ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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かつてないキャラ崩壊に、全私が泣いた。


第三十一話 Qそれはクールビズですか? Aいいえただの露出です

・・・ええっと、今どういう状況なんだ? 黒歌の血まみれ姿にプッツンしてからの記憶が曖昧なんだが。ただ、頭の中でしきりに「諦めんなよ! もっと熱くなれよ!!」って言葉がエンドレスで繰り返されてたのは何となく覚えてる。

 

目の前ではオパピ・・・じゃない。コカビエルがピクピクしてる。・・・こいつ、心の底からクズだったな。変態な上に、まさか殺人未遂まで起こすとは俺も予想していなかった。だがそれも今日で終わりだ。さあ、グレモリーさん! 通報してくれ!

 

「先輩! やりま・・・!」

 

俺の元へ駆け寄ろうとした兵藤君を、第三者の声が遮った。

 

「―――驚いた。まさか、コカビエルを倒すなんてね」

 

関心と驚きが混ざったその声は上の方から聞こえた。しかし、なんでだろう。どこか聞き覚えがある様な・・・。

 

既視感とも違う妙な感じを抱く俺の前に、声の主は悠然と姿を現した。腰より少しだけ上で切り揃えられた黒みがかった銀髪。宝石の様な碧い目。それはまさしく、あの満月の夜、高台で出会った女性だった。

 

「ふふ、初めまして。今代の『赤龍帝』君。そして、久しぶりね・・・騎士様」

 

突然の乱入者に目を丸くするグレモリーさん達とは違い、俺は深く安堵していた。あー、よかった、お化けじゃなくて。いつ枕元に出て来るか本気で心配してたんだよなぁ。

 

ホッと息を漏らしつつ、俺は女性の姿を改めて見て・・・愕然とした。

 

何だよその格好。何だよその格好。何だよその格好。思わず三回繰り返してしまうほど、彼女の格好はぶっ飛んでいた。

 

両手両足を覆う鎧と、背中にある八枚の翼は共に白銀に彩られ、いっそ神々しいとさえ思わせるほどだ。そこまではいい。だけどな・・・肝心の体の部分が丸見えってどうよ!? 

 

上も下もギリギリだ。思わず、「隠す気あんのか!」とツッコミそうになった俺は至って正常だと思います。

 

「な、なんて破廉恥な・・・!」

 

そうだね。グレモリーさん。キミの言う通りだ。だが、それをキミが言う資格は無い! キミがいっつも風呂上がりにする格好を思い出してみなさい! スケスケネグリジェなんて危険装備を見せつけられる俺の気持ちを考えた事があるのかい! 俺を男として見てないのは充分理解したから、いいかげんちゃんと服を着てください!

 

グレモリーさんの破廉恥発言に、女性は心外だといった表情で反論した。

 

「失礼ね。これは動きやすさを極限まで突き詰めた結果よ。それに、見られて恥ずかしい体をしているつもりは無いわ」

 

ッ・・・! こ、こぼれる!?

 

これみよがしに胸を揺らす女性に、思わず口からそのセリフが出そうになった。けど、見られて構わないって事は、逆を言うと見てもらいたいって事ですよね? え、まさかこの人・・・露出強(誤字にあらず)!?

 

「ぶはぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「イッセー君!?」

 

何事!? と振り向くと、兵藤君が噴水のように鼻血を天に向かって噴き出しながらその場に倒れ、木場君に助け起こされていた。どうやら、今の光景は彼にとっては刺激が強すぎたみたいだ。

 

 

もちろん、俺だって何も感じてないわけじゃない。ただ、初めての露出強(誤字にあらず)との出会いに、混乱と驚きの方が大きいのだ。

 

「特にお尻に関しては、形、大きさ共に誰にも負けない自信があるわ」

 

誰も聞いてないよ!? というか、見せつけるの止めて! 確かに桃みたいにぷりぷりで可愛らしいとは思うけど、兵藤君が死んじゃう!

 

「いい夢を・・・見させてもらったぜ」

 

「キミはどこの聖戦士なんだい! ああ! 目を瞑っちゃ駄目だ、イッセー君!」

 

おい! 割と本気で死にそうじゃねえか! やべえ! 『信頼』・・・いや、『友情』だ!

 

慌てて兵藤君を回復させる。なんかすっかりグダグダになってしまったが、そろそろ気分を切り替えないとな。離れていた黒歌達を呼び戻し、俺達は女性を囲むように立った。

 

「あなた・・・何者? 感じられる殺気や覇気が尋常じゃないからただの悪魔だとは思わないけれど」

 

「そうね。いきなり乱入して名乗らないなんて無礼極まりないものね。初めまして、私はヴァーリ。今代の白龍皇・・・と言えばわかるかしら?」

 

「ッ! それって・・・!」

 

グレモリーさん達が驚き過ぎて固まっている。白龍皇って言ったら、あの赤ドラゴンと一緒にいた白ドラゴンの事でいいんだよな? 確か二体は倒されて、その魂が神器に宿されたって聞いたけど。それが兵藤君の籠手と・・・ヴァーリさんの神器ってわけか。

 

「私は上の命令でそこに倒れてる堕天使を捕まえに来たのよ。それを、フューリーがいたとはいえ、まさかあなた達だけで倒してしまうなんてね。ふふ、さっきの連携は見事だと言わせてもらうわ」

 

そう言って、ヴァーリさんは突然陶酔したかのような熱っぽい顔で、俺の方を向いて来た。

 

「特にフューリー・・・。あなたが最後に放ったあの技。見た瞬間に魂が揺さぶられたわ。コカビエルすら再起不能にする強大な一撃・・・。アレをこの身で受け止めると想像したら・・・ああ、それだけで濡れてしまいそうだわ」

 

ちょ、おぃぃぃぃぃぃぃぃ!!! 何言ってんのこの人ぉ!? てか俺何したの!? 誰か教えて!!! わざわざ攻撃されたいとかこの人もMなのか!? ならば大至急匙君を呼んでくれ!!! Mの気持ちはMにしかわかんねえよ!!!

 

「いつか、あなたと全力でぶつかれる時が来るといいのだけれど・・・。うふふ、その時が今から楽しみでしょうがないわ」

 

俺は全力で拒否します! もしそんな事になったら俺はオルゴン・クラウドで逃げます! ホントに何なのこの人。めっちゃ美人なのに、格好はヤバいし、露出強(誤字にあらず)だし、Mだし、どこまで残念なんだよ!

 

「な、なななな、何言ってるよのあなたは! か、神崎君は渡さないわよ!」

 

「そ、そうです! エッチなのはいけないと思います!」

 

「ご主人様に近づくな、変態!」

 

俺を守るようにヴァーリさんの前に立ちはだかるグレモリーさん、アーシア、黒歌。ああ、俺には守ってくれる人がいる。こんなに嬉しい事は無い。

 

「あらあら、嫌われたものね。まあいいわ。強者と強者は引かれ合う運命。フューリー、あなたと私の運命も必ず交わる時が来る。それを忘れないでね」

 

そんな運命、燃えるゴミの日に出してやる! 絶対にだ!

 

―――久しぶりだな、白いの。

 

突然発せられた、低く、威厳のある声が、俺を冷静にさせた。発生源は兵藤君。・・・正確には、彼の籠手だった。

 

―――ひ、久しぶりだな、赤いの。

 

続けて、ヴァーリさんの手を覆う鎧についた綺麗な宝玉から、光と共にその声が聞こえた。けど、何でビクビクした感じなんだろう。

 

―――無理するな、白いの。気持ちはわかる。俺も再びヤツの姿を目にした時、我を忘れて錯乱してしまった。

 

―――そ、そうか。お前も辛かったのだな。

 

―――ふ、やはり俺の気持ちをわかってくれるのはお前だけだな、白いの。

 

なんか、めっちゃ仲良さ気に会話してるんですけど。あなた達、悪魔と天使と堕天使を壊滅一歩手前くらいまで追い込むくらい激しいケンカしてたんですよね? なのになんですかその長年連れ添った親友みたいな雰囲気は?

 

―――どうする? あの誓いを果たすか?

 

―――まだ早い。それにお前はまだ気持ちの整理がついていないだろう。今は待て。そして、時が来たら俺とお前でヤツを・・・。

 

―――わかった。ならばそれまで力をつけておけよ、ドライグ。

 

―――お前もな、アルビオン。

 

それっきり声は聞こえなくなった。誓いって何の事だろう。・・・なんかもの凄い嫌な胸騒ぎがするのはどうしてだろう・・・。

 

「・・・さて、それじゃそろそろ目的を果たしますか」

 

ヴァーリさんがコカビエルへと近づく。

 

「驚いた。まだ生きてるのね。フューリー、あなたならあのまま始末出来たはずなのに、どうしてそうしなかったの?」

 

さてな。あの時の俺が何を思っていたのかはわからないけど、流石に殺人を犯すのはマズイってブレーキかけたんだろうな。

 

「俺は人は殺さない。その怨念を殺す」

 

「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」

 

こんだけボコってやったんだ。こいつも二度と子ども達に手を出す事は無いだろう。つか、またそんな事しようもんなら、今度こそこいつの聖剣(笑)をこの手で跡形も無く砕いてやる!

 

それはそれとして、何でグレモリーさん達、そんな変な物を見る様な目を向けて来るの? もうね、俺、自分がどんだけ中二的なセリフ吐いたって後悔しないつもりだけど、周りからそういう反応されるのってまだ辛いんだよね。・・・なら自重しろ? だが断る。

 

「あなたはコカビエルの持つ“戦争”という怨念を殺したってわけね。それほどの力を持ちながら、不殺を貫くその心・・・。ふふ、流石は騎士様と言えばいいかしら」

 

お、おお! なんかヴァーリさんが好意的な事を言ってくれた! 嬉しいな。残念な人だけど、距離感さえ常に把握しておけば、仲良くなれそうな人だな。

 

「それじゃ、コカビエルは預かるわ。また会いましょう、騎士様。それと・・・『赤龍帝』君も、次に会う時までにはもうちょっと強くなっててくれると嬉しいな」

 

最後にウインクし、ヴァーリさんはコカビエルの首根っこを引っ掴んだまま空の彼方へ飛んで行った。

 

こうして、紆余曲折ありながらも、変態共の討伐は成功という形で幕を下ろしたのだった。

 




ヴァーリ君はヴァーリさんになりました。ようやくまともなキャラが出ると思いましたか? 残念! 私がそんなキャラ出すわけないでしょう!

ちなみに、ヴァーリさんの『白龍皇の鎧』姿はあえて描写をぼかしました。みなさん、お好きなように想像して悶えてください。ただ一つ言える事は、彼女は原作とは別の意味でのケツ龍皇となるでしょう。

さて、次回で三巻部もエピローグ。ささっと終わらせて四巻部に入りたいと思います。

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