ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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第四十一話 本人の許可無く撮影してはいけません

とうとう会談の日がやって来た。会場は学園の職員会議室だ。俺達は時間が来るまでオカルト部の部室で待機していた。

 

なんだかみんな緊張しているようだが、おまけでしかない俺はいつも通り朱乃の淹れてくれたお茶を飲みながらリラックスしていた。

 

悪魔からはサーゼクスさん。堕天使からはアザゼルさん。そして天使は・・・ミカエルさんだったっけ。先日、神社で兵藤君に会っていたのはその人らしい。その時、ミカエルさんからアスカロンっていう剣を貰ったとか聞いた。アスカロンっていったら、ゲームとかでも有名な龍殺しの剣だ。そんな物をプレゼントするなんて、流石天使のトップは太っ腹だなと思った。

 

「・・・さて、そろそろ行きましょうか」

 

立ち上がるリアスに俺達も続く。ただし、ヴラディ君はお留守番だ。もし会談中に神器が発動してしまったらえらい事になるからだ。

 

「み、みなさん、行ってらっしゃい」

 

「おう、行って来るぜギャスパー。ヒマになったらそこにあるゲームでもやってな。終わったらすぐに戻って来るからよ」

 

「は、はい。わかりました」

 

「ふふ、イッセー君って面倒見がいいよね」

 

「べ、別に。これくらい普通だろ」

 

木場君に言われ、照れ臭そうにそっぽを向く兵藤君。そういう優しさを普通と言える彼はちょっとカッコイイと思った。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

「失礼します」

 

リアスが会議室の扉をノックし開ける。彼女の後ろから中を覗くと、そこにはすげえ高そうな巨大テーブルが置かれ、それを囲むようにして数人が座っていた。

 

・・・前言撤回。こりゃ緊張するわ。横にいる兵藤君の生唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえた。アーシアも俺の手を不安そうに握って来た。

 

まず、悪魔側にはサーゼクスさんとセラフォルーさん。それとグレイフィアさんがいた。

 

続いて堕天使側はアザゼルさんと・・・どういうわけかヴァーリさんがいた。彼女は俺を見てニコリと微笑むが、俺としてはなんでキミがそこにいるのかが気になります。

 

最後に天使側だが・・・なんか凄い人がいた。何あれ、金色の翼って派手すぎるだろ。しかもイケメンだし。そのイケメンの隣に座る白い翼の女性もとんでもない美人だ。どっちがミカエルさんなんだろう? やっぱり金色の人かな。

 

にしても、こうして人外の方々が揃っている所を見させられると、改めてこの世界の異常さを思い知らされるなぁ。俺・・・平穏に暮らしたいはずだったのに・・・。

 

「紹介しよう、私の妹とその眷属。・・・それと、我ら三陣営全ての恩人であるフューリーと、その家族である子だ」

 

サーゼクスさんがリアス達の紹介と、ついでとばかりに俺とアーシアについても触れる。うわ、めっちゃ見られてる。特に天使のお二人の視線が凄い。

 

「先日のコカビエル襲撃は、彼女達の尽力とフューリーの助力によって解決した」

 

「ええ、報告は受けていますよ。みなさんには深くお礼を申し上げます」

 

ミカエルさん(予想)のお礼に、リアスはただ黙って会釈するだけだった。彼女が緊張しているのが痛いほど伝わってくる。

 

「すまねえな、ウチのコカビエルが迷惑かけた。しかしまあ、驚いたぜ。鎮圧のためにヴァーリを送ったら、すでにやられていたんだからな」

 

「ふふ、凄かったわよ。亮真の一撃によって虫けらのように倒れ伏せるコカビエルの姿は滑稽だったわ」

 

「へ、そういう事なら俺自身が出張っていれば良かったぜ」

 

アザゼルさんが残念そうにそう漏らす。すると、セラフォルーさんが突然席を立った。

 

「ふっふーん! やっぱりみんなフューリーさんの事が気になっちゃうよね。それなら、会談を始める前にみんなでこれを見ようよ!」

 

そう言って、セラフォルーさんはビデオカメラを取り出した。

 

「セラフォルー。予定と違う事をしないで欲しいのだが」

 

「えー、いいじゃない、サーゼクスちゃん。あなただって、フューリーさんとコカビエルの戦いが気になるって言ってたじゃない」

 

「確かにそうだが・・・」

 

「いいじゃねえか、サーゼクス。これから堅苦しい話ばっかり続くんだ。その前に楽しんでもよ」

 

「そうですね。私も彼の伝説の騎士の戦いというものを見てみたいです」

 

アザゼルさんとミカエルさんに押され、サーゼクスさんが諦めたように溜息を吐いた。

 

「・・・二人がそう言うなら仕方ないかな。それでセラフォルー。そのカメラには何が映っているんだ?」

 

「このカメラは、前回の婚約パーティーの後すぐにソーナちゃんに渡した物なの。新作ドラマの参考にするために、もしもフューリーさんがまた戦う様な事があったら、ぜひとも撮影して欲しいって」

 

「そうなのかい?」

 

サーゼクスさんが部屋の壁際に顔を向ける。そこに置かれた椅子に支取さんが座っていた。

 

「そ、その通りです魔王様。あの時、私は戦闘に参加せず結界を張っていたのですが、ふとレヴィアタン様のお言葉を思い出し、不謹慎なのは承知していましたが、つい・・・」

 

公の場だからか、セラフォルーさんをそう呼ぶ支取さん。まあ、流石にここでお姉様はまずいよな。

 

「ふふ、口では文句を言いながらも、こうやってお姉ちゃんのお願いを聞いてくれるソーナちゃん大好き!」

 

そしてこの人は変わらないな。支取さんの顔が恥ずかしさからか真っ赤だ。

 

「なるほど。つまり神崎君とコカビエルの戦いが映っているという事か」

 

「そーゆう事! さ、それじゃ早速準備しましょうか」

 

そして、あれよあれよと観賞会の用意が進められた。ホントにいいのかこんなのんびりな感じで? でも、ある意味ありがたいかな。あの時、俺が一体何をしていたのか、ようやく判明する。

 

―――答えろコカビエル。貴様、黒歌に何をした? なあ、何をしてくれたんだ?

 

―――限界だよコカビエル。貴様はやり過ぎた。貴様と、貴様に関わった者達の所為で悲しみ、傷付いた人達の為・・・貴様はここで終わらせる!!

 

―――何故諦める! どうして抗おうとしない! 最初から勝つ気の無い者が勝てるとでも思っているのか!

 

―――神は死んだ。だけどキミ達はまだ生きている! 死んだ者を忘れろとは言わない。だがそれに引き摺られるな! 立て! 今は立って戦うんだ!

 

―――さあ、止めだ、コカビエル。貴様の歪んだ欲望によって大切な物を散らされた子ども達の怒り、嘆き、そして悲しみを・・・今こそその身に受けるがいい。

 

・・・うん、絶好調だな、俺! 恥ずかしいセリフをこれでもかと口走ってますよ。しかもSYUUZOばりに暑苦しい。・・・もしかして俺ってアル=ヴァン先生からだけじゃなくてSYUUZOからも何か受け継いでんの?

 

予想外の熱血展開が繰り広げられる。そして、その最後を飾ったのは・・・。

 

―――ニーベルング・アナイレーションッッッ!!!

 

ッ!? 来た! スタイリッシュ指パッチン来た! これで勝つる! オルゴン・クラウドによる瞬間移動でコカビエルよりも高い位置に移動した俺が、急降下を開始する。そして、その突き出された足がコカビエルを捉えた。

 

―――アッーーーーーー!?!?!?

 

おい! なんつー悲鳴あげてくれてんだコカビエル! いや、狙った俺にも責任あるけどさ、そこはギャー! とかでいいだろうが!

 

地面が抉れ、俺とコカビエルの姿が地中深くへと沈んでいく。少しして、俺だけが穴から飛び出し、パチンと指を鳴らす。刹那、冗談の様な光が穴の底から立ち昇った。

 

映像はそこで止まっていた。無言の室内に、溜息が響き渡る。それは俺か、リアスか、はたまた全員だったのかもしれない。

 

「・・・お、驚いたな。私はてっきりあの姿で戦ったのだとばかり思っていたのだけれど」

 

「生身でこれかよ・・・」

 

「手加減していたようにも見えましたね。全力を出したらどうなってしまうのか。・・・想像したくありませんね」

 

サーゼクスさん、アザゼルさん、ミカエルさんが一斉に俺に目を向ける。どうやら最後の技の印象が深すぎたのか、その前に繰り広げられた俺の恥ずかしいセリフについては別に触れるつもりはないらしい。ああ、よかっ・・・。

 

「えへへー。カッコイイセリフがいっぱいだったな~。これはぜひとも次の脚本に組み込まないと」

 

ッ!? ちょ、待っ、セラフォルーさん待って! 止めて! メモしないで!

 

「あー、言われてみりゃあ確かに。・・・お前、よくもまああんな赤面ものなセリフを堂々と叫べるもんだな」

 

ぐふッ!?

 

「別におかしくはないでしょう。素晴らしい鼓舞だったと思いますが」

 

がはっ!?

 

「そうだね。見ているだけなのに思わず熱くなってしまったよ」

 

刺さる刺さる! 言葉の刃が刺さりまくってます! ちくせう・・・恨みますよ、セラフォルーさん。

 

・・・いや、そもそもプッツンしなかったらこんな事にならなかったんだ。よし、今後は二度とプッツンしないぞ!

 

観賞会が終わり、ようやく本題に移ろうとしている中で、俺はそう誓うのだった。




次回からちゃんと会談に入ります。

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