーゼクスさんやアザゼル先生に目線を送り続けている。一体何がしたいんだろう・・・。

 

ボケーっと室内を見渡している俺を尻目に、サーゼクスさんが口を開く。なんでも、この度、兵藤君と木場君、そして朱乃に魔王様方から昇格の推薦が発せられる事になったそうだ。

 

昇格って何ぞや? と一瞬思ったが、そういえば、悪魔には上級とか中級とか色々階級があった事を思い出した。今回、三人には中級悪魔になる為の試験を受けてもらうらしい。やっぱりこういう時に試験を受けなければならないのは、人間も悪魔も一緒なんだなー・・・なんて感想が浮かんだ。

 

「本当なら、中級など飛び越えて上級悪魔相当の昇格が妥当なんだけどね。システム上、それは出来ないんだ」

 

「上の連中曰く、特例であろうと順序は守れ・・・だそうだ。不本意かもしれんが、まずは中級へ昇格、しばらく活動して、再び昇格の推薦状が出るまでは我慢しろ」

 

「ふ、不本意どころか・・・」

 

「むしろ、僕達にそんな資格があるのか・・・」

 

「ずいぶんと評価して頂いているようで・・・」

 

驚く三人だったが、すぐに立ち上がってサーゼクスさんに頭を下げ、それぞれに感謝の言葉を述べる。それを受けたサーゼクスさんも嬉しそうに頷いた。

 

「今回の三人以外の子達にもいずれ昇格の話が出て来るだろう。北欧の悪神に京都のテロリスト。・・・キミ達の功績は本当に立派なものなのだから」

 

京都か・・・。あの女性は元気でやっているだろうか。それにしてもau派とかいう鬼畜集団め。もしまた俺の知る所で同じ様な所業を行ったら、次は腹パンだけじゃ済まさんぞ。

 

だいたい、コスチュームまで統一して恥ずかしくないのかアイツ等。・・・そういや、前に出会った自称曹操のレイヤーさんも似た様な格好だったな。連中より彼の方がずっと似合ってたわ。まあ、趣味で着るのとガチで着るのとじゃ意味が違うしな。・・・今度会ったら衣装変えてみたらって言ってあげた方がいいかもしれんな。あんな連中と一緒にされたら彼だって気分悪いだろうし。

 

「そういうわけで、一番近い試験日である来週にイッセー達三人は冥界で昇格試験に参加してもらうからそのつもりで頑張れよ」

 

「ら、来週!? いくらなんでも急すぎでしょう!?」

 

「中級悪魔の試験というと確か・・・」

 

「レポート作成に筆記、そして実技でしたね」

 

「筆記に関しては朱乃と木場は問題無いだろ。悪魔の基礎知識と応用問題やレーティングゲームに関する事が出題されるが、お前等からすりゃ今さらだろうし。イッセーも・・・今から必死こいて勉強すりゃ何とかなるだろ」

 

「ちくしょう、気楽に言ってくれて・・・」

 

「最強の『兵士』になるんだろ? なら、そろそろ体だけじゃなく、頭の方も鍛えるようにしろ」

 

「そ、それを言われると・・・」

 

「はは。でも、レポートの方は今のイッセー君なら簡単だと思うよ。そうだろう、グレイフィア?」

 

「試験時のレポートは「中級悪魔になったら何をしたいか」という目標と野望をテーマに「これまで自分が得たもの」を絡めて書くのがポピュラーです」

 

「“目標”と“得たもの”・・・。イッセー君はもうどちらの答えも持ってるだろう?」

 

「大勢の前でデカデカと宣言しやがったもんな。試験官があのゲームを観戦してたとしたら、下手なモン書いたら落とされるかもしれんぞお前」

 

「結局どっちなんですか!?」

 

「とにかく、まずはそのレポートから取りかかるぞ。締めきりが試験当日らしいからな。加えて、イッセーは筆記試験に向けてみっちり勉強だ。幸い、先生なら大勢いるしな。精々しっかり教えてもらえ」

 

「そうね。イッセー、わからない事があったら何でも聞いてちょうだい」

 

「僕も色々再確認する必要がありそうだし、付き合うよ」

 

「合格するなら三人一緒ですわ」

 

「あ、ありがとうございます! 俺、頑張りますよ!」

 

青春だな・・・。なんて言ってる場合じゃない。俺だって大学の受験勉強頑張らにゃならんのに。

 

「・・・では、イッセー君達が頑張っている間に、私も頑張って来る事にしますか」

 

さっきからずっと黙っていたロスヴァイセ先生が静かに立ち上がった。

 

「どこか行かれるんですか?」

 

「ええ、北欧に一度戻ろうと思っています。オーディン様に報告しないといけない事もありますし、何より・・・今の私の実力では、あなた達の先生として相応しくありませんからね。今度帰って来る時は、新しくなった私をみなさんにお見せする事を約束します」

 

「い、いきなりですね」

 

「ふふ、けど、これはあなた達の所為ですよ? あなた達の戦う姿を見たからこそ、私ももっと強くなりたいと思う様になったのですから」

 

「え?」

 

「ロスヴァイセだけじゃない。そうだろうサーゼクス?」

 

「ああ。あのレーティングゲーム以降、冥界では若い悪魔達の動きが実に活発になった。もう少し簡単に言うと、積極的に努力する様になったんだ」

 

「努力・・・ですか?」

 

「はは、キミ達にとっては当たり前の事だろう。だけど、冥界・・・いや、悪魔の世界ではこれまで、キミ達やサイラオーグの様な者達はむしろ少数だったんだよ。そこら辺の事情はレイヴェルも詳しいんじゃないかな?」

 

名指しされたレイヴェルさんが口を開く。

 

「サーゼクス様のおっしゃる通りですわ。例えば、今のレーティングゲームのプロプレイヤー陣は家の特色や生まれ持った才能、戦術に絶対の誇りを持ち、自身を鍛える事なんてしません。努力や修行なんて、才能の前ではたかが知れていると思っている者もいます。眷属の力が足りなければトレードでより強い眷属を得る。もちろん、リアス様やサイラオーグ・バアル様のように眷属に愛情や誇りを持つ方も多いですが・・・」

 

「当然よ」

 

「努力など無駄・・・。それを覆したのが皆さまなのですわ。そして、そんな皆さまの戦いを見た者達の中で、努力というものに対する考えや価値観が変わり始めた。皆さまは、悪魔の固定概念とも呼べるものに小さな亀裂を入れたのです。今はまだ小さなものかもしれません。ですが、この亀裂が大きさを増し、そしていつか完全に破壊されたとしたら・・・。もしかしたら、その時こそが冥界そのものが覆る時なのかもしれません」

 

(まあ、こいつらやサイラオーグ達がここまでの段階に至れたのは・・・)

 

(間違いなく・・・)

 

(この方の影響なのですが・・・)

 

冥界を変える・・・。どうしよう。なんかリアス達の姿が滅茶苦茶でっかく見えるんだけど。あれじゃね。いずれ偉人扱いされる様になるんじゃね? あと、なんでアザゼル先生にサーゼクスさん、グレイフィアさんは俺の方見てんの?

 

「今レイヴェルが話してくれた通りだ。そして・・・私はキミ達にそれを期待している。冥界の未来を担うのはキミ達若手だ。キミ達が、キミ達自身で、キミ達が正しいと思える様な冥界を作って欲しい。現魔王として、私は心からそう思っている」

 

「お兄様・・・」

 

・・・ヤバい。なんか泣きそう。

 

―――難しく考えるな。気楽にいけ気楽に。

 

先生、せっかくアドバイスしてもらって申し訳ないですが、やっぱり自分だけ何もしないっていうのは我慢出来ません。俺も、俺のやりたい事、やるべき事を見つけようと思います。

 

そう最後に決意して、この日は解散となったのだった。

 

SIDE OUT

 

 

 

イッセーSIDE

 

試験当日まで五日。俺はオカルト部で木場や朱乃さんと一緒に勉強していた。先生として部長もいてくれている。

 

「うわ・・・覚える事多過ぎ」

 

とある転職サイトのキャッチフレーズみたいな言葉が無意識に出る。いや、マジで大変だわ。ぶっちゃけ、学園の試験でもここまで気合い入れて勉強した事ねえし。

 

「よお、頑張ってるか若人よ」

 

と思ったらアザゼル先生登場。ノートパソコンなんか持ってどうしたんだ?

 

「気分転換に面白いもんを見せてやるよ」

 

「面白い物?」

 

いそいそとパソコンを机に置く先生。一体何を見せてくれるつもりなんだろう。

 

『みなさーん! こんにちはー!』

 

『『『『『こんにちは~~!』』』』』

 

映しだされたのは、一人の綺麗な女性悪魔。そして、そんな彼女の前に座って元気な声をあげる子ども達の姿だった。

 

「先生、これは?」

 

「冥界で新しく始まった幼児向けの教育番組だ。人間界にもあるだろ?」

 

「ええ、まあ。けど、何で今この番組を・・・?」

 

「くくく、すぐにわかるぜ」

 

『今日は、みんなと一緒にたくさん運動をしたいと思います。けど、その前にみんなに運動を教えてくれる先生を呼びましょう。みんな、大きな声で呼んであげてね! せーのっ・・・!』

 

『『『『『ライオンさ~ん!!!』』』』』

 

『うむ、呼んだか』

 

次の瞬間、子ども達の前にライオンの着ぐるみを纏った巨漢が現れた。その巨漢の顔を見た俺達全員の目が限界まで見開かれる。

 

「はっ!?」

 

「なっ!?」

 

「ちょっ!?」

 

『はーい! ライオンさんこと、サイラオーグ・バアルお兄さんでーす!』

 

「サ、サササササイラオーグさんんんんんんん!?!?!?!?」

 

どうなってんだよ!? どうなってんだよぉぉぉぉぉぉぉ!?

 

『ねえねえお兄さん。今日はどんな事を教えてくれるのかな?』

 

『今日は正しい正拳突きの型を・・・』

 

『違う違う!』

 

『むっ、ではキックの練習・・・』

 

『台本! 台本守ってお兄さん!』

 

『ライオンさん! 僕も頑張ればライオンさんみたいに強くなれるかな?』

 

『・・・ああ。お前が諦めなければ必ずな』

 

『ホント!? じゃあ僕、絶対に諦めずに頑張るよ!』

 

『僕も!』

 

『私も!』

 

『若手は宝・・・か。サーゼクス様、あなたのおっしゃった言葉、今ならわかる気がします・・・』

 

フッと微笑むサイラオーグさんのアップが映った所で、映像は終了した。

 

「だーはっはっは! いやあ、いつ見てもおもしれえ映像だぜ!」

 

「先生、説明してください! 一体サイラオーグさんに何があったんですか!?」

 

「ゲーム終了後、サイラオーグが上層部とのパイプを失ったのは知ってるだろ?」

 

「・・・はい」

 

「俺もフューリーと一計を案じてみたが・・・連中は安全よりもプライドを選んだってわけだ。まあ今はそんな事はどうでもいい。けどな、捨てる悪魔があれば拾う悪魔もありって具合にサイラオーグは別のパイプを得た。その一つが今の番組を作っているテレビ局だ」

 

「テレビ局ですか?」

 

「メディアの力を舐めんなよ? ある意味、上層部よりもずっと強力な後ろ盾を得た事になる。人間と同じで、悪魔も上に行けば行くほど、スキャンダルを嫌うからな」

 

「な、なるほど。でも、サイラオーグさんもよく出演しましたね」

 

「まあ、最初は難色を示していたみたいだが、お前と戦った時、子ども達の声援のおかげで立ち上がれたのだから、その恩を子ども達に返したいって事で決断したそうだぜ」

 

「サイラオーグらしいわね」

 

「バアル家が何か言ってくるかもしれんが、フューリーやテレビ局以外にもアイツの味方は増えた。加えて母親も目覚めたいま、アイツに怖いモンなんて存在しないだろうさ」

 

「サイラオーグさんも・・・頑張ってるんですね」

 

「そうだ。だからお前もアイツに負けない様、今は試験に向けての勉強に全力を注げ」

 

「はい! よっしゃあ! 何か燃えて来たぜぇ!」

 

負けませんよサイラオーグさん! 何せ、あなたは俺のライバルなんですから!

 

気合いを入れて再びノートに向かう。この日の勉強会はとても充実したものになった。




【悲報】アザゼルの計画、わずか一話で失敗に終わる。

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