ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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第百五十三話 信頼を得るのは大変だが失うのはとても簡単である

イッセーSIDE

 

いよいよ今日は試験当日だ! 今日まで必死こいて勉強して来た全てをぶつけてやるぜ。

 

俺と木場と朱乃さんが立つ前方に描かれた魔法陣。これを利用して俺達は試験会場へ行く事になっている。部長や他のみんなは、試験が終わるまで近くのホテルで待機しているらしい。

 

「ついにこの日が来たね、イッセー君」

 

「おう。お互いに頑張ろうぜ。朱乃さんも、絶対三人で合格しましょうね!」

 

「・・・朱乃さん?」

 

俺の声かけに朱乃さんは応えず、代わりに傍にいたアザゼル先生に縋りつく様な声で話しかけた。

 

「先生、やっぱり私は・・・」

 

「ダメだ。魔王からの推薦を蹴れば、それはアイツ等の顔に泥を塗る事になるんだぞ。こっちは俺達に任せて、お前は試験に全力を注げ」

 

朱乃さん、ひょっとして試験を受けたくないのか? 合格出来るか不安になっちゃったのかもしれないな。

 

「大丈夫ですよ朱乃さん。俺なんかと違って朱乃さんは頭いいんですから余裕ですって!」

 

俺がそう言うと、朱乃さんはほんの少しだけ表情を柔らかくした。

 

「そう・・・ですわね。ありがとう、イッセー君。おかげで少し元気になりましたわ」

 

「いえいえ、どういたしまして。・・・にしても、見送りが部長にレイヴェル、そしてアザゼル先生だけとはなぁ・・・」

 

「あら、私達だけじゃ不満かしら?」

 

「そ、そんなわけないじゃないですか。ただ、その・・・出来れば神崎先輩にも何か一言励ましの言葉をもらいたかったなぁ・・・なんて」

 

―――神崎君。イッセーはね、私達にあなたの事をよく話して来るのよ。女の子にばかり現をぬかしていたあの子が、楽しそうに、嬉しそうに話すの。まるで、兄の自慢をする弟みたいに。

 

くそ、母さんがあんな事言うから、なんか変な感じになっちまったじゃねえか。・・・でも、先輩が兄貴か。あんなすげえ人が兄とか、自慢どころかコンプレックスになっちまうかもしれんな。

 

「・・・それについても説明したろ。アイツは今ギャスパーと一緒にグリゴリの神器研究機関に滞在しているとな」

 

なんでも、自分の神器の力をさらに使いこなすべく、先生に頼んで行く事を決めたそうだ。

 

「『ひ、一人だと不安なので神崎先輩について来て欲しいですぅ!』ってアイツに泣きついたのが三日前。それからすぐに二人揃って送り込んでやったってわけだ」

 

「・・・今の、ギャスパーのモノマネですか? ぶっちゃけ気持ち悪―――」

 

「じゃかましい! いいからさっさと行きやがれ!」

 

アザゼル先生に尻を蹴られ、俺は魔法陣に突っ込んだ。いや、だって本当に気持ちわるかったんだからしょうがねえじゃん。

 

「本当に・・・そうなんですか?」

 

「んだよ、木場。俺が嘘をついているとでも思ってんのか?」

 

「・・・いえ、今のは忘れてください」

 

木場まで変な事を言う。何だよ・・・二人してどうしたっていうんだ?

 

最後までその理由がわからないまま、俺達は試験会場へと転移するのだった。

 

イッセーSIDE OUT

 

 

リアスSIDE

 

「・・・行ったか」

 

「ええ。・・・それにしても酷いわね。本当はギャスパーは研究機関へ一人で行ったっていうのに」

 

「勝手にアイツをヘタレにしたのは悪かったと思ってるさ。だが、試験前に本当の事を言って集中力を削ぐわけにはいかんだろう。最も、朱乃は既に知っているし、あの様子じゃ木場も感づいているかもしれん。騙しとおせたのはイッセーだけか」

 

「あ、あの、お二人とも何のお話をされているのですか?」

 

「悪いなレイヴェル。少しリアスと二人だけにさせてくれねえか。この話はまだ広めたくねえんだ」

 

「イッセー達の試験が終わって、みんなが集まった所で改めて話をさせてもらうから」

 

「・・・わかりました。ですが、必ず聞かせて頂きますからね」

 

「ええ、約束するわ」

 

レイヴェルが立ち去った所で、私達は再び話を始めた。

 

「他の連中の様子はどうだ?」

 

「酷いものよ。アーシアと小猫はすっかり塞ぎこんじゃって。朱乃はこの三日間ロクに勉強出来なかった。フェンリルはリョーマの帰りを待つかのように玄関の前から動かないし、スコルとハティはリョーマの部屋の扉を何度も引っ掻いていた。そして黒歌は・・・ろくに休息もとらずリョーマを探し続けている所為で憔悴しきっているわ」

 

リョーマの突然の失踪は私達に大きな衝撃を与えた。ただの外泊ではとも思ったけれど、彼はどこかへ出かける時には誰かに必ず行き先を告げる。そのリョーマと最後に話をしたアーシアに、彼は走り込みに行くと言ったらしい。ならば、彼は正しく走り込みの為だけに外出したのだ。連絡も無しに三日も家を空けるなどあり得ない。

 

「お前から連絡を受け、俺の方も手が空いている堕天使を使ってヤツを探させているが、有力な情報は上がって来ていない。もちろん、レイナーレ達にもな。こっちは俺が指示する前に動いていたが。アイツ等からも何も情報は無い。・・・自慢する気はねえが、俺の部下達は優秀だ。その部下達が発見するどころか情報一つ持って来ないってのはハッキリ言って異常だ。それこそ、この街から突然消失でもしない限りな」

 

「・・・やっぱり、何者かがリョーマを」

 

「あのバグ野郎に手を出すなんざ正気の沙汰とは思えんが。・・・実は、以前ヴァーリから気になる話を聞いてな」

 

「話?」

 

「ああ。英雄派の首魁、『黄昏の聖槍』を持つ曹操が、フューリーに興味を持っているとな。もしかしたら、近い内に接触を図るかもしれないともな」

 

「ッ! それは・・・人間であり英雄でもあるリョーマを自分達の陣営に引き入れる為に?」

 

「いや、そういうのとは違うらしい。ただ、最近の曹操は自分と同じ目をしているとは言っていたが」

 

同じ目? どういう事かしら。少しばかりその事について考えた所で、私の頭にある仮説が浮かんだ。

 

「・・・もしかしたら、曹操の目的はリョーマと戦う事なのかもしれないわ」

 

「戦うだと? ・・・いや、確かにヴァーリも未だにリベンジを諦めていない様だし、京都であの野郎とやり合った時、ヤツはフューリーの王道を越えるとか何とかほざいてやがったな」

 

「英雄として超常の存在を越える・・・曹操が英雄派を率いるのはそれが理由なんでしょ? 人間でありながら超常の存在を越える力を持つリョーマを狙うという事もありえるんじゃないかしら」

 

「はっ。あの覇道と外道を履き違えた間抜けが考えそうなこった。いいぞ、リアス。おかげで調査の方向性がだいぶ絞れそうだ。お前等は先に冥界に行ってろ。俺はちょっと寄り道してから合流する」

 

「わかったわ」

 

先にその場を去ろうとすると、背後から声をかけられた。

 

「そういや、さっき家の連中の様子を聞いたが、お前自身は大丈夫なのか?」

 

「三流恋愛映画の様に、泣いて喚いてリョーマが帰って来るならいくらでもそうするわ。だけど、現実ではそんな事をしても意味が無い。朱乃達にはいつも支えてもらっているのよ。こんな時にあの子達を支えられない者に『王』を名乗る資格なんて無いわ」

 

「・・・わかった。野暮な事聞いちまって済まなかったな」

 

そうよ。私は大丈夫。『王』である私は大丈夫でないといけない。それに、こうしてあれこれ考えを巡らせたって無駄になる可能性だってある。だってリョーマだもの。その内ヒョッコリ帰って来るかもしれないわ。その時は、心配させた罰として思いっきり抱きついてやるんだから。

 

「・・・だからリョーマ。帰れるのなら、早く帰って来て頂戴」

 

リアスSIDE OUT

 

 

 

イッセーSIDE

 

あっという間に試験は終了し、俺達は予定通りホテルに向かい、貸切状態のレストランで試験後の疲れを労ってもらっていた。

 

こうして終わってから思い出してみると、やっぱり筆記が大変だった。反面実技は拍子抜けするくらい楽に通過出来た。内容は単純に他の受験者と一対一で戦うだけだったのだが、俺は全ての勝負において、ワンパンで相手を倒してしまったのだ。

 

―――当然だ。『覇龍』に至った今の相棒の実力にまともに対抗出来る下級悪魔なぞ存在せんさ。

 

マジか・・・。俺、相手によっては『覇龍』も辞さないと思っていたんだけど。

 

―――あの様な場所で使う様な力では無いぞ相棒。そもそも、相棒は『覇龍』の力を完全に発揮出来ていない。本来、『覇龍』とは至った者の全力に合わせて発現するものだが、いま相棒が『覇龍』で全力を発揮しようとすれば、お前の体は力に耐え切れず崩壊するぞ。サイラオーグ・バアルとの勝負でブラスター以外の武装を使用していたらお前は今頃あの世に行っていはずだ。

 

ファッ!? なんだそりゃ!? 聞いてた話と違うじゃねえか!

 

―――そうだな・・・お前が『覇龍』のフルパワーに耐えられるドラゴンの体でも手に入れられれば話は違うのだが。

 

それもう無理って言ってるよね!? 体を手に入れるとかもう意味わかんねえよ!

 

「イッセー。『覇龍』に目覚めて久しぶりの戦いはどうだった?」

 

「今その事でドライグと話してましたよ。けどまあ、ぶっちゃけあまり自覚が無いというか」

 

「そうか。丁度いい機会だから教えといてやるよ。実は『覇龍』の様な力の発現は、お前やヴァーリだけの特権じゃねえんだぜ?」

 

「特権じゃないって・・・まさか、他にも同じ事が出来る神器があるんですか!?」

 

「おう。システム上不可能じゃない。強力な魔物やドラゴンが封印されている神器ならばな。サイラオーグの所のレグルスもそうだ。ドラゴン以外の魔物を封印した神器では『覇龍』ではなく『覇獣』と呼ばれている。・・・そういや言ってなかったが、レグルスの件でちょっとばかしもめごとが発生した」

 

「もめごとですか?」

 

「同盟を結んだ事で、神滅具の所在は三大勢力のトップに必ず知らせるように義務づけられたんだが、俺どころか、サーゼクスすらレグルスの存在を知らされていなかった。これは明確な同盟違反という事で、バアルを筆頭とする大王派は魔王派の連中から激しく追及されているみたいだぜ。あの馬鹿真面目なサイラオーグが故意に隠すわけねぇ。大王派のヤツ等に言われて渋々従っていたが、お前との戦いでついに我慢出来なくなったんだろうよ」

 

ふーん、そんな事があったのか。派閥争いって怖いなー。

 

「・・・くだらない」

 

俺がそんな感想を浮かべていたその時だった。背筋が凍りそうなほどの冷たい声がレストランの中に広がって行った。その声を発したのは・・・一番端の席に座っていた小猫ちゃんのお姉さんだった。

 

「気分転換だと無理矢理連れてこられた揚句、神滅具の講義? 私にはこんな事をしている暇は無いっていうのに・・・!」

 

な、なんか知らんが滅茶苦茶ご立腹みたいだ。というか、今になって気付いた。その隣の小猫ちゃんも、そのまた隣のアーシアも出された食事に全く手をつけていない。アーシアはともかく、小猫ちゃんがこんな美味い料理を食べないなんておかしい!

 

「・・・そうだな。そろそろ本題に入るべきか。リアス」

 

アザゼル先生に呼ばれ、部長が席を立つ。必然的にみんなの視線が部長に集中する。

 

「みんな、落ちついて聞いてちょうだい。・・・実はリョーマが―――」

 

部長がそこまで言いかけたその瞬間、形容しがたい違和感が俺を襲った。・・・この全身を舐めるかのような感覚。同じ風景なのに同じじゃないこの感じ・・・。まさか・・・!

 

「先生、これは・・・!」

 

「どうやらめんどくせえ事になったようだな。ほれ、アイツ等もお出ましだ」

 

先生の視線の先・・・そこにはヴァーリちゃんにルフェイ。そして・・・オーフィス!?

 

「ヴァーリ、説明しろ」

 

「必要あるの? あなただってわかってるんでしょ、アザゼル?」

 

「・・・英雄派か」

 

「正解。あなた達は彼等の用意したフィールドの中にいるわ。英雄派ナンバー二、『絶霧』のゲオルクの手でね」

 

「京都の時と同じってわけか。それで、どうしてお前も巻き込まれている? ご丁寧にオーフィスまで連れて」

 

「ついに曹操が“彼”に接触するって聞いたから動こうとしたんだけど上手く動けなかったの。なら直接聞いてやろうと思って来たらついでとばかりに跳ばされちゃったってわけ」

 

「ってわけ」

 

「繰り返さんでいいオーフィス。まあいい、お前等、ひとまず外に出るぞ!」

 

「は、はい!」

 

小猫ちゃんのお姉さんがアーシアを背負うのを確認し、全員でレストランを飛び出す。くそ、人が一人もいねえ。これも京都の時と同じだ。

 

レストランからロビーへと足を踏み入れた俺達の前方に二人の男が立っていた。漢服とローブ・・・見間違えるはずがねえ。アイツ等は・・・!

 

「曹操! ゲオルク!」

 

「京都以来だな、赤龍帝」

 

ゲオルクが俺の名を呼ぶ。それに対し曹操は一言も発さずジッとこちらを見つめている。・・・おかしい、俺の知る曹操は有利であろうとピンチであろうと、常に笑みを崩さない男だった。それなのに、今のアイツの表情は『無』そのものだ。俺達どころか、世界そのものに興味を失ったかのように。

 

「やはりオーフィスを連れ出したかヴァーリ」

 

「計算通りとでも言いたいのかしら。最早隠す事もせずこの子をつけ狙う輩が一杯出て来たから一緒に連れて来たのよ。ねえ、曹操?」

 

ヴァーリちゃんの声にも全く反応しない曹操。

 

「我々にはオーフィスが必要だった。けれど、お前に連れられ、外の世界を知った今のオーフィスは必要無い」

 

「ふうん、だから『龍喰者』なんて奥の手を用意しているってわけね」

 

「ッ・・・! 既にそこまで掴んでいたか。そうだ、俺達は『龍喰者』を使い無限を食う。その為に準備を進めて来たのだ。始めるぞ曹操」

 

「・・・好きにしろ」

 

吐き捨てる様に言う曹操に溜息を吐きつつ、ゲオルクがロビー全体に広がるほどの巨大な魔法陣を出現させた。その魔法陣からどす黒く禍々しいオーラが噴き出すのを見た瞬間、俺の心身を底冷えさせるかのようなおぞましいプレッシャーが襲って来た。

 

―――この気配は・・・!?

 

『ドラゴンのみに向けられた狂おしいまでの悪意・・・。気をつけてイッセー! コイツは・・・!』

 

ドライグとエルシャさんの声と同時に、“そいつ”は魔法陣の中からゆっくりと姿を現した。十字架に張り付けられ、締め殺さんばかりに体を包む拘束具に、同じく拘束具で塞がれた目の辺りからは血涙が流れている。これじゃまるで罪人だ。

 

上半身に続き下半身も露わになる。堕天使を思わせる上半身と違い、下半身は鱗に覆われたドラゴンの様な姿だった。そして、上も下も、顔も、背中の羽にすら太い釘が何本も打ち込まれていた。

 

「コイツは・・・!? テメエ等、なんてヤツを・・・! コキュートスの封印を解いたのか!?」

 

「せ、先生、あのヤバそうなドラゴンは一体・・・」

 

尋ねる俺に先生が答える。始まりの男女、アダムとイブに知恵の実を食べる様そそのかした蛇。その所業が聖書の神の怒りを買い、神は蛇・・・つまりドラゴン嫌いになった。あのドラゴンは、そんな神の悪意や毒、呪いを全てその身に受けた。その呪いは究極の龍殺しであり、このドラゴンそのものが凶悪な龍殺し。ドラゴン以外にも影響を与え、ドラゴンを絶滅させかねないとの理由で、コキュートスの奥深くに封印されていた存在。その名は・・・。

 

「『龍喰者』サマエル。それがこの罪深きドラゴンの名前だ」

 

「サマエル・・・」

 

コイツは・・・ヤバい。龍殺しなんざ、俺にとっては天敵じゃねえか!

 

「何故だ! サマエルを解き放つなんざハーデスが許すはずが・・・まさかあの野郎!」

 

「ハーデスからは召喚の許可をもらっている。そうでなければこの様な存在を呼び出せるはずが無い」

 

「ざっけんなよあの腐れ骸骨! ゼウスが俺達との協力体制に積極的なのがそんなに気に食わないってのか!」

 

ブチ切れるアザゼル先生を尻目に、ゲオルクがサマエルに何やら指示を出す。

 

「さあ、喰らうがいい」

 

その瞬間、視認出来ない速度で俺達の横を何かが通り過ぎていった。すぐさま振り返った俺の目に映ったのは、さっきまでオーフィスが立っていた場所を包み込む黒い塊だった。サマエルが・・・オーフィスを飲み込んだ!?

 

塊から伸びる触手の様なものがサマエルの口元へと続いている。ひょっとして、あれは舌か! 直後、何かを飲み込む様な音と共に、触手が異様な盛り上がりを見せる。コイツ・・・オーフィスから何かを吸い上げてるのか!?

 

「オーフィス! 返事しろ! おい!」

 

「みんな! その塊を破壊するのよ!」

 

部長の指示でみんな一斉に動く。だが、木場の聖魔剣も、ヴァーリちゃんの『半減』も、さらには必殺の部長の滅びの魔力ですらも塊を破壊どころか傷一つつけられなかった。

 

「素手のヤツは攻撃するなよ! イッセーもだ! アイツはお前にとって究極の天敵だ! 死にたくなければ絶対に近づくな!」

 

「曹操、俺はサマエルの制御で動けない。だから・・・」

 

ゲオルクの言葉を遮るように、曹操が聖槍を片手に前にでる。あのボウリングみたいな七つの球・・・くそ、いつの間にか禁手も発動させてやがる。

 

「邪魔をするなら・・・!」

 

「―――輪宝」

 

ゼノヴィアがエクス・デュランダルで曹操に切りかかろうとした刹那、玉の一つが姿を消し、派手な音と共にエクス・デュランダルが砕け散った。

 

「なっ・・・!?」

 

「なら私が・・・!」

 

「合わせるわリアス!」

 

「―――女宝」

 

部長と朱乃さんが魔力による攻撃を撃とうとするが、さっきとは別の球が放った光が二人を包み込み、二人の手元に溜まっていた魔力を霧散させた。

 

「気をつけろお前達! その七宝はそれぞれに異なる能力を―――」

 

俺達への警告を発するアザゼル先生。その腹を曹操の槍が貫く。は、速い! 人間の出せるスピードじゃねえ!

 

「ごふ・・・!?」

 

「せ、先生!」

 

「アーシア、治療を!」

 

下がった先生をアーシアが神器で治療する。何なんだよコイツ。京都で戦った時とは雰囲気がまるで違うじゃねえか!

 

「ぐっ・・・はあ・・・。へ、今日はお遊びは無しってか? これがお前の大好きな覇道のやり方ってわけか?」

 

「・・・どうでもいい」

 

「あん?」

 

先生の挑発を、どうでもいいと切り捨てる曹操。無表情なんてもんじゃねえ。まるで人形みたいな顔をアザゼル先生へと向ける曹操。

 

「もう・・・覇道などどうでもいい。“彼”に・・・俺の挑戦を受けてくれた神崎君へあの様な事をしてしまった俺など・・・あなたが言った様にただ外道だ。なら、外道は外道らしく正義の味方に立ち塞がってやるさ」

 

「曹操、あれは・・・」

 

「黙れ。次に何か言ったら殺す」

 

無表情から一転、射殺さんばかりに睨みつける曹操に気圧されたようにたじろぐゲオルク。てか待て、なんでコイツから先輩の名前が出るんだ!?

 

「どういう事、曹操! リョーマの失踪はやっぱりあなた達が関係しているの!?」

 

失踪? ・・・し、失踪!? 神崎先輩が!? ど、どういう事ですか部長ぉ!?

 

「・・・ゲオルク。お前が説明しろ。口にする気にもならん」

 

「騎士殿には退場してもらったよ。この世界・・・いや、この時代からね」

 

そして、ゲオルクから語られた真相に、俺達は愕然とするのだった。

 

イッセーSIDE OUT

 

 

 

とある廃墟の奥。そこに傷を負った二人の男女。そして、その男女を囲む数人の人物がいた。

 

「くっ・・・! 昨日悪魔側の襲撃を切りぬけたばかりだというのに!」

 

体を動かし過ぎたのか、男の腹部の包帯が巻かれた部分から血が流れ始めていた。それに気付いた女が泣きそうな声を発する。

 

「正臣、血が・・・!」

 

「大丈夫。それよりクレーリアは下がっているんだ」

 

女を下がらせ、男は剣を構える。それは、教会のエクソシストだけが持つ事を許された光の剣だった。

 

「手負いの状態で俺達と戦うつもりか、正臣」

 

「轟木・・・! とうとうキミ達が出て来たのか。ならあの人もいるんだな?」

 

「紫藤さんの事か?」

 

「頼む! 紫藤さんと話をさせてくれないか! あの人ならきっとわかって・・・!」

 

「残念だが、今回の任務はあの人から志願したものだ。あの人にとって、お前はもう粛清対象に過ぎんのだよ」

 

「何故だ! 僕は、僕達はただ愛し合っているだけだというのに!」

 

「それが罪なのだと何故わからん。最も・・・悪魔側はそれ以外に理由があるようだが」

 

「ッ・・・!?」

 

敵意の込められた視線を向けられ、女が身を縮ませる。

 

「まあ・・・それは我等には関係無い。さあ、正臣、これが最後の選択だ。我等の元に戻るか。それとも、その悪魔と共に死を迎えるか」

 

「どちらもお断りだ! 僕は生きる! 生きて、クレーリアと添い遂げるんだ!」

 

「正臣・・・」

 

「・・・残念だよ、正臣。やれ」

 

轟と呼ばれた男の指示で、残りの者達が光の剣を手に二人へ襲い掛かった。

 

(クレーリアは・・・彼女だけは絶対に守るんだ!)

 

満足に剣も振れない今、男が取った行動は、愛する人の盾になるべく襲撃者達の前に立ちはだかる事だった。

 

「いや、正臣――――!」

 

そして、輝く刃が男の体を貫こうとした正にその時だった。

 

「―――何をしている」

 

その声を聞いた瞬間、襲撃者達は自らの心臓に突き立てられた剣を幻視した。まるで、この男を貫けば、次は自分達だと思わせんばかりに、襲撃者達の頭に鮮明に、鮮烈に、強烈に“死”をイメージさせた。

 

男が、女が、轟が、襲撃者達が一斉に振り向く。廃墟の入口。そこから一人の人物が静かに近付いて来ていた。崩れ落ちた場所から注がれる月光が、その人物の鮮やかな青色の髪を照らす。

 

(綺麗な色だ・・・)

 

それを目にした途端、こんな状況でありながら男の胸に言い様の無い安心感が溢れ。緊張の糸が切れた男は、その場でゆっくりと意識を失うのだった。




フルボッコ対象その一登場。さて、誰でしょうね。

次回、オリ主と曹操に何があったかが判明します。
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