ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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たくさんの感想ありがとうございます。やっぱり感想を頂けると書く意欲が湧きますね。

今回はタイトル詐欺注意。


第三話 絶望の戦場に舞い降りた騎士

 さて、無事に激突を回避したはいいが、これから…というか、この子どうしよう。

 

「フューリー…さん?」

 

 腕の中の魔法少女が呟く。うーむ、改めてみるとこの子結構、いや、かなり可愛いんですけど。あどけない顔に不釣り合いな二つのふくらみにも目がいきそうになるが、紳士な俺はさっと視線を逸らした。

 

「セラフォルー!」

 

 と、そこへ唐突に聞こえて来たイケボイスに目を向ければ、そこにはやっぱりイケメンがいた。うぬ、イケメンは滅びろ!

 

「サーゼクスちゃん」

 

 魔法少女がイケメンに顔を向ける。察するに、この子の名前がセラフォルー。イケメンの名前がサーゼクスかな。どうよこの名推理! え? 誰でもわかるって? ですよねー。

 

 ま、なんだか知り合いみたいだし、ここは彼に任せよう。

 

「この子を頼む」

 

「あ、ああ…」

 

 なんか顔が引きつってるんですけど。はっ! まさかさっきの嫉妬の呪詛が聞かれたのか!? 心の中で叫んだはずなのに無意識に声に出てたとか!?

 

 よく見たら、イケメンの後ろにも何人か人がいるし、その人達も全員顔を引きつらせてる。やばい、まさか、あの人達にも聞かれたのか。白い翼の女性とか、黒い翼のダンディーなオジサマとか明らかに睨んでるし。あれか、イケメンの友達か何かか? いきなり現れた変なヤツが友達に暴言吐いたから怒ったのか?

 

(…よし、逃げよう)

 

 そもそも関わる気は無かったしな。うん、そうと決まればブースターを…。

 

「ふん。貴様も俺達の戦いを邪魔しに来たのか? 先程の殺気、どうやら他の連中よりはマシなようだが、雑魚がいくら増えようが同じ事だ」

 

 せっかくなので、ドラゴンの雄姿を目に焼き付けておこうと振り向くと、赤い方のドラゴンが俺を見下ろしながら口を動かした。

 

(シ、シャベッタァァァァァァァァァァァ!?!?!?)

 

 え、何!? ドラゴンってしゃべるの!? しかもめっちゃ渋い声だし! しゃべるドラゴンとか、明らかにボスクラスですよね!

 

 そんな存在が、俺に向かってしゃべってる。正直、漏らさなかった俺は立派だと思うんだ。つーか殺気って何だよ! あれか! 呪詛か!? 俺のイケメンを憎む心を察知したのか!? まさか、こいつもイケメンの身内か!?

 

「いいだろう。まずは貴様から消してやる。塵一つ残さずな!」

 

 赤ドラゴンの口の端から炎が漏れ出す。まさか、またさっきみたいな炎を吐くつもりか。

 

「ッ! 散開!!」

 

 イケメンの号令で他の人達が凄い速さで飛んで行った。ちょ、俺を置いて行かないで!

 

『おーい、準備出来…なんやこの状況?』

 

 この声はオカン! なんというタイミング!

 

「かくかくしかじかです!」

 

『なるほどなぁ』

 

 え、いまのでわかったの!?

 

『なわけないやん。アンタの記憶をちょっと覗かせてもらっただけや』

 

「ですよねー! と、とにかくピンチです! 何かお力を…!」

 

 そんなやりとりをしている内に、ドラゴンの方は口を大きく開ける。

 

「死ね!」

 

 そして、冗談とも思えるような巨大な炎の塊に、俺はあっという間に飲み込まれるのだった。

 

 

SIDE OUT

 

 

サーゼクスSIDE

 

 天使、堕天使、そして僕達悪魔からなる三大勢力による戦争は長い年月が経つ事により泥沼と化していた。戦争が始まった理由は何なのか、それは誰にもわからない。ただ、このまま続けば、犠牲者のみが増え続け、いずれは全てが滅びてしまうだろう。

 

 そんな戦争にある時転機が訪れた。二天龍と称される『赤龍帝』ドライグと、『白龍皇』アルビオンが突如として争いを始めたのだ。その争いの余波は三陣営全てに甚大な被害をもたらした。

 

 この状況で戦いを続けるほど、僕達は愚かでは無かった。すぐに停戦協定を結び、僕達は協力して二天龍を止める為動き出した。

 

 そして今日、僕達は決着をつける為、二匹が争う場に乱入した。当然、戦いは熾烈を極めた。既に百人以上が犠牲になっているが、それでも僕達は止まらない。今日で全てをおわらせるんだ!

 

 戦闘の最中、同じ悪魔で友人でもある、セラフォルー・シトリーを、ドライグの剛爪が襲った。その一撃を何とか防ぐセラフォルーだったが、ドライグと目を合わせてしまい、恐怖で固まってしまった。

 

 無理も無い。相手はあの『赤龍帝』だ。恐怖を抱かない者の方がおかしい。だが、戦場で動きを止めれば待っているのは“死”である。

 

「くっ! セラフォルー、逃げろ!」

 

 叫びながら、彼女を助けに向かう。だが次の瞬間、彼女の姿はそこからかき消えていた。そして、彼女がたった今までいたその場所を、ドライグの吐いた炎が包みこんだ。

 

(セ、セラフォルーは!?)

 

 辺りを見渡す。すると、少し離れた場所に彼女はいた。…いや、厳密に言えばそこにいたのは彼女だけでは無かった。

 

(何だ“アレ”は…?)

 

 全身、それどころか顔すらも全て覆う深い青色の装甲を纏った何かが、背中から青白い光を吹き出しながら、セラフォルーをその胸の中に抱いていた。

 

 その異様な姿は…機械で出来た人形とでも言えばいいだろうか。この決戦の為に新しく作られた兵器か? …だが、天使、堕天使からそんな話は聞いていないし、もちろん、悪魔も知らない。

 

 僕は警戒しながら近付いて行った。セラフォルーを助けてくれた事には感謝するが、得体の知れないものを信用するわけにもいかない。気になったのは僕だけじゃないらしく、天使や堕天使達の何人かも機械人形の方へ近づいて行った。

 

「セラフォルー」

 

「サーゼクスちゃん」

 

 セラフォルーが僕に気付き、続いて機械人形もその無機質な顔を僕に向ける。

 

 ―――その瞬間、僕を圧倒的なまでの殺気が襲った。

 

 放ったのは間違い無く、この機械人形だろう。僕が警戒心を抱いている事に気付いたのだろうか。「お仲間を助けてやった恩人への態度か?」まるでそう言われているような気がした。他のみんなも殺気を向けられたのか、さらに警戒を強めたみたいだ。

 

「この子を頼む」

 

 しゃべった!? という事は、これは人形などではなく、鎧か何かなのだろうか。一体何者なのだろう。相当な実力者だとは思うが。

 

「あ、ああ…」

 

 声からして、男性なのは間違いなさそうだ。セラフォルーを引き寄せるわずかな間に、僕はそんな事を考えた。

 

 すると、用は済んだとばかりに、彼はドライグの方へ顔を向ける。そんな彼に対し、ドライグが口を開く。

 

「ふん。貴様も俺達の戦いを邪魔しに来たのか? 先程の殺気、どうやら他の連中よりはマシなようだが、雑魚がいくら増えようが同じ事だ」

 

 絶対的な強者のセリフ。だが何故だろう。その声に若干の緊張が込められている気がした。ドライグの言葉を聞いても、彼は答えない。「やってみろ」とでも言わんばかりに、ただ無言でドライグを見つめ続けている。

 

「いいだろう。まずは貴様から消してやる。塵一つ残さずな!」

 

 言うや否や、ドライグの口から炎が漏れ始める。それを見た僕はすぐに指示を出した。

 

「ッ! 散開!!」

 

 セラフォルーと共にドライグから離れつつ、彼の様子を伺おうと首だけ動かして後ろを見た僕は目を見開いた。彼は逃げるどころか、その場から一歩も動いていなかったのだ。

 

「馬鹿な!? 死ぬ気か!?」

 

「早く逃げろ!」

 

 どこからかそんな声が聞こえて来る。しかし、その声が聞こえていないのか。それでも彼が動く事は無かった。

 

「フューリーさん! 逃げてぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「死ね!」

 

 そして、隣にいるセラフォルーの叫びも虚しく、彼…フューリーはドライグの炎に飲み込まれていった。

 

「あ、ああ…!」

 

「セラフォルー!」

 

 崩れ落ちそうになる彼女をとっさに支える。当然か。さっき自分を助けてくれた人物が目の前で殺されたのだから。

 

「ふはははは! 雑魚が粋がるからこうなるのだ! さあ、次に死にたいのは誰…ファッ!?」

 

「え…!?」

 

「なん…だと!?」

 

 驚愕の声を発するドライグ。いや、ドライグだけでは無い。僕、セラフォルー、そして残りのみんなも声さえ出さなかったが、全員が目を見開いてた。

 

 何故なら、ドライグの業火の中へ消えたはずの彼が、先程とまったく変わらずそこへいたからだ。その鎧は燃え尽きるどころか、焦げさえついていないように見えた。

 

 いや、一ヶ所だけ違う所があった。それは彼の右手。そこには一本の剣が握られていた。鎧と同じ青色のそれは、剣と銃を組み合わせたような特異な形状をしていた。

 

「俺の炎を受けても無傷だと!? 貴様! 何者だ!?」

 

 信じられないといった表情のドライグを尻目に、彼は感触を確かめるように剣を振るう。その動きは一切の無駄が無く、まるで剣舞を見ている様だった。

 

 それを終えると、彼は剣を構えながら改めてドライグと対峙する。そして、先程までの沈黙を破り、静かに口を開いた。

 

「騎士として、貴様等の所業を許すわけにはいかない。我が剣、ラフトクランズによって、貴様等をヴォーダの闇に還してやる!」

 

 それは、絶望が支配する戦場において、等しく皆の心を奮い立たせる力強い凱歌のようであった。体が、心が、自分を構成する全てが熱くなっていくのを感じる。気力がみなぎり、自然と拳を握りしめる。横を見れば、セラフォルーも興奮しているらしく、頬が赤い。

 

「彼に…騎士に続くんだ!」

 

 彼と一緒に戦いたい! そんな思いに支配され、僕は今一度戦いの場へ舞い戻った。

 

 だから僕はちっとも気付かなかった。セラフォルーが頬を赤くしていたのには別の理由があり、彼を見つめるその瞳がやけに潤んでいた事に。




何があった主人公!? まあ、次回でちゃんと書きますけど。

今の内に言わせて頂きます。この小説はシリアス分は少なめです。彼はどこまでいっても騎士(笑)のまんまです。

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