ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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第百六十三話 闇の目覚め

リアスSIDE

 

「お待たせしました、部長」

 

ジークフリートを倒した祐斗が私達の所へ戻って来た。正直、待たせたと言われるほど待って無いのだけれど。というか瞬殺だったじゃない。

 

「・・・イッセーの陰に埋もれがちだけど、あなたも相当よね祐斗・・・」

 

「あはは、ありがとうございます。でもまだまだです。目標にしている人はもっとずっと高い場所にいますから」

 

そう言って微笑む祐斗。その手に持っていたアスカロンが光と共に元の駒に戻った。

 

「ふむ・・・赤龍帝の残した何かと、アスカロンの残留オーラが起こした奇跡・・・とでも呼べばいいだろうか。何にせよ、実に興味深い現象だったよ」

 

アジュカ様が私の持つ駒をジッと見つめる。ともかく、これで邪魔者はいなくなったわ。改めてアジュカ様に駒を見てもらいましょう。

 

私が駒を渡すと、アジュカ様はそれをテーブルに置かれていたチェス盤の上にセットした。展開された小型魔法陣の光が八つの駒を包み込む。おそらく、中を解析されているのでしょうね。

 

「ほお、これは驚いた」

 

「何かわかったのですか?」

 

「八つの駒の内、五つの駒が『変異の駒』になっている。彼が発現させた“覇龍”がもたらした結果なのかもしれないな。価値にばらつきはあるようだが・・・これだけで彼がどれほどの存在だったのかが容易に想像出来る。

 

ッ・・・!? 『変異の駒』ですって!? しかも五つって半分以上じゃない! 私があの子を転生させた時は全て通常の『兵士』の駒だったのに・・・。赤龍帝が至りし“覇龍”・・・ここまでのものだったなんて・・・!

 

「結論を言おう。―――彼が生きている確率は非常に高い。調べてみたが、この駒の記録情報の最後は『死』を示していない。それはつまり、彼の生存を証明している。赤龍帝ドライグの魂と共に、次元の狭間のどこかに辿りついているのかもしれない。ついでに言えば、この駒も機能を停止していない。望むのならば、彼に戻す事も可能だ」

 

「ッ・・・!」

 

言葉を失った私達を見て、アジュカ様がさらに続ける。

 

「彼はサマエルの毒を受けたのだろう? それならば肉体は間違い無く滅んでいるだろう。だが、次に影響を受けそうな魂は消滅していない。駒の中の情報がそれを証明していた。彼は・・・彼の魂は間違い無く生きているよ」

 

「生きてる・・・イッセー君が・・・!」

 

全身を振るわせ、絞り出す様な声で祐斗がそう呟いた。

 

「ほら、私が言った通りでしょ。あの子がそう簡単に死んだりするものですか」

 

「ふふ、そういうあなたも声が震えているわよリアス」

 

「・・・朱乃先輩も涙声です」

 

私達は泣いた。笑い合いながら泣いた。信じていた。けれど確証は無かった。だけど、アジュカ様が・・・悪魔の駒を作りだした方が断言してくれた。それが何よりの証拠だわ!

 

「滅んでしまった肉体を再現する方法もある。細々とした問題もあるが・・・まあ大したレベルでは無い。その時になったら、俺が力を貸そう」

 

「ありがとうございます。・・・アジュカ様はこれからどうされるのですか?」

 

「ああ、眷属に命令して例の巨大怪獣の討伐の指揮をするつもりだ。・・・そういえば、次元の狭間の調査に明るいヤツがファルビウムの眷属にいたな。俺の方から頼んでおいてあげよう」

 

「そうですか。ご武運を」

 

「まあ、頑張るのは俺の眷属だけどね。・・・それと、戻るのなら“アレ”も回収して行ってくれないか」

 

そう言ってアジュカ様が見つめる先では・・・ジークフリートが持っていた魔剣達が淡い輝きを発しながら宙に浮いていた。敵意は感じない。むしろ温かみさえ感じる輝きだった。

 

「『騎士』君、どうやらあの魔剣達は次の主をキミに決めた様だ。俺は興味無いのでね、持って行くといい」

 

「僕が魔剣を・・・」

 

祐斗が魔剣達に近づくと、剣達は忠誠を誓うかのように柄の部分を彼に向ける。その中から、祐斗はグラムを手に取り、それを天に掲げた。

 

「・・・わかった。一緒に行こう。今日から僕達はパートナーだ!」

 

思いがけない戦力アップね。戦いの前に幸先がいいわ。

 

(イッセーは生きていた。リョーマ・・・次はあなたの番よ)

 

早く帰って来てちょうだい。じゃないと・・・抱きしめるだけじゃ済まさないんだからね!

 

リアスSIDE OUT

 

 

IN SIDE

 

地面を見下ろしながらラフトクランズモードで空を飛び続ける事、約三時間。未だ兵藤君は見つからない。だがしかし! たかが三時間くらいでこれくらいではへこたれんぞ! なにせ、俺にはシュウゾウがついているんだからな!

 

「俺は諦めない! シュウゾウの熱血が兵藤君を救うと信じて!」

 

・・・ってこれじゃ終わってしまうじゃないか! いかん、いかんぞ。とりあえずお米でも食べて気分を上げて行きたいが・・・今は我慢するしかないか。

 

しかし、本当に何も無いな。人どころか生き物の気配すら感じない。目印になる様なものも見当たらないし、気をつけないと遭難するなこりゃ。

 

それからさらに一時間くらい進んだ頃、前方に真っ赤な山が見えて来た。・・・臭いな。怪しい臭いがプンプンする。

 

徐々に近づいて来る山。だが、ある程度の距離まで近づいた時、俺はそれが山では無い事に気付いた。だって、普通山に馬鹿でかい翼とか角なんか生えてない。確認した瞬間「あ、これ生き物だわ」って直感したわ。

 

そんでもって、俺はその馬鹿でかい生き物に見憶えがあった。間違い無い。D達をぶちのめした後に姿を見せたあのドラゴン・・・グレートレッドさんだ!

 

「もしかして・・・ここは彼の住処なのか?」

 

だとしたら非常にマズイ。下手すればティアマットさんの悲劇が再び起こってしまう。ここは刺激しない様にそっと通り過ぎて・・・。

 

「・・・ん?」

 

グレートレッドさんの背中の上を通り過ぎようとした俺の目に、小さな黒い何かが映った。筋肉が盛り上がっている所を行ったり来たりしているソレをジッと目を凝らして見つめてみる。

 

「よいしょ、よいしょ」

 

「え・・・!?」

 

黒い髪にヘッドドレス。そして真っ黒なゴスロリを纏った幼女。間違い無い・・・オーフィスちゃんだ! な、何であの子がこんな所に・・・!?

 

「おーーーー」

 

驚きと戸惑いで固まる俺が視線を送るなか、オーフィスちゃんはグレートレッドさんの背中をスイーっと滑り下りて行った。

 

「よいしょ、よいしょ」

 

そしてまた上って行く。わからん・・・あの子が何をしているのかさっぱりわからん!

 

「おーーーー」

 

滑って上ってを繰り返すオーフィスちゃん。・・・ひょっとして、滑り台のつもりなのか? こんな場所で、巨大ドラゴンの背中で滑り台って・・・シュールってレベルじゃないな。

 

「・・・とにかく、行ってみるか」

 

滑り降りるタイミングを見計らい、俺はオーフィスちゃんの前に降り立った。急に現れた俺を見て、オーフィスちゃんは目をパチクリさせる。

 

「・・・フューリー?」

 

「やあ、奇遇だな」

 

いや、そうじゃねえだろ俺! アカン、この子の出現にちょっとテンパってしまっている様だ。

 

「我、ゲオルクから聞いた。フューリー、時空転移した。もう帰って来ない。けど、フューリー帰って来た。どうして?」

 

どうやらこの子は俺と鬼畜ペロリスト共の間で何があったか聞いている様だな。

 

「人間、気合いがあれば大抵の事は何とかなるものなんだよ」

 

「気合い? フューリーは気合いで帰って来た?」

 

「ああ。シュウゾウの力は偉大だと改めて気付かされたよ」

 

「我、理解した。人間、気合いとシュウゾウで次元を越えられる」

 

納得したように頷くオーフィスちゃん。なんか凄まじい誤解をされた気がするけど・・・なんの問題も無いな!(白目

 

「ところで、兵藤君の居場所を知らないか?」

 

「ドライグ、上にいる」

 

おお、マジで!? それなら早速会いに行かないと・・・!

 

「フューリー、ドライグに会いに行く?」

 

「ああ。キミも来るか?」

 

「我、フューリーと一緒に行く」

 

という事で、俺はオーフィスちゃんと一緒に兵藤君の元へ向かう事にした。

 

「ところで、どうして滑り台みたいな遊びを?」

 

「我、前にフューリーの家で見た。テレビでニナチャーンと呼ばれていた者、我と同じ様に遊んでいた」

 

つまり、前に俺の家で過ごした時に、テレビに滑り台で遊んでいるシーンが流れたって事か? ひょっとして、滑り台で遊んだ事も無かったのかこの子・・・。

 

「・・・今度、ヴァーリさん達と遊びに来た時は、凄く長い滑り台のある公園に案内してあげるからな」

 

そうオーフィスちゃんに固く約束し、俺は改めて兵藤君の元へ向かうのだった。グレートレッドさんの大きな背中を二人揃って上って行く。しばらくして、不自然に盛り上がっている部分を見つけた。そして、その部分のすぐ近くに、兵藤君の鎧が置かれていた。

 

「兵藤君!」

 

―――なっ・・・フューリー!?

 

俺はすぐさまその場へ駆け寄った。けれど、返事をしたのは兵藤君では無く、ドライグさんだった。元気そうな声だ。安心したわ。

 

―――何故お前がここに!? 時空の彼方へ飛ばされたのではないのか!?

 

信じられないとばかりに声を上げるドライグさんに、俺は先程のオーフィスちゃんの時と同じ答えを返した。

 

―――いやその理屈はおかしい。

 

間髪入れず、一字一句オカンと一緒のツッコミを頂いてしまった。解せぬ。

 

「それよりも兵藤君は。彼はどうしたんだ?」

 

微動だにしない鎧を見て訝しむ俺に、ドライグさんは衝撃的な答えを返して来た。

 

―――この鎧の中に相棒はいない。サマエルの毒により肉体を失った相棒は魂だけの存在となって眠っているのだ。

 

なん・・・だと・・・!?

 

―――だが安心しろ。グレートレッドとオーフィスの力により、相棒は新たな肉体を得ようとしている。隣にある繭・・・培養カプセルと言った方がいいか。その中で既に肉体の新生は始まっている。ある程度まで構成が進んだ所で、相棒の魂を新たな肉体に注ぎ込む。魂と肉体を馴染ませる為にな。そして、魂の結合と肉体が完成したその時・・・兵藤一誠は蘇る。

 

「では彼は・・・兵藤君は助かるんだな?」

 

―――ああ。

 

そう断言するドライグさんに、俺は力が抜けた様にその場にへたり込んだ。兵藤君は生きている。確かに生きている。それだけで俺の胸には喜びが溢れた。

 

―――ククク、随分と腑抜けた面をしているではないか。相棒にも見せてやりたいくらいだ。

 

「はは、こんな顔でよければいくらでも。・・・ところで、どれくらいの時間で兵藤君は蘇るんだ?」

 

―――こればかりは俺もわからん。さっきも言ったが、肉体がある程度構築されなければ魂を込める事も出来ん。まあ、気長に待つ事だ。先程オーフィスも待つ事に飽きてふらっとどこかに行ってしまった。

 

ああ、それであんな所にいたのか。けど、それなら俺も役に立てるかもしれないな。こういう時こそ、精神コマンドが使えるはずだ。

 

(・・・『復活』を使ってみるか)

 

ゼロからの再生というのであれば、『友情』では無く『復活』を使うべきなのだろう。オカン曰く、死んだ人を無暗に蘇らせる事は許されない。だが! だがしかし! 兵藤君は生きている! ならば使う事に何の問題があるというのだ!

 

『使うなよ! 絶対使うなよ!』

 

『いいや限界だ! 使うね!』

 

俺は培養カプセルにそっと右手を押し当てた。

 

―――フューリー?

 

「・・・『復活』」

 

目を瞑り、俺は呟くように精神コマンドを発動させた。瞬間、眩い光が右手からカプセルへと伝わり、カプセルの全体を覆い尽くした。

 

時間にして十秒もかからずにその光は消えてしまった。だが、その代わりに、カプセルの中には・・・体育座りの様な格好で浮かんでいる兵藤君の姿が確認出来た。

 

―――なっ・・・!? 相棒・・・!?

 

まさに愕然したとばかりの声を発するドライグさん。そこへオーフィスちゃんが俺の隣にやって来て兵藤君の様子を窺う。

 

「・・・ドライグ、体、九割近く出来てる。魂入れれば目覚める」

 

―――ヒェッ!?

 

九割? 『復活』なら完全回復するはずなのに。・・・あ、ひょっとしたら魂を入れないと完成しないって意味なのかもしれないな。そういう事なら、後はドライグさんに任せよう。

 

―――馬鹿なっ! たった今まで二割程度しか進んでいなかったはずだぞ!? フュ、フューリー! お前一体何を・・・!

 

「さあ・・・仕上げを頼む」

 

―――アッハイ。

 

鎧が赤い光の粒子となってカプセルの中へ入って行った。それをジッと見つめる俺とオーフィスちゃん。少しして、カプセルの中にいる兵藤君の目が、少しずつ開いて来た。

 

「ドライグ、もう少しで目覚める」

 

「『復活』を使ったし、無事に出て来てくれたらいいんだが・・・」

 

そして、ついに完全に目を開けた兵藤君が俺達を見る。その瞬間・・・彼は目を見開き、口から大量の泡を吐き出した。

 

「ごぼぼぼぼっ!?!?!?!?」

 

「な、なんか滅茶苦茶泡だっているんだが・・・」

 

「ドライグ、驚いてる」

 

「ごぼぼぼぼっ!」

 

何か言いたそうな兵藤君だが、カプセル内に水が充満しているので言葉になっていない。・・・息出来てるんだろうか?

 

―――魂の結合は成功した。もう一時間も経たずに相棒は出て来るだろう。・・・フューリー、俺の精神衛生上、お前を問い詰める事はせん。もう、お前だという事で納得する。

 

ドライグさんは何を納得したんだろう? ・・・まあ、本人がそれでいいなら俺も気にしなくていいか。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

「反省はしても?」

 

「後悔はするな・・・」

 

「今日からキミは?」

 

「富士山・・・」

 

オーフィスちゃんとシュウゾウごっこで時間を潰す事三十分。ついにその時が訪れた。カプセルの表面が割れ、大量の水と共に兵藤君がドゥルンッ! と出て来た。あれだ。映画で地球外生命体が生まれて来る時みたいな感じ。そして・・・今の彼は生まれたままの姿。つまりZENRAだった。

 

「兵藤君・・・」

 

「先輩・・・」(だがZENRAである)

 

「すまない、こういう時どう言えばいいのか・・・」

 

「俺もです。先輩に言いたい事がたくさんあるんですけど、上手く言葉に出来ないというか・・・」(それでもZENRAである)

 

「だが、まずキミに言わないといけない事はわかる」

 

「はい。俺も先輩にまず言わなきゃいけない事があります」(やっぱりZENRAである)

 

「では、同時に言おう」

 

「はい」(どうしようもなくZENRAである)

 

俺達は一呼吸置き、同時に口を開いた。

 

「お帰りなさい、先輩!」(そしてZENRAである)

 

「その格好・・・寒く無いのか?」

 

「・・・え?」(完全無欠にZENRAである)

 

「え?」

 

兵藤君が唖然とした表情を浮かべ、その視線を俺から自分の体へと移す。

 

「ドライグ、裸」

 

そして、オーフィスちゃんのその言葉が止めの一撃となった。

 

「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」(ついにZENRAに気付く)

 

その瞬間、乙女? の悲鳴が世界へ響き渡るのだった。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

それから、着る物が無いのは鎧を纏う事で解決したので、俺達は改めて互いの状況について話し合いを行った。

 

「いやその理屈はおかしいです」

 

キミもか兵藤君。残念だ。キミなら熱血と気合いは全てを越えると納得してくれると思ったのに。

 

「・・・でも、本当によかったですよ、先輩がこうして帰って来てくれて」

 

「え?」

 

「ゲオルクから禁術の事を聞かされて、みんな先輩ともう会えないんじゃないかって思ったりしたんです。でも、そんな心配いらなかったですよね! なにせ先輩はあの伝説のフューリーなんだ! 本物の英雄が、偽物の連中なんかにやられるわけがないですもんね!」

 

「兵藤君・・・」

 

キミって子は・・・自分が大変な目に遭っていたっていうのに、ずっと俺を心配してくれていたのか・・・。

 

まるで自分の事の様に、本当に嬉しそうに満面の笑みを俺に向けて来る兵藤君。その笑顔を見て俺が抱いたのは、嬉しさでも喜びでも無く・・・果てしない怒りだった。

 

こんなに人の事を想える子を殺そうとしたのか・・・。こんなに優しい後輩を俺やリアス達から奪おうとしたのか・・・。こんなに良い息子さんとあの素敵なご両親の幸せを引き裂こうとしたのか・・・。大切な人を理不尽に奪われるあの悲しみを、あの痛みを・・・俺以外の人達にも撒き散らすつもりだったのか・・・。

 

「・・・ユルサン」

 

その瞬間、俺の全てが一つの感情によって支配されるのだった。

 

SIDE OUT

 

 

 

イッセーSIDE

 

なんだか酷く衝撃を受けた様子の神崎先輩。おかしいな。そんなに変な事を言ったつもりは無いのに。

 

―――相棒、新しい体の調子はどうだ?

 

ああ、悪く無いぜドライグ。違和感も全く無いし、いつでも戦えそうだ。

 

―――そいつは重畳だ。

 

それにしても、まさかここが次元の狭間だとはなぁ。見渡す限り荒野だし、空なんか色んな色が混ざりまくって滅茶苦茶な景色になってる。

 

「オーフィス、お前が帰りたがってたのってここなんだよな?」

 

「我、静寂を求める。ここ、何も無い。静寂」

 

「まあ、静かといえば静かだけど。俺にはこんな所で一人でいるなんて耐えられねえなぁ。お前も、こんな場所じゃなくて、冥界とか人間界で暮らした方がいいんじゃねえの? ヴァーリちゃんとか神崎先輩と一緒にさ」

 

「ヴァーリの傍、静寂じゃない。フューリーも同じ」

 

「あー・・・確かにそうかもな」

 

「・・・でも」

 

「ん?」

 

「ヴァーリの傍、静寂じゃない。だけど、心地良い。フューリーの家、楽しかった。我、またフューリーと一緒に遊びたいと思った。ここにいたら、一人。それは・・・あまり楽しく無い」

 

そっか・・・。コイツ、一人ぼっちが寂しいってようやく気付いたんだな。

 

「なら、拘るのを止めちまえよ。こんな何も無い場所の事なんかさ」

 

気付くと、周囲を真っ黒い何かが漂っていた。何だこれ、薄気味悪いな。

 

「・・・兵藤君」

 

「はい? なんですか先p―――」

 

視線をオーフィスから先輩へ移した瞬間、俺は息を呑んだ。心臓が押し潰されるかのような重圧と、いっそ気絶した方がマシだと思えるほどの濃厚な殺気が俺を襲う。

 

俺の目線の先・・・そこには、先輩の形をした“ナニか”がいた。俺達の周囲に漂うものの正体・・・それは、その“ナニか”の体から溢れだす“闇”だった。魂すら引き摺りこんでしまいそうなその“闇”は、一度囚われたら二度と逃げ出せない“牢獄”を俺にイメージさせた。

 

「もう一度確認させて欲しい・・・。キミをこんな目に遭わせたのは、サマエル。そして・・・シャルバ・ベルゼブブ。この二名で間違い無いんだな?」

 

「は・・・は・・・い・・・」

 

たった一言の返事。それだけで俺の精神が大量にすり減るのを感じた。叶うのなら、今すぐこの場から逃げ出してしまいたい。だが、俺の足は重力に縛り付けられたかの様に一ミリも動かなかった。

 

「ありがとう。しっかりと胸に刻み込んだよ」

 

「せ、先輩・・・。何を・・・」

 

何とかそう口に出来た俺に対し、“ナニか”はこう答えた。

 

「俺の可愛い後輩をこんな目に遭わせてくれたんだ。先輩として・・・お礼をするのが筋だろう・・・?」

 

「あっ・・・」

 

俺は察した。この瞬間・・・サマエルとシャルバの命運が決定したのだ。そして確信する。これは・・・ディオドラ戦以上の惨劇が始まる・・・と。

 

―――ははは! よかったな相棒! どうやらフューリー様はお前の事で大変お冠のご様子だぞ!

 

ドライグ・・・。“様”つけって事は・・・あの時みたいな状態になってるのか。何だろう。今ならお前の気持ちがわかる気がする。

 

―――究極の龍殺し? 真なる皇帝機? それがどうした! 文句があるなら尻尾ぶった切られてから言うがいい! あ、そーれ! 尻尾~尻尾~。俺の尻尾が宙を舞う~。流血~流血~。流れる血は止まらない~。

 

(シャルバ。やっぱりお前、あの場面で俺にぶっ飛ばされてた方がよかったんだよ・・・)

 

ドライグの何の感情も籠って無い機械的な歌声を聞きながら、俺はそう思わずにはいられなかった・・・。

 

イッセーSIDE OUT

 

 

 

アザゼルSIDE

 

冥界の下層に位置し、死者の魂が選別される場所。それが冥府だ。そして、その冥府に俺はサーゼクス達と共にやって来ていた。目的はただ一つ・・・この冥府を統治する神、ハーデスに会う為だ。

 

部下達に指示を出した後、サーゼクスは俺に冥府に同行するよう頼んで来た。コイツも俺と同様、この魔獣騒動に乗じてあの骸骨野郎が動くんじゃないかと危惧しているようだった。

 

冥府の最奥に創られた古代ギリシャ式の神殿。死神達の住処であり、ハーデスが根城にしている『ハーデス神殿』へと足を踏み入れる俺達。入ってすぐ、大勢の死神共が群がって来た。どいつもこいつも敵意を全開にしてこちらに眼差しを向けて来る。あちらにしてみれば、襲撃に近い状況なのだろう。

 

それでも、実際に襲い掛かって来るヤツはいない。こっちには魔王がいるし、何より・・・俺達の背後に立つ“神殺し”の三匹に手を出すのは自殺行為だとわかっているのだろう。

 

「ぐるるる・・・」

 

スコルの一睨みで、死神共がたじろぐ。コイツ等もご主人様を自分達から奪った連中が許せないんだろう。「フューリーを嵌めたヤツ等に報復したくないか?」と誘ったら三匹ともついて来たからな。

 

死神達を無視し、神殿の奥を目指す。やがて俺達が辿りついたのは、黄金の装飾が施された冥府には似つかわしく無い雰囲気を醸し出す祭儀場の様な場所だった。

 

その祭儀場の奥から死神を引きつれ、ハーデスが姿を現した。護衛のつもりか、全員が上級から最上級クラスだと察する。あのプルートがここにいないのが気になるが・・・。

 

「はー。あれが冥府の神ハーデスッスかぁ。マジで骸骨なんですね。直視したらチビリそうなんで帰っていいですかね?」

 

「アホ言ってないで下がってろ」

 

「へーい」

 

いま発言した男の名はデュリオ・ジェズアルド。この男こそ、天界の『御使い』のジョーカーであり、天候を支配する神滅具『煌天雷獄』の所有者だ。

 

≪コウモリの首領にカラスの首領。さらには天界の切り札。そして・・・神殺しの牙が三匹。さて、これだけの戦力を見せびらかして、この老人をどうするつもりか?≫

 

ふん、白々しい。どうせ全てわかってる癖によ。

 

「お久しぶりですハーデス様。急な来訪、申し訳ありません。少々お尋ねしたい事がございまして」

 

さて、ここからが本番だ。この骸骨野郎が正直に話すとは思えんが、それ以上に、コイツをこの場から動かさない様にするのが俺達の役目なんだからよ。

 

ズキッ・・・!

 

「ん・・・?」

 

「どうしましたアザゼル総督?」

 

「何でもねえ。気にすんな」

 

ちょっとばかし・・・胃が疼いただけだからよ。




さーて、次話のハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜は!

「どうも、イッセーです。ついに復活出来たと思ったのに、これから恐ろしい事が起きそうでちっとも喜べません。ただ、シャルバの余裕面が凍りつく瞬間だけは見てみたいなーと思いました。さて次回は、「ライザー、真のフェニックスになる」「怪傑ライオンさん」「冥界に蒼いローブが舞い踊る」の三本です。どうやら防衛側の話になるようですね」

つカンぺ

「え? これも読め? ええっと・・・「そろそろ例のBGMの準備を」・・・どういう意味だ?」
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