ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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第二話 目覚めたら騎士になってました

 さて、自称神様のオカンに転生させてやると言われ、再び目覚めた俺は、たくさんの木々に囲まれた場所にいた。見渡す限り、本当に木しかない。そして空を見上げると、そこは紫一色だった。

 

「…紫?」

 

 んー、おかしいな。俺の知る空ってこんな色じゃ無かったはずだけど。これじゃまるで、別世界みたいじゃないか。…って、その別世界とやらに転生したんだっけ。

 

『おーい、聞こえるかー?』

 

 オカンの声だった。だが、声はすれども姿は見えず。まさか、幻聴?

 

『幻聴ちゃうよ。こっちからアンタに声を届けとるだけや』

 

「電話みたいなものですか?」

 

『そういうことや』

 

「さすが神様。で、俺は一体どんな世界に転生したんですか?」

 

『ええっと、ハイスクールD×Dとかいう世界や』

 

 ん? なんか聞き覚えがあるような。…ああそうそう、ラノベだラノベ。友達の一人が愛読してたから名前だけ知ってる。ええと、確かそいつ曰く、「おっぱい」「パワーインフレ」「オーフィスたんprpr」な小説だとか。うん、さっぱりわからん。

 

「俺、平和に暮らせる世界に行きたいってお願いしたんですが。というか、何故にラノベの世界?」

 

 パワーインフレなんて単語が出る時点で、普通の世界じゃないはずだ。

 

『うん、せやからその世界にしたんよ。ハイスクールなんてタイトルやから、きっと楽しい青春が送れると思ってな』

 

 ううむ、彼女なりにちゃんと考えて俺をこの世界に送ったみたいだ。だがしかし、一言言わせてもらおう。

 

「あの、どういう内容の世界か確認とかしました?」

 

『ん? してへんよ?』

 

「ああ、やっぱり…」

 

 項垂れた俺に何か感じたのか、オカンの声にちょっとした焦りが混ざった。

 

『あ、あの、ウチ、なんか勘違いしとった?』

 

「今からでも確認してみてもらえますか?」

 

『わ、わかった! ちょっとまっとき』

 

 そして数分後、オカンの口から発せられたのは…。

 

『勘忍や! ホンマに堪忍やぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 心からの謝罪であった。にしても、この短い時間でどうやって確認したんだろうか。もし小説を全巻読んだとしたらもの凄い早さだな。神様なら本の内容くらい読まなくても理解できそうだけど。

 

「まあ、来てしまったものは仕方ないですよ。それに、勘違いしてたとはいえ、真剣に俺の事を考えてくれた上でなんですから」

 

『うう、アンタの優しさが今は辛い。…いや、泣いとる場合やない! こうなったら、アンタがその世界で平和に暮らせるよう、おばちゃんがアンタを強くしたる!』

 

 涙声かとおもったら、いきなり気合いの入った声を出すオカン。しかし、具体的にはどうしてくれるんだろう。

 

『まずはアンタの体や。アンタが望んだ「丈夫な体」。本当は病気や毒にかからない体にしようと思ったけど、さらにその世界で最強の存在に最強の一撃を受けても皮がささくれる程度にしかならないようにしたる。本当ならおばちゃんと同じ神の体をあげたかったんやけど、流石にそれは認められへんから堪忍や』

 

 申し訳なさそうに説明するオカン。いやいやいやいや! それだけで十分というか、やり過ぎだし! それってつまり、この世界で俺を傷付ける事の出来る存在は皆無と言っても過言じゃないって事だろ! それとも、それくらいしないとすぐさま死んでしまうくらい物騒な世界なのか!? ええい、こうなるならアイツに小説貸してもらっておけばよかった!

 

『次もアンタが言った、イケメンに生まれ変わりたいって願いやけど、これは口で説明するより、実際見てもらった方がええな。今から手鏡送るから自分の顔確かめてみ』

 

 目の前がぐにゃりと歪んだと思ったら、そこから小さな手鏡が出て来た。言われた通りそれを覗く。その瞬間、俺は驚きのあまり目を見開いた。

 

「…ファッ!?」

 

 そこには、明らかに自分とは違う青い髪のイケメンの顔が写っていた。そして、俺はその顔に見覚えがあった。本来あるはずの(刺青? 痣? 化粧? 何でもいいか)部分が無く、顔だちも少しだけ若い感じがするが、この顔は間違い無く…。

 

「アル=ヴァンじゃん!」

 

 俺の顔は、スパロボのオリキャラ、アル=ヴァンになっていた。

 

 アル=ヴァン。フルネームはアル=ヴァン・ランクス。スーパーロボット大戦Jに登場する、オリジナル敵組織『フューリア騎士団』の騎士で、所謂主人公のライバルポジションのキャラだ。ライバルというには、中盤から終盤まで登場しなかったりして、影が薄い気がするが、正直、男主人公の統夜よりも好きだった。

 

 まあ、理由としては、一緒に乗るパートナーの三人娘とハーレムする統夜がムカついたから。このJという作品、恋愛要素が他の作品より強い。統夜を主人公にした場合、好感度が一定値を超え、なおかつ一番高い一人と最終的に恋人関係になる。え? なら好感度が低かったら誰ともくっつかないんじゃないのかって? 甘い、甘すぎる。個別エンド条件を満たさなかった場合、ノーマルエンドという名のハーレムエンドを迎える事になるのだ。恋人にこそなってないが、明らかに三人とも統夜に好意を抱いている様子だった。

 

 その点、アル=ヴァンは容姿もカッコいいし、同胞達の為に戦う姿はいかにも“騎士”で好きだった。それに俺と同じで彼女もいない…いや、女主人公のカルヴィナと恋仲だったっけ。ええい、こいつもリア充だったか!

 

 …はっ! つい話が脱線してしまった。それで、どうしてこんな事になってしまったのか、オカンに聞かなければ。

 

『一言でイケメンっていっても色々あるやろ? こっちで考えたイケメンがアンタにとってもイケメン…ってわけにならんかもしれんし。ならいっそ、アンタのイメージするイケメンにしてしまおう思うてな。アンタが死ぬ直前に抱いていたイケメンを参考にさせてもらったんや』

 

 なるほど、そういう経緯があったのか。言われてみれば、あのコンビニに向かう道で、Jのキャラクター達について考えてた覚えがあるような。その中からアル=ヴァンを選んだって事か。…よかった。これでグ=ランドンとかになってたらそれこそ俺自身が「絶望せよぉおおぉおをを!」な事になってたに違いない。

 

「そういえば、なんか目線も少し高いな。もしかして、顔だけじゃなく、体も?」

 

『元の方がよかったか?』

 

「いや、こっちでいいです」

 

『どうやら気に入ってもらったようで何よりや。なら三つ目は戦う力やな。何が欲しい? おばちゃん、何でも用意したるで』

 

 力か…。うーん、やっぱり、アル=ヴァンといったら、彼の乗るラフトクランズだよな。あの強さは今思い出しても凄まじいの一言だ。剣、盾、銃全てを装備しているので、切り払い、シールド防御、そして今は亡き撃ち落としが可能。何よりも、バリア、分身、地形に影響されず常に最大の移動力が得られ、さらにエネルギー回復の効果まで持つ「オルゴン・クラウド」は最早チートである。条件を満たせば主人公も乗れるが、そうなるとラスボスは主人公一人で倒せてしまう。それくらい強かった。

 

 それと、時を止める時間兵器ラースエイレムと、それを無効化するラースエイレムキャンセラーという物も装備されているが、これはストーリー専用装備なのでそこまで印象に残るようなものではない。まあ、実際はトンデモ兵器なのだが。

 

 見た目もカッコいいし、武器もバランスが取れている。その中でも特に印象深いのは、二つある携行武器の一つであるソードライフルから放つオルゴンライフルだ。

 

 このラフトクランズという機体は全部で四機存在し、それぞれの機体で特定の武器が専用アニメーションとなっている。その中で、主人公機と、アル=ヴァンと同じ『フューリア騎士団』の女性騎士フー=ルーのラフトクランズの専用アニメーションの武器がオルゴンライフルになっている。流れとしては、明らかに銃口とは不釣り合いな極太のエネルギー波を発射。直後オルゴンクラウドを発動させ一瞬で敵機の背後に移動し、再度発射。前後からの極太エネルギー波が敵機を押し潰す様に飲み込む様は、初めて見た時思わず噴き出した。

 

―――これ、HPとか関係無く即死だろ!

 

 そういうわけで、ラフトクランズに乗れたら最高なのだが、アル=ヴァンで無い俺に操縦できるはず無いし、そもそも操縦出来たとしてもあんな巨大なロボットを置く場所など無い。そうなると諦めるしか…。

 

『ああ、そんなら、アンタ自身がそのロボットになればええやん』

 

 どういう意味だと聞き返そうとしたその時、突然俺の体が光ったかと思えば、次の瞬間、俺の腕は深蒼色の装甲に包まれていた。腕だけじゃない。足も体も、そして顔も、全てが同じ物に覆われていた。

 

「こ、これは!?」

 

『アンタが言ったロボットをアンタにも使えるように小型化したモンや。ま、鎧みたいなモンだと思ってくれたらええ』

 

 地面に置いてあった手鏡をまた覗くと、そこにはアル=ヴァンの顔では無く、ロボット…ラフトクランズの顔が写っていた。

 

「マジで…マジで俺、ラフトクランズになっちまったのか!?」

 

『んー、ちょっと違うな。それは限りなく本物に近い贋作って言った方がええかもな。やろうと思えば本物にする事も不可能やないんやけど』

 

 テンションの上がっていた俺は、オカンの言葉に首を傾げる。出来るのならなんでわざわざ贋作にする必要があるんだ?

 

『ええか。本物…すなわち完成品はそれ以上変化する事は無い。当然や、完成しとるんやから。せやけど、贋作…どれほどやっても本物として完成する事の無い物は、どこまでも変化していく事が出来る』

 

「えーっと…どういう事ですか?」

 

『完成してしまった本物には出来ない事でも、贋作には出来るって事や。そうやな・・・例えばアンタのその鎧、元になったロボットは一本しか剣を持ってなかったみたいやけど、アンタの場合、それを二本持てたりとか』

 

「・・・つまり、永遠に完成する事の無いって事は、永遠に変化・・・言い換えれば強化していく事が出来るって事ですか?」

 

『そう言う事や』

 

 しれっと言うけど、それって滅茶苦茶凄い事なんじゃないのか? つまり、俺の考え次第で、ゲーム以上のチート機体に強化されていくって事だよな。おいおい、これ以上チート化したらそれはもうチートじゃなくてバグじゃないのか?

 

『満足してもらえたか?』

 

「え、ええ。むしろやり過ぎだと思うくらいに」

 

『それはよかった。もう一つ、その世界に送ってしまったお詫びに願いを一つ叶えたるけど…なんかある?』

 

「うーん…正直、すぐには思いつかないんで、保留にさせてもらっていいですか?」

 

『ええよ。いつでも言ってくれてかまへんからね。・・・それで、実はもう一つ謝らなあかん事があるんやけど』

 

 え、このタイミングで?

 

『実は、アンタを送る座標を少し間違えてしもうたんよ。今再転移の準備をしとるんやけど、少し時間がかかりそうなんや。すまんけど、少し待っとってもらえるか』

 

「あ、はいわかりました」

 

『ほな、準備出来たらまた連絡するな』

 

 それを最後にオカンの声は聞こえなくなった。さて、連絡が来るまで何してようか。

 

「そういえば、この鎧がラフトクランズなら、空も飛べるのかな?」

 

 ゲームのラフトクランズは飛行可能だったから出来るはずだけど。どうやればいいんだろう。

 

「スイッチとか無いし…念じてみるとか?」

 

 飛べ! と念じてみる。すると、背中のブースターから何かが噴き出すような音が聞こえた。その音は次第に大きさを増し、ある一定の大きさに達した瞬間、俺の足がゆっくりと地面を離れ始めた。

 

「お、おお! すげえ! 俺、浮かんでる!」

 

 興奮している間にも、俺の体はどんどん浮かび上がり、地面から十メートル以上も離れてしまった。

 

「よ、よし! 次は前進だ!」

 

 さっきと同じように、進め! と念じてみると、ガコン! と背中で音がしたと思うと、ゆっくりと前に向かって進み始めた。

 

 どんどん加速し、自転車、原付、そして今は自動車くらいの速さで進んでいた。周りの景色が後ろに流れて行くのを眺めながら、俺は止まるよう念じた。だが、俺の体は止まるどころか益々加速していく。

 

「ちょ、止まれ! 止まれって!」

 

 念じるだけでなく声にも出すが、止まらない。何故に!? 上昇、前進はすんなりいったのに何で止まれない!?

 

「止まれってコラ! 止まってください! お願いします!」

 

 最早泣きそうな俺。その時、前方に赤と白の何かが見えて来た。その周りでは爆発みたいなものが頻繁に起こっている。

 

「な、何だ…?」

 

 猛烈に嫌な予感がしてきた。そして、その予感は見事に的中する事となった。近づくごとに大きくなっていく赤と白。その正体がはっきりした時、俺は己が目を疑った。

 

 威風堂々という言葉がそのまま形となったと思わせる巨躯。

 

 何もかもをかみ砕いてしまいそうな凶悪な牙。

 

 巨木ですら紙屑のように吹き飛ばしてしまうであろう尻尾。

 

 その巨躯を軽々と宙に舞いあがらせる勇壮な翼。

 

 俺がいた世界では空想の存在でしかなかったモンスター。

 

―――どう見てもドラゴンです。本当にありがとうございました。

 

「って、マジかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!?!?」

 

 何だよアレ!? 何だよアレ!? 大事な事なので二回…ってそんな事言ってる場合じゃねえ! これ、明らかに直撃コースだよね!? と、とにかく何とかして逸れないと!

 

「曲がれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 どこぞの鉱山で働く少年のごとく叫びながら体を無理矢理ねじる。観る度に思うが、彼の身体能力も大概チートだよな。

 

 すると、僅かにだがドラゴンに向かって右側へ進路がずれ始めた。よし、後はこのまま全速力で通り過ぎれば…!

 

 ホッとする俺だったが、次の瞬間に凍りついた。なんと、今度は前方にフリフリな服を纏いステッキを持った魔法少女? らしき姿を確認してしまった。何故魔法少女? とか、なんか羽みたいなの生えてる? という疑問は今は全力で放り投げる。このままだと今度はあの魔法少女にぶつかってしまう。しかも向こうは気付いていないっぽい。ぶつかれば間違い無くあの魔法少女は大怪我、最悪死んでしまうかもしれない。せっかく生き返ったのに殺人犯になるのは絶対嫌だ。

 

(ならやる事は一つ。ぶつかる直前にあの魔法少女を抱えあげるしかない!)

 

 距離的に避けるのは不可能だと判断し、俺はそう決めた。タイミングが狂えばアウト。しかもチャンスは一度きり。転生前の俺なら絶対に失敗しているだろうが、今の俺はアル=ヴァン! 騎士なのだ!

 

(俺は出来る! 俺は騎士! ほら、諦めんなよ、もっと熱くなれよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!)

 

 自分で自分を鼓舞しながら意識を集中する。魔法少女まで残り五メートル…四メートル…三メートル…二メートル…一メートル…!

 

「え?」

 

(魔法少女ゲットォォォォォォォォォ!!)

 

 加速したまま、魔法少女を抱きしめる。直後、背後を赤いドラゴンの吐いた炎が通り過ぎて行った。

 

 冷や汗が流れる。もし自分がいなかったら、この子は今の炎に呑み込まれていたかもしれない。

 

 図らずも人命救助を果たしてしまった俺。そして、一向に言う事を聞かなかったブースターが、ドラゴンから数十メートル離れた所でようやく停止した。

 

(や、やっと止まった…)

 

 あのまま止まらなかったら、俺、この魔法少女と一緒にどこまでも飛び続けてたんだよな。…うん、誰がどう見ても誘拐だよな。マジで止まってくれて助かった。

 

 安堵しつつ、抱きしめたままの魔法少女を見下ろすと、がっちり目があった。

 

「あ、あの、あなたは一体…」

 

 いや、うん、当然の疑問だよな。だがしかし、ここで素直に本名をバラすのは何だかマズイ気がする。

 

「…フューリー」

 

 だから、とっさにアル=ヴァンの種族名を口にした俺は間違って無かった・・・はず。




主人公の初戦はまさかのあの二匹。いきなりのボス戦ですが・・・。

皮がささくれる(スパロボで言うダメージ10)+オルゴンクラウド(ダメージ1200まで防ぐ)・・・後はわかるな?

しかし、この設定だとD×DじゃなくてISでもよかったかも・・・。

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