ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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お久しぶりです。


第五十三話 趣味は千差万別

Q強姦魔と再会しました。どうしましょう?

 

A遠慮無く、慈悲無く、容赦無くぶっ飛ばしましょう。

 

というわけで、早速ぶちのめしてやったわけだが。よくよく考えると、この場にいたという事は、あの強姦魔も若手悪魔という事になるのだろう。そんなヤツをいきなり殴り飛ばしたら問題になったりして・・・。

 

内心冷や汗流しながら、騒ぎを起こしてしまった事も含めて謝罪したら、全員から気にするなといった旨の答えが返って来た。むしろ何人からはよくやってくれたとまで言われてしまった。俺としては大変ありがたいのだが、そんなにおおらかな感じでいいのだろうか。

 

それからすぐ、さきほどエレベーターを降りた時に出迎えてくれたスタッフのみなさんがやって来て、壊れてしまった机や椅子を修復してくれた。交換では無く修復である。しかも魔法っぽいものを使ってだ。便利過ぎるだろ魔法。

 

その机を囲み、若手悪魔のみなさんがそれぞれ自己紹介をする事になった。俺は悪魔じゃないので、そこから離れた壁に背中を預けながらその様子に目を向けていた。

 

「私の名前はシーグヴァイラ・アガレス。大公、アガレス家の次期当主です」

 

そう口火を切ったのは、さきほど強姦魔に狙われていた女性だ。大公っていうのがどういう存在かは知らないが、悪魔社会のスケールのデカさを考えると、きっと凄い立場なんだろうな。

 

ふと、アガレスさんがこちらに目を向けて来たので微笑み返したら、ものっそい速度で顔を逸らされた。解せぬ。

 

「私はリアス・グレモリー。グレモリー家の次期当主です」

 

「私はソーナ・シトリー。シトリー家の次期当主です」

 

続いて、リアスと支取さんが名乗る。そういえば、支取さんって本名じゃなかったんだっけ。しかし、今さらシトリーさんと呼ぶのもなぁ。それに、学園でそう呼んだら悪魔関係者以外の子達が不審に思うだろうし。・・・うん、やっぱり支取さんで通そう。

 

「俺はサイラオーグ・バアル。大王、バアル家の次期当主だ」

 

正に“威風堂々”といった感じで自己紹介するバアルさん。うーむ、見た目も中身もイケメン過ぎるぞこの人。男が惚れる男って感じがする。・・・尊敬的な意味だからね。勘違いしないでね。

 

「ディオドラ・アスタロトです。アスタロト家の次期当主です」

 

最後にそう名乗ったのは、見るからに優しそうな少年だった。争い事とは無縁ですって雰囲気だけど、大丈夫なのかな。仮にバアルさんと戦う事になったら片手でやられそうな気がするけど。

 

「それと、先程フューリー殿に片付けられたあの男だが、ヤツの名はゼファードル。グラシャラボラスの次期当主だ。グラシャラボラス家は先日の御家騒動で次期当主とされていたものが事故死を遂げたばかりでな。ゼファードルが新たな候補となったそうだ」

 

バアルさんが説明してくれた。やっぱりアイツも次期当主だったのか。後で問題にならない事を祈っておこう。

 

とにかく、これで全員の自己紹介が終わった。・・・で、これからどうするんだろう。さっきバアルさんはここが待合室だと言っていた。という事は、時間が来たらまた移動するのだろうか。

 

「・・・マ。リョーマったら」

 

「ん?」

 

リアスの呼び声で考え事から抜け出すと、なんかみなさんからめっちゃ視線を向けられていた。え、何かあったの? それとも無意識でまたなんかやらかしちゃった、俺?

 

なんて心配してたら、俺も自己紹介してくれと言われた。リアスのオマケとして来た上に、部外者である俺が自己紹介なんかしても意味無くないですかね?

 

けどまあ、言われた以上はするしかない。なんかアガレスさんとバアルさんが期待を込めた目を向けて来ているが、面白い事とか言えませんよ? 自己紹介で狙って面白い事言おうとすると大怪我するって知ってるので。

 

「初めまして、神崎亮真です。本来、この場にいられるような者では無いのですが、事情によりリアス・グレモリーのお供という形でこうしてここにいます。どうぞ、よろしくお願いします」

 

よし、転入初日のあいさつに比べてずいぶん柔らかい感じで済んだぞ。あの時みたいな沈黙は二度とゴメンだからな。

 

「フューリー殿。貴殿とリアスが懇意にしているのは、先日の婚約パーティーの件で理解しているが、そもそも、どうやって知り合ったのだ?」

 

何でバアルさんが婚約パーティーの事知ってるんだろう。まさか、事件扱いで冥界に知れ渡ったりとかして・・・無いよね?

 

「俺が転入した学園に彼女がいて、それからの付き合いです。最も、彼女が悪魔だと知ったのはつい最近でしたけどね」

 

「なるほど・・・」

 

「それと、出来れば俺の事は名前で呼んでもらえるとありがたいです」

 

「ならば神崎殿と呼ばせてもらおう。俺もサイラオーグで構わない。敬語も結構だ」

 

そう言ってもらえるのはいいが、流石に出会ったばかりで呼び捨ては憚られるので、しばらくは“さん”付けさせてもらおう。

 

続いて、アガレスさんがやや躊躇いがちに話しかけて来た。

 

「神崎様。改めまして、先程はありがとうございました。それで、その・・・こんな事をお願い出来る立場では無い事は重々承知しているのですが、もしよろしければ、あのお姿を見せて頂く事は出来ないでしょうか?」

 

あの姿? ・・・あ、もしかして、ラフトクランズモードの事を言ってるのか? ひょっとして、アガレスさんロボット好き? そうじゃないと女性であの姿に興味を持つわけも無いし。

 

「おい、アガレス。戦場以外で戦装束を纏えなどと、どれほど無礼な願いなのか理解しているのか?」

 

サイラオーグさんの指摘に、アガレスさんが気まずそうに顔を伏せる。

 

サイラオーグさん。俺を気遣っての発言はありがたいですけど、別にこだわりとか無いんで見せる事にはなんの抵抗も無いですよ。

 

「わかりました。ちょっと待ってください」

 

俺はラフトクランズモードを発動させた。はてさて、どういう反応を見せてくれるのやら。

 

「・・・うわぁ」

 

アガレスさんの瞳が瞬く間にキラキラと輝き始めた。それを見て俺は確信した。彼女、間違い無くロボット趣味の人だ。ミリキャス君と三人でロボット談義でもしたらさぞかし盛り上がるだろうな。

 

「ふむふむ、ここがブースターね。この二基のユニットは何かしら。胸部のこれは発射口に見えるけど。あは、この剣がドライグの尾を斬り飛ばしたという剣ね。それに、これは盾?」

 

各部について感想をもらしながら、俺の周囲を回るアガレスさん。見えやすいように剣と盾を両手に構えると、彼女は嬉々として写真を撮り始めた。そのカメラどこから出したの?

 

その後、タイミングを見計らい、俺は彼女に声をかけた。

 

「もういいですか?」

 

「はい! それはもう・・・!」

 

そう言いかけて、アガレスさんの表情が曇った。

 

「どうかしましたか?」

 

尋ねる俺にアガレスさんが答える。父に勧められたロボットアニメの影響で、ロボットが大好きになった事。今では自分で一からオリジナルロボットのプラモデルを作れるようにまでなった事。そして、この趣味に没頭している所為で、男性との浮いた話が一切ない事。

 

「・・・引いちゃいますよね。こんな女らしくない趣味を持ってる女なんて。でも、私にとってはとても大切なものなんです」

 

「別に変とは思いませんよ」

 

「え?」

 

「趣味は人それぞれ。読書だってアニメだってロボットだって、その人にとってはかけがえのないもの。それを外野がどうこう言う資格なんて無いですよ。少なくとも、俺はあなたの趣味を馬鹿にするつもりは全くありません。俺も好きですからね、ロボット」

 

むしろ、男の趣味に合わせられる女性って人気になるんじゃないの? しかもアガレスさん美人だし。周りの野郎どもは見る目が無いな。俺ならすぐさま彼氏に立候補するのに。・・・まあ、俺なんかじゃ即「ごめんなさい」だろうけど。

 

「神崎様・・・」

 

泣きそうな顔のアガレスさん。その様子が子どもっぽかったので、ついその頭に手が伸びてしまった。

 

「いつか、あなたの作ったというプラモデルを見せてもらいたいものです」

 

あやす様に頭を撫でながら俺は彼女にそう言った。そういえば、この世界に来てからロボットアニメというものを全く見ていない。人間界に帰ったらチェックしてみよう。

 

「・・・はい。必ず・・・必ずお見せします」

 

アガレスさんが笑う。その笑顔は、とても晴れ晴れとしていて美しかった。自惚れるつもりじゃないが、彼女の抱えていたものを少しは軽く出来たのかもしれない。

 

・・・と、ここで終われば万々歳だったのだが、そうは問屋がおろさないらしい。

 

ふいに背筋が寒くなったので振り返ると、そこにはジト目で見つめて来るリアス、朱乃、塔城さんがいた。しかも、支取さんや、匙君を除いた眷属の子達まで同じ様な目線を送って来ていた。

 

その視線から逃げるように顔を背けると、その先でアスタロトさんと目があった。彼は相変わらずの柔らかな笑みを浮かべている。それが今の俺にはありがたかった。彼とは仲良くなれそうな気がする・・・。

 

「皆様、大変ながらくお待たせいたしました」

 

そこへ、再びスタッフの方が姿を現した。おかげで感じていた寒気がピタリと止んだ。まさに天の助けだ。ここ冥界だけど。

 

「いよいよね。みんな、行くわよ」

 

リアスを先頭に部屋を出て行くみんな。そんな彼女達に遅れないよう、俺も部屋を後にするのだった。




少々短かったですが、キリがいいので今回はここまでとさせていただきます。

シーグヴァイラのキャラについての苦情はどうぞご勘弁を。

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