ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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ふと気付いた。勘違い要素ありって、別に全部が全部勘違いにしなくてもいいって事に。

二十五話目にしてようやく気付いた私を誰か褒めてください。



第二十五話 またお前らか!

どうも、先日のオカルト部での一件で、騎士(笑)に加えて記憶喪失(笑)の称号を得てしまった神崎亮真です。今度こそ本気で首を括ろうと思いましたが、山田先生の優しいお言葉を受け、生きて罪を償う事にしました。本当、彼女は教師の鏡です。

 

とりあえず、今後、オカルト部の面々に何か困った事や助けて欲しい事があったりしたら、俺の全力でそれを手助けすると決意しました。パシリだろうとなんだろうと喜んでやりますよ俺は!

 

ただね、あの日からみんなが俺に向ける目が辛い。だって、明らかにこっちを気遣ってるってわかるんだもん。本当は、そんな風に思ってくれる資格なんてないのに。

 

『失った過去など必要無い。こうしてグレモリーさん達と出会えてこの時代に生きている・・・。俺にはそれだけで充分だ』

 

なので、戦闘時でも無いのにアル=ヴァンモードでそう言うと、みんな顔をリンゴみたいにして納得してくれた。・・・あまり関係の無い話だが、このみんなというのは兵藤君と木場君も入っている。キミ達にまでそんな反応されたら俺もどう受け取ればいいのかわからないよ。

 

ついでに、名前とラフトクランズモードの使い方、それとフューリーという単語だけは覚えていたという感じで補足した。じゃないと、どこかで矛盾が生じる恐れがあったからな。

 

もちろん、黒歌にも説明済みだ。俺じゃ無く、グレモリーさんとアーシアからだが。泣きながら俺を抱きしめる彼女に、別の意味で死にそうになったのは記憶に新しい。

 

本当に、みんな良い子達ばかりだ。ただ、良い子過ぎて不安でもある。なんか悪いヤツ等に騙されるんじゃないのか? だが、もしそんな輩がグレモリーさん達に近づこうものなら、その時は騎士(笑)である俺が成敗してやる。主に拳を使って!

 

そんな感じで俺の贖罪の日々が始まって数日後、俺は「相談事があります」と兵藤君に呼び出された。

 

「木場君の様子がおかしい?」

 

たった今、兵藤君の口から出た言葉をそのまま繰り返すと、彼は神妙な面持ちで頷いた。何でも、兵藤君の家に遊びに来た木場君に、彼のお母さんがアルバムを見せたらしい。最初は楽しそうにそれを眺めていた木場君だったが、ある写真を見た途端表情を一片させたのだとか。

 

「木場は聖剣がどうとかって言ってました。アイツのあんな憎しみの籠った顔・・・俺、初めて見ましたよ」

 

俺も驚いた。木場君はいつも優しく微笑んでいるイメージがあったからな。でも、それはあくまでイメージだ。本当の彼を俺は知らない。

 

「木場、あの日からずっと変なんです。だから心配っていうか・・・。と、とにかく、先輩もちょっとでいいんで気にかけてくれませんか?」

 

「わかった」

 

当然だ。彼は大切な後輩だし、大切な友人だからな。悩み事でもあるなら是非とも話して欲しいが、一番仲の良さそうな兵藤君にも話していないのを考えると、俺にも教えてくれそうに無いな。

 

「ありがとうございます! それじゃ、俺、部長にも木場の事聞いてみるんで、失礼します」

 

駆け出していく兵藤君の背中を見送る。彼って凄く友達思いの優しい子なんだな。・・・相変わらずおっぱいおっぱい叫んでるらしいけど。

 

まあいいか。とりあえず、木場君に会ってみよう。そう決めた俺だったが、結局この日は学園で木場君には会えなかった。

 

放課後、気付けば外は酷く土砂降りの様子だった。生憎傘は持って来ていない。ここは時間をかけずにさっさとダッシュで帰ろう。俺は鞄を手に下駄箱を飛び出した。

 

瞬間、叩きつけるような雨が俺の全身を襲う。酷い雨だ。天気予報マジで役に立たねえ。内心ぼやきつつ、家への道を走る俺の耳に、聞き覚えのあるその声が届いたのは、ちょうど家まで半分の所まで来た時だった。

 

「はっはあ! 久しぶりの再会だ! 楽しもうぜクソ悪魔ぁ!」

 

「いいだろう。その剣ごと破壊してあげるよ!」

 

一方は間違い無く木場君だ。ならもう一方は? 確かめる為そちらに向かった俺の眼前に、なんか黒いオーラみたいなのを出す剣を持つ木場君と、それとは対照的な光るオーラを出す長剣を構える・・・クレイジー神父の姿が飛び込んで来た。

 

「木場君」

 

「ッ!? か、神崎先輩!? どうしてここに!?」

 

「あーん? ゲ、あの時の化物君じゃないですかぁ! なになに、この少年の知り合いだったの? それならそうと早く言ってくださいよぉ!」

 

酷い! 化物って言う方が化物なんだぞ! 来いよクレイジー化物! 剣なんか捨ててかかって来いよ!

 

「・・・またそんな玩具を振り回して遊んでいるのか」

 

もうね、教会にまともな人間は存在しないんじゃないかと思う今日この頃ですよ。ホント、そう考えると、幼い頃から教会に属していたアーシアが他の連中に毒されずにあんな天使でいられたのって奇跡なんじゃないのか?

 

呆れてしまった俺に向かって、クレイジー神父は何が楽しいのかもの凄い笑顔で返事して来た。

 

「ざ~んね~ん! これはあの時の剣とは違うんだなぁ! これはねぇ、エクスカリバーっていう聖剣なんですよ? ゲームとかで聞いた事あるでしょ? 最強にして最高の剣がこれってわけですよ!」

 

ああ、はいはい、エクスカリバー(笑)ね。やれやれ、玩具にそんな名前までつけるなんて・・・。しかも、いくら愛着があるからって、玩具にそんな仰々しい名前ってどうよ? 発光機能がついてるのは評価出来るけど、他にもギミックが搭載されてたりするのかな? 何にせよ、木場君がケガしたら嫌だし、取り上げるか。

 

「キミにも会いたかったんだよぉ! あの時、俺を虚仮にしてくれたお礼をしないとねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

言うや否や、クレイジー神父がエクスカリバー(笑)を振りかぶって突っ込んで来た。この人、そろそろ自分が周りからどう見られてるか気付いた方がいいと思うな。

 

心の中で呟きつつ、俺は前と同じく、向かって来た剣を右手で掴んだ。ただし、前回と違うのは、このエクスカリバー(笑)は妙に固く、軽く力を入れただけではビクともしないという点だった。

 

そうやって感触を確かめている俺を前に、クレイジー神父がこの世の終わりを迎えたかのような絶望的な表情を浮かべていた。なんか横から木場君の息を飲む音まで聞こえて来る。

 

「あ、ありえねえ・・・ありえねえありえねえありえねえありえねえ! 聖剣だぞ!? 本物のエクスカリバーなんだぞ!? テメエは斬られて死ななきゃいけねえんだぞ!? なのに・・・何で受け止めてんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

いや、玩具とはいえ、剣振り降ろされたら誰だって受け止めるでしょうが! アンタそんな事もわかんないの!? つーかその剣買った時に注意書きとか読んだのか? 絶対「人に向かって振るわないようにしてくださいって」書かれてただろうに。

 

「あなたにこの剣を持たせるのは危険だ。故に・・・破壊させてもらう」

 

少しで無理なら全力で力を込めれば壊れるだろうと剣を握る手に意識を向けようとした刹那、クレイジー神父は強引に俺の手から剣を離した。

 

「ひゃは! ひゃはははは! 嫌なこったぁ! この剣は俺の大事な大事な宝物なんですよぉ? テメエごときに奪われてたまるかってんですよぉ!」

 

クレイジー神父の剣から光が消え、彼は俺達に背を向けて走り始めた。それに向かって木場君が叫ぶ。

 

「ま、待て! 逃げる気か!」

 

「ええ、逃げますよぉ! だがな、次に出会った時は絶対に殺す! テメエも・・・そっちの化物も必ずなぁ!」

 

そんな捨て台詞を残し、クレイジー神父は完全に俺達の前から姿を消した。

 

「・・・彼は何がしたかったんだ?」

 

チャンバラごっこがしたいのなら、同じ教会のヤツ等とやればいいのに。こんな風に関係無い人間に襲い掛かるとか通り魔ってレベルじゃねえぞ。

 

「聖剣すら先輩には・・・。これが伝説の騎士の力だとでも言うのか・・・」

 

木場君が何やらブツブツ言っている。いや、雨に濡れながら憂いの表情を見せるイケメンって画になるなぁ。

 

「木場君、大丈夫か?」

 

「・・・心配してもらわなくても僕は元気ですよ。それで、先輩はどうしてここに?」

 

「ここに来たのは偶然だ。だが、俺としてはちょうど良かった。キミに会いたかったからな」

 

「僕に?」

 

「ああ。兵藤君がキミを心配していたぞ。最近の木場君の様子が変だから、俺にも気にして欲しいとな。だからキミに会って話を聞こうと思っていたんだ」

 

「そうですか・・・。イッセー君も余計な事を・・・」

 

「そういう言い方は良くないぞ。彼は木場君の事を本気で心配していたんだからな」

 

普段の木場君からは絶対に出ないであろう言葉に面食らいつつ、フォローを入れる俺に、木場君は無理矢理作った笑顔を向けて来た。

 

「・・・そうですね。今のは失言でした」

 

「木場君、本当に何があったんだ? 悩みがあるのなら俺に話して・・・」

 

「先輩には関係ありません」

 

こちらを一切受け入れるつもりが無いと言わんばかりのその言葉に、俺は何も言えなかった。だが、それはつまり、他者を寄せ付けない程の深刻な理由があると言う事に他ならない。

 

そうだな、木場君。確かに俺はキミの事情には関係無いかもしれない。だけどな、そんな辛そうな顔をする後輩を放っておけるほど、俺は自分が薄情な人間だとは思って無い。

 

「キミの言う通りだ。これは俺の自己満足に過ぎない。それでも、俺はキミの力になりたいんだ。キミは俺の大切な後輩で友人だからな」

 

「先輩・・・」

 

長い長い沈黙。それは木場君によって破られた。

 

「先輩、僕はね、あなたと同じなんですよ」

 

「俺と同じ?」

 

「教会に恨みを持つという点でです。記憶を失ったはずのあなたの中に残る教会への憎しみ。僕はそれ以上の物を持っています。ヤツ等は幼かった僕を・・・僕の仲間達を・・・!」

 

そこまで言って、木場君は俺に背を向けた。

 

「・・・これ以上は言えません。これは僕がやらなければならないんです。ただ、助けてもらった事にはお礼を言わせてもらいます。ありがとう、先輩。そして、さようなら」

 

一度も振り向かず、木場君は去って行った。残された俺は、ただ木場君の最後の言葉を頭の中で繰り返していた。

 

『―――ヤツ等は幼かった僕を・・・僕の仲間達を・・・!』

 

・・・ああ、そうか。そうかよ。アーシアを追放したあげく十字架プレイに巻きこんで、仕事を放棄してチャンバラごっこ、通り魔。

 

そして・・・幼い木場君とその友達にまで手を出すショタコン&ロリコン共。その全てが、教会のド腐れ野郎どもによるものだったってわけか。もう、この世界で起こる全ての悪い事って全部教会の関係者がやった事なんじゃないのか。

 

いいかげん我慢の限界だ・・・。上等だよ教会。たった今からテメエらは俺の敵だ。これ以上俺の周りの人間に変態の手を伸ばすつもりなら、俺が叩き潰してやる!

 

未だ止まぬ雨の中、俺は力強く拳を握りしめながらそう誓うのだった。




木場君の適当な説明によって、オリ主は完全に教会を敵と認識しました。あの子達涙目&諸悪の根源であるあのお方の命運が決まってしまいました。

オリ主は今後真面目に変態共を片付けようと動きます。初めてまともなオリ主が見られるかも!? ・・・すでに致命的な勘違いをしていますが。

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