ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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とうとうやってしまいました・・・。


第二十七話 満月の下で

・・・やっちまった。たった今オカルト部を出て行った紫藤さんとゼノヴィアさんの恐怖に歪んだ顔を思い出し、俺は深く後悔していた。

 

確かにアーシアに対する言葉は許せなかったけど、もう少し優しい言い方というものがあっただろうに。最後はちゃんと素直に謝ってくれたし。教会の人間というだけでいい感情を持って無かったけど、話を聞くに、彼女達はこの街でバカやってる連中を止めに来たみたいだからな。特に幼馴染である紫藤さんを怖がらせた俺に兵藤君なんかは怒ってるかもしれない。

 

「すまない、兵藤君。キミの幼馴染に対してついキツイ事を・・・」

 

「い、いえ、むしろよく言ってくれました、先輩。いくらなんでも、さっきのはあいつらの言い過ぎです」

 

あ、そう? それならいいんだけど。でも、しばらくこの街に滞在するみたいだし、もし再会したら、その時の様子次第ではフォローとか入れた方がいいかもな。

 

「・・・話は終わりですね。それじゃ、僕も行きます」

 

木場君が入口の扉に手をかけようとした所でグレモリーさんが止める。

 

「待ちなさい、祐斗! コカビエルなんて大物が動いている以上、勝手な動きは許さないわよ!」

 

確か、堕天使なんだっけ? そのコカビエルとかいうヤツ。ずいぶん偉い人物みたいだけど、騒ぎの元になるような物を持って来るなよな。・・・てか待てよ、もしかしてそいつが変態共のトップって事か? ならそいつを何とかすれば、教会のクリーン化が一気に進む可能性もあるじゃないか! よし、殺ろう。ぜったいに殺ってやろう。

 

「すみません、部長。ですが、フリードの物だけでなく、他の聖剣までもがこの地に集っている以上、僕はもう止まるつもりはありません」

 

冷静さの中に激情の籠った声でそう答え、木場君は出て行った。聖剣? 木場君は教会に恨みがあるんじゃないのか?

 

『さあ、飲み込んで、僕のエクスカリバアッー!』

 

・・・よし、聖剣持ってるヤツ等全員ブチ殺そう。一瞬だけ頭に浮かんだヤバ過ぎるイメージに猛烈な殺意が湧いてしまった。ただ、紫藤さんとゼノヴィアさんもエクスカリバー(笑)を持ってるけど、彼女達は除外だな。根は良い子達みたいだし。何より女の子だし。

 

「ど、どうしました、リョーマさん? なんか凄く怖い顔してますけど」

 

「ん? ああ、連中にどう落とし前をつけさせてやろうか考えてたんだ」

 

待ってろよ、下劣な性職者(誤字にあらず)共。この騎士(笑)が、お前達の腰にあるそれを一本残らず砕いてやるからな!

 

「神崎君、あなたは祐斗の事情を知ってるの?」

 

「ああ。少しだけだが彼自身から教えてもらった」

 

「ッ! そう・・・。そうね、あなたにならあの子も・・・。ねえ神崎君、祐斗が無茶しないよう、見てあげていてくれないかしら? 私の言葉じゃなく、あなたならもしかしたら・・・」

 

「わかった」

 

その日はそこで解散となり、俺はグレモリーさんとアーシアと一緒に帰宅した。その夜、夕飯の席でグレモリーさんから俺が教会の二人にした説教の内容を聞いて黒歌が大笑いしていた。

 

「あなたにも見せたかったわよ。神崎君の指摘に表情を変えるあの二人を」

 

「にゃははは! ざまみろにゃ! ウチのアーシアを悪く言うからそういう目に遭うにゃ! 流石ご主人様、私達が気付かなかった事を平然と言ってのける。そこに痺れる憧れるにゃ!」

 

別に俺は人間止めてないし、ロードローラーを頭上から落としたりしないよ? などと心の中でツッコミつつ、夕飯をパクつく自分を、アーシアがジッと見つめている事に、俺は気付かなかった。

 

入浴も済ませ、後は寝るだけとなった午後十一時過ぎ。唐突に部屋の扉がノックされた。誰だろう。大体、この時間に来るのは黒歌かグレモリーさんのどちらかだけど。・・・何しに来るのかって? 別に変な事じゃないぞ。ただ一緒にいたいからってベッドで並んで座って話をするだけだ。あんな綺麗な子達と同じ空間で二人きりとか緊張しかしないけど、せっかくスキンシップを計ろうとしてくれる彼女達の優しさを無下にするなど出来ないので、アル=ヴァンモードできりぬけてます。

 

おっと、いつまでも待たせてたら悪いな。入るよう促すと、ゆっくりと扉が開いた。けれど、その先に立っていたのは黒歌でもグレモリーさんでも無かった。

 

「アーシア?」

 

可愛らしい寝間着姿のアーシアがそこにはいた。ちなみに、今着ている寝間着は一番最初に一緒に出かけた時に買ったやつだ。

 

「すみません、リョーマさん。こんな時間に」

 

「いや、構わないよ。とりあえず入ってくれ」

 

「はい、失礼します」

 

部屋に入ったアーシアを隣に座らせる。何やら話がありそうだ。なので、彼女が口を開くまで俺は黙って待っていた。すると少しして、アーシアが静かに話し始めた。

 

「・・・リョーマさん。今日はありがとうございました。リョーマさんが言ってくれた言葉、私、本当に嬉しかったです」

 

言葉って言うと・・・やっぱりあの説教の事か? あれ、以前グレモリーさんから神器について説明された時からずっと疑問に思ってたんだよな。というか、何で今まで誰もそれに気付かなかったのかが俺には不思議だけど。

 

「前にも言ったかもしれないが、アーシアは間違った事はしていない。悪魔だろうがなんだろうが、目の前で消えそうになった命を救った事のどこが悪になる。何故教会の連中がそれを理解出来ないのかが俺にはわからない」

 

「・・・いいんです」

 

「え?」

 

「もういいんです。私は、こうしてリョーマさんに理解して頂くだけでいいんです。私は、主への信仰を忘れてはいません。ですが、今はこうしてリョーマさんと一緒にいられる事が、ずっと大事で、幸せなんです。教会にいた時より、ずっと、ずっと・・・」

 

胸に手を当て、独白するアーシアを、俺はただ黙って見つめていた。

 

「リョーマさん、部長さん、黒歌さん、イッセーさん、オカルト部のみなさん、学校のみなさん、気付けばこんなにもたくさんの方々に囲まれて私はここにいます。ずっと一人だった私が、こんなにも素敵な方々と出会う事が出来た・・・。その奇跡を授けてくれたのは、主では無く、リョーマさん・・・あなたです。あなたが私を救ってくれたから、だから私は今こうしていられるんです」

 

・・・言葉が出ないってこういう事なんだな。この子が、こんなにも強い思いを俺に抱いていてくれたなんて。本当に、あの時変態共から彼女を救いだせて良かった。そうだ、この子はこれまでずっと辛い目に遭って来たんだ。だからこれからはうんと幸せになる権利がある。その為に俺が役立てるなら何でもするよ、アーシア。

 

とりあえず、もうキミに二度と手を出せないよう、この街にいる変態共のトップは絶対ぶっ潰してあげるからな!

 

「アーシア、キミはもう一人じゃない。これからも絶対に一人にさせない。俺に出来る事なら何でもする。ずっとキミは我慢して来たんだ。甘えたい時や寄りかかりたい時はいつでも言ってくれ」

 

感情を込めてそう言うと、アーシアは急にもぢもぢし始めた。いや、可愛いんだけど、どうしたの?

 

「あ、あの・・・それじゃ、一緒に寝てもいいですか?」

 

「・・・え?」

 

ちょいちょい、今この子なんて言った? 一緒に寝る? 俺とアーシアが? いやいや、それってマズイだろ。恋人同士でも無いのにそんな刺激的なイベント。

 

「そ、その、今日はリョーマさんの傍にいたくて・・・。駄目・・・ですか?」

 

「大丈夫だ、問題無い」

 

いや、実際は問題ありまくりだよ? けどね、上目使い+赤い頬に俺の心のバリアは呆気無く貫通されちゃいましたよ。このコンボは駄目だよ。オルゴン・クラウドでも防げないですよ。

 

「ほ、本当ですか! えへへ、ありがとうございます」

 

エンジェルスマイルを浮かべ、アーシアがいそいそと就寝の準備を始める。さあ・・・ここからが地獄(理性的な意味で)の始まりだ。

 

(覚悟はいいか? 俺は出来てる)

 

電気を消し、いざという時の最終手段をいつでも発動出来るよう、そして、となりから聞こえる可愛らしい寝息に意識を向けないよう、俺は一人素数を数え始めるのだった。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

それから数日が経過し、今日は土曜日。俺は昼から変態共の捜索を行っていた。そして気付けば空に星が見える時間、俺は街外れの高台にやって来ていた。

 

そろそろ家に帰らないとな。早足で移動する俺の前に休憩所の様な場所が現れた。そして、そこには一人の女性がベンチに腰かけていた。

 

こちらに背を向けて座っているので顔はわからないが、その長いダークシルバーの髪が月の光を浴びて輝く様についつい目を奪われてしまった。あれ、今の俺ちょっと変態っぽくない?

 

「・・・今日は満月ね。手を伸ばせば掴めてしまいそう・・・」

 

女性の独り言が耳に届く。うーん、なんか自分の世界に入ってるみたいだし、ここは邪魔しないようさっさと退散しようか。

 

「ねえ、あなたもそう思わない?」

 

言葉と共に、女性がこちらに振り向く。え、もしかしてさっきのって俺に言ってたの? てっきり気付いていないとばかり思ってたのに。

 

女性の碧い瞳が俺を捉える。予想通りというか、凄く綺麗な人だった。年は・・・見た感じ今の俺と近い気がする。

 

「この街は面白い。色々な力が集い始めている。ふふ、今から楽しみでしょうがないわね」

 

えっと、何の話だ? 疑問符を浮かべる俺に対し、女性は小さく微笑みながら立ち上がる。そして、俺の方へ歩いて来ると、すれ違い様にこう言った。

 

「それじゃあね。今度は別の場所で会えるのを楽しみにしてるわ。・・・騎士様」

 

「ッ!?」

 

瞬間、振り返った俺の前から女性は完全に姿を消していた。今の言葉・・・彼女は俺の正体を知っているのか? え、何!? もしかしなくてもお化け!? それじゃ、別の場所って・・・あの世!? やだ怖い! 美女っていうのが余計怖い! よし帰ろう! すぐに帰ろう!

 

薄ら寒い何かを感じつつ、俺は家に向かって全力で走り始めるのだった。




コカビさん残念! 彼にはオリ主の怒りを一身に受けて頂きます。それと、とある方に感想で聞かれたのですが、オリ主が変態指定しているのは今の所教会だけなので、天界のみなさんは理不尽な目には遭いません。

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