ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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主人公(原作)がやってくれました。


第四十四話 並び立つために

「ふふ、さあ、始めましょうか・・・」

 

「何考えてんだこのバカ娘」

 

アザゼルさんが黒い翼を羽ばたかせてやって来た。どうでもいいけど、十二枚もあると手入れとか大変そうだ。

 

彼はヴァーリさんの後ろに降り立つと拳を振りあげ、それを彼女の頭に落とす。ゴツン! と聞いただけで痛くなりそうな音が響いた。

 

「何よアザゼル。邪魔しないでちょうだい。それと、今の拳骨は駄目ね。私を満足させたかったらあと三十回は殴ってくれないと」

 

「黙れドM。お前を喜ばせる為に殴ったんじゃねえよ。ようやく連中が片付いたってのになんでまた戦おうとしてんだお前は」

 

「愚問ね。あの程度で私が満足出来ると思ってるの? 私はもっと強い相手と戦いたいの。それを邪魔するというのならアザゼル・・・あなたから潰すわよ?」

 

あらやだ、目が本気ですよこの子。やばいよー。この子やっぱり色々やばいよー。アザゼルさん。何とかしてくださいよ。あなた保護者みたいな立場なんでしょ?

 

「ったく、めんどくせえ小娘だな。・・・おい、フューリー。俺が許可する。この勘違い娘をちょっくら教育してやってくれ」

 

は? いやいや、ちょっと待ってくださいよ! あーた止める側でしょうが! 何戦わせる気満々なんですか!?

 

「許可は出た・・・。これでもう私達を邪魔するものは存在しないわ。さあ・・・存分にぶつかりましょう!」

 

・・・ああ、そうですか。もう決定なんですね。・・・いいだろう。ならば、キミの言う通り、存分にOHANASHIしようじゃないか。聞き訳の無い子を大人しくさせるのも年長者の務めだ。

 

俺と同じ露出強を友人に持つ別世界のリリカルな魔王様・・・。どうか、俺にOHANASHIする力をお与えください!

 

SIDE OUT

 

 

イッセーSIDE

 

先輩が俺達から距離を取るために歩きだす。その背中を眺めながら、俺は自分で自分を責めていた。

 

あーもう、俺の馬鹿野郎! いくらヴァーリちゃんのおっぱいが魅力的過ぎたからって、先輩と戦うとかやっぱりありえないだろ! どう考えても絶望しか無えじゃねえか!

 

―――覚悟を決めろ相棒! 怖いのは俺も同じだ! だが、この恐怖を乗り越えなければ俺達は前に進めない!

 

・・・カッコつけてる所悪いけどな、ドライグ。お前に対して言いたい事が一杯あるんだ。そもそも、お前らが三陣営を巻き込んだケンカしてたから神崎先輩が止めに入ったんだろうが。どう考えても悪いのはお前ら。今お前らが抱いている怒りは完全に逆恨みなんじゃないのか? そこんとこどう思ってるんですか、ドライグさんよぉ。

 

―――ぴゅ~ぴゅ~。

 

わざとらしく口笛吹くな!  ちくしょう、アザゼルもアザゼルだ。最初、先輩は乗り気じゃ無かったのに、アイツが余計な事言った所為で覚悟決めたみたいだし。

 

「あ、あの、ヴァーリちゃん。やっぱり俺、止めとくわ。キミと先輩だけで好きなだけ戦ってくれ」

 

「どうして? 私の胸じゃ満足出来そうに無いから?」

 

「とんでもない! キミのおっぱいは最高だ! けど、俺なんかが先輩の相手になるわけ無いし・・・」

 

最後の方はすっかり小さい声になってしまった。そんな俺の態度に、ヴァーリちゃんの表情が曇る。明らかに落胆しているようだった。

 

「・・・あなたはそうやって自分よりも強い相手から逃げ続けるつもりなの?」

 

「ち、違っ・・・」

 

「いいえ、違わないわ。自分よりも強いとわかってる。だから挑んでも勝てるわけない。なら、他の人に任せて自分は安全な所から見ていればいい。・・・あなたが言っているのはそういう事よ」

 

何も言い返せない俺を、ヴァーリちゃんはさらに責める。

 

「亮真は強い。頼りたくなる気持ちはわかるわ。だからって、全部を亮真に押しつける気? 強い者が弱い者を守るのは義務だとでも思ってるのかしら? そんなのは弱者の都合でしか無い。強者にとって弱者なんて足手纏い以外のなんでもないわ」

 

「俺が足手纏いだって言いたいのか?」

 

「あなただけじゃない。あなた達、亮真の友人全員が足手纏いだって言ってるの。彼を殺すのは敵じゃなく、味方であるはずのあなた達の誰かかもね」

 

意味わかんねえ。俺達の誰かが先輩を殺す?

 

「そんな・・・そんなわけねえだろ」

 

「そうね。あなた達が直接殺すわけじゃないでしょう。私が言っているのはあなた達の存在が間接的に彼を殺すかもしれないって事よ」

 

「間接的。・・・なるほど、そういう事ね」

 

傍で聞いていた部長が理解したように頷いた。

 

「流石、魔王の妹は聡明ね。赤龍帝君。亮真は二天龍を圧倒した伝説の騎士なのよ? その力を欲する者なんて腐るほどいるはず。そういった連中が手っ取り早く亮真を従えさせようとした時・・・どんな手段を取ると思う?」

 

「それは・・・脅すとか?」

 

「その答えは五十点ね。下手な脅しは亮真の怒りを買うだけ。だったら本人じゃなく、他人を利用すればいい。・・・ここまで言えばわかるわよね?」

 

ッ・・・! そうか・・・人質! 俺達の誰かを盾に、先輩に言う事を聞かせるつもりって事か!

 

「他にも、亮真の存在を目障りに思っている者だっているでしょう。そいつらによって抵抗も出来ずに嬲り殺しにされる可能性だってあるわ。亮真が抱えるただ一つの弱点・・・それがあなた達よ」

 

俺が・・・先輩の弱点? 俺の所為で・・・先輩が死ぬ? 俺が・・・俺が・・・。

 

「私はそんなのゴメンだわ。誰かの弱点になりたくないし、誰かを弱点にしたくない。だから私は一人でいい。一人で全てを圧倒する強さを手に入れないといけないの・・・」

 

呆然とする俺の前で、ヴァーリちゃんは僅かに悲痛な表情を見せた。けど、次の瞬間にはいつも通りの余裕ある笑みを浮かべ、背中の翼を羽ばたかせながら神崎先輩に向かって行った。

 

「さあ、亮真! 私を楽しませてちょうだい!」

 

くそ、俺は・・・俺はどうしたら・・・。

 

―――何を悩む必要がある、相棒? あの女に共闘を持ちかけられた時、すでに心は決まっていたのだろう? 

 

な、何言ってんだよドライグ。俺はただヴァーリちゃんのおっぱいにつられて・・・。

 

―――いいかげん道化を演じるのは止めろ。お前はヤツとの実力差に絶望しつつも、自分の力をぶつけたいと心のどこかでずっと思っていたはずだ。

 

なんだよ・・・。何でお前にそんな事がわかるんだよ。

 

―――わかるさ。俺も相棒と同じだからな。

 

え・・・?

 

―――正直言って、今の俺達ではヤツには勝てない。それは絶対だ。だからと言って、戦う前から諦めるなど、俺には出来ない。それをしてしまったら、俺は本当の意味でヤツに負けた事になってしまうからな。

 

本当の・・・負け?

 

―――今回勝てなければ次に勝てばいい。次に勝てなければさらにその次に勝てばいい。相棒、本当の負けっていうのはな、体じゃなく、心が屈した時の事を言うんだよ。

 

心が屈した時が本当の負け。・・・ああ、そうだ。確かに俺は以前負けてしまった。コカビエルとの実力差に圧倒されて、最初は諦めてしまった。

 

けれど、俺はそのまま倒れる事も無く、再び立ち直る事が出来た。それは何故か。言わずもがな先輩のおかげだ。あの人の熱い励ましが俺の心から諦めという弱さを払拭してくれたのだ。

 

・・・やっぱり、俺って馬鹿だな。こんなんじゃ、先輩に追いつける日なんて永遠に来ないかもしれない。でも、それでも、諦めたくは無い。

 

「うぐっ・・・!」

 

ヴァーリちゃんが吹っ飛んで来た。彼女の両手を覆う鎧に大きな罅が入っている。はめ込まれていた宝玉が取れ、俺の方へ転がって来た。

 

彼女を吹っ飛ばした張本人である先輩は、ライザーとの戦いで見せたあのロボットみたいな鎧を纏っていた。

 

「そろそろ終わりにしないか?」

 

「冗談! こんな楽しい戦いを止められるわけないじゃない! ええ、そうですとも! 諦めてたまるものですか! 亮真! 私が諦めるのを諦めなさい!」

 

再び先輩へ突撃するヴァーリちゃん。蒼い光と白い光が空中で何度もぶつかり合う。それを眺めながら、俺は決意した。

 

もう言い訳は止めよう。もう諦めるのは止めよう。もう恐れは捨てよう。俺自身の為に。そして・・・先輩の為に!

 

「部長、離れててください」

 

部長を下がらせ、俺は『赤龍帝の籠手』を掲げ叫んだ。

 

「ごちゃごちゃ考えるのは止めだぁ! いくぜドライグゥゥゥゥゥゥゥ!!!」

 

『Welsh Dragon over booster!!!』

 

俺の体を『赤龍帝の鎧』が包みこむ。続けて俺は足元に転がっていた宝玉を拾い上げた。

 

―――相棒、それをどうするつもりだ?

 

「神器は想いに応えて進化する・・・。お前は前にそう言ったよな」

 

―――その通りだ。

 

「なら、俺は進化してみせる! 今までの弱い自分を変えてみせる! ドライグ、俺の想いに応えてくれ!!」

 

浮かび上げたイメージを強く思い描き、ドライグに伝える。それを受け取ったであろうドライグが困惑の中に喜悦を交えた声で応えた。

 

―――ははははは! 面白い! 面白いぞ相棒! だが、それを望むのなら死を覚悟する必要があるぞ? お前にその覚悟はあるのか?

 

「上等だ! 死だろうがなんだろうが、絶対に越えてみせる! ドライグゥ! お前もそうだろうがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

―――応っ! 俺も覚悟は出来ている! 我は赤き龍の帝王! この程度の障害など乗り越えて見せるさ!

 

「ヴァーリちゃん! アルビオン! お前らの力を手に、俺は俺を越えてやるぜぇ!」

 

気合いと共に、俺は右手の甲の宝玉をブチ壊し、そこへ拾った宝玉を叩きつけるようにはめ込んだ。

 

赤と白の力の融合。俺の狙いはそれだった。相反する力だが、不可能じゃないはずだ。何故なら、すでに木場が聖魔剣という結果を出しているのだから!

 

宝玉をはめ込んで数秒後、俺の中で何かが脈打ったのを感じた刹那・・・右手から全身に尋常じゃない痛みが伝わり始めた。

 

「う、が、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」

 

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!

 

「ぎあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」

 

「兵藤君!?」

 

俺の名を叫ぶ先輩に、痛みで飛びかけた思考が僅かに戻って来た。耐えろ! 耐えろ俺! あの人に心配をかけるためにこんな事したんじゃないだろ!

 

―――何を考えているドライグ!? 誓いを果たさぬまま消滅するつもりか!?

 

アルビオンの驚愕した声が耳に届く。それに対し、ドライグも苦悶の声をあげつつ答える。

 

―――相変わらずお前の冗談は笑えんなアルビオン! 心配せずとも見ているがいい! 俺と相棒の進化をな!

 

未だに止まない痛みに晒されながら、俺は先程の会談で語られた先輩の秘密を思い出していた。別世界からたった一人でやって来た孤独な来訪者。家族も、友人も、もしかしたら恋人だっていたかもしれない。けれど、この世界に先輩との繋がりを持つ人はいない。

 

『―――彼女には感謝しています。おかげで、俺はリアス達に出会う事が出来た』

 

あの時、先輩はそう言ってくれた。あの人は、俺達の事を大切な仲間として見てくれている。それが嬉しかった。俺達が、あの人の孤独を少しでも癒せた事が。

 

だから、もう先輩を一人にしちゃいけないんだ。先輩が俺達を守ってくれたように、俺達も先輩を守らなくちゃいけないんだ。俺達の弱さが先輩の弱点だっていうなら・・・。

 

「強くなってやる! あの人の背中を追いかけるんじゃなく、あの人の隣に立って戦う為に!! だから・・・俺の想いに応えろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!

 

『Vanishing Dragon Power is taken!!』

 

その機械音声が鳴り響いた直後、俺の右手をまばゆい白い光が包む。同じく白いオーラが右腕を包む。そして・・・俺の右手に白き籠手が出現した。

 

「『白龍皇の籠手』・・・。これが俺の覚悟の証だ!」

 

赤と白の籠手をぶつけ合い、俺は先輩へ顔を向けた。

 

「先輩・・・。俺の覚悟を受け止めてください!」

 

顔までバッチリ覆われているので、先輩がどんな表情をしているのかはわからない。けれど、先輩は今笑っている。何故かそう思った・・・。




おめでとう! イッセーはイッセー=サンに進化した! パワーアップしとかないとまずいので強引ですがこんな感じになりました。

それと、原作ではブチ切れる理由がアレで不評らしいので、この小説ではちょっとだけ真面目にしてみました。彼ももう少し自重すればもっとファンが増えたでしょうに・・・。

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