ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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第四十七話 もう一つのプレゼント

俺の願い通り、サーゼクスさんは黒歌の罪を許してくれた。よくて減刑くらいだと思ってたけど、まさか罪自体を無くしてくれるなんて、流石魔王様はスケールが違うぜ。

 

塔城さんも喜んでくれたかな。そう思って彼女の方を向くと、プイっと顔を背けられてしまった。あら、思ってた反応と違う・・・。

 

そんでもって、片付けもだいぶ済んだという事で、この場は一度解散しようという流れになった。

 

「では、私は一度天界に戻り、今回結ばれた和平と『禍の団』についての対策を考える事にします」

 

「すまない、ミカエル。こんな騒ぎに巻き込んでしまって。この場を会場にした私達の失態だ」

 

「とんでもない。これで無益な争いが少しでも減るでしょうし、それだけで私としては嬉しいのですよ?」

 

「それをブチ壊そうとしてるのが『禍の団』ってわけだ。わざわざ会談の場にまで現れたんだ。連中の動きも慌ただしくなるだろうよ」

 

「そうだな。今後は我らの連携が重要となる。また近い内に話をしよう」

 

「ああ、そうだ。ちょっと待てミカエル。行く前にお前も聞いていけ」

 

「何をですか?」

 

アザゼルさんが笑みの中に真剣さを混ぜて聞いて来た。

 

「フューリー。最後にもう一度聞かせてくれ。お前はどの勢力につく気も無いんだな? あくまでも、お前の言う友人とやらの為だけに動くと受け取っていいんだよな?」

 

「はい」

 

俺の答えに、アザゼルさんは満足そうに頷いた。

 

「よし、それだけ聞ければ充分だ。サーゼクス、ミカエル、お前達も聞いたな? 今後こいつとどう接するかは勝手だが、他の勢力まで巻き込むなよ」

 

「私達天界は、今後もフューリー殿と仲良くしていきたいと思っていますよ」

 

「私達悪魔側も同じ気持ちだ。あとそのセリフ、そっくりそのままお返しするよ。この中で、一番失礼な事をしでかしそうなのはアザゼルだからな」

 

「へ、言ってろ。あとミカエル。ヴァルハラと須弥山の連中にも説明しとけよ。下手にオーディンとかに動かれても困るからな」

 

「お任せください。神への報告は慣れていますからね」

 

そう言い残し、ミカエルさんは女天使さんや他の天使のみなさんと一緒に飛んで行った。最初から最後まで優しそうな人だったな。またいつか会える時が来ればいいけど・・・。

 

「さてと、俺も部下達にしっかり言い聞かせておかないとな」

 

続いて、アザゼルさんが堕天使のみなさんに向かって威厳たっぷりの声で言い放った。

 

「いいか! 和平という道を歩み始めた以上、堕天使は今後悪魔とも天使とも争わない! 不服なヤツは今この場で去れ! 最も、次に会う時は容赦無く殺すがな! それをふまえた上で、俺について来たいヤツだけついて来い!」

 

『我らが命、アザゼル総督の御為に!』

 

「・・・ありがとよ、お前ら」

 

やべえ・・・この人、カリスMAXじゃないですか! 今の呟く様な感謝の言葉もカッコ良かったし。レイナーレさんがこの人に惚れてしまった理由を思い知った気がする。

 

「よし、それじゃ俺はそろそろ帰る。お前らもさっさと帰りな」

 

アザゼルさんの指示で、堕天使のみなさんが魔法陣を展開させて次々と姿を消していった。ついさっきまであれだけの天使や堕天使がいたのに、今では俺とアーシア。リアスとオカルト部の面々に支取さん。サーゼクスさんとグレイフィアさん。セラフォルーさんとカテレアさん。そして、悪魔のみなさんだけだった。

 

堕天使で唯一残ったアザゼルさんが背伸びしながら校門に向かって歩き始める。

 

「サーゼクス、後始末は任せた」

 

「これからどうする気だ?」

 

「聞いてなかったのかよ。疲れたから帰るんだよ。そんじゃ、フューリー、兵藤一誠、“また”な」

 

そう言って、今度こそアザゼルさんは去って行った。最後の“また”にやけに含みがあった気がしたが・・・。

 

「やれやれ、相変わらず勝手なんだから。まあいい。それでは私達もそろそろ・・・」

 

「サーゼクス様。その前に、神崎様にアレをお渡ししなくてよろしいのですか?」

 

「アレ?」

 

何の事かと首を傾げる俺と、思い出したように手を叩くサーゼクスさん。

 

「おっと、そうだった。グレイフィア、頼むよ」

 

「かしこまりました」

 

グレイフィアさんが俺に向かって一歩進む。そして、いかにも高価そうな黒い箱を差し出して来た。

 

「どうぞ、開けてみてください」

 

グレイフィアさんに言われるままに箱を開け、中を覗き込む。そこには見憶えのある黒いチェスの駒が収められていた。間違い無い、これは・・・。

 

「『悪魔の駒』?」

 

「その通り。先程の願いは私・・・魔王として、悪魔の代表としてのキミへのお礼だ。そしてこの『悪魔の駒』は、僕・・・サーゼクス個人からキミへの贈り物だ」

 

そう言いながらイケメンスマイルを見せるサーゼクスさん。

 

「全ての眷属を揃えるか。一つも使う事無く引き出しの奥に仕舞うのかはキミの自由だ。ここで誤解して欲しく無いのだが、これを贈る事でキミを悪魔側に引き込もう等とは思っていない。ただ将来、キミとキミの眷属によるレーティングゲームを特等席で観戦する事が僕の夢でもある事は憶えておいて欲しい」

 

期待してもらって申し訳無いんですけど、リアスみたいな『王』としての誇りも無い俺の眷属になってくれる物好きな悪魔さんなんているわけないと思いますよ。万に一つの可能性で、黒歌ならなってくれる可能性もあるだろうけど、なんか恩に着せるみたいで嫌だし。

 

「フューリー様! も、もしよろしければ、この私を貴方様の眷属に・・・!」

 

「はいはい。カテレアちゃんはとりあえず冥界に帰りましょうねー」

 

「な、何をするのだー!? 離してくださいセラフォルー!」

 

「サーゼクスちゃん。ひとまず、私はカテレアちゃんを連れて先に帰るね」

 

「頼む。彼女がいると話が進まない・・・」

 

「わ、私は諦めません! 帰って来ます! 私は必ず帰って来ますからねぇぇぇぇぇぇぇぇ・・・!」

 

セラフォルーさんとカテレアさんが魔法陣の向こうへ消えて行く。とりあえず、眷属候補が一人出来た事を喜ぶべきなのか?

 

「よ、よかったですね、先輩。あんな綺麗でスタイルもいいお姉さんが眷属候補になってくれて。羨ましいッスよ」

 

嘘だよね? キミ、羨ましいとか思ってないよね? だって顔が引き攣ってるもん。兵藤君ですらこの反応て・・・。カテレアさん、ある意味凄い女性だな。

 

「ですが、真面目な話。これはとても名誉な事ですよ、先輩。魔王様から直々に『悪魔の駒』を授けて頂けるなんて」

 

木場君が俺の持つ箱に目を向けながらそう告げる。確かに、言われてみれば凄い事だよな。俺みたいな騎士(笑)がこんな物もらっていいのかな。

 

「リアス。これは由々しき事態よ。もしも、神崎君が『悪魔の駒』を手に入れたなんて事が冥界に広がったら・・・」

 

「当然、自らを眷属にという悪魔が殺到するでしょうね」

 

「ええ。しかも、おそらくその七割以上が女性悪魔・・・」

 

「・・・想像しただけで頭が痛くなるわね。もう、お兄様ったら余計な物を!」

 

「実はそれを狙ってたりして」

 

「お兄様!」

 

「じ、冗談だよリーア。だからその振り上げた拳を下ろしごはっ!?」

 

「・・・代わりにお仕置きしておきました」

 

「GJよグレイフィア」

 

相変わらず、グレイフィアさんの鉄拳の凄まじさには恐れ入る。そしてサーゼクスさん、前回の反省が活かされてませんね。彼女の前で余計な事言わない方がいいですって。

 

「は、ははは、グレイフィアの愛が重げふっ!?」

 

無言で二撃目を叩きこむグレイフィアさん。しかし俺は見逃さない。彼女の頬が僅かに赤くなっている事を! 拳で愛を確かめ合うって、中々にぶっ飛んでるなぁ。

 

「で、では、キミ達もそろそろ帰りなさい。僕達はアザゼルの言う後始末をやらないといけないからね」

 

何とも締まらない最後だったが、こうして三陣営のトップによる会談は幕を閉じた。その後、俺達はそれぞれの家に帰宅したのだが・・・。

 

「何でしれっとついて来てるのよ、朱乃」

 

どういうわけか、朱乃まで俺達の家にやって来ていた。リアスの問いに、彼女はにこやかに答える。

 

「だって、この時間に一人で家になんて怖くて帰れませんわ。だから、ここは神崎君のお家に泊めてもらおうと思って」

 

あら、呼び方が名字に戻ってる。・・・ははーん。みんなの前だと恥ずかしいんですな? それなら、俺もみんなの前では姫島さんって呼んだ方がいいかな。

 

「あなたなら余裕で返り討ちに出来るでしょうに」

 

「うう、神崎君、リアスが酷いですわ。あなたならそんな事言わずに泊めてくださいますよね?」

 

「別に構わないが、キミが寝る部屋が・・・」

 

「でしたら、神崎君のお部屋で構いませんわよ」

 

なるほど、彼女を俺の部屋に寝かせて、俺はリビングのソファーにでも寝ればいいか。

 

「なら、それで・・・」

 

「駄目に決まってるでしょ!」

 

リアス達に猛反発された。俺としてはいいアイディアだと思ったんだけれど。

 

「お帰り、ご主人様。・・・にゃ? 一人増えてる」

 

「ただいま、黒歌。夜も遅いから、彼女は今日ここに泊まってもらう事になった」

 

「ふ~ん。わかったにゃ。とりあえず、玄関で騒いでないで入るにゃ」

 

「そうだな」

 

言い争うリアスと朱乃をなだめ、俺達は家の中に入るのだった。




はてさて、ようやく四巻部が終わりました。いや長かった。

とりあえず『悪魔の駒』を手に入れましたが、誰をどの駒で眷属にするかは全くの白紙状態です。実力的には騎士(真)なオリ主なら、大抵の相手だったら駒一つで眷属に出来そうですけど。ただ、オリ主自身は悪魔にはなりません。というかなれません。

ご意見がありましたら、ぜひともお願いします。

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