ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜 作:ガスキン
第三十三話 ご家族の方ですか
オカンが眠りについた。いや、別に「オカンは死んだ! もういない!」っていうわけじゃない。そのまんまの意味通り、眠ってしまったのだ。
『いや~、ほっとけへんかったとはいえ、この年で“ゴッデスフォーム”なんて使うもんや無いなぁ。おかげで体中バッキバキやしクタクタやでホンマ』
なんか声に合わせてバキバキとか音が聞こえるけど、正直何の事を言っているのかさっぱりわからない。まあオカンの事だ。もしかしたら、どこかの誰かにお節介でも働いたのかもしれない。
『ちゅうわけで、アンタには悪いけど、ちょっと休ませてもらうなぁ。そうやな・・・アンタの時間で表すと一ヶ月くらいかなぁ。その間はウチも手助け出来へんから、気張りや~~』
その言葉を最後に、オカンの声は聞こえなくなった。試しに何度か呼んでみたけど、返事が返ってくる事はなかった。けれど、これまで散々世話になって来たわけだし、むしろ休んで貰った方がこっちとしては気が楽になるからいいか。
そんな会話が交わされたのが三日前。で、今の俺はというと、リアスにオカルト部に呼び出されていた。いつものメンバーの前で、彼女はいかにも怒ってますといった顔で話を切りだした。
「まさか、堕天使の総督がいつの間にかこの街へ侵入していたなんて・・・」
どういう事かというと、悪魔のお仕事(呼び出された相手のお願いを叶える仕事らしい)に出かけた兵藤君を待っていたのが、堕天使陣営のトップを務めている凄い人だったらしい。・・・もしかして、レイナーレさんの想い人ってその人なのかも。
「いくら三陣営のトップ会談がこの街で執り行われる事になっているとはいえ、これはれっきとした営業妨害だわ」
ああ、そうだ。ド腐れコカビエルの一件をうけて、なんか悪魔と天使と堕天使のお偉い方がどういうわけかこの街にやって来るって聞いてたな。て事は、その人、一足早く現地入りしてたわけか。うーん、予定ではもうちょっと先って聞いてたけど、遅れないように誰よりも先に来るなんて、凄く真面目な人なんだろうなぁ・・・。
「目的は恐らく・・・神崎先輩との接触。そして、イッセー君の神器でしょうね」
「え、ええ!? 何でだよ木場!? コカビエルぶっ飛ばした先輩ならわかるけど、どうして俺まで!?」
「イッセー君。アザゼルはね、神器にとても造詣が深い事で有名なんだ。それに、優秀な神器使いを集めているとも聞いている」
「マジかよ・・・。堕天使のヤツ等、どこまで俺に付き纏う気だよぉ・・・」
ゲンナリした様子の兵藤君に対し、木場君が彼の肩に手を置きながら、女の子なら間違いなく顔を赤らめるであろう素敵スマイルを浮かべた。
「安心して、イッセー君。キミの事は僕が絶対守るよ。僕の事を助けてくれたキミを、今度は僕が助けたいんだ」
うんうん、男同士の友情って素晴らしいね。兵藤君、こういう友達って本当に貴重だから、木場君とは仲良くやらないと駄目だぞ。
「もちろん、先輩もですよ」
「ん?」
木場君が目だけこちらに向けて来た。
「あなたはイッセー君とは違って、影ながら僕を手助けしてくれました。あの時頂いた地図は、本当に役に立ちましたし、コカビエルとの戦いで弱気になっていた僕を熱い言葉で励ましてくれた。・・・嬉しかったです。僕は、あなたと出会えて本当によかった」
後輩が困っていたらそっと手を貸すのが先輩の役目だしな。そういう意味では、あの時のお節介は無駄じゃなかったって事か。
「せ、先輩、ちょっと・・・」
「?」
急に手招きする兵藤君に近寄ると、彼はそっと耳打ちして来た。
「な、なんか、木場おかしくないですか?」
「兵藤君、ああいう風に言ってくれる友人を悪く言うのは感心しないぞ」
「ち、違いますよ。アイツが俺に対してああ言ってくれたのは嬉しいですよ? ただ、その・・・アイツの顔を見てると、BでLな感じがして・・・」
「顔?」
言われてチラッと様子を覗う。俺と兵藤君を見つめる木場君。その瞳は妙に熱っぽく、頬もやや上気している。・・・いや、そんなわけない。俺は見間違っただけだ。
「気のせいだ」
「え? で、でも・・・」
「気のせいだ。ああ、そうとも。気のせいに決まっているじゃないか、兵藤君。あれは慣れない事を言ったから照れているとかそういう感じのヤツだ」
「そ、そうなんですか?」
「・・・そう思うしかないじゃないか」
ちょっとばかし本気で兵藤君に言い聞かせる。今、彼が抱いている懸念・・・それに触れた時、俺達は取り返しのつかない道を歩む事になるだろう。
「先輩? イッセー君?」
「何でも無いよ。なあ、兵藤君?」
「あ、え、あっと・・・・そ、そうッスね! 何でも無いぞ、木場!」
そうだとも。誰もそんな展開など望んでいないのだからな! よし、この話はこれで終いだ。リアス、続きをお願いします!
「けれど、実際どうしたものかしらね。相手は堕天使総督・・・。うかつに接触など出来るはずも無いし・・・」
腕を組み、むむむと唸るリアス。・・・ああ、なんか今、無性に三国志が読みたくなった。この学園の図書館にあったっけ? 時間出来たら探してみるか。
「・・・ふ、アザゼルは昔から思い立ったら即行動が常だったからね」
ふお、この甘いイケボイスは・・・イケメン魔王! 貴s・・・あなた、見ているな!
全員が一斉に振り向く。そこにはやはり予想通り、赤い髪が素敵な魔王ことサーゼクスさんがいましたとさしかもその背後にはバイオレンスメイドさんまでいるではありませんか。
「お、お兄様!? グレイフィアまで!?」
あーそっか、この人ってリアスのお兄さんでもあるんだよな。パーティー会場で聞かされた時はめっちゃ驚いたけど。確かに言われてみたら似ている部分が見受けられる。
数人を除いて、残りの子達が彼に向かって跪く。ちなみにその数人の中には俺がいる。後は兵藤君とアーシア、それとゼノヴィアさん。前者の二人は驚いて、後者の一人は単純に誰かわかってないからだろうな。じゃあ俺はって? いや、普通に今日もイケメンだなーって間抜けな事考えながら魔王様の顔見てますけど何か?
「はは。そんなに畏まらなくていいよ。今日の私・・・いや、僕は魔王としてここに来ているわけじゃない。つまりただのプライベートさ」
魔王なのにこの気さくさ。流石イケメンは違う。リアス達もその言葉を受けてみんな一斉に立ち上がった。
「フューリー。いや、それとも神崎君と呼んだ方がいいかな?」
サーゼクスさんの瞳が俺を捉える。
「どちらでもお好きなように」
「ふむ・・・。いっその事、リョー君とでも呼んでみるのも面白いかもな」
まさかの愛称!? 名前ぶっ飛ばしていきなりそれですか!? てかこの年でリョー君とかマジ恥ずかしいんで止めてください。
「サーゼクス様。お戯れはその辺で」
「いや、戯れってわけじゃ・・・」
「・・・」
「・・・はい、すみません」
グレイフィアさんの無言の圧力に押し黙るサーゼクスさん。賢明な判断だと思います。あのまま続けてたらきっと鉄拳が飛んできたと思うんで。
「そ、そうだ、グレイフィア。キミも神崎君に何か言う事があったんじゃないのかい?」
露骨な逸らしに、グレイフィアさんが一度大きく溜息を吐くと、その美しい顔を俺に向けて来た。
「お久しぶりでございます、神崎様」
「ええ、そうですね」
「あの時、あなたのお部屋であなたを見た時、只者ではないとは思っていましたが・・・まさか、伝説の騎士と呼ばれていた方であったとは、流石に驚きを禁じ得ませんでした」
俺はあなたがいきなり部屋にやって来た事に驚きましたよ。
「これからも、お嬢様の事をよろしくお願いいたします。友人・・・いえ、ゆくゆくはそれ以上の関係として」
「グ、グレイフィア!」
「はい。もちろん、(友人として)そのつもりです」
「ふえっ・・・!?」
俺の答えに満足気なグレイフィアさんと、顔が真っ赤なリアス。すまない。身内から友達に「仲良くしてやってくれ」とか言われたら恥ずかしいだろうが、ここは自分の意思をハッキリ示しておく必要があるんだ。中途半端な答えだとこの人に何されるかわかんねえし・・・。
「ははは! いやあ、リーアのそんな顔を見るのは新鮮だなぁ! それだけでここに来た価値があるよ!」
肩を揺らし大笑いするサーゼクスさん。この人、もしかして身内イジリ好き? うわあ、大変だな、リアス。きっと家でもからかわれまくってたんだろうな。
あ、家っつったら、彼女いつになったら親御さんと連絡取るつもりなんだろう。そろそろ向こうも心配してるだろうし、一度勧めてみるか。安心してくれ、リアス。一人で不安なら俺も一緒に付いて行くからな。
「お、お兄様! 私をからかいに来たわけではないのでしょう! 早くご用件を言ってください!」
未だに笑いを抑えられないまま、サーゼクスさんは懐から一枚の紙を取り出した。見憶えのあるその紙には、大きな文字で『授業参観のお知らせ』と書かれていた。
「これに参加しようと思ってね。あ、それと父上にも伝えてあるから安心なさい」
授業参観か・・・。ウチはだーれもいないからなぁ。黒歌はワケありだから来れないし。
「な、何を言っているのですか! 魔王であるあなたが仕事を放棄して授業参観なんて・・・!」
リアスの言葉に、サーゼクスさんは待ってましたと言わんばかりに答えた。
「これも仕事だよ。実は三陣営のトップ会談をこの学園で執り行うつもりなんだ」
ドヤァ! なんて音がどっかから聞こえて来そうな感じの顔だった。ふーん、ここでやるのか・・・・・・・・・・・・・・ファッ!?
「ええ!? そ、それは本当ですか!?」
「ああ、本当だよ。この学園とは色々と縁がありそうだしね。魔王の妹であるキミに、赤龍帝を宿す少年、聖魔剣という世の理を越えた力、聖剣デュランダル使い、さらに、魔王セラフォルー・レヴィアタンの妹まで在籍し、そこへコカビエルと、露出k・・・白龍皇の襲来。そして・・・伝説の騎士フューリー。様々な力がどういうわけかこの地へ集結している」
おい、今この人絶対ヴァーリさんの事、露出狂って言おうとしたよな。ああ、やっぱりそういう認識されてるのね、彼女。てかそれなら言ってあげれば・・・いや、彼女には言っても無駄かもしれないな。ただ、一つだけ訂正させてもらうなら、彼女は露出狂ではなく、露出強だ。
「とにかく、そういう事なんだ。ああ、そうそう。当日は神崎君にもぜひ参加してもらいたい」
「俺もですか? しかし、俺は悪魔でも何でも無いのですが」
「ははは、そんな事は全く関係ないさ。正直、僕達は会談よりもキミの話を聞く方が楽しみでしょうがないんだからね。あの時約束した話をする場をようやく設ける事が出来たってわけさ」
おい、それでいいのか魔王様! しかも僕”達“って事は他の人達もって事でしょ? おい会談しろよ。目的履き違えてるじゃないですか。
「おや、話に夢中になっていたらもうこんな時間か」
それから、初対面という事で、ゼノヴィアさんとサーゼクスさんが互いに自己紹介を済ませた所で、サーゼクスさんが時計に目を向ける。ああ、確かにもう結構遅い時間だな。もう帰らないと黒歌が心配してしまう。
「それじゃ、僕達はそろそろ失礼するよ。今からでも探せば宿泊施設くらい見つかるだろう」
「わかりました。それではお見送りを」
「いいよ。これはプライベートだって言っただろ? だからリーア達も早く帰りなさい。さあ、行こうかグレイフィア」
「はい」
「さて、部屋はどうしようかな。やっぱり相部屋? それとも別々にぐあ!?」
み、見た。ついに見てしまった。グレイフィアさんの拳が、サーゼクスさんの鳩尾に吸い込まれる瞬間を!! す、すげえ、早過ぎて残像が見えたぞ。
「馬鹿な事言ってないで、行きますよ」
「は、はい・・・」
鳩尾を擦りながらグレイフィアさんに付いて出て行こうとするサーゼクスさん。そして、二人が出て扉が閉まる直前、俺の耳にこんな声が聞こえた。
「・・・相部屋がいいです」
その声を聞いた俺が、再び魔王様に呪詛の念を送ってしまったのは、仕方無い事だと思う。
というわけで、オリ主は悪魔だけでは無く、他の勢力からもすでに目をつけられていたのでした。
さて、次回はプール回ですが、この小説に原作と同じムフフなシーンを期待しないでくださいね。いいですか、絶対期待しないでくださいよ?