ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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さあ皆さん、処刑用BGMの準備を!

2014年7月13日。ついに日刊ランキング一位となりました。本当にありがとうございます!


第二十一話 蘇る伝説

イッセーSIDE

 

 俺達が見守る先で、神崎先輩が変身した。…何言ってるかわからないって? 安心しろ、俺も何が起こったのか理解できてない。

 

 なんて例えたらいいんだろうな。うーん…。強いて言えば、ロボットかな? アニメに出るロボットがそのまま鎧みたいになって神崎先輩の全身を覆っている。

 

『不死であるあなたを倒す事は叶わないかもしれない。だが、俺を見守っている人の為にも、最後まであがかせてもらう!』

 

 モニター越しなのに、先輩の気迫が俺に伝わって来た。なんかもう、カッコ良すぎて逆に何も言えねえや。

 

 …あれ、そういえばドライグが急に黙ってしまった。さっきまで神崎先輩の戦いに感心したようにしゃべってたのに。

 

 おい、どうしたんだよドライグ?

 

 ―――尻尾~尻尾~。俺の尻尾が宙を舞う~。流血~流血~。流れる血は止まらない~。

 

 マジでどうしたドライグ!?

 

 ゾクリとするくらいおどろおどろしいドライグの歌声が俺の頭に響いた。

 

 ―――翼~翼~。白の翼に穴が開く~。俺の炎も何のその~。蒼いアイツにゃ敵わない~。止めて! 俺のライフはゼロよぉ!

 

ドライグ!? ドライグ!? しっかりしろ! そんなんお前のキャラじゃねえだろ!

 

 ―――オデノカラダハボドボドダ~! ウソダドンドコドーン!

 

 ド、ドライグが…壊れちまった。誰か医者を、ドラゴンが診れるお医者様を呼んでくださいぃぃぃぃぃぃぃ!!

 

イッセーSIDE OUT

 

 

IN SIDE

 

 …なんだ、どこからかマダオの泣き声が聞こえて来た気がするんだが。空耳か?

 

「え、ええい! そんな虚仮威しで俺がビビると思っているのか!」

 

「虚仮威しかどうか、その身で確かめるがいい」

 

 こちとら騎士ですよ? ラフトクランズですよ? あんまり舐めてたら怪我しますぜ? まあ、無敵なあなたには言っても意味無いかもしれませんけどね。

 

 けどまあ、これはチャンスだ。どうせ何をしても効かないのなら、精々胸を貸してもらおう。フェニックス…あなたには俺の糧(練習相手)になってもらうぞ!

 

 左腰にマウントされていたクローシールドを腕に装着し、先端を展開させる。まずはこれ…オルゴンクローを受けてもらおうか。

 

 あ、ついでにオルゴン・クラウドも使ってみるか。

 

 発動させた瞬間、俺の姿がその場から消える。

 

「ッ!? 消え…」

 

 俺の前に、驚愕するフェニックスの背中がある。これぞオルゴン・クラウドの効果の一つである空間跳躍! さあ、受けるがいい。これが正真正銘の騎士の一撃だ!

 

「何処を見ている」

 

「――――!!」

 

 お決まりのセリフを口にしながら、フェニックスに向かってクローを振り降ろす。刹那、彼の上半身が跡形も無く消し飛んだ。おおう! なんという威力だ! 流石ラフトクランズ!

 

 けど大丈夫。なんたって彼は無敵なんだ。ほら、少し立てばすぐに元通りに…元通りに…ならないんですけど? あれ、おかしいな。確か前回のゲームだとものの数秒で復活してた気がするんだけど。

 

 なんて思っていたら、フェニックスの上半身があった部分に炎が出現し、それが消えるとそこには元の彼の姿があった。スパロボじゃ無限回復するヤツってのはイベントが発生しないと倒せないようになってるけど、これはスパロボじゃないし、イベントなんて起こらない。こりゃあ、やっぱり勝つのは無理だなー。

 

「はあっ…! はあっ…! き、貴様…何だそのデタラメな威力は!?」

 

 いやあ、褒めないでくださいよ。てかそれに耐えるあなたの方がデタラメですよ。なんか、フルマラソンでもこなしたみたいに息が荒いんですけど、どうかしたんですか?

 

「そ、そうか…わかったぞ! 神器だな! しかも神滅具クラスの! おのれ、赤龍帝のガキといい貴様といい、何故こうも俺の前に立ちはだかるのだ!」

 

 神器? 神滅具? これはただのラフトクランズですよ? なんか勝手に納得した様子のフェニックスを眺めながら、俺はクローを仕舞い、ソードライフルを手にした。

 

 はい、それじゃあ次の攻撃行きますよ。俺はソードライフルをライフルモードに展開させ、フェニックスに向かって引き金を引いた。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!?!?!?」

 

 相も変わらずな極太加減で迫るエネルギー波を、フェニックスが必死の体で回避する。ただ、完全に避け切れなかった所為で、右腕が飲み込まれてた。掠っただけでこの威力ってやっぱりちょっとおかしいよね。けど、それがラフトクランズクオリティ!

 

「ぐううっ! お、おのれおのれおのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 あ、やべ、完全にキレちゃったよあの人。ゲームの最後で兵藤君に向けたのと同じくらい…いや、それ以上の超巨大な炎の塊が俺に迫る。しかし甘い。ラフトクランズにはこれがあるのだ!

 

「ば、馬鹿な。俺の最大火力を放ったというのに」

 

 呆然としたフェニックスの眼前で、バリアに阻まれた炎が左右へ散って行く。ほ、よかった。彼の炎の威力は1200以下みたいだな。じゃないと今頃はバリア貫通されてたぞ。

 

「さて、反撃させてもらおうか」

 

 ライフルからソードに変形させ、それを構える。そんな俺を見てフェニックスが酷く狼狽した様子で口を開いた。

 

「な、何なんだ! 何なんだよお前はぁ! 俺はフェニックスだぞ! この婚約には悪魔の未来がかかっているんだぞ! 人間であるお前に何の関係があるというのだ!」

 

 急にどうしたんだこの人? 婚約の話は関係無いだろう。

 

「フェニックスも婚約も悪魔も関係無い。俺はただ…あなたを斬るだけだ」

 

 今は俺とあなたの勝負の時間でしか無い。…あれ、そもそも何で俺この人と戦う事になったんだっけ? …まあいいや、そんじゃ次はソードの感触を確かめさせてもらおうかな。ついでに魂もセットで。

 

 脳内パネルから魂を使用。同時に、オルゴンソードの刀身を青白い光が包みこんだ。…なんでかな、無性に「魂ぃぃぃぃぃぃぃ!!」って叫びたくなってしまった。

 

SIDE OUT

 

 

サーゼクスSIDE

 

 モニターから目が離せない。僕だけじゃない。今この場で彼の戦いを見ていない者は一人として存在していない。父も母も、グレイフィアも、ライザー君のご両親も、セラフォルーも、リーアも、リーアの眷属の子達も、貴族達も、圧倒的という言葉すら生温い一方的な蹂躙の光景に目を奪われていた。

 

 不死と呼ばれるフェニックスだが、弱点が無いわけではない。圧倒的な力で押し潰すか、精神的に追い込んで倒すか。方法は二種類だ。

 

 現にライザー君はフューリー…神崎君の腕に装着された剛爪の一撃を受け、精神に大きなダメージを負ってしまったみたいだ。一撃…そう、たった一撃でライザー君は追い込まれていた。

 

『な、何なんだ! 何なんだよお前はぁ! 俺はフェニックスだぞ! この婚約には悪魔の未来がかかっているんだぞ! 人間であるお前に何の関係があるというのだ!』

 

 最早完全に余裕を失ったライザー君の叫びに、神崎君は淡々と答える。

 

『フェニックスも婚約も悪魔も関係無い。俺はただ…あなたを斬るだけだ』

 

 …ああ、そうだ。まさしく彼には関係の無い話だ。フェニックス家も婚約も悪魔の未来も、人間である彼を止める理由にはならない。彼はただリーアを…彼の大切な友人を取り戻しに来ただけなのだから。

 

 キミは幸せだね、リーア。こんなにも自分の事を思ってくれている友人を持てて。願わくは、僕も彼とその様な関係を築ける事を祈ろう。

 

 そんな事を考えている間にも、神崎君は剣を構える。その剣を青白いオーラが包む。一目見ただけで、それが危険な光だと本能が理解した。はは、魔王である僕の背筋を凍らせるなんて、キミはどこまで驚かせてくれるんだ、神崎君。

 

『う、うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

 錯乱するライザー君に向かって、神崎君は背中の噴射口から激しい光を出しながら突撃。そして、その無慈悲な一撃を振り降ろした。かつて、ドライグの尾を紙屑のように斬り飛ばしたあの剣の一撃に、若い悪魔である彼が耐えられるはずも無かった。

 

 これ以上は…やる必要も無いだろう。今のでライザー君の心は完全に折れた。

 

「そこまで。この勝負…神崎君の勝ちとする」

 

 僕の宣言が、無言に包まれる会場内に響き渡った。

 

サーゼクスSIDE OUT

 

 

IN SIDE

 

 なんか、気付いたら勝ってしまってました。…どういう事? フェニックスさんが勝つ事が決まってたんじゃないの?

 

 ラフトクランズモードを解除した俺は会場に戻された。もうね、みんなからの視線が酷い。だがしかし! 俺は全てを受け入れた! 最早羞恥心に苛まれる事は無いのだよ!

 

「見事だったよ、神崎君」

 

 魔王様からのお褒めの言葉頂きました! よかった…これでまた一つ、絶望の未来を回避する事が出来た! 協力してくれたフェニックスさんには感謝感謝だ。

 

「これでキミを止める者はいない。リーア…リアスを連れて行きなさい」

 

 え、リーアってグレモリーさんの事だったの? いや、それよりも連れて行けってどういう事? 何で花嫁を奪う間男扱いになってんの俺?

 

「さあ…」

 

 魔王様の微笑みという名のプレッシャーに押され、俺はおずおずとグレモリーさんの前に立つ。…もういいや。ここまで来たら最後まで騎士(笑)らしく振る舞ってやろうじゃないか。

 

「…お迎えにあがりました、姫」

 

 気障ったらしいセリフと共に、アル=ヴァン先生の知識から騎士の儀礼を引っ張り出し、グレモリーさんの前に跪く。あはは、急にこんなわけわからない事言われたらグレモリーさんだって戸惑う…。

 

「神崎君…。あなたは…あなたは…!」

 

 かと思ったら、何か涙声で抱きついて来ましたよこの子! え、もしかして、俺の騎士(笑)ごっこに乗ってくれたの? 最近、彼女の半分は優しさで出来てると本気で思うようになってたんだけど、これはもう確定的だね。

 

 けどさ、冷静になってみると、これ後で絶対怒られるよね。パーティーに遅刻して、主役の面目丸潰れにして、最後の最後に騎士(笑)ごっこて…。いや、まあ後半は魔王様の所為でもあるから、もし謝罪しないといけないのならあの人も一緒だと思うんですけど、そこらへんどうなんですかね?

 

「神崎君…」

 

 何? と言おうとした俺の口を柔らかな何かが塞ぐ。目の前にはグレモリーさん。塞いでいるのは彼女の唇。

 

「騎士様へのご褒美と…私の気持ちよ。本当に…本当にありがとう、神崎君!」

 

 …え、もしかして俺、キスされたの? 俺が、こんな綺麗な子と? いやいや、ありえん。夢か、夢なんだな!

 

「先輩! 部長!」

 

 声を弾ませ、嬉しそうな顔で駆け寄って来る兵藤君達を尻目に、俺は自分の身に起こった事が信じられず、混乱していた。

 

 こうして、予想外の出来事のオンパレードだった婚約パーティーは終了したのだった。




ようやく焼き鳥戦が終わりました。なんか、あまり面白い物が書けた気がしないんですけど、皆さんに満足していただけたかどうか・・・。

ファイナルモードはお預けです。つーか使用する機会ってあるんですかね・・・。

さて、次回は二巻のエピローグ・・・なんですが、正体がばれたオリ主がどんな目に遭うか・・・そして、魔法少女との再会は果たせるのか。今から考えるのが大変です。


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