ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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退場した彼女達のその後がちょっとだけ出ます。


第三十九話 約束

「というわけで、ヴラディ君の神器は俺には効かないらしい」

 

「そ、そうみたいですぅ・・・」

 

「・・・もう驚く気力も無いわ」

 

「ますます人外じみて来ましたわね」

 

時間停止中のやりとりを説明すると、リアスと姫島さんからそんな風に言われてしまった。

 

「時間を止めるって・・・そんなん反則レベルじゃないですか」

 

「そう言うイッセー君の力だって、僕達からみたら十分反則レベルだよ?」

 

兵藤君に対し、木場君がそう返す。確かに、時間をかければかけるほど、どんどん力が倍に増えていくって、恐ろしいよな。俺も精神コマンドさえ使えば同じ様な事は出来るけど、精々三倍が限界・・・いや、『捨て身』を使えばもう少しいけるか。代わりに相手の攻撃全部受ける事になるけど・・・。

 

「けれど、ギャスパーはその神器を制御出来ず、無意識に発動してしまう。だから今まで封印されていたのよ」

 

「へー。けど、部長ってやっぱり凄いんですね。そんなヤツを駒一つだけで眷属にしちゃうなんて」

 

そっか。能力の高い相手を眷属にするのって駒が複数必要だったっけ。兵藤君も『兵士』の駒を八つ使ってやっと眷属に出来たって聞いてるし。

 

「それは『変異の駒』のおかげよ」

 

「『変異の駒』?」

 

また新しいワードが出て来た。首を傾げる兵藤君に、リアスの言葉を引き継いだ木場君が答える。

 

「通常の駒と違って、明らかに駒を複数使うであろう転生体が、一つで済んでしまったりする特異な現象を起こす駒の事だよ。だいたい、上位悪魔の十人に一人は一つは持ってる物さ。ギャスパー君はその駒を使った一人ってわけさ」

 

「もしかしたら、神崎君も『変異の駒』を使えば悪魔に転生させられるかもしれませんわね。うふふ、将来独立した時に手に入ったら使ってみようかしら」

 

うーん、どうなんだろう。あの時は駒の数がどうとかじゃなくて、駒自体を受け付けない感じだったんだけどな。

 

「そうやって眷属に出来たのはいいのだけれど、問題はこの子の才能にあったの」

 

「? どういう事ですか?」

 

「ギャスパーの神器は無意識の内にどんどん力が高まっていくみたいなの。将来的には『禁手』へ至る可能性もあるという話よ」

 

『禁手』かぁ。あれってカッコイイんだよな。俺のラフトクランズも『禁手』しないかな。・・・まあ、そもそも神器じゃないから無理か。

 

「だ、大丈夫なんですか? 『禁手』ってただでさえ危険なのに、コイツみたいに制御出来ないヤツが至ったらえらい事に・・・」

 

「そうね。ただ、上はそうは思っていないようなの。今の私ならこの子をちゃんと制御出来ると判断されたみたい。この子は本当に凄いのよ。ハーフだけど、由緒正しい吸血鬼の家柄出身で、能力を有しているし、強力な神器も宿している。さらに魔術にも秀でているわ。・・・こうして改めて説明してみると、駒一つで済むわけがないわよね」

 

・・・今さらっと爆弾発言しましたよね? え、吸血鬼までいるのこの世界?

 

「きゅ、吸血鬼!? 本当にいたんですか!?」

 

ほら、兵藤君も驚いてる。そうだよね。それが普通の反応だよね。

 

「ええ。ギャスパーは正真正銘の吸血鬼よ。さらにデイウォーカーっていう特殊な存在なの。この子は日中でも活動出来るのよ」

 

「そ、それじゃあ血は? 吸血鬼っていったらやっぱり血を吸うんじゃ・・・」

 

「ハーフだからそこまで強い吸血衝動を持っているわけじゃないわ。もともと血を飲むのは苦手みたいだし」

 

「・・・つまり、ヘタレヴァンパイア」

 

塔城さん、もう少しオブラートに包もうよ。ブラディ君、さっきからずっと俺の制服の端を掴みながら後ろに隠れてるし。

 

「それにしても・・・ずいぶん懐かれたみたいだな、神崎先輩」

 

感心と呆れが混じった表情を俺に向けるゼノヴィアさん。これって懐かれてるのかな? ただデカイ壁があるからそれに隠れてるだけなんじゃないの。

 

「・・・ねえ、リアス。もしかしてまた・・・」

 

「ありえるわね。リョーマって無自覚で落とすから・・・」

 

「で、でも、男の子ですよ?」

 

「先輩には性別なんて関係ないんじゃないですか」

 

「これもフューリーの力とでも言えばいいのかな」

 

女性陣が輪になってコソコソ話している。こんな時に内緒話なんて止めてくれよ。気になってしょうがないじゃないか。

 

「リョーマ。時間停止中はギャスパーと話をしただけなのよね?」

 

さっきそう説明したんですけど。だって本当に話以外に特別な事なんてした覚えは無い。

 

「ああ。他にこれといってやった事はないぞ。なあ、ヴラディ君?」

 

ヴラディ君に話を振ると、彼は俺の背中越しにリアス達に向かって答えた。

 

「は、はいぃ。怯える僕を抱きしめてくれて、励ましてくれただけなんです。あ、あんな風に優しく抱きしめてもらったのって何だか凄く久しぶりな気がします」

 

よかった。ちょっと強引過ぎたかと思ったけど、ヴラディ君は好意的に受け止めてくれたみたいだ。ホッとする俺とは対照的に、リアス達が酷く狼狽した様子を見せる。

 

「だ、抱きしめ・・・!? まさか、リョーマってそっちの気が・・・!?」

 

「それが本当なら、リアス達の誘惑に反応しないのも頷けますわね」

 

「・・・姉様が聞いたら卒倒しそうですね」

 

「と、とんでもないライバルが出現してしまいましたぁ・・・」

 

「むう、これでは私の計画が・・・」

 

「なるほど。先輩も・・・」

 

おい、なんかとんでもない勘違いされてねえか!? 違うから! 俺は普通に女性が好きだから! ホモォ・・・じゃないからぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 

「いやいやいや! みんな落ち着こうよ! 先輩はただギャスパーを励まそうとしただけだって! つーか木場! お前なんで嬉しそうなんだよ!」

 

救世主、兵藤君登場! そう! キミの言う通り! だからみんなその勘違いを早く解いてちょうだい!

 

結局、誤解を解くのに五分もかかってしまった。とりあえず、今後は兵藤君までとは言わないまでも、もう少し女性好きであるとアピールした方がいいかもしれない・・・。

 

「すまない、ヴラディ君。キミまで巻き込んでしまいそうだったな」

 

「い、いえ。気にしないでください。・・・そこまで嫌じゃなかったですし」

 

顔を逸らし、囁くように答えるヴラディ君。おそらく本心では不満なんだろうけど、俺が落ち込まないようにあえてそう言ってくれたんだろう。優しい子だ。

 

「こ、コホン! つい話が逸れちゃったわね。それじゃ、これからの予定を説明するわ。私と朱乃は会談の会場の打ち合わせに向かうわ。祐斗、お兄様があなたの『禁手』について話を聞きたいそうだから一緒に来てちょうだい。残りのみんなは、私が戻って来るまで、ギャスパーに色々教えてあげて。特にリョーマ。この子の神器を無効化するあなたと一緒なら、ギャスパーも落ちつけるだろうし、傍にいてあげて欲しいの」

 

「任せてくれ」

 

ついさっき、見守るって約束したばかりだからな。

 

そうして、俺達はそれぞれの役割を果たす為に動き始めるのだった。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

さて、俺達はヴラディ君を相手にする役割を与えられたわけだが・・・。

 

「ほら、走れ。デイウォーカーは日中でも走れるのだろう」

 

「ひいい! お、お助けぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「・・・どうしてこうなった」

 

眼前で繰り広げられる追いかけっこを眺めながら、俺は一人呟いた。

 

光り輝く剣を持ったゼノヴィアさんから全力で逃げているヴラディ君。あの剣、前に見たエクスカリバー(笑)と違って本物だそうだ。デュランダルとかいったっけ。銃刀法違反なんだけど、悪魔相手に人間の法律持ち出しても意味無いか。

 

「健全な精神は健全な肉体に宿る」・・・素晴らしい考えだと思うよ、ゼノヴィアさん。その為に体力作りから始めるのもいいと思うよ。でもね、最初からクライマックスってのは可哀そう過ぎやしませんかね?

 

ガチ泣きしながら逃げるヴラディ君と違い、なんかめっちゃ活き活きとした顔してるゼノヴィアさん。そういえば、この街に住むようになって、色々な事が新鮮で楽しいって言ってたな。

 

「ゼ、ゼノヴィアさん! ギャスパー君が怯えてますよ!」

 

アーシアの制止も届かず、ゼノヴィアさんの追跡は続く。そうそう、ブラディ君は一年生だった。だからアーシアも彼を君付けしているのだが。これまでずっと周りにさん付けしていた所為か、彼女のその呼び方が何となく新鮮だった。

 

「アイツ・・・マジで生まれて来る性別間違えてるよな・・・」

 

なんともいえない表情でそう漏らす兵藤君。しかし、こればかりはどうしようもない。受け入れなさい。彼は男の娘なんだ。

 

「ギャー君はニンニクを食べてもっと健康にならないと駄目だと思う」

 

「みぎぃ!? 小猫ちゃんまで僕をいじめるぅぅぅぅぅぅ!!」

 

とっさに「ひだりぃ!?」と叫びそうになった俺はねじ切られればいいと思う。

 

「おーおー、やってるなぁ」

 

「ッ!?」

 

突然現れた匙君の姿を確認した瞬間、俺はさりげなくアーシアを隠すように立った。ドMな彼をウチの天使に近付けさせるわけにはいかない!

 

「・・・おい、兵藤。なんか先輩が俺を睨んでる気がするんだけど」

 

「お前、なんかやったのか?」

 

「別に。ただ、会長に手を出そうとしてるからたまに呪いの念を送ったりしてるだけだぞ」

 

「いや、それしかねえだろ理由!」

 

仲いいな二人とも。俺としては兵藤君が彼に影響されない事を切に願う。

 

「つか、何しに来たんだよ」

 

「ちょっと仕事があってな。ついでにやっと解禁された引きこもり眷属を一目見ようと思って。で、どこにいるんだ?」

 

兵藤君がヴラディ君を指差すと途端に嬉しそうな顔をした匙君だが、直後男の娘だと聞かされて一瞬で表情を沈ませた。

 

「詐欺じゃねえか! 俺のときめき返せ!」

 

「だよなぁ。やっぱりそう叫びたくなるよなぁ」

 

意気投合する二人。とそこへ、第三者の足音が近づいて来た。

 

「ほお、魔王眷属の悪魔さん方は、こんな所でお遊戯会ってわけか」

 

二十四時間戦えそうな力強い声が耳に入る。誰だろうとそちらへ振り向くと、そこには浴衣を身に纏ったワイルドな男性の姿があった。こんな人この学園にいたっけ?

 

「ッ!? ア、アザゼル!?」

 

兵藤君が目を見開く。アザゼル? それって確か・・・ああ、そうそう。堕天使陣営のトップの名前じゃ・・・え?

 

兵藤君の一言でみんなの空気が一変した。ヴラディ君を追いかけていたはずのゼノヴィアさんがいつのまにか俺達のすぐ横で男性に向かって剣を向けていたし、兵藤君自身も神器を装備していた。

 

「兵藤! アザゼルってまさか!」

 

「ああ、そうだ! こいつが堕天使の総督だ! 正体を隠して俺に接近してたんだ!」

 

マジで本人かよ。しかし・・・改めて見るとカッコイイ人だな。野性的というか、どことなくフェニックスさんと同じ方向な感じがした。うーむ。レイナーレさんが惚れちゃうのもわかる気がするなぁ。

 

「おいおい、そう殺気立つなよ。お前らもまさか本気で俺に敵うとは思ってないだろうに。・・・いや、お前がいれば話は別か」

 

アザゼルさんが俺の方へ顔を向け、ニヤリとした。

 

「会えて嬉しいぜ、フューリー。会談までお預けだと思ってたが、いや、俺は運がいい」

 

「俺を知っているのですか?」

 

「当たり前だろう。というか、すでにお前の復活を知らない者を探す方が難しいだろうな」

 

自分の事なのに実感がわかない。まあいいや。それよりも丁度いい。レイナーレさん達の事を聞いてみよう。

 

「レイナーレさん達は元気ですか?」

 

「あ? 何でお前がレイナーレの事知ってんだ?」

 

あれ? 話聞いてないのかな? 仕方無い、説明しないとな。

 

レイナーレさん達との出来事を簡単に説明すると、アザゼルさんは突然腹を抱えて笑い始めた。

 

「は、はは、ははははは!! こいつはいい! まさかあいつらの言っていた恩人の正体がお前だったとはな!!」

 

「それで、彼女達は今どうしていますか?」

 

「くくく。ああ、教えてやるよ。あの三人は元気さ。今は俺と一緒に人工神器の研究を行っている」

 

そっか。元気ならそれでいいや。安心する俺に、アザゼルさんが続ける。

 

「あいつら、俺の前に連れて来られた途端にいきなり土下座なんかしやがってな。最初はただの命乞いかと思ったんだが、それにしちゃあ目が澄んでたから理由を聞いてみたんだよ。そしたら、あいつら何て答えたと思う?」

 

「何て答えたんですか?」

 

「自分達を助けてくれた恩人との約束を果たしたい。だから、たとえどんなに重い罰でも受ける。けれど、どうか命だけは助けて欲しい。あの人との約束を果たした後ならば、喜んでこの命を差し出す・・・だとさ。罪人のくせに注文つけるとか、いい根性してると思わねえか?」

 

そこで一度言葉を切り、アザゼルさんは再び口を開く。

 

「・・・でもな、俺はその答えがどうも気に入っちまった。事前の報告だと、実力も無えのに無駄にプライドだけが高い連中だと聞いていたヤツ等が、あんな風に誰かの為に躊躇い無く額を地面に擦りつけるとは流石の俺でも予想なんて出来ねえよ。だから、少しの無償奉仕をさせた後で、俺の研究の助手をさせている。元々神器に興味があったみたいでな、中々に優秀な働きをしてくれてるぞ」

 

「そうですか・・・」

 

よかったですね、レイナーレさん。一気に急接近じゃないですか。このまま二人の仲が進展するよう祈っておきますね。しかし、まさかDO☆GE☆ZAを披露するとは。あの時、日本人の心もしっかり伝わっていたみたいだな。

 

「くく、それにしても、嬉しい誤算だぜ。お前があいつらと繋がりがあったとはな。・・・そうだな。いっその事、あの三人をお前の所へ送るのもありか。フューリーとのパイプが出来れば色々都合がよさそうだしな」

 

俺に聞こえない声で独り言を呟くアザゼルさん。その姿もカッコ良かった。いいな。俺もあんな風にちょっとした動作でも大人の色気が出せる男になりたい。・・・まあ、一生無理なんだろうけど。

 

「す、すげえ、神崎先輩。堕天使のトップとあんなに自然な会話を・・・!」

 

匙君がどこか尊敬の混じった視線を向けて来る。・・・なんか、あまり嬉しくないのはどうしてだろう。

 

それからアザゼルさんは、ヴラディ君と匙君に、それぞれの神器についてのアドバイスしていた。木場君が言っていた通り、アザゼルさんは凄く神器に詳しく、匙君本人も知らなかった彼の神器の使い方を簡単に説明していた。いわく、匙君の神器をヴラディ君に接続した状態で、ヴラディ君が神器を発動するようにすれば、暴走も少なくなるだろうとの事だった。

 

「んじゃ、精々頑張りな。フューリー。会談もよろしく頼むぜ」

 

悠々と去って行くアザゼルさんを見送り、早速彼の言った練習法を試してみた。とはいえ、長年の悩みが簡単に解決出来るわけもなく、練習は中々はかどらなかった。

 

そうこうしている間にリアスも戻って来た。入れ換わるように匙君が仕事とやらへ戻る。

 

「ギャスパー。ここからは私も付き合うわ。一緒に頑張りましょう」

 

「は、はい! 頑張りますぅ!」

 

結局、この日の夜まで、ギャスパー君の練習は続けられたのだった。俺はというと、たまに全ての動きを止めてしまう彼をひたすら励まし続けていた。

 

ああ、こういう時にSYUUZOがいればなぁ・・・




レイナーレさん達の再登場フラグが建ちました。近い内に出します。

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