ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜 作:ガスキン
イッセーSIDE
やべえ・・・。あのコカビエルがボコボコだよ。ただ淡々と殴り続けるとかトラウマだよ。今ほど先輩が味方でよかったと思う時は無いわ・・・。
しかも、小猫ちゃんを助けたセクシーなお姉さんの致命傷レベルの傷を一瞬で治してしまった。あの人に不可能って無いのだろうか? やろうと思えば月とかぶっ壊せるんじゃねえのか。ははは、まさか・・・。出来ませんよね、先輩?
顔面を変形させられ、射殺さんばかりに睨みつけて来るコカビエルを無視するように、先輩は俺と木場の方へ悠々と歩いて来た。
「せ、先輩。あの女の人は? 何がどうなって・・・」
「後で全部話すよ。だから今は、あの男を倒すのに協力して欲しい」
「お言葉ですが、先輩。僕達は先程コカビエルに手も足も出ませんでした。そんな僕達が一緒では、かえって先輩の足手纏いに・・・」
・・・悔しいけど、木場の言う通りだ。ここで俺達が余計な真似をするよりも、先輩に任せた方が・・・。
「甘ったれるな!!」
鋭い怒声に思わず背筋が伸びる。え、先輩、怒ったのか? というか、何気に先輩に怒られたのって初めてだったりする? そんなどうでもいい事が頭に浮かぶくらい、俺には予想外な事だった。
「何故諦める! どうして抗おうとしない! 最初から勝つ気の無い者が勝てるとでも思っているのか!」
「「ッ!?」」
先輩の言葉が深く胸に突き刺さる。勝つ気が無い。・・・そうだ、俺はほんの数秒前までそう思っていた。俺は先輩に任せようとした。けど、それは、先輩を信頼してるからじゃない。俺は先輩に甘えようとしたんだ。この人ならやってくれると。俺は戦わなくていいと。先輩に何もかも押しつけようとしたんだ。
・・・馬鹿か。馬鹿なのか俺は! さっきコカビエルになんて言った! 俺がみんなを守るって言ったばかりじゃねえか! それなのに戦わないだと!? テメエは何様だ兵藤一誠! こんなんじゃ、いつまで経ってもこの人と・・・先輩と肩を並べて戦えるようになるなんて夢物語で終わっちまうぞ!
逃げるな! 立ち向かえ! ここが俺の運命の分かれ道だ! 俺がもっと強くなれるか、それとも永遠に弱者のままか。それを決めるのが今だ!
「先輩、俺は・・・!」
「信じろ、キミ達自身の力を! 信じろ、共に戦う仲間を! 信じろ、俺を!」
体が熱い。消えかけていた闘志の炎が瞬く間に激しく燃えあがる。拳を握りしめ、木場と見つめ合う。俺を捉えるその目が燃えている。アイツも俺と同じ気持ちのようだ。
「・・・やります。やってやります、先輩! 今度こそあの野郎をぶん殴ってやります!」
「僕もです、先輩。この命・・・あなたに預けます!」
俺達の決意に、先輩は満足気に頷くと、コカビエルの方へ顔を向けた。
「良い返事だ。ならば、一誠! 祐斗! 俺について来い!」
「うっす! ・・・て、先輩、今俺達の事・・・」
先輩が振り返る。その顔に不敵な笑みを張り付けて。
「これから共に戦う仲間だ。名前で呼ばせてもらっても構わないだろう?」
「「ッ・・・!」」
カ、カッケェェェェェェェ! なんだよそのセリフ! 今言うの反則だろ! 俺が女だったら一瞬で惚れてるね!
「リアス! 朱乃! 援護は任せた! 黒歌! 小猫! キミ達は離れていろ!」
「え、あ、は、はい!」
「・・・朱乃・・・今確かに私の事を・・・」
「了解にゃ!」
「わ、わかりました!」
先輩の声にそれぞれ反応する部長達。その中で朱乃さんの様子がちょっとおかしい。うっすら頬を上気させながらブツブツ呟いてる。なんか怖いんですけど・・・。
「ところで、彼女達はどうしたんだ?」
先輩の視線の先には、未だにショックから立ち直れていないアーシアとゼノヴィアがいた。俺は手短に事情を説明した。それを聞いた先輩が二人に声をかける。
「アーシア! ゼノヴィア! 立て!」
「せ、先輩! 今の二人は・・・!」
止めようとする俺を振り切り、先輩は尚も言葉を続ける。
「神は死んだ。だけどキミ達はまだ生きている! 死んだ者を忘れろとは言わない。だがそれに引き摺られるな! 立て! 今は立って戦うんだ!」
「リョーマさん・・・」
「神崎殿・・・」
「縋るものが必要ならば、頼れるものが必要ならば、俺がその役目を背負ってやる! キミ達の悲しみも辛さも全て受け止めてやる! だから、今は戦うんだ!」
余計な物など何一つ無い。ただただ二人を想っての先輩の魂の叫びに、アーシアとゼノヴィアの目に少しずつ光が戻り始めていた。
「・・・はい。はい! 私はリョーマさんを信じます!」
「私もだ。未だ心の整理はつかないが、今はあなたの思いに応えよう!」
「ならばアーシア! キミはいつでも治療出来るよう準備を! ゼノヴィアはアーシアを守ってくれ!」
アーシアとゼノヴィアが立ち上がる。絶望に沈んでいた俺達が、こうして希望を胸に再び立ち上がる事が出来た。たった一人の人間・・・神崎先輩が姿を見せただけで。
「・・・待たせたなコカビエル。俺達全員で貴様の相手をする」
「はっ! わざわざ足手纏いを伴うとは酔狂だな。言っておくが、雑魚をいくら増やそうが物の数では無いぞ」
馬鹿にするように笑うコカビエル。・・・ボコボコの顔に鼻血まで出してるからすっげえカッコ悪いけど。
「ならば、その雑魚にやられる貴様は雑魚以下という事だな」
「ッ! 貴様、雑魚以下とは言ってくれるな!」
「それ以前に、貴様は勘違いしている。一誠達は決して雑魚では無い。それを、今から貴様の体に教えてやる」
「やってみろよぉ! フューリィィィィィィィィィ!!!」
翼を大きく羽ばたかせ、コカビエルが戦闘態勢に入る。負けねえ! これだけの面子が揃ってんだ! 負けるわけがねえんだよ!!
「一誠、祐斗、ヤツが何をしようが全て俺が止める。だからキミ達はそれぞれ全力の一撃をアイツに叩きこむ事だけ考えてくれ」
「わかりました!」
「よっしゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!! いくぜぇ! 『赤龍帝の籠手』ァァァァァァァ!!!」
『Boost! Boost! Boost! Boost! Boost!』
もっとだ! もっと溜めろ! アイツをぶっ飛ばす為に! 俺の全力を叩き込む為に!
「させん!」
コカビエルが俺に向かって突っ込んで来る。けれど、ヤツの動きは宣言通り神崎先輩の放った蹴りが止めた。
「貴様ぁ! 邪魔を―――」
「余所見してていいのか?」
「ッ!?」
背後へ顔を動かすコカビエル。そこには、滅びの魔力を右手に宿した部長がいた。そして、部長はその魔力の塊をコカビエルの翼に向かって叩きつけるように放った。
「ぬぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」
絶叫と共に、コカビエルの翼が部長の魔力に飲み込まれていく。あれは文字通り全てを滅ぼす反則級の力だ。いくらコカビエルだって無傷でいられるはずが無い。魔力が消え去った時、コカビエルの十枚の翼は一つ残らず消滅していた。
「どう? これで偉そうに空から私達を見降ろせなくなったでしょ?」
「こ、小娘がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
怒り狂ったコカビエルが部長に手を伸ばす。だがそれは横から入って来た木場の聖魔剣によって防がれる。いつもの余裕ある微笑みを浮かべながら、木場が口を開く。
「薄汚い手で部長に触れないでくれるかな」
「おのれぇ! 邪魔をするなと言って・・・」
「下がりなさい!」
朱乃さんの声に反応出来たのはコカビエルを除いた三人だけだった。そして、一人その場に残されたコカビエルの頭上に、超巨大な雷が降り注いだ。
「ぎあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」
「どうかしら? 私の自慢の雷は? 遠慮しなくてもまだまだたくさん食らわせてさしあげますわよ? ふふ・・・ふふふ・・・おーーーほっほっほ!」
ヒィィィィィィ! あ、あのお方が・・・ドSモードの朱乃様が光臨なされたぞぉぉぉぉぉぉ!
ビシャーン! ビシャーン! と、ライザーとのレーティングゲームで体育館を吹き飛ばした時よりもさらにデカイ雷をこれでもかとコカビエルに落とす朱乃さん。もう絶対楽しんでますよね! 全ての雷の直撃を受けたコカビエルが全身から黒い煙を出しながら悶えている。
『Boost!』
そうこうしている間に、限界までの倍加が完了した。後はこれをコカビエルのヤツにぶつけるだけだ!
「先輩ぃぃぃぃぃ!!!」
一瞬だけ合わさった目。それで充分だった。先輩は俺のやりたい事を理解し、俺は先輩のやろうとしている事が理解出来た。理屈じゃない。心と心で。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「サモッ!?」
閃光の様な一撃を放ち、先輩がコカビエルを俺の方へ吹き飛ばす。いいぜ、来いよ! 俺は・・・ここにいる!
「食ぅらぁえぇぇぇぇぇぇ!!」
『Explosion!!』
「ハンッ!?」
解放した力をコカビエルの横っ面に叩きこむ! まだだ! まだ終わりじゃねえぞ、コカビエル!
「木場ぁ!」
俺は木場の方へコカビエルを殴り飛ばした。それを待ち受ける木場は、聖魔剣をまるで野球のバットの様に水平に構える。
「オーライ、イッセー君! さあ、飛ばしますよ先輩!」
「キンポッ!?」
アッパースイングで振り切られた聖魔剣がコカビエルを天高く打ち上げる。口から血を吐き出しながら、コカビエルが初めて狼狽した様子で叫ぶ。
「な、何故だ・・・! 赤龍帝はまだ納得出来る! だが、何故リアス・グレモリー達まで急にこんな力を・・・!」
「だから言っただろう・・・。彼女達は強いと」
空を舞うコカビエルよりもさらに高く・・・校舎の屋上くらいの位置から先輩がコカビエルに告げる。先輩から俺に、俺から木場に、そして、最後に木場からもう一度先輩へ繋げる。これこそ、正に『龍と騎士のトライアングルアタック』ってな!
―――もう少し良い名前は無かったのか、相棒?
テメッ! ドライグ! 俺の渾身のネーミングにケチつけんな!
「さあ、止めだ、コカビエル。貴様の歪んだ欲望によって大切な物を散らされた子ども達の怒り、嘆き、そして悲しみを・・・今こそその身に受けるがいい」
欲望? 子ども達? ・・・おい、まさかコカビエルのヤツ、バルパーと同じように何の罪も無い子どもを・・・!? だから先輩もあんなにキレて・・・。
「な、何の話だ!?」
「・・・どこまでもシラを切るつもりか。いいだろう。今さら何を語ろうが、貴様の罪は変わらないのだからな。いがみ合う双子・・・。その力を見せてやる!」
先輩がコカビエルに向かって拳を向ける。瞬間、そこから緑色の球体が放たれ、コカビエルの背中に直撃。その勢いでうつぶせに地面に叩きつけられたコカビエルに向かって、先輩がとんでもない速度で急降下し始めた。
「ニーベルング・アナイレーションッッッ!!!」
流星・・・今の先輩は正にそれだった。青白い光を全身に纏い、高速を越えた光速でコカビエルに迫る。そして、全てを破壊尽くさんとするかのように突き出された足が・・・コカビエルの尻に突き刺さった。
「アッーーーーーー!?!?!?」
悲鳴? 悲鳴だよな? 悲鳴だって言ってくれ! コカビエルの奇声の所為で、先輩の叫んだアナイレーションって言葉が穴入レーションって聞こえたのは俺の心が汚れてるからかな?
「うぅぅぅぅぅおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
凄まじい衝撃が余波となって俺達を襲う。耐え切れなかった地面が抉れ、巨大なクレーターが出来る。それでも先輩の勢いは止まらず、遂にはコカビエルと共に地中へと潜り始めた。
「か、神崎君!?」
姿の見えなくなった先輩を心配してか部長が叫ぶ。直後、その声に応えるかのように、先輩だけが穴から飛び出して来た。
「終わりだ、コカビエル・・・!」
穴を背に、先輩がパチンと指を鳴らす。それを合図に、コカビエルの沈んだ穴からとてつもなく巨大な光の柱が立ち昇った。
誰もがそれに目を奪われる。俺も、部長も、朱乃さんも、木場も、小猫ちゃんも、アーシアも、ゼノヴィアも、小猫ちゃんを助けたあの女性も・・・。神崎先輩の力を証明するかのように伸びるその光の柱をただ見つめ続けていた。
十秒・・・。二十秒・・・。やがて光の柱は徐々に小さくなっていく。そしてそれが完全に消えた時、そこには、手足をありえない方向に曲げ、ピクピクと体を痙攣させているコカビエルと、それを黙って見下ろす神崎先輩だけがいた。
「・・・か、勝ったの?」
部長の呆然とした呟きにハッとなる。そ、そうだ! 勝った! 俺達、コカビエルに勝ったんだ! 最後は結局先輩に任せてしまったけど、こうして勝てたんだ!
「先輩! やりま・・・!」
「―――驚いた。まさか、コカビエルを倒すなんてね」
最初に聞こえたのはそんな声。そして次に感じたのは言い様も無い緊張感と恐怖。その発生源は・・・空だ!
―――この気配、ヤツか!
ドライグ!? お前知ってんのか!?
―――『赤い龍』である俺と対を為す存在・・・。ヤツは『白い龍』だ!
『白い龍』!? それってお前がいつか話した・・・!
慌てて空を見上げる。そして、俺は目を見開いた。
舞い降りて来たのは、白く輝く鎧で両手両足を覆いながらも、肝心の体は最低限な部分しか隠していないという超刺激的な格好をした銀髪のお姉さんだったからだ。
「ふふ、初めまして。今代の『赤龍帝』君。そして、久しぶりね・・・騎士様」
寒気がするくらい蠱惑的な笑みを向けられ、俺は無意識の内に後ずさった。そんな俺とは対照的に、神崎先輩は少しだけ驚いた様子でお姉さんの視線を受け止めていた。
前回の後書きの答えは、4番 みんなでやっちゃいなYO!でした。わかるわけないって? いや、私もこうする気は無かったんですよ? ただ、みなさんがあれだけじゃ温い! っておっしゃるから、2番と3番を組み合わせてみました。みんなで戦うならラフトクランズモードは必要ないですからね。
そして、今回オリ主が発動した新モード。その名もズバリ・・・SYUUZOモード! このモードは発動すると、周りの味方に強制的に『激励』と『熱血』の効果を付与します。ちなみに拒否は出来ません。そして、今後このモードが使われるかどうかは未定です。
『龍と騎士のトライアングルアタック』はスパロボで言う合体攻撃です。条件として、亮真、イッセー、祐斗の気力が140以上でなおかつイッセーが限界までブースト出来ている必要があります。