ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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第五十話 いざ冥界へ

「突然だけど、冥界に帰るわ」

 

夏休みに突入し、何をして過ごそうかな~。とか色々計画を練ろうとした矢先、リアスがいきなりそんな事を言い放った。なるほど、急に兵藤君達を家に招いたのは悪魔関係の話をする為だったからか。

 

兵藤君、木場君、朱乃にゼノヴィアさん、そしてヴラディ君が私服姿でリアスの話に耳を傾けている。同居組のアーシア、黒歌、塔城さんも同じ様にしている。

 

しかしまあ、当然と言えば当然だけど、兵藤君達はウチを見るなり驚いてたなぁ。特に朱乃なんか、前に来た時は二階建てだったのに、いつの間にか階が増えてたから何回も目を擦ってたし。でも、三階の説明をした時に一瞬だけ目を光らせたのはなんだったんだろう。

 

「本当に突然ですね。何か事件とか?」

 

兵藤君の問いに、リアスが笑いながら答える。

 

「心配しないでイッセー。純粋に里帰りするだけよ。毎年の恒例なの」

 

「なんだ。俺はてっきり『禍の団』が冥界でなんかやらかしたのかと。・・・あれ、でも、部長の里帰りと俺達に何か関係があるんですか?」

 

「関係あるに決まっているじゃない。眷属であるあなた達も一緒に行くのよ。冥界にね」

 

そう言って、驚いた様子の兵藤君から俺に視線を移すリアス。

 

「リョーマ。出来ればあなたにもついて来て欲しいのだけれど」

 

「俺も?」

 

「ええ。あなたを連れて来て欲しいって言う方がたくさんいるのよ。お父様やお母様まで、改めて話がしたいなんておっしゃってるの。だから、お願い」

 

ご両親が俺に? ・・・はっ、これはもしかして、以前ご迷惑をおかけした時の謝罪をするチャンス!? 授業参観の時も、父親との関係の修復は出来なかったみたいだし、ここは俺自身が直接謝らせてもらうしかない。

 

「そういう事なら構わないが、アーシアと黒歌を残してしまうのは・・・」

 

「心配しなくても、二人も一緒よ」

 

「当然にゃ」

 

「わ、私もご一緒していいんですか!?」

 

当たり前のように言う黒歌と、まさかの許可に驚くアーシア。

 

「もちろんよ。ただ、流石にロザリオとかは置いていってもらうけれど」

 

そりゃそうか。悪魔の苦手な物を持っていったら変な勘違いされるかもしれないしな。ただでさえ、この子は変な連中に狙われやすいんだから。まあ、ウチの天使に手を出そうものなら、その時は俺が直接OHANASHIさせてもらうだけだがな。

 

「一応、八月の二十日過ぎまでは向こうで過ごす予定よ。修行やその他諸々の行事は冥界で行うからそのつもりでいてね」

 

「修行・・・。ちょうどいい。神崎先輩、是非ともあなたに稽古をつけてもらいたいのだが、どうだろう」

 

「おっと、先に言われちゃったな。先輩、僕もお願いします」

 

ゼノヴィアさんと木場君が期待込めた目で見つめて来る。ちょっと待とうよ。俺で手伝えるなら断る気は無いけど、まともなアドバイスとか出来ないよ? 精々アル=ヴァンモードで相手するくらいだよ? それでもいいのかな?

 

「あ、あの、私も・・・」

 

「白音は私が稽古をつけてあげるにゃ。今の白音なら仙術を教えてもよさそうだしね」

 

「・・・お願いします」

 

姉からの直々の指導か。よかったね、塔城さん。なんか直前に言いかけたみたいだけど、おそらく自分から黒歌にお願いしようとしたんだろう。それを察して先に答えた黒歌は流石お姉さんだな。ちょっと残念そうなのは、自分の考えが見透かされちゃって悔しかったからかな?

 

「冥界かぁ。あいつらには悪いけど、後で断りの連絡入れとかないとな」

 

「イッセー君、何か予定でもあったの?」

 

「ん? ああ、松田と元浜の二人と海とかプールに行こうかなって。今年こそ彼女を作るって妙に気合い入れてたなあいつら・・・」

 

「冥界には海は無いけど、湖ならあるわよ。プールもあるし温泉だってあるわ。それじゃ駄目なの?」

 

「あ、すみません部長。別に行きたくないって言ってるんじゃないですよ。元々、あいつらの誘いにも乗り気じゃなかったですし」

 

「意外だね。イッセー君なら一も二も無く頷くと思ってたけど」

 

「そりゃあ、俺だって彼女は欲しいよ。俺の最終目標はハーレム王だからな。・・・でも今はそれ以上に、強くなりたいっていう気持ちの方が大きいんだ。女の子達を守る力も無いくせに、ハーレムなんて作ったら駄目だと思ったんだ」

 

おお、カッコいいぞ、兵藤君。・・・言ってる内容はあれだが、守る為に強くなりたいっていう気持ちは大事だと思うぞ。

 

そういえば、最近、兵藤君が変わったって話を聞いたっけ。以前に比べて大人しくなったとか、自重を覚えたとか色々耳に届いている。そのおかげか知らないが、女生徒の間で評価が少しだけ上がっているらしい。まだまだ悪評は無くなりそうにないが、それも時間の問題かもしれないな。

 

「そういうお前は、この夏に女の子とデートとかしないのかよ?」

 

「僕は修業があるからね」

 

熱心だね、木場君。・・・女の子に興味が無いわけじゃないよね? ただ修行に力を入れているだけだよね?

 

「真面目だなぁ、お前は。なら、ギャスパーは?」

 

「ぼ、僕はそんな・・・。でも、神崎先輩や、イッセー先輩を見てて、このままでいいのかなって思ったりして・・・。少しでも変われたらいいなって・・・。あうう、上手く言えないんですけど・・・」

 

良い傾向じゃないか、ヴラディ君。今の自分を変える為の第一歩は、変わりたいって思う事だ。俺の何がキミの手本になったのかわからないが、その気持ちを忘れなければ、きっとキミは変われるはずだ。

 

「言いたい事はわかるよ、ヴラディ君。応援してるからな」

 

「は、はい・・・!」

 

「お前も色々考えてんだな。それじゃあ、神崎先輩は・・・」

 

その瞬間、室内の温度が一気に低下した。同時に、数人の女性から言いようも無いプレッシャーが放たれた。

 

「イッセー・・・リョーマが何かしら?」

 

「うふふ、まさか、私達以外に相手がいるとでも?」

 

「赤龍帝は冗談が下手くそなのにゃ」

 

ちょ!? どうしたのさキミ達!? 目から光が消えてるよ!? 今の兵藤君のセリフのどこに病む要素があったのさ!?

 

「な、何でもありません! マム!」

 

素人目から見ても完璧な敬礼を取る兵藤君。周りを見渡すと、アーシアがガタガタ震えていて、木場君とゼノヴィアさんが引き攣った顔で冷や汗を流している。そんでもってヴラディ君は白目剥いて気絶している。

 

唯一、無表情で佇んでいる塔城さんに、俺はそっと聞いてみた。

 

「塔城さん。一体彼女達はどうしたんだ?」

 

「・・・本気で聞いてるんですか?」

 

いやいや、今の状況で茶化して聞けないでしょ! 頷く俺に対し、塔城さんが冷たい目で答える。

 

「知りません。どうぞお好きなだけ悩んでください」

 

これ以上言う事は無いとばかりに、塔城さんはジュースのストローに口を付けた。

 

「よお、遊びに来・・・何だよこの修羅場感たっぷりな空気は」

 

そこへ突然現れたアザゼル先生が、室内の空気に対してそうツッコむのだった。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

アザゼル先生の登場にようやくリアス達が正気に戻った所で、彼を加えて改めて話をする事となった。

 

「どこから入って来たの?」

 

「どこからって・・・玄関からに決まってるだろうが。窓ガラスブチ破って来て欲しかったのか?」

 

いやいや、誰もそんなアクション映画的な物を求めてないですから。トゥウェンティーでフォーな展開なんてこの家に必要無いですから。

 

「気配すら感じませんでした。僕もまだまだですね」

 

「だな。お前らはまだまだひよっこでしかねえからな。それよりも、冥界に帰るんだろう?なら先生である俺もついて行くぜ」

 

言いながら、アザゼル先生が懐からメモ帳を取り出した。

 

「ええっと・・・。とりあえずスケジュールとしては、リアスの里帰りと、現当主に眷属の紹介。あと例の新鋭若手悪魔達の会合。まあ、メインとしてはお前らの修行だがな。それとフューリー。お前もついて来るんだろ?」

 

「はい、そのつもりです」

 

「お前はなるべくリアス達と行動を共にしてくれ。お前一人にすると騒がしくなるだろうからな。ただ、ヒマな時でいいから、一度カテレアに会ってやってくれ。あの女、毎日のようにお前に会わせろってうるせえらしいからな」

 

「わ、わかりました」

 

カテレアさんか・・・。いい人なんだろうけど、あの勢いはちょっと苦手なんだよな。

 

「それじゃ、アザゼル・・・先生もあちらまで同行する事でいいのね? なら、行きの予約もこっちでしておいていいのかしら?」

 

「おう、よろしく頼む。悪魔のルートで冥界入りするのは初めてだからな。ちょっと楽しみだぜ」

 

というわけで、オカルト部+黒歌という結構な人数で冥界へと行く事になりました。まさか予定と立てようとした矢先にこんなイベントが舞い込んで来るなんてな。最も、こちらとしては大歓迎だけどな!

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

それから、あっという間に旅立ちの日を迎えてしまった。集合した俺達が向かったのは、最寄りの駅だった。どうやって冥界まで向かうのか気になってたけど、まさか電車で行くの?

 

兵藤君やアーシアも戸惑っているみたいだ。いやだって、普通に利用している駅がまさか冥界に繋がってるなんて予想出来るわけないもんな。

 

そんな俺達を余所に、リアスと朱乃が迷い無くエレベーターの方へ向かう。急いでついて行った俺達に、二人が振り返った。

 

「ここから降りるわ。まずはリョーマとイッセー。それにアーシアとゼノヴィアからね。私と一緒に乗ってちょうだい」

 

「お、降りる? 部長、このエレベーターって昇るだけじゃ・・・」

 

「ふふ、乗ればわかるわ。朱乃、あなた達はアザゼルと一緒に降りて来てね」

 

「ええ」

 

とりあえず、指定されたメンバーでエレベーターに乗り込んだ。俺もここを利用してるから知ってるが、この駅は一階と二階だけで地下なんて存在しないはずだ。それなのに“降りる”ってどういう事なんだろう。

 

「これを使うのよ」

 

俺達が見守る前でリアスが懐から一枚のカードを取り出すと、それを電子パネルに向けた。瞬間、電子音が鳴り響いたと思ったら、エレベーターが静かに下降し始めるのを感じだ。

 

「マ、マジで降りてる!? 部長、これって一体・・・!?」

 

「この駅にはね、地下に秘密の階層があるの」

 

「は、初耳ですよそんなの!?」

 

「当然よ。これは悪魔専用のルートだもの。人間では一生辿りつけないわ。あ、でもリョーマとアーシアがこうして通ってるから訂正しないとね。意外かもしれないけど、この街にはこんな風に悪魔の領域が結構な数隠れているのよ」

 

―――つまり! 我々の街はすでに悪魔に支配されているのだ!

 

―――な、何だってぇ!?

 

一瞬、そんなやりとりが頭の中を過った。

 

そうこうしている間に、エレベーターが停止し、扉が開いた。リアスに促された俺達の目に飛び込んで来たのは、冗談みたいに広大な空間だった。

 

「これは・・・凄いな」

 

「広いですね~」

 

ゼノヴィアさんとアーシアがこの光景に圧倒されたのか口々にそう漏らす。よく見たら、なんだか駅のホームみたいな造りになっている。

 

「あ、先輩! 線路がありますよ! これって地下鉄って事でいいんですかね?」

 

兵藤君の言う通り、向こうの方まで真っ直ぐに線路が伸びていた。そうやって色々見渡していると、上に残していたメンバーがエレベーターから姿を現した。

 

「それじゃ、みんな揃った所で、三番ホームまで歩くわよ」

 

リアスと朱乃を先頭に、俺達もゆっくり歩き始めた。しかし、ホントに広いな。天井が滅茶苦茶遠いぞ。

 

「先輩。なんか、叫んでみたくなりませんか?」

 

「確かに。ここならよく響き渡りそうだな」

 

「にゃら、実際にやってみたらどうにゃ?」

 

いつの間にか隣に並んでいた黒歌がさりげなく俺の腕を取りながらそう提案して来た。

 

「いや、実際に行動に移すほど子どもじゃないさ」

 

「残念。ここで大声で愛の告白とかされたら面白いと思うけどにゃ」

 

それもう罰ゲームだよね? そもそも告白する相手いないし。

 

「わ、私は、二人っきりの時にしてもらう方がいいです」

 

反対に並ぶアーシアが会話に入って来た。てか、アーシア、今の言い方だと告白されたい相手がいるの? お兄さん、気になるよ。

 

「おい、イッセー。あれがお前の目標としているヤツだ。今の悔しさをバネに精々頑張る事だな」

 

「先生・・・!」

 

視界の端で、兵藤君とアザゼル先生が肩を組んでいる。最近急激に仲良くなってるんだよな、あの二人。何か通じ合うものでもあるのだろうか。

 

そうして歩き続ける事数分。通路から広い場所へ出た俺達の目の前に、ずいぶんと特徴的な意匠が施された列車が姿を見せた。

 

「す、すげえ、グレモリーの紋様に、サーゼクス様の紋様・・・。部長、この列車ってもしかして!」

 

「ええ、グレモリー家が所有する列車よ」

 

列車まで持ってんのキミん家!? グレモリーのお家が凄いっていうのは前々から聞いてたけど、どうやら俺の想像を遥かに越えた場所にいらっしゃるみたいですね。

 

「さあ、みんな乗ってちょうだい。すぐに冥界に出発するわよ」

 

リアスの指示で俺達はすぐに列車に乗り込んだ。席も細かく決まっているそうで、リアスは先頭車両。兵藤君達眷属とアザゼル先生は中央から後ろの車両。そして、人間である俺とアーシア、眷属じゃない黒歌は最後尾の車両となった。

 

対面席で、俺とアーシアが並んで座り、黒歌が俺の前に座る。直後、勢いよく汽笛が鳴らされ、列車がゆっくりと動き始めた。これで後は到着まで待つだけだ。

 

「どのくらいで着くんだろうな」

 

「さっき別れる前にリアスに聞いといたにゃ。大体一時間くらいで着くって言ってたにゃ」

 

一時間か。長い様な短い様な。まあ、のんびり過ごしとけばいいか。

 

「はうう、まさか、シスターの身でありながら、冥界へ行く事になるなんて思いませんでした。一体どんな所なんでしょう・・・」

 

「心配しにゃくてもいいにゃ。悪魔がそこらじゅうにいて、空が紫色な以外は人間界とそんにゃに変わらないにゃ」

 

あんまりフォローになって無いですよ黒歌さん。けど、正直俺も冥界にちゃんとした形で行くのって初めてなんだよな。

 

「にしても、一時間もジッとしてるにゃんてヒマでしかにゃいにゃ。ここはご主人様に甘えるしかにゃいにゃ!」

 

言うや否や、いきなり猫モードになった黒歌が俺の膝に乗っかる。そして尻尾を振りながら期待を込めた目線を向けて来た。

 

「さあ、ご主人様。好きなだけ私を撫でまくるがいいにゃ! というか、撫でてください! 最近ご主人様に可愛がってもらってにゃいから欲求不満にゃのにゃ!」

 

誤解を招く発言は止めなさい! アーシアが誤解・・・。

 

「そ、そんな。リョーマさんと黒歌さんがすでにそんな関係だったなんて・・・」

 

しちゃってるよ! 現在進行形で誤解しちゃってるから! 違うよ、アーシア! 俺変な事してないからね!

 

それから必死こいてアーシアの誤解を解いてたら二十分も経ってた。この状況を招いてくれた張本人は幸せそうに膝上で寝てくれてます。

 

「はあ・・・」

 

ついつい溜息が出てしまう。何で到着前からこんなに疲れてるんだろう。俺も一眠りしてやろうかな。

 

「あ、あの、リョーマさん。ちょっとお願いがあるんですけど」

 

「何だ?」

 

もぢもぢするアーシアに聞き返すと、彼女は躊躇いがちに体を寄せて来た。その状態のまま自分の頭を俺の肩に乗せるアーシア。

 

「・・・ちょっとだけ、このままでいさせて頂いていいですか?」

 

「ああ、構わないよ」

 

「ありがとうございます」

 

寄り掛かって来るアーシアの重みを感じながら、俺も少しずつ意識が遠くなって来た。

 

「えへへ、今だけはリョーマさんを一人占めです・・・」

 

アーシアが最後に何か呟いたのを聞きながら、俺は完全に意識を手放すのだった。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

俺が目を覚ました時、列車は目的地まであと少しという所までやって来ていた。

 

『まもなく、グレモリー本邸前。まもなく、グレモリー本邸前。皆様、ご乗車ありがとうございました』

 

おおう、邸宅の近くに駅とか便利過ぎるだろ。まあ、グレモリー家の列車なんだからそれくらい出来てもおかしくないか。

 

とりあえず、兵藤君達と合流しようと車両を移動した。リアスも含め、全員が揃ったのを見計らったように列車が停止した。

 

「さあ、到着よ。みんな、私の後に続いて出て来てちょうだい」

 

「じゃーな、お前ら。俺はこのままグレモリー領を抜けて魔王領に向かう。サーゼクス達との会談が終わったら合流するから先に挨拶だけでも済ませとけよ」

 

グレモリー領? またなんか凄そうなワードが出て来たな。後でリアスに聞いてみよう。

 

『リアスお嬢様! お帰りなさいませ!』

 

瞬間、外の方から怒号の様な声が響いて来た。出口から覗き見ると、もの凄い数の人達が綺麗な列を作ってリアスを出迎えていた。っておい、花火まで上がってるぞ。

 

「や、やっぱり部長って凄い人なんだな・・・」

 

「イッセー君。とりあえず後ろがつかえてるから出てくれるかな」

 

「あ、わ、悪い」

 

先頭で固まっていた兵藤君が動いた事で、後ろに並んでいたみんなも次々に駅に降り立って行く。何だかんだで一番後ろだった俺も最後に駅に降りた。

 

刹那、あれだけ賑やかだった周囲からピタリと音が止んだ。どうしたの? 何かトラブルでもあったの?

 

「あ、あれがフューリー・・・」

 

「なんと凛々しきお顔なのでしょう・・・」

 

「まさか、伝説の存在をこの目に焼きつけられる日が来ようとは・・・」

 

見られてる! なんかめっちゃ見られてる! 兵士っぽい人もメイドさんも執事さんもみんな俺を見てる! 俺、なんかしました!?

 

そこへ助け船を出してくれたのはリアスだった。彼女は手をパンパンと叩き注目を集めると、やや大きめな声で言い放った。

 

「ほら、みんな。伝説の騎士に会えて興奮するのはわかるけど落ちつきなさい。彼も困ってるでしょ」

 

『も、申し訳ありません!』

 

一斉に頭を下げるみなさんにホッと息を吐く。先日、アザゼル先生が俺一人だと騒がしくなるって言った理由がわかった気がした。

 

「お待ちしておりました、お嬢様。眷属のみなさま。そして・・・神崎様とそのご家族の方々」

 

一人の女性が前に進み出る。それはグレイフィアさんだった。

 

「では、みなさま馬車へお乗りください。本邸までこちらで移動します」

 

グレイフィアさんの指した先には、豪華絢爛という言葉が相応しい馬車がいくつも並んでいた。馬車自体初めてなのに、あんな凄いのに乗ってもいいんですかね。

 

「ぶ、部長。ひょっとしたらなんですけど、向こうの方に見えるでっかい城って・・・」

 

兵藤君が見つめる先に、見事過ぎる城の姿が確認出来た。はは、まさかね。いくらなんでもあれは・・・。

 

「ええ。私のお家の一つで本邸よ。今から私達はあそこに行くのよ」

 

「「なん・・・だと・・・!?」」

 

兵藤君と俺のセリフが一字一句ピッタリ重なった。もうね、色々スケールが壮大過ぎて脳が追いつかないわ。

 

こうして、夏休み唯一にして最大のイベントは、最初から全速力な感じでスタートを切るのだった。




ついに冥界にやって来たオリ主。さて、誰からフラグを建てようか・・・(ゲス顔

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