ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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予定が変わりました。今回もプール回です。


第三十五話 たとえ何者であろうとも

「ほら、もっとしっかり足を動かして」

 

「こ、こうですか~!」

 

「その調子にゃ、白音。ちゃんとお姉ちゃんが手を持っててあげるから安心して泳ぐにゃ」

 

「は、はい・・・!」

 

「・・・やっぱり締め付け具合が不快ね。今からでも脱ごうかしら」

 

「ちょっと! 変な真似しないでって言ったでしょ!」

 

「ほーら、イッセー君。早く逃げないと捕まえちゃうよ」

 

「何でテメエと追いかけっこしなきゃなんねえんだよ! マジで近付くな!」

 

「・・・はあ」

 

水と戯れる美女、美少女達(一部例外あり)に思わず溜息が出る。俺だって健全な男だ。こんな素晴らしい光景を前に何も思わないわけは無い。眼福とは正にこの事だな。

 

しかし、あの二人・・・リアスと黒歌の水着はなんとかならんのか。あれ最早水着じゃないだろ。他の子達はどうして止めなかったのだろうか。いやね、似合ってないとは思ってないよ。むしろ似合い過ぎててヤバい。ハッキリ言うとエロい。学校のプールで着るってだけなのに、何であんな扇情的かつ挑発的な水着を選んだのかね。・・・いや、逆に大勢の前じゃ着られないからこそ、ここで着たのかもな。

 

そして、あの危ない水着の名称を知っていた兵藤君は流石だと思った。

 

『前にエロ水着特集のDVD見た時に知りました』

 

自慢気に語る兵藤君。それを塔城さんがコールドアイで見つめていたのを俺は見逃さなかった。まあ、彼女は他の子達に比べて一層そういったネタが好きじゃないみたいだから仕方ないのは仕方ないんだけどな。

 

あの二人に比べて、露出強のヴァーリさんがまともに見えるっていうのがおかしいな。あの時の俺の説得は間違っていなかったようだ。思い返すと、店で彼女が手に取っていたのは、黒歌のアレよりもさらに危険なブツだった気がする。・・・マジでよくやったよ、俺。下手したら今頃通報されてたかもな。

 

そんな感じでプールサイドからみんなの様子をボケーっと眺めていると、姫島さんが一人プールから上がると、どういうわけかこっちに近付いて来た。明らかに小さすぎるビキニが、水の所為で体にピッタリと張り付き、おかげで胸の先端の色と形がくっきり浮かび上がっている。自称、紳士な俺はさりげなく視線を逸らす。

 

やがて、彼女は俺の前に立った。

 

「ちょっと疲れてしまいましたわ。ご一緒してよろしいかしら」

 

「どうぞ」

 

「それでは」と前置きし、姫島さんが俺の隣に座る。すかさず傍に置いてあったタオルを彼女の肩にかける。

 

「それで体を拭くといい」

 

「ふふ、紳士ですわね。ではありがたく使わせて頂きますわ」

 

ホントはキミの上半身を隠す為なんですけどね! などと言えば逆に変態扱いされてしまう恐れがあるので、俺は微笑みを返すだけにした。

 

「あなたと二人きりでお話するなんて久しぶりな気がしますわね」

 

「そうだな・・・。去年は大体リアスとキミがセットだったし、今年はオカルト部のみんなと一緒の時がほとんどだったからな」

 

そう答えると、姫島さんはどこか含みのある笑みを向けて来た。彼女がこういう顔をする時は誰かをからかう時が相場だ。

 

「そういえば、いつの間にかリアスの事を名前で呼んでいますわね」

 

「ああ。彼女から許しが出たからな。おかげでより友人としての仲が深まった気がするよ」

 

「友人・・・ですか」

 

「ん?」

 

「何でもありませんわ。ただ、そういう理屈なら、未だ名字で呼ばれる私は、神崎君との仲はまだ深くないという事になりますわね。うう、悲しいですわ。大切なお友達と思っていたのに、あなたの方はそうじゃなかったなんて・・・」

 

わざとらしくタオルで目元を拭う姫島さん。だがしかし、口元がうっすら笑っているのできっと嘘泣きだ。証明終了! 真実はいつも一つ!

 

よかろう。ならば、ここはそれを逆手にとってイタズラ返しをしてやろうではないか。ふふふ、イジリキャラがイジられたらどういう反応をしてくれるのかね。

 

「朱乃」

 

「ッ・・・!?」

 

「そんな事を言わないでくれ、朱乃。俺だって、本当はキミの事を名前で呼びたかったんだよ」

 

「え? え? ええ?」

 

「朱乃。ああ、朱乃。実にキミに相応しい名前だ。キミは俺にとって大切な(友)人だよ。キミにそんな不安を抱かせてしまうなんて、情けないな、俺は」

 

「か、神崎君、もう・・・」

 

「俺の事も名前で呼んでくれないか? キミのその艶やかな声で呼ばれたら、それだけで俺は―――」

 

「わ、わかりました! 調子に乗った私が悪かったですわ! ですからもう止めてください!」

 

よし、勝利! 俺は心の中でガッツポーズを取った。対する姫島さんは恥ずかしいのか、それともからかわれて腹が立ったのか、顔が真っ赤だ。俺としては前者だとありがたいんだけどな。

 

「うう、いつかリアスに言われた事を改めて思い知りましたわ」

 

何の事かと尋ねると、姫島さんは慌てて何でもないと首を横に振った。その反応は何でもないわけじゃないよね? よし、今度リアスに聞いてみよう。

 

「も、もうこの話はお終いですわ。別の話をしましょう」

 

俺としてはこのままキミをイジってるのも楽しんだけど。まあ、ここらが引き際かな。あまりやり過ぎると本気で怒らせてしまうかもしれないし。

 

というわけで、適当な話題を出し合っている内に、今度の授業参観。そして、三陣営のトップ会談の話となった。

 

「リアスは大変そうだな。お兄さんに加えてお父さんまで来る事になっているとは」

 

「・・・そうですわね」

 

あれ、ついさっきまで笑顔で話していた姫島さんが急に表情を曇らせてしまったぞ。なんか、俺が言ったお父さんという単語がきっかけだったように見えたが・・・もしかして、父親と仲が悪いのかな。

 

「姫島さんは家族の方は?」

 

「来ませんわ。・・・いえ、来れないと言った方がいいかもしれないわね」

 

ああ、仕事とか? なんて考えた俺に対し、姫島さんは衝撃的な事実を口にした。

 

「私の母は・・・私が幼い頃に死んでしまいましたから」

 

「ッ!?」

 

マ、マジか・・・。くそ、知らなかったとはいえ、なんて軽率な質問をしてしまったんだ。俺はすぐに姫島さんに謝罪した。

 

「すまない。嫌な事を話させてしまった」

 

「いいんです。話していなかったこちらに非がありますもの」

 

優しいな、姫島さん。明らかにこっちが悪いのに、こうやってフォローしてくれるなんて。考えてみると、彼女っていつも周りに対しての気配りが上手いよな。オカルト部でもさりげなくみんなにお茶やお菓子を出してくれたりするし。・・・っと、今はそれは関係無いか。

 

「そう言ってくれると救われるな。ならば、お父さんの方―――」

 

「あの人の事は知りません」

 

俺が言い切る前に、いつもの微笑みを消し、完全な無表情で答える姫島さん。その表情に薄ら寒さを感じつつ、俺はそれ以上踏み込むのを止めた。

 

「そうか。ちなみに俺もキミと同じで誰も来ないよ」

 

露骨な逸らしだったが、姫島さんはそれに乗ってくれた。

 

「あら、黒歌さんは呼ばないのですか?」

 

「彼女はわけありだからな。それに、魔王が来るとわかった以上、余計呼ぶわけにはいかなくなったからな」

 

「そうですわね・・・。ただ、あの人が来ると別の意味で大変になりそうですけど」

 

どういう意味だ? あ、もしかして、あんな美女がやって来ると騒ぎになるって言いたいのか?

 

「大勢の前でご主人様なんて呼ばれたら・・・。ふふ、一躍時の人になりそうですわね」

 

イァエ!? そ、それはまずい! 今は奇跡的にまともな人間に見られているのに、家族にご主人様なんて呼ばれているなんて知られたら・・・その先に待つのは変態誕生という名の地獄だ! 下手したら今度こそボッチロードを歩くハメになる恐れが!

 

「どうやら、私達にとってはあまり関係無い一日になりそうですわね。それよりも、その後に控えるトップ会談の方が重要じゃないかしら」

 

う、うん。そうだな。姫島さんの言う通りだ。俺達はそっちの方を考えよう。

 

確か、コカビエルの一件が今回の会談のそもそものきっかけなんだよな。あんなド腐れ堕天使一人の為に、各陣営のトップが集まるってちょっと腑に落ちないんだけど。やっぱり幼い子どもに手を出すのはどこから見ても外道な行為なんだろうか。ま、それは当然か。もうね、前回の事件に関わった野郎ども全員のアレをちょん切っちゃえばいいと思うんだ。

 

「堕天使のトップは・・・確かアザゼルという名だったな」

 

「・・・神崎君は、堕天使に対してどういう感情を持っていますか?」

 

あまりに脈絡の無い質問に面食らう。けれど、そう聞いて来る姫島さんの顔は真剣で、どこか緊張している風にも見えた。

 

堕天使に対する感情か。・・・どうだろう。コカビエルの様なヤツもいるし、レイナーレさん達みたいな子もいる。だからその問いに対する答えは・・・。

 

「わからない・・・かな」

 

「わからない?」

 

「ああ。今の俺は堕天使という括りに対して何か思う様な事は無い。ただ、コカビエルや、レイナーレさん達のような個人に対する感情しか持っていないからな」

 

コカビエルはムカつくが、たった一人の所為で他の人にまで同じ感情を抱くのは間違っている。実際にこの目で見てから判断しないと、いつか間違いを犯してしまうだろう。

 

「・・・でしたら。もし、もしですわよ。あなたの友人が実は堕天使だったら・・・あなたはどう思いますか? 正体を隠していたその相手を責めますか? それとも、騙された怒りそのままに、相手を滅ぼしますか?」

 

滅ぼすて・・・。姫島さん、キミの中の俺のイメージってそんなクレイジーなの? 止めてよ、俺はあの神父とは違うんだから。

 

いや、詮索は後にしよう。とりあえず答えないと。うーん、でもなぁ。正直・・・。

 

「どうでもいいな」

 

この一言に尽きる。

 

「ど、どうでもいい・・・?」

 

呆気というか、呆然とする姫島さん。中々見れないレアな表情を脳内カメラで撮影しつつ、俺は続ける。

 

「堕天使だろうがなんだろうが、その相手が友人だという事には変わらない」

 

「で、ですが、あなたを騙していたんですよ?」

 

「正体を隠さなければならない理由があるとしたら? 本当の事を言えない事情があるとしたら? それを騙されたと思うのは違うんじゃないのかな。むしろ、一人でずっと抱え込んでいた事に気付いてやれなかった事が申し訳ないくらいだ」

 

たとえ悪意を持って騙していたとしても、俺は直接真実を聞くまでは相手を責めたりはしない。そもそも、相手が何者かってだけで責めたりするヤツが友達って言えるのかって話だよな。

 

「俺はただ友人を受け入れるだけだ。それが堕天使でも悪魔でもな。だから・・・正体など、どうでもいいんだ」

 

・・・うわー。また語っちゃったよ、俺。けどまあ、聞かれた事を答えただけだし、別に気にする事でも無いか。うん、そうだ。気にしたら負けだ。

 

その時、姫島さんが突然俺に背中を向けた。なんか小刻みに体が震えているけど、もしかして寒いのか? タオルもう一枚貸そうか?

 

「姫島さん?」

 

「何でも・・・何でも無いですわ・・・」

 

いや、声も震えてるじゃん。やせ我慢なんかしなくていいっての。

 

「無理するな姫島さん。辛いなら辛いと言ってくれ」

 

そう言うと、姫島さんはゆっくりこちらへ振り向くと、次の瞬間、俺の胸に飛び込んで来た。ちょっ! 予想外にも程があるわ! πが! πの感触がぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

「辛いのではありません・・・。ですが、どうかしばらくこのままでいさせてください」

 

しばらくってどのくらいですかね! やばい。薄着での密着ってこんなに強烈なのか! このままでは理性がマッハだ! ・・・『鉄壁』って精神的な固さも倍になったりする? ええい、気休めでも構わん! 使うぞ!

 

そうやって『鉄壁』を発動させようとした俺に、プールからの叫び声が届いた。

 

「あ、朱乃!? あなたリョーマに何して・・・!」

 

慌てた様子でプールを上がるリアス。出来たらキミにはずっと中にいて欲しかったんだけどな。止めて。その扇情的過ぎる姿で近付かないで。

 

俺の祈りも虚しく、リアスは大股で俺の方へやって来ると、未だ離れてくれない姫島さんの手を取った。

 

「と、とにかく離れなさい朱乃! リョーマも嫌がってるじゃない!」

 

そんなリアスに対し、姫島さんはいつもの微笑みを取り戻し、益々俺との密着を強めた。それに合わせて形を変える大玉スイカが俺の精神的なHPを激しく削っていく。

 

「リアス」

 

「な、何よ?」

 

「私・・・ちょっとばかり本気で挑ませてもらってよろしいかしら?」

 

挑む? どこの誰に? というか、何で今の流れでそんな話に? けど、リアスにはそれがどういう意味かしっかり伝わったようだ。彼女は驚愕の表情を姫島さんに向けた。

 

「・・・そう。そういう事なのね」

 

「ええ、そういう事ですわ」

 

「リョーマ!」

 

「な、何だ?」

 

「朱乃ばかりに構ってないで、私の相手もしてちょうだい! ほら、このオイルを背中に塗って!」

 

胸の谷間から小さなボトルを取り出すリアス。すごいなー。そんな物まで収納出来るんだー。・・・なんて感心すんな俺! ここはツッコむ所だろうが!

 

「それなら私にも塗って欲しいですわね。もちろん、背中だけなんて言わず、前も」

 

「わ、私だって! リョーマが望むなら胸でもどこでも揉ませてあげるわよ!」

 

何この羞恥プレイ。そしてリアス、何で揉むって話になってんの? オイル塗るだけだよね? 美少女二人の体を触れるとか男にとっては夢の様なシチュエーションだけど、彼女でもない子の体をまさぐる気は無いよ? それだけは譲らない。ヘタレと言われようがこれが俺のルールだ。いつかそういった時が来るまで、俺は童帝の座に君臨し続けてやる。

 

さて、盛り上がる二人は置いておいて、向こうで鼻血を吹き出しながら木場君から逃げている兵藤君を助けに行くか。

 

そう決めて、俺はプールへ向かって歩き始めるのだった。




本当は本編を進めるつもりでしたが、朱乃様の出番が少ないという感想を頂いたので、今回はこんな感じになりました。

次回こそ授業参観に入ります。ここからようやく本格的に“彼女”を出せそうです。

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