ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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クリスマス。誰もプレゼントくれないので自分で自分にiphone7とiPadを買ってあげる事にしました。これで大画面でfate/GOが出来るぞ! ……もうソロモンやっちまったけど……。魔神柱復活はよはよ!


第百六十九話 D×D

 グレモリー邸の一階フロア。避難所として解放されたこの場所には多くの一般悪魔達が避難して来ていた。不安や恐怖ですっかり憔悴しきっている彼等を、待機していたアーシアとレイヴェル。そしてグレモリー邸のメイドや執事達が介抱していた。

 

「怪我をされている方はこちらへ! 私が治します!」

 

「温かいスープもご用意しておりますわ。これを飲んで落ち着いてください」

 

絶える事の無い悪魔の行列にアーシアとレイヴェルは一息つく間も無い。それでも彼女達はこれが自分達に出来る事なのだと必死に働いた。こうしている今も、自分達の友人や兄が冥界を守る為に戦っている。これが自分達の戦いなのだと信じて。

 

 「あ、あの、聖女様……」

 

 一人の女性悪魔がアーシアへ話しかける。

 

 「どうかされましたか?」

 

 「本当に……本当にフューリー様も赤龍帝もいなくなってしまったんですか? 冥界は……私達はどうなってしまうのですか?」

 

 顔を青ざめさせ、縋る様な目をアーシアへ向ける女性。そんな彼女の手を優しく、ひたすら優しく包みながらアーシアは微笑んだ。

 

 「……大丈夫ですよ」

 

 「え……?」

 

 「不安ですよね。怖いですよね。だけど、諦める必要はありません。こうしている今も冥界を、みなさんを守る為に戦ってくれている人達がいます。……私にも戦う力があればお手伝い出来たのですが。無力な自分が嫌になります……」

 

「そんな! 聖女様はこうやって私達を助けてくれているじゃないですか! 決して無力なんかではありません!」

 

慌てて否定する女性悪魔に、周囲も首肯する。彼等は見ていた。この少女が額に汗を滲ませながら、一生懸命に自分達の怪我を治してくれている所を。そんな彼女を見て、誰が無力だと口に出来るものか。

 

 「ありがとうございます。……みなさん、どうか希望を失わないでください。そして信じてください。みなさんを守る為に戦っている人達を。そして……リョーマさんとイッセーさんが帰って来る事を。私は、お二人は絶対に帰って来ると信じていますから!」

 

 「聖女様……」

 

 根拠など無い。ただ信じていると言うアーシア。しかし、その言葉は女性悪魔の顔色を元に戻すには十分なものであった。

 

 「お見事ですわ、アーシアさん」

 

 「ふふ、部長さんが私達に言ってくれた事をそのままお伝えしただけなんですけどね」

 

 避難民達の顔に僅かに明るさが戻り始めたその時、誰かが叫んだ。

 

 「お、おい! みんなテレビを見ろ!」

 

 その声に誰もが一斉に備え付けのテレビの方へ目を向ける。アーシアとレイヴェルもまた、何事かとそちらを見る。

 

「どうした?」

 

「わかんねえ。いきなり中継が切り替わって……」

 

大画面の向こうでは、ヘリの内部でリポーターらしき悪魔が神妙な面持ちでマイクを持っていた。

 

『みなさん、私達はたった今、首都リリスへと侵攻している『超獣鬼』の傍へとやって来ました。現在、ルシファー眷属の方々が迎撃を行っておりますが、その歩みを止めるまでには至っておりません』

 

「そんな……ルシファー眷属の方々でも止められないなんて……」

 

「というか、なんでカメラ外に向けてねえんだよ。外の状況を見せろよ」

 

『これを御覧のみなさんは憶えておいででしょうか。魔獣侵攻が始まる直前、シャルバ・ベルゼブブと名乗る男はこう言いました。騎士は消え去り、赤龍帝は自らが始末したと。それを聞いた時の衝撃と絶望を私は忘れていません。それがデマであると信じたくとも、現に政府は正式にフューリーの消息不明を発表し、赤龍帝も姿を見せません。ならば、シャルバ・ベルゼブブの言った事は真実なのか? 私も()()()()()()()そう思っていました。……ですが! 今は違います! 今なら確信を持ってそれを否定出来ます! 何故なら、彼はここに健在なのですから!』

 

カメラが外の映像を映し出す。そこにはルシファー眷属と『超獣鬼』。そして……都市を背にして立つ真紅の巨人の姿があった。

 

「お、おいアレって……!」

 

「所々変わってる所があるが間違いない……アレは!」

 

巨人の姿を見た悪魔達が目を見開き声を振るわせる。

 

「「「「「せきりゅーてーだーーーー!」」」」」

 

テレビ前に座って映像を見ていた子ども達が瞳を輝かせ、声を揃えて叫んだ。

 

「赤龍帝?」

 

「赤龍帝だ……!」

 

「やっぱり死んだなんて嘘だったのね!」

 

歓喜の声が次々に伝染していき、やがて怒号の様にフロア内へ響き渡る。

 

赤龍帝は姿を見せただけだ。魔獣を止めるどころかまだ戦ってすらいない。それでも、その姿は見るだけで悪魔達の胸の中で希望を奮い立たせる起爆剤となったのだった。

 

「イッセーさん……!」

 

大切な友人の帰還に、アーシアもまた喜びの笑みを浮かべる。

 

(後はリョーマさんが帰って来てくれれば。大丈夫、きっとオ・クァーン様がお守りに……)

 

そう心の中で自分に言い聞かせようとしたアーシアだったが、次の瞬間ハッとなった。

 

(オ・クァーン様? ……ッ! そうだ! オ・クァーン様! どうしてこんな簡単な事に気付けなかったの!?)

 

自分の敬愛する女神。彼女に聞けば“彼”の居場所を知る事が出来るのではないか? 今の今までそれに気付けなかった自分をアーシアは恨んだ。……最も、先日まで精神的に追い詰められていたアーシアならば仕方無い部分もあったのは確かだが。

 

(オ・クァーン様! オ・クァーン様! どうか、どうか私の声をお聞きください!)

 

すぐさまアーシアは交信の為に祈りを捧げた。すると、少しして頭の中にこんな声が聞こえて来た。

 

『あばばばば! えらいこっちゃえらいこっちゃ!』

 

(・・・え?)

 

 

 

イッセーSIDE

 

 『真・覇龍』……これが俺とドライグ、そしてエルシャさん達歴代の先輩達の想いの全てを込めて発現した俺だけの本当の覇龍の力だ!

 

「グオォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」

 

『超獣鬼』が馬鹿でかい咆哮をあげながら一直線に俺に向かって突進して来た。

 

『どうやらあの魔獣、都市への侵攻よりもあなたの排除を優先したようね』

 

エルシャさんの言う通り、『超獣鬼』の殺気に満ちまくっている目は俺しか捉えていない。

 

『ふん、望む所じゃねえか! そうだろうイッセー!』

 

へっ、ったりめえだぜオッサン! こっちは端からアイツをぶちのめす気満々なんだからよぉ!

 

「おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

突っ込んで来る『超獣鬼』が振り下ろす右腕をかいくぐり、俺はお返しとばかりにヤツに向かって全力で拳を叩き込む! インパクトの瞬間、新たに装備された爪が伸び、『超獣鬼』の腹に深々と突き刺さった。

 

「ぬ、お、おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

そのまま持ちあげる様に一気に拳を振り上げる。『超獣鬼』の巨体がほんの僅か浮かびあがり、そのまま仰向けに倒れ込んだ。……手ごたえはある。いける。倒せない相手じゃないぞ!

 

『ヒュウッ! 一瞬とはいえあの巨獣を浮き上がらせるなんて! 相変わらずだねキミは!』

 

それって俺がパワー馬鹿って事っすか?

 

『超獣鬼』が起き上がる。腹部に開いた穴から赤黒い液体が流れヤツの足下を汚して行く。しかし、次の瞬間その穴は閉じてしまった。なるほど、自己再生ってわけか。めんどくせえヤツだな。

 

「ッ・・・!」

 

『イッセー!』

 

わかってますよエルシャさん!

 

俺は『超獣鬼』の口の中に炎の揺らめきを確認した。野郎、炎まで吐けるのかよ! 回避……は出来ねえ。俺の後ろには街があるんだ。何とかしねえと。

 

―――相棒! 俺にやらせろ!

 

ドライグ? やらせろって、何か方法があるのか?

 

―――説明しているヒマは無い。俺を信じろ。

 

信じろか。……へへ、お前にそう言われたらそうするしかねえよなぁ! いいぜドライグ! 思いっきりやってくれ!

 

―――任せろ! モードD×D発動!

 

「モード……D×D?」

 

え、ちょ、やっぱり説明して! 何を始める気ですかドライグさん!?

 

その意味を問おうとする前に、まず右肩のドラゴンヘッドが外れた。続いて両手足の爪、さらにはショルダーキャノンや機械翼。鎧を構成するパーツの悉くが俺から離れていき、最終的に俺の姿は『赤龍帝の鎧』の胸にDがついたそれになっていた。

 

空中に浮かぶパーツ群、それらが真紅の光に包まれた。そしてその光達は交じり合い、一つの巨大な真紅の光の塊へと姿を変える。俺にはそれが巨大な“卵”の様に見えた。まさか……あの光から何か()()()()のか……?

 

「ガァァァァァァァァァァァ!!!」

 

「ッ・・・!?」

 

『超獣鬼』の口から冗談とも思える質量の火炎が吐き出される。おいドライグ! お前間に合ってな……。

 

―――刹那、“卵”から放たれた紅い光線が火炎を飲み込み、その向こうに立っていた『超獣鬼』を焼いた。

 

「グギャァァァァァァァァァァ!?!?!?」

 

「―――どうだ『超獣鬼』よ。身を焼かれる苦しみ、少しは理解出来たか?」

 

全身を炎上させ、もがき苦しむ『超獣鬼』を見下ろす様にして地面へと降り立つ存在。……それは全身を赤き鋼鉄で包んだ巨大な龍だった。空気を揺るがす様な重々しい駆動音と共に、その瞳に紅い焔が灯る。

 

「ク、クク……ハハハハハハハハハ! この時を待っていたぞ。仮初とはいえ、こうして再び体を手に入れるこの瞬間をなぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

天に向かって猛々しく咆哮を上げる鋼の龍。セリフだけ聞くと、モロ悪者のそれだが、俺にはわかる。この龍は敵なんかじゃない。コイツは味方だ。それも、とびっきり頼りになる。そうだろ? なあ……!

 

「ドライグ!」

 

「応っ! 我が名は『赤龍帝』ドライグ! ……待たせたな相棒! ようやくお前と共に戦える!」

 

「戦う? じゃあ、ひょっとしてモードD×Dっていうのは……」

 

「モード(ディアボロス)×(ドラゴン)……『真・覇龍』の鎧を構成するパーツを分離、変形、合体させ、俺の体を作り上げ、お前と共に戦う為の機能だ。……最も、今の相棒の体は悪魔ではなくドラゴンだからディアボロスではなくドラゴンなのだが、なあに、どうせすぐ悪魔に戻るのだ。大した問題ではあるまい」

 

そうか……これが以前お前が言っていた真の覇龍でしか使えない機能なんだな! すげえ……俺、元祖『赤龍帝』と一緒に戦えるのか!

 

『ドライグだけずるいわ。ねえ、イッセー。私達の体も作ってくれないかしら?』

 

ええ!? ちょ、ちょっとそれは難しいかと……。

 

『ふふ、言ってみただけよ。紅と赤の共演……特等席で観戦させてもらうわ』

 

……ウッス! 頑張ります!

 

「グ……オォォォォォォォォォ……」

 

ようやく体から炎を消した『超獣鬼』がゆっくりと立ち上がる。炎に焼かれた体はボロボロになっていたが、それも瞬く間に再生していくのが確認出来た。

 

「ドライグ、アイツを倒すにはどうしたらいい?」

 

「生半可な攻撃を何度喰らわせても意味が無いだろう。ならば答えは一つ……再生が追いつかないほどの強力な攻撃で一気に消しさるしかない」

 

やっぱりそれしかねえか。それならいくつか方法はある。

 

「しかし、ヤツを消し去るほどの威力を出せば、ここら一帯の被害も甚大なものになるだろう。それはお前の望むどころでは無いのではないか相棒?」

 

もちろんだ。守るべきものを俺自身でぶっ壊しちまったら意味が無い。何とか被害が出ない場所を探さねえと。そうなると……上空しかなさそうだな。

 

「どうやら何か思いついた様だな」

 

「ああ。あの野郎を上空にぶっ飛ばして、そこを狙う! 問題はどうやってヤツを上に持って行くかだけど……」

 

「―――それは私に任せてもらいましょうか」

 

背筋が凍りつきそうな声が俺の耳の傍から聞こえて来た。恐る恐るそちらへ顔を向けると、そこにはやっぱり予想通りの人物の姿があった。

 

「神崎先輩……」

 

「あの巨獣を空へ追いやる。……そうすれば後はあなたが決めてくれるのですね兵藤君?」

 

「本当にあなたにアレが倒せますか?」……そんな確認の意味も込められた言葉なのだろう。俺の意思、覚悟を試しているのだろう。なら、俺も覚悟を以って答えよう!

 

「はい! 『超獣鬼』は俺が……俺達が絶対倒します!」

 

「ククク……わかりました。あなたの“絶対”ほど頼りになる言葉はありません。では、あの巨獣は私が責任を持って()()()()()()()()()

 

空へ落とす? その難解な言葉の意味を、俺は次の瞬間思い知る事となる。

 

「……座標固定……重力変換の後、ワームホールを展開……」

 

「ッ!?」

 

突然、『超獣鬼』の足下にどこまでも冥く巨大な穴が出現した。ゆっくりと『超獣鬼』の体がその穴に沈み始める。しかし、驚くのはそれだけではなかった。

 

「え……?」

 

はるか上空に広がる真っ黒い穴。『超獣鬼』の足下に広っているヤツと同じ物がそこに存在していた。そして、その穴の中から現れたのは『超獣鬼』の足だった。

 

「空に落とすって……そういう事か!」

 

詳しい原理はさっぱりだが、要はサイラオーグさんの『女王』さんの力と似た様なもんか!

 

「よし! 俺達も準備を始めるぞドライグ!」

 

「ああ! 全くどこの誰がやってくれたのかさっぱりだが、この好機を無駄にはせんぞ!」

 

お前……そこまで徹底出来てたら逆に大したもんだわ。

 

並び立つ俺とドライグ。お互いに一撃必殺の攻撃を放つ為の準備に入る。俺の胸の“D”に収束する紅い光と、ドライグの口内に灯る赤い光。さらに、機械翼の間から伸びるキャノン砲にも同じ光がチャージされていく。

 

「ドライグ!」

 

「こっちはいつでも行けるぞ相棒!」

 

「先輩! お願いします!」

 

「ええ。では、一気に落とします」

 

ヒュンッ! と『超獣鬼』の体が地上から消え去り、はるか上空に放り出される。……照準セット完了! 思いっきりぶっ放してやらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 

「「ツイン・Dブラスタァァァァァァァァァ!!!!!!」」

 

同時に発射される紅と赤の光。それらは空中でなんども交差し、ついには交じり合い一つの極光となり『超獣鬼』という存在を飲み込む。それだけには収まらず、光は空そのものを紅く染め上げた。まるで、人間界の黄昏の時の様に……。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

『超獣鬼』撃破後、俺は人間サイズに戻っていた。力を貸してくれたグレートレッドは俺、そして先輩を一瞥した後、次元の狭間へ帰って行った。

 

―――二度と来ないでくれ……だそうだ。

 

それって俺にじゃなくて絶対先輩に言ってるよな。いや、まあ、気持ちはわかるけど……。

 

グレートレッドと別れ、次に俺が目指したのは都市部の方だった。先輩曰く、部長達が向こうの方にいるらしい。なので合流して俺の無事を伝えてあげなさいとのお言葉だ。

 

それなら先輩もですよ、と誘ったのだが、先輩はそれを断った。その理由はこうだ。

 

「まだ私にはやるべき事が残っていますからね。それを終えた後に、改めて彼女達に会いに行きますよ」

 

「アッハイ」としか答えられなかった俺は決して悪くない。うん、きっと。

 

そういうわけで、俺はオーフィスと共に部長達の元へ向かう事になった。え? なんでオーフィスを連れてるって? だって先輩が「キミの様な子に見せるべきでは無い光景になるかもしれないので兵藤君について行ってください」って言うんだもん。未だにオーフィス=幼女としか見ていない先輩はある意味すげえと思う。

 

最後に俺が見たのは、穴の中に沈んで行く先輩とその眷属のみなさん。そして、それを引き攣った表情で見送るグレイフィア様達の姿だった。

 

「ドライグ、何してる?」

 

「ん? ああ、これは合掌だよ」

 

「合掌?」

 

サマエルへの……な。

 

イッセーSIDE OUT

 

 

 

サーゼクスSIDE

 

ハーデス神とのにらみ合いを始めて数時間が経過した。たまに軽口を交わし合いながらひたすら時間が過ぎるのを待つ。すでに『豪獣鬼』は殲滅したとの報告は受けている。後は都市を目指しているという『超獣鬼』だけだ。

 

まだしばらくこの状況が続くと思ったその時だった。一人の男の悲鳴が場の空気を一変させた。

 

「ホデュアァァァァァァァァァァ!?!?!?」

 

「アザゼル!?」

 

突如、アザゼルが奇声をあげながらその場に倒れ伏せた。苦悶の表情を浮かべながら、神殿の床を転げ回るその姿に僕は目を見開き、次いでハーデス神を睨みつけた。

 

「ハーデス殿……どうやらこれがあなたの答えの様ですね」

 

迂闊だった。まさか時間差で効果を発揮する呪いか何かか?

 

≪? 何を言っている? 私はそこのカラスに何もしておらぬぞ≫

 

「何……?」

 

では、アザゼルの身に一体何が……?

 

「コヒュー……コヒュー……」

 

「ちょっとアザゼル総督! どうしたんですか!? 陸に揚げられた魚みたいな事になってますよ!」

 

デュリオに抱き起こされたアザゼルが青ざめた表情で口を開く。

 

「ヤ……ヤツが……ヤツが……来る……!」

 

「ヤツ? 一体誰の事を……」

 

―――刹那、僕の本能が警鐘を鳴らした。逃げろ! ここにいてはいけない! 今すぐこの場から姿を消せ! それに従わなかったのは正解であり……また不正解でもあった。

 

「ッ……!?」

 

僕達とハーデス神。その間を割る様に床に突如として現れた“闇”。それは円状に形を変え、周囲を浸食していく。誰に言われずとも理解出来た。あれはゲートだ。そして、ゲートが開くという事は、それを通ってこちらへ“何か”が現れると言う事だ。

 

「おい……おいおいおいおい! このイッちまいそうなプレッシャーは……!」

 

「……照合完了。98.65パーセントの確率でマスターと判断」

 

聞き慣れない声に振り向けば、そこには見た事の無い二人の女性の姿があった。代わりにスコルとハティの姿が消えていた。まさか……あの姿がそうなのか?

 

≪ハ、ハーデス様……!≫

 

≪うろたえるな≫

 

目に見えてうろたえる死神達を黙らせるハーデス神。しかし、彼自身の声にも隠しきれない警戒と戸惑いがあった。

 

そして、僕達の見守るその中で、それは静かに姿を現した。

 

「ククク……どうやらみなさんお揃いの様ですね」

 

冥蒼とでも呼ぶべき全身。不気味に光る血の様に赤き瞳。そして、警戒心を抱かずにはいられないその声。それら全てを認めた瞬間、僕はこう呼ばずにはいられなかった。

 

「重力の……魔神……」

 

かつて、鋼の救世主達がその総力で以って打ち倒した最凶最悪の魔神……それが今、僕の眼前に存在していた。

 

「俺……この仕事が終わったら浴びるくらい酒を飲むんだ……」

 

「それ死亡フラグですから総督! ちょっと! 目を開けてください! 魔王様ぁ! 割とマジで総督がヤバいです!」




アザゼル……良いヤツだったよアイツは……。

モードD×D。わかりにくいと思った方はG・ドラコデウスのインフィニティ・キャリバー(メルアバージョン)をイメージしてみてください。……え? もっとわかりにくい?

次回はイッセーSIDEか、ちょっと時間を遡ってオリ主SIDEを書こうと思います。アザゼル先生の運命は少し先延ばしです。

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