ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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スパロボVクリアしました。敵が色々漂白されてて面白かったです。あとラスボスが滅茶苦茶可愛かったです。ナインがもう少し早くぶっちゃけてれば絶対仲間になっただろアレ。

二週目を胸の大きな如月さんで進めながら、戦闘力チートのオリ主と頭脳チート? のアザゼル先生を揃ってブッ込んでみたら……なんて妄想をしたりしてます。なお、先生では無くアーシアだった場合、鰤のフルボッコフラグが立ちます。


第百七十ニ話 いともたやすく行われるえげつない行為

アザゼルSIDE

 

「……ここは」

 

 オカルト部の部室前。気付けば俺は扉の前に立っていた。

 

「どういう事だ? 俺は確かサーゼクス達と一緒にハーデスの野郎の所に……」

 

 それから……どうしたんだったか? そこから先が靄がかかっている様に思いだせない。

 

「―――思いだせないんじゃない。思いだしたくないんだよキミは」

 

 部室内から聞こえる声。間違い無く俺に向けてのものだ。この中に俺がこの場所にいる理由を知っているヤツがいると見て間違いないだろう。

 

 ならば迷う必要は無い。俺は扉を開けて中に入った。……特に変わった所は無い。俺の知る部室そのものだった。

 

「やあ……待ってたよ」

 

「ソイツは済まなかったな。……それで、お前は何者だ? 何故()()()()姿()()()()()()?」

 

 そう投げかけると、ソファに座っていた(アザゼル)が立ち上がり俺の元へ近づいて来た

 

「僕はキミさ。いや、正確にはキミの一部と言った方がいいかな。急に呼び出してゴメンね。最期にキミと話がしたかったんだ」

 

「最期?」

 

 穏やかではないその単語に俺は眉を顰める。

 

「キミは何度も僕を守ろうとしてくれた。おかげで何とか今まで耐えられる事が出来た。そこは本当に感謝しているんだ。出来れば、これからもキミと一緒にいたかったんだけど、アレは……魔神は流石に無理だ。うん、耐えられるはずが無い」

 

「魔……神……」

 

 その瞬間、頭の中の靄が消えた。そうだ、アイツが帰って来たんだ。そして俺は……。

 

「待てよ。じゃあ、まさかお前は……」

 

 全てが繋がった。俺の一部で、俺がアイツから守ろうとしたもの。その答えは一つしかねえ!

 

「ただ受け入れる事が出来ればもしかしたら違った未来が待っていたかもしれない。現に、一時期はキミも受け入れようとした。けれど、結局立場のあるキミにそれは許されなかった。ふふ、口では文句を言いつつもちゃんと責任を果たそうとする所はキミらしいといえばらしいんだけどね」

 

 (アザゼル)の体が徐々に薄くなりはじめ、同時にその形が人の姿から、人の体を形作る器官の一つへと変わっていく。ヒトが食べた物を蓄え、じっくりと消化し腸へと送る重要な場所。その名は……。

 

「さようなら(アザゼル)。僕はそろそろ眠る事にするよ。そうすればキミも苦しみから解放されるはずだから」

 

「―――!」

 

 部室内を覆い尽くす眩い光の中で、俺はソイツの名を叫んだ。

 

アザゼルSIDE OUT

 

 

 

IN SIDE

 

 このドシリアスな空気を壊すつもりはなかった。だが、だがしかし、このシチュエーションで某副将軍に肖ってしまうのは仕方ないじゃないですか!

 

≪ヤツ等をサマエルの元へ行かせるな!≫

 

 先に動いたのは向こうだった。三百六十度、見渡す限りに鎌を持った死神達の姿が確認出来る。……なんかコイツ等さっきより増えてないか? 

 

≪ハーデス様直々の御命令である。貴様等全員、この神殿から生きて出られると思わない事だ≫

 

≪伝説の騎士等と持て囃されていようが所詮は人間に過ぎぬ事を思い知るがいい≫

 

≪ハーデス様の御加護を受けたこの神殿内において、我等死神は不死! 貴様等は自ら死地へと飛び込んで来たのだと知れ!≫

 

 口々にこっちを侮りや嘲りの言葉をこれでもかとぶつけて来る死神達。こっちはとっくにブチ切れているので今さらこの程度の煽りでどうこうなるつもりはないが、その中の一人が口走った言葉だけは無視出来なかった。

 

「……ほう」

 

 そちらへ視線を向けると、発言したであろうひょろ長の死神がたじろいだ。

 

≪な、何だ?≫

 

「確認します。この神殿内ではあなた達は不死なのですか? こちらがいくら攻撃しても死なないのですか?」

 

≪ふ、ふははは! その通りだ。それこそ我らが王、ハーデス様のお力である。今さら命乞い等しても無駄だぞ≫

 

 そうかそうか……。つまり、フェニックスさんの時と同じく……何をしてもいいわけだな。

 

「……いえ、むしろ好都合ですよ」

 

 俺はあえて鎧を解除し、思いっきり笑顔を向けてやった。それだけで死神達が二、三歩後退する。

 

「なあボス。こらしめてやれって事はつまり……コイツ等全部燃やしちまっていいんだろ?」

 

 じれったい様子でスコルがそう聞いて来た。

 

「ええ。たった今、()()()()()()()()()()()()()()()()。遠慮は無用です」

 

 迷い無く答えると、スコルは一瞬目を丸くしたが、すぐさま凶悪な笑顔を浮かべた。

 

「……いいの、ご主人様? あんな事言ったら、スコル達自重しないわよ?」

 

 顔に戸惑いの色をにじませる黒歌。確かに、平素の俺ならばこんな物騒な事は言わない。だけど、今回の件は俺の警戒心の無さ、認識の甘さが招いた出来事でもある。俺がいれば大丈夫……なんて自惚れは口が裂けても言うつもりはないが、それでも、もしその場にいたら兵藤君の盾になれたかもしれない。それが出来なかったのは、間抜けにもau派の罠に嵌められた俺の迂闊さの所為だ。

 

 だからこそ決めたのだ。俺の大切な……かけがえの無い人達に、悪意を以って手を出そうとする者達が現れたら……二度とその様な考えを持たない様、徹底的に、一切の容赦無く、()()()()()()()()()()()()と。

 

「黒歌、私はこの報復が終わるまで一切の甘さを捨てると決めたのですよ。理不尽に奪われる“痛み”を彼等が理解するまでね」

 

(……ヤバ。優しいご主人様が一番だけど、こっちの真っ黒ご主人様もいいかも……!)

 

「黒歌?」

 

「はっ……! な、何でもないにゃ。うん、ご主人様がそれを望むのなら、私達はただそれに従うだけだから」

 

 そう言って黒歌と、周りで会話を聞いていたレイナーレさん達が頷く。……本当に、こんな迷惑かけてばかりの“王”には勿体無い眷属達だ。

 

「神崎様、どうぞ指示をお願い致します。いかなる御命令であろうとも私達はただ従います」

 

 ああ、やっぱりこらしめてやりなさいだけじゃわからないですよね。一応、俺の中では既に作戦は練ってあるのだが……。

 

「その前に少しだけ時間を頂けますか」

 

「え?」

 

「私はね、レイナーレさん。もう私の目の届く範囲で大切な人達を傷付かせはしないと決めたんですよ。その為なら、たとえ卑怯だの反則だの言われようとも使える物は全て使わせて頂きます」

 

 丸腰となった俺は目を瞑る。そして、胸に手を当てながらかつての記憶を呼び起こした。

 

―――I am the bone of my sword(体は剣で出来ている).

 

SIDE OUT

 

 

 

サーゼクスSIDE

 

 百を越えるであろう死神達が殺意を持って神崎君達を取り囲む。しかし、彼等の表情に焦りや恐れは無い。

 

「いやー、こっちはもう見向きもされなくなっちゃいましたね。ま、アザゼル総督がこんな事になっちゃいましたし、ありがたいっちゃありがたいですけどねぇ」

 

 デュリオの言う通り、ハーデス殿はどうやら神崎君達の排除を優先する様だ。

 

 ついでにアザゼルの様子も見てみる。……うん、意識は戻っていないが、先程よりも少し落ち着いた様だ。

 

「私はね、レイナーレさん。もう私の目の届く範囲で大切な人達を傷付かせはしないと決めたんですよ。その為なら、たとえ卑怯だの反則だの言われようとも使える物は全て使わせて頂きます」

 

 鎧を脱いだ神崎君が瞑目する。……彼の纏う空気が変わったのを感じた。これは……久々に()()()()()()()()()()()かもしれない。

 

 そして次の瞬間、その予感は現実のものとなった。

 

 ―――I am the bone of my sword(体は剣で出来ている).

 

 粛々と、しかしその中に力強い意志が込められた詠唱が始まる。同時に、神崎君の体から僕達が扱う魔力とは全く異なる力が奔流となって溢れ出す。

 

 ―――Steel is my body, and fire is my blood(血潮は鉄で、心は硝子).

 

「ッ!? な、何、コレ……!?」

 

「力が……溢れて来る……!」

 

 神崎君の眷属達、そして彼の味方をする者達の体が光に包まれ、彼女達から感じる力が爆発的に増幅して行くのがわかる。

 

 ―――I have created over a thousand blades(幾たびの戦場を越えて不敗).

 

≪な、何が……何が起こっているのだ……!?≫

 

≪体が……重い……!?≫

 

 その一方で、その力の余波を受けた死神達はローブを激しくはためかせながら目の前で繰り広げられる光景を愕然とした表情で見ていた。さらに、黒い靄の様なものが彼等の腕や足に纏わりつく様に覆うのが確認出来る。本人達は気付いていないようだが、もしや僕にしか見えていないのか?

 

 ―――Unknown to Death(ただの一度も敗走はなく).

 

 ―――Nor known to Life(ただの一度も理解されない).

 

 ―――Have withstood pain to create many weapons(彼の者は常に独り剣の丘で勝利に酔う).

 

 ―――Yet, those hands will never hold anything(故に、その生涯に意味はなく).

 

 ―――So as I pray, UNLIMITED BLADE WORKS(その体は、きっと剣で出来ていた).

 

 神崎君達を包む光が一段と強くなる。彼等の纏う規格外のオーラが弾ける様な音を発しながら上に立ち昇って行く。

 

≪あ……ああ……≫

 

 死神達は最早身動ぎどころか呼吸する事すらままならないといった様子だった。

 

(……ああ、そういう事なのか)

 

 唐突に、僕はあの詠唱が示唆しているものが何なのかわかった気がした。

 

 ―――侵略者から人々を守る為、歳端のいかない己が身を彼等の為の剣とした。

 

 ―――鉄血の意志で部下達を死地へ向かわせながらも、子どもだった彼の心は本当は硝子の様に脆かった。

 

 ―――敗北が許されない戦いの日々を、それでも彼は乗り越えて来た。

 

 ―――敵を前に決して背を向けず、平和の為と命をかけ続けた。

 

 ―――しかし、そんな侵略者の脅威から一刻も早く解放されたい人々の中には、総司令官である彼の采配に不満を持つ者達がいたのかもしれない。

 

 ―――けれど、平和に身を捧げた彼は、勝利の度に人々を守れた自分を誇りに思い続けた。

 

 ―――その誇りがあったからこそ、自らの人生に戦い以外の意味を求める事は無かった。

 

―――そして、彼はこれからも剣で在り続ける。その意志で、その力で、自分の大切なものを守り続ける為に。

 

(これは彼の……神崎君が歩んで来た道そのものじゃないか)

 

鋼の救世主を率いた総司令官にして、自らも仲間達と共に戦場を駆けた騎士。神崎亮真という人間にしか紡げない誇り高き物語。それが、あの詠唱に全て込められていたのだ。

 

「あれが……神の騎士殿……」

 

震える声でデュリオが呟く。彼は敏い。きっと僕と同じ結論に達しているのだろう。そして、もう一人……。

 

「―――アホみたいに強化されてやがる。あの野郎、冥府を更地にするつもりか」

 

この声はアザゼル? よかった、目が覚めたのか。

 

僕は振り返り……そして固まった。そこに立っていたのは、口の端から血を垂らしながらも、これまで見せた事の無いほどの柔和な笑みを浮かべたアザゼルだった。

 

「ど、どうしたんですか総督? まるでこの世の無常を知りつつ、それでも前に進もうという気持ちが込められたかの様な笑顔なんか浮かべて……」

 

「……アイツが胃(誤字にあらず)っちまったよ。俺の苦しみを全部背負い込んでな。おかげで生まれ変わった気分だぜ」

 

「アイツとは誰の事だい?」

 

僕の問いに、アザゼルは寂しそうに微笑みながらも、具体的な答えは口にせず神崎君達の方へ視線を向ける。

 

「ただ目の前にあるものを受け入れる。そんな簡単な事が出来なかった。……だが、これからは違う。俺はただ認めて受け入れる。そうアイツと約束したからな。お前等も難しく考えず、この特等席で見物しようぜ。フューリー……いや、魔神の戦いってヤツをよ」

 

 何だろう。今の彼はどことなく神崎君のレーティングゲーム後の彼と同じ感じがする。

 

「……んあ? あの女もついて来……何やってんだアイツ」

 

 眉をひそめるアザゼル。

 

「あ……へ……ぇ……」

 

「カ、カテレア……?」

 

 神崎君の背後に、女性として完全にOUTな表情を浮かべたカテレアがいた。黒歌達がゴミを見る様な目で彼女を見ている。……気のせいかな、フェンリルが彼女から少し距離を取っているに見えるぞ。

 

「この状況でア○顔晒す理由がどこに……ああ、アイツからしたら、さっきの詠唱なんざたまらんもんだったろうな」

 

「だからといって、淑女としてあの顔はまずいのでは……」

 

「お前、アレが淑女だと思ってんのか?」

 

「……」

 

「……」

 

「……すまない。私が間違っていた」

 

「……わかりゃいいんだよ」

 

サーゼクスSIDE OUT

 

 

 

IN SIDE

 

(こんなもんか)

 

 どこぞの戦闘民族ばりのオーラを放出する黒歌達を見ながら、俺は心の中でそう漏らした。

 

『ほう、中々面白い事をするじゃないですか。()()()には私も手間取ったものです』

 

 そりゃまあ、コレ(精神コマンド)が無いと博士とまともな戦いなんて出来ませんでしたから。

 

 ちなみに、詠唱中に発動させた精神コマンドはこんな感じである。

 

 ―――I am the bone of my sword(体は剣で出来ている).(再生・指揮・感応)

 

 ―――Steel is my body, and fire is my blood(血潮は鉄で、心は硝子).(特訓・理想・熱血・魂)

 

 ―――I have created over a thousand blades(幾たびの戦場を越えて不敗).(脱力・戦慄・かく乱・足かせ・威圧)

 

 ―――Unknown to Death(ただの一度も敗走はなく).(挑発・みがわり・見極め)

 

 ―――Nor known to Life(ただの一度も理解されない).(鉄壁・不屈・予測)

 

 ―――Have withstood pain to create many weapons(彼の者は常に独り剣の丘で勝利に酔う).(ひらめき・迅速・覚醒)

 

 ―――Yet, those hands will never hold anything(故に、その生涯に意味はなく).(直撃・両断・狙撃)

 

 ―――So as I pray, UNLIMITED BLADE WORKS(その体は、きっと剣で出来ていた).(奇跡・愛・奇襲・勇気・希望)

 

 ドマイナーなヤツから、派生作品、効果が被っていようが思いつく限りに役立ちそうな精神コマンドを発動させた。自分にしかかけられないものが混じっているが、俺ならば他人にもかけられるのは以前、祭りの時にオーフィスちゃんと一緒にやった金魚掬いで確認済みだ。

 

『ですが、わざわざあの様な詠唱をせずとも強化出来たのでは?』

 

 確かにこれまで通り精神コマンドだけならばただコマンド名を口にしたりするだけで発動出来ましたよ。それを、あえてあの有名な厨二詠唱に合わせて行ったのは、少しでも相手の目を俺に向けさせるためです。

 

『……続けてください』

 

 いきなりあんな詠唱を始めたら、当然相手は警戒します。そして、実際にパワーアップした黒歌達を見てこうも思ったはずです。あの効果を止めるには俺を何とかするしかないと。必然的に俺に向かって来るヤツ等の数が増えて、黒歌達が相手をする数が少なくなります。そうすれば、彼女達が傷付く確率も少しは低くなるかなと。正直、警戒させる為だけが目的なので、詠唱は何でもよかったんですけどね。

 

『そうなのですか? 私はてっきり、またあなたの例の癖が始まったのかと……』

 

 例の癖?

 

『ククク、いえ、お気になさらず。……さあ、お膳立ては整いました。報復も大詰めと参りましょう。……あなたの決意が口だけのものにならないよう、願います』

 

博士の言う通りだ。俺の決意は俺が証明しないといけない。さあ、行くぞ死神達。この戦いを以って、俺は“自重”と決別する!




オリ主「ボスの前に精神コマンドの重ねがけはお約束だと思った」(小並感)

途中にあった詠唱の解説は完全にねつ造ですので、Fateファンの方々に怒られないかビクビクしてます。

ちなみに、がっちり撮影されているので、イッセー達も見てます。

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