ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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ヴァーリさん関係で怒られるかと思ったらまさかのべた褒めの嵐に鼻水が出そうになりました。


第三十二話 新たなる日常

「そろそろ寝るか」

 

枕元の時計をチラ見し、俺はベッドに横になった。ああ、ホント、あれから色々あって大変だったなぁ。

 

ド腐れ親玉の撃破、その後の露出強との出会いは既に一週間も前の事になっている。丁度いい機会だし、一つ一つ思い出してみるかな。

 

残念美女ヴァーリさんが去った後、グレモリーさんが木場君に心配をかけた罰として、支取さんが匙君にやった様に彼の尻を叩きまくった後、俺がまずやる事になったのは、みんなに黒歌を紹介する事だった。彼女が塔城さんの姉で、どうしてここにいるのか、そして今は俺の家に住んでいる事を説明すると、案の定、事情を知らない子達は驚いていた。兵藤君なんかは、黒歌が何者なのかよりも、俺と一緒に住んでいるという所に反応してたけど。

 

そこへ、グレモリーさんが何故か対抗するかの様な感じで、俺の家に住んでいると付け加えた途端、兵藤君は突然滝の様な涙を流し始めた。「まさか・・・まさか、ハーレム王がこんな近くにいたなんて!!」とか叫んでたけど、それ誤解ね。確かに俺以外みんな女の子だけど、アーシアは保護者みたいな感じだし、グレモリーさんは家出中に寝る場所を提供してるだけだし、黒歌はペット・・・いや、もうそういう言い方は止めた方がいいか。あれだ、家族の一員だ。

 

「姉様」

 

みんなが兵藤君へ苦笑いを向ける中、塔城さんが一人黒歌の前に出る。そこで俺は思いついた。こうして再会を果たした事だし、ついでにここで関係の修復もしてみたらどうかと。

 

みんなクタクタだったし、とりあえず今日はもう家に帰ったらどうかという流れになり、俺はグレモリーさん、アーシア、黒歌、さらに塔城さんを連れて家に帰った。塔城さんを連れて来たのは、落ち着いて話せる場所で、黒歌と思う存分対話してもらう為だ。

 

黒歌の部屋へ二人を送り、俺達はリビングで待ち続けた。既に日付は変わっている。アーシアなんかは今にも眠ってしまいそうだったが、黒歌と塔城さんの事が気になるからと、睡魔と全力で戦っていた。

 

それから三時間が経った。途中、塔城さんの怒鳴り声や、黒歌の叫び声、そして二人の泣き声等が耳に届き、内心ハラハラしまくっていたが、次に部屋を出て来た二人がどこか晴れ晴れとしていたのを見て、俺はわだかまりが解消されたのだと確信した。

 

「もういいの、小猫?」

 

いたわるグレモリーさんに、塔城さんは小さく頷きながら答えた。

 

「・・・はい。まだ全てを受け止められたわけじゃないですけど、姉様は私を助ける為にその手を血に染めてしまった。私は・・・姉様を受け止めたい。いえ、受け止めなくてはならないんです」

 

「白音・・・」

 

「なら、後はあなた達二人で解決なさい。もう離れ離れになる事もないでしょうし、時間はたくさんあるのだから」

 

ニッコリ微笑むグレモリーさん。うんうん、彼女の言う通りだ。今の時間だけで足りないのなら、これからもっともっと話せばいい。そうすれば、いつかはお互いに心から手を取り合う事が出来るはずだ。

 

「嬉しそうですね、リョーマさん」

 

アーシアが俺の顔を見て笑う。いや、だってずっと離れていた姉妹が再会したんだよ? 感動ものじゃないか。

 

「当然だ。家族は一緒にいるのが一番なんだからな」

 

そう言うと、途端にみんなの顔が曇った。あれ? 結構いい事言ったつもりなのに、なんですかその反応・・・。

 

「先輩、あなたの家族は・・・」

 

「ん?」

 

「い、いえ、何でも無いです」

 

塔城さんが何か言いかけてたけど、よく聞こえなかった。なんだよ、気になるじゃんか。遠慮せずに言っちゃいなYO。

 

「ね、ねえ、神崎君。その・・・新しい家族を持つのもいいんじゃないかしら?」

 

と思ったら、グレモリーさんの方が口を開いた。その内容はなんのこっちゃわからなかったけど。ただ、頬をピンクに染め、もぢもぢするその姿はとても可愛かったのは確かでした。

 

「そ、それって・・・! 部長さん、なんて大胆な・・・!」

 

「ご主人様。私を選んでくれたら、白音もセットでついて来るよ」

 

「・・・何言ってるんですか、姉様」

 

「にゅふふ、今の不自然な間はなんだったのかにゃ~?」

 

「ッ・・・! な、何でもありません! 変な事言わないでください!」

 

え、何? みんなグレモリーさんの言葉の意味がわかったの? やべえ、俺一人だけ間抜けじゃん。このままでは年上(精神的な)の威厳が! よ、よし、ここはわかってますよ的な雰囲気を出してやる。

 

「そうだな。俺もみんなと一緒にいられたらいいと思ってるよ」

 

・・・あれ、これって微妙に噛み合って無い様な気が・・・。しかし、発言してしまってから後悔しても後の祭りだ。見ろ、みんなだって意味不明な言葉に首を傾げ・・・

 

「み、みんな・・・!? それって全員娶るって事・・・!?」

 

「はわわわわ!? そ、そんな、私はどうしたら・・・!?」

 

「うわ~。ご主人様、5Pなんて激し過ぎにゃ~」

 

「ふ、不潔です! 先輩がそんな人だったなんて・・・!」

 

うほっ!? 何その反応!? てか黒歌! そんなはしたない言葉を天使(アーシア)の前で言っちゃ駄目でしょうが! それ以前に、今の会話から何でそんな単語が出て来るの!? あれか、深夜の妙なテンションでおかしくなったのか!? それならもう寝なさい!

 

・・・なんて感じで、最後はカオスになりながらも、黒歌と塔城さんの話し合いは終わった。しかし、ようやく問題が解決したと思ったら、すぐさま新たな問題が発生した。

 

「というわけで、今日から白音もここに住む事になりました」

 

二日後、黒歌が塔城さんを再び家に招き、俺達の前でそんな事を言った。

 

「どういうわけよ・・・」

 

グレモリーさん。俺に代わってのツッコミありがとう。黒歌の隣で塔城さんが申し訳なさそうな顔をしている。

 

「姉様、やっぱり止めた方が」

 

「嫌にゃ! やっと白音と会えたのに、もう絶対離れたくないにゃ!」

 

ずるい! 流石黒歌ずるい! そんな泣きそうな顔でそんな事言われたらNOなんて言えるわけないでしょうが!

 

「大丈夫だ、問題無い」

 

最近、これが口癖になってきている気がする。本来は禁句なはずなのに。もしかして、俺って知らない内にヤバイフラグとか建てまくったりしてるのかな? そうだとしたら、アル=ヴァン先生、俺にそれを乗り越える力をお与えください。

 

「さっすがご主人様! 愛してる!」

 

愛の告白頂きました。しかし、俺は自意識過剰なチャラ男では無い。それが冗談だとすぐに理解出来る。

 

「あ、でも、それだと部屋が足りない気がするんですけど」

 

あ、そっか。四つある個室はもう満杯だ。塔城さんの部屋が用意出来ない。いや、まさか部屋の数で困る時がやって来るとはなぁ・・・。

 

「・・・わかったわ。私に任せてちょうだい」

 

そう言いながら自慢のお胸様を叩くグレモリーさん。僅かに揺れたそれを見たアーシアと塔城さんの瞳から一瞬ハイライトが消えました。・・・うん、忘れよう。それが俺の為だ。

 

とりあえず、グレモリーさんの考えが実行されるまでは、塔城さんは黒歌の部屋で一緒に寝る事になった。うーん、今の黒歌の喜びようを見ていると、このままでもいいような気がするけど・・・。

 

「そうか。なら頼むよグレモリーさん」

 

任せるという気持ちを込めてポンと肩を叩くと、なんとグレモリーさんの顔が急に悲し気に沈んだではありませんか! え、そんなに痛かった?

 

「グレモリーさん?」

 

「・・・リアスって呼んでくれないの?」

 

「え?」

 

「あの時は名前で呼んでくれたのに・・・」

 

うん? 彼女の名前を呼んだ記憶って無いんだけど・・・。もしかして、コカビエルにプッツンしてる時に呼んだとか? 記憶が曖昧になるくらいブチ切れてたんだから、何かを切っ掛けにそうした可能性も無いとは言い切れない。

 

まあ、それはそれとして。アーシアの時もそうだったけど、呼んでいいなら遠慮せずに呼ばせてもらいますよ?

 

「なら、今からリアスって呼ばせてもらうよ」

 

そう言うと、グレモリーさん・・・じゃなくて、リアスは、心から嬉しそうな笑みを浮かべた。・・・衝動的に抱き締めたくなったのは俺が変態だからでしょうか?

 

「う、うん。お願い。じゃ、じゃあ、私もあなたの事名前で呼んでいい?」

 

「ああ」

 

「そ、それじゃ・・・リョーマ」

 

「何だ、リアス」

 

「リョーマ」

 

「リアス?」

 

「リョーマ・・・リョーマ・・・リョーマ・・・」

 

ちょ、なんか怖いよリアス! 名前を呟かれるのって言い様も無い恐怖感を抱いてしまう。とそこへ、黒歌がわざとらしく咳をした。

 

「コホン! えー、勝手に二人だけの世界を作らにゃいでください。見ていて思わずもげろ! って思ってしまいました」

 

「うう、せっかく部長さんから数少ないリードをとっていたのに・・・追いつかれてしまいましたぁ・・・」

 

「そうやって手当たり次第に女性に手を伸ばすんですね。先輩は」

 

「とか何とか言って、本当は自分も名前で呼んでもらいたいんじゃにゃいの?」

 

「姉様! さっきから私をからかって何のつもりですか!」

 

「ご、ごめんなさい! だから尻尾は! 尻尾は止めて~~!」

 

塔城さんに尻尾を掴まれ悶える黒歌。この場に兵藤君がいたら今度こそ別世界への道を開くかもしれない・・・。

 

そんな感じで、これからまた家が賑やかになりそうだ。さて、家の事はこれくらいにして、次はゼノヴィアさんの事だな。

 

何故急に彼女の名前が出て来るのかというと、あのド腐れコカビエルをぶっ飛ばして、彼女と紫藤さんも無事に任務を達成したはずだったのだが、どういうわけか、ゼノヴィアさんは再び俺の前に姿を現した。しかも、駒王学園の制服を纏い、さらに背中に悪魔の翼を生やしてだ。そんなものを急に見せられて混乱しないはずがない。

 

そんな俺に対し、ゼノヴィアさんは涼し気な顔で淡々と答えた。

 

「神の不在を知り、教会を追い出されて行く所が無くなったからな。だが清々した部分もあるよ。まさか、あれほどまでに掌を返されるとは思ってなかったからな」

 

それを聞いて、やっぱり教会は馬鹿だと思った。せっかくこれからまともな組織として再結成されるだろうに、ゼノヴィアさんみたいな数少ないまともな子を追い出すとか、アーシアに対して同じ事をした頃から全然変わって無いのな。

 

「それに、神崎殿。私はあの時、コカビエルを圧倒したあなたにどうしようもないくらい惹き付けられた。苛烈にして、凄絶・・・正に無双というに相応しいその強さ。デュランダルの担い手として、あなたの傍でその強さを学ばせてもらいたい。悪魔は長い時を生きられると聞いている。ならばどこまで強くなれるか、試してみるのも面白いかな・・・」

 

そこで一度言葉を切り、今度はどこかソワソワした様子でゼノヴィアさんがもう一度口を開く。

 

「・・・そ、それに、教会にいるよりも、こうして近くにいた方が、以前あなたが言った“良い関係”とやらを築き易いだろうからな」

 

あれはキミが教会にいるという前提で言ったんだけど。・・・まあいいか、こんな良い子をあっさり突き放す連中なんかもう知らん。はあ、紫藤さんは大丈夫かな。一人になって連中の変な考えに影響されないといいけど。

 

「とにかく、そういうわけだ。これからよろしくお願いしますよ、神崎先輩?」

 

「・・・ああ、こちらこそ」

 

ゼノヴィアさんが俺に向かって手を差し出す。てか、先輩? え、年下?

 

新たな仲間の意外な事実に驚きつつ、俺も彼女に向かって手を伸ばすのだった。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

これくらいかな。もの思いにふけっていたら既に三十分以上過ぎていた。これ以上起きてたら明日に響く。

 

(そういえば・・・今日は木場君の機嫌が妙に良かったな。明日辺り何かあったのか聞いてみるか)

 

そして、俺はゆっくりと意識を手放したのだった。

 

SIDE OUT

 

 

祐斗SIDE

 

・・・夢を見た。とても幸せで、とても嬉しい夢を・・・。

 

どこまでも続く広い広い草原。それを僕は空から見下ろしていた。その草原を、あの子達が・・・僕に新たな力を授けてくれたかつての仲間達が走り回っていた。

 

「ほら、こっちだよ!」

 

「待ってよ~!」

 

「あはは! 頑張れ~!」

 

みんな本当に楽しそうに笑っている。それだけで、僕も嬉しかった。彼らの心からの笑顔を、こうして目に焼き付ける事が出来たのだから。

 

声はかけられない。さっきから声どころか体すら動かす事が出来ないからだ。けれど、それでもよかった。今の彼らを邪魔したくなかったから。ちょっと寂しい気もするけどね。

 

そうやって彼らを見ろしていると、新たな人物が姿を現した。その人は女性で、ちょうど僕の方へ向かって顔を上げた。

 

―――その瞬間、僕は不覚にも胸をときめかせた。

 

余計な言葉はいらない。ただ、美しいと、女性の顔を見た僕はそう思った。失礼を承知で言わせてもらえるなら、部長すらも彼女の前では霞んで見えてしまいそうだ。絶世という言葉すら彼女の美しさを表現するには全然足りない。こんな陳腐な言葉を使いたくないけど・・・女神様という言葉がピッタリだと思った。

 

風になびく金色の長髪。同じく、こちらの全てを見透かしてしまいそうな、金色の瞳。鼻も口も、その他全ても完璧としかいいようが無い。心臓が激しく鼓動する。

 

加えて、彼女からは神聖な気を感じる。なのに、僕はそれに対して嫌悪感を全く抱いていない事に自身で驚いた。むしろ、温かみすら感じてしまう。

 

(・・・木場祐斗)

 

唐突に、僕の頭の中に声が響いた。耳がとろけてしまいそうになるほどの、甘美なるその声の主は、あの女性だと、何故か理解出来た。

 

(木場祐斗。あなたと、この子達の過去を視させてもらいました。安心なさい。この子達は私が必ず幸せにしてみせます。ですから、あなたはあなたの生を全うしなさい。そして願わくは、私の所為であの世界へ跳ばされてしまった“彼”を助けてあげてください)

 

あ、あなたは何者なのですか! それに“彼”とは一体・・・!?

 

(わた・・・オ・・・ァー・・・亮・・・を・・・頼・・・す・・・)

 

雑音と共に、声がどんどん小さくなっていく。

 

ま、待ってください! まだ話を・・・!

 

目の前が真っ白になる。思わず目を瞑ってしまった僕が次に目を開けた時、そこは見慣れた僕の部屋だった。

 

「・・・夢?」

 

これだけハッキリ覚えている夢なんて、過去についての夢以外では初めてだ。ふと、頬を熱い何かが流れて行く。それは涙だった。

 

夢でもいい。幻でもいい。彼らの笑顔を、僕は永遠に忘れる事は無い。僕にとってはそれだけで充分だった・・・。

 

「・・・ふふ、今日は何だか良い一日になりそうだ」




いかがでしたでしょうか? これにて三巻部は終了です。今回はオリ主に最初にとんでもない勘違いをさせて、それを追いかける様な感じで進めてみました。なんか、ありえないくらい真面目な場面ばかり出て来てしまいましたが、ちゃんと楽しんでいただけましたでしょうか?

次回からは新章です。これからも騎士(笑)をよろしくお願いします。

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