ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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そういえば、気付いたらUAが500000を突破。本当にありがたいです。


第五十七話 知らず知らずに公開処刑

リアスSIDE

 

朱乃及び黒歌によるセクハラから逃げ出し、私は息を整える。最早スキンシップを超え、完全に愛撫と呼べるものだった。

 

特に黒歌はやり過ぎよ。急に太股を擦って来たかと思ったら、そのまま手を足の付け根の方へ移動させて来たし。もし小猫が止めてくれなかったら、絶対いく所までいってたわね。

 

・・・まあ、抵抗もせずに為すがままだった私も悪いのだけれど。朱乃も黒歌も“上手い”のよね。・・・何がとは言わないけど。

 

朱乃は朱乃で、ターゲットを小猫に移してイタズラしてるし。視線を移せば、アーシアもゼノヴィアに胸を揉みしだかれていた。

 

それにしてもアーシアって、その、けっこう乱れちゃうのね。以前何かの本で、普段大人しい娘ほど、行為の時は激しいって読んだ事あるけど。

 

―――ぶ、部長さぁん・・・!

 

「・・・って、何考えてるのよ私!」

 

イッセーじゃあるまいし、そもそも私は女よ! こんな妄想するなんて、ひょっとしてのぼせちゃったかしら。

 

『兵藤君!?』

 

突如、男湯の方からリョーマの驚いた様な声が聞こえて来た。おそらく、今の私達の声はあちらに筒抜けだったのだろう。その結果、イッセーが鼻血でも出しちゃったんでしょうね。

 

リョーマはどうだったのかしら。興奮した? 鼻の下が伸びちゃった? それとも・・・。

 

(・・・駄目ね、想像出来ないわ)

 

というより、彼のそんな顔なんて想像でも見たくないわ。変な考えを追い出す様に、私は頭を振った。

 

「はあ・・・はあ・・・」

 

「ん・・・あ・・・」

 

ようやく解放された二人が、息も絶え絶えといった感じで肩を揺らしている。上気した頬が何ともいえない扇情さを醸し出していた。

 

「ちょっと、朱乃もゼノヴィアもやり過ぎよ」

 

「うふふ、ゴメンなさいね、小猫ちゃん」

 

「すまない、アーシア。止められなかった」

 

「もうスキンシップは禁止よ。大人しく温泉を楽しみなさい」

 

温泉はのんびりゆったり楽しむもの。そう、そのはずだった・・・。

 

『お前、リアス達と同棲してるみたいだが、もう一人くらい抱いてやったのか?』

 

なのに、アザゼル先生の放ったこの一言が全てを破壊してしまった。ピシリ! と、女湯の時が一瞬にして停止する。

 

『ぶっ!?』

 

リョーマが吹き出した。たぶん、飲泉を口に含んでいた所へ聞かれたんでしょうね。けど、そんな事は全くどうでもいい。いま重要なのは彼の答えだ。私の知らない間に、他の娘とそういう関係になっていたとしたら、リョーマの性格からして、そのまま結婚という流れに!

 

リョーマは無自覚に女性を口説く。そこに悪意が無い分余計性質が悪い。本人の知らない内に着々とハーレムを築いている。ハーレムってイッセーの夢じゃなかったの? それとも、男はみんなハーレムを目標にしているのかしら。

 

彼の競争率はこれからも益々増えて行くでしょうね。だからこそ、同じ家に住むというアドバンテージを存分に活かして距離を縮めようと思ったのに・・・まさか、ケンカして家出して来たと思われてたなんて・・・。思い出すだけで燃え尽きそうだわ。

 

話が逸れちゃったわね。さあ、リョーマ。なんて答えるの・・・!

 

『どうも何も、俺と彼女達はそんな関係じゃないですよ』

 

という事は、まだ誰とも結ばれて無いのね。ああ、よかった・・・のかしら? 今の言い方だと、私達とそう言う関係になるつもりが無いっていう風に受け取れるけど。

 

『それとも何だ。お前にとってリアス達は女としての魅力が無いとでも言うのか?』

 

『そんなわけないじゃないですか。彼女達はみんなとても魅力溢れる素敵な女性だと思ってますよ』

 

「「「「ほっ・・・」」」」

 

私、アーシア、黒歌、小猫の溜息が綺麗に重なる。って、ちょっと待って。小猫の反応おかしくない? この子、別にリョーマに対して特別な感情を持っている様には見えないのに。

 

『なら、語ってもらおうか。お前の言うリアス達の魅力ってヤツを』

 

『いいですよ』

 

なんか妙な流れになって来たわ。けど、これはいい機会ね。リョーマが私を、私達をどう思っているのか、存分に話してもらいましょう。

 

「部長、それにアーシア達まで。そんなに仕切りに近づいてどうし・・・」

 

「ゼノヴィアさん。ちょっと静かにしててください」

 

アーシアが未だかつて見せた事が無い表情でゼノヴィアを見つめた。というか睨んだ。

 

「ご、ごめんなさい」

 

雰囲気もといプレッシャーに圧されたのか、慌てて謝罪するゼノヴィアだけど、すでにアーシアの目は彼女では無く仕切り・・・その先にいるであろうリョーマに向けられていた。

 

「まあまあ、落ち着いてくださいな、アーシアちゃん。ほら、ゼノヴィアちゃんもいらっしゃい。もしかしたら面白い話が聞けるかもしれませんわよ」

 

ちゃっかり最前列に陣取っている朱乃がゼノヴィアを招き寄せる。そうして、全員が無言で耳を澄ませる中、リョーマとアザゼル先生の会話が続けられる。

 

『そんじゃ、まずはリアスだな』

 

『彼女はとても誇り高い女性です。どんな時でも常に誇りを持って行動しようとする彼女は、見ていてとても気持ちがいいですね』

 

誇り・・・か。あなたはいつもそう言ってくれるけど、それはあなたのおかげよリョーマ。あなたという甘えられる人がいるから、私は立っていられるの。イッセー達の『王』として、そしてあなたに相応しい女になる為に。

 

『ああ、それと、彼女の笑顔はとても素敵だと思います。いつもの大人びた『王』の微笑みも美しいと思いますが、やはり時たま見せる少女らしい『リアス』の笑顔の方が俺は好きですね』

 

「ッ~~~~!」

 

マズイ、私、今絶対二ヤけてる! こんな顔、朱乃達に見られたら何を言われるか・・・!

 

耐えろ? 無理だ! こんな・・・こんな嬉しい事を言われて耐えられるわけがない。あの日から結構経ったけれど、彼は変わらず私を『リアス』として見てくれている。それが、たまらなく嬉しかった。

 

『・・・しょっぱなから飛ばして来るな。なら次はアーシ・・・』

 

『天使です』

 

最後まで言わせず、リョーマが即答する。

 

『あ?』

 

『アーシアは天使です。俺にはこれ以上の言葉は思いつきません』

 

『いや、どういう意味だよ?』

 

『辛い人生を歩んで来ながら、それでもあんな風に他者を想いやれる慈悲深い彼女を天使と呼ばずになんと呼びますか。これまで、そんな彼女を利用しようと様々な連中が現れましたが、今後、同じ様に彼女に手を出す者が現れれば、その時は俺の全力を以って排除します』

 

リョーマの中の天使のイメージってどうなってるのかしら。でも、シスターであるアーシアからすれば、最上級の褒め言葉かもしれないわね。

 

「そ、そんな、私ごときが畏れ多いです・・・」

 

そう言いつつ、頬に手を当てながら嬉しそうな顔をするアーシア。

 

『いつか、彼女を守ってくれる男性が現れるまで、その役目は俺が勤め続ける所存です。今までの分、アーシアにはこれから十分に幸せになってもらいたいですから』

 

そんな男性、現れないと思うけれどね。何せ、初めて恋した男性がこれ以上無いくらい素敵な人だったんだから。

 

「・・・私は、リョーマさんのお傍にいられれば、他には何も望みません」

 

頬から胸に手を移動させ、祈るアーシア。その汚れ無き美しい微笑みは、まさに『聖女』だった。間違っても『天使』とは言わない。私、『悪魔』だもの。

 

「ほらね」

 

「何か言ったにゃ、リアス?」

 

「ううん、別に」

 

『では、黒歌は?』

 

「うにゃっ! 私の番にゃ!」

 

耳をピンと立て、一字一句聞き逃さないつもりであろう黒歌。その姿は、もう主殺しと呼ばれていたかつての彼女とは別人だった。

 

『始まりは全くの偶然と言っていいものですが、俺は彼女と出会えて本当に良かったと思っています。なんだかんだで、この世界で一番長い付き合いですからね』

 

「私も・・・ご主人様と出会えてよかったにゃ」

 

その言葉に、いったいどれだけの気持ちが込められているのだろう。罪からの解放。妹との再会。どちらもリョーマと出会えなければ叶わなかったものだ。

 

『猫が人になるなんて驚きましたが、この世界ではそれも普通なんですよね。彼女が正体を明かしてからは、家の雰囲気が変わりました。彼女の明るい性格が、家の中も明るくしてくれた気がします』

 

「・・・違うにゃ。それはご主人様がいるからにゃ。ご主人様が私を受け入れてくれたから、私は笑えるのにゃ」

 

黒歌の頬を流れるそれを、私は見なかった事にした。

 

『四人目は・・・小猫か』

 

「な、何で私まで・・・」

 

「そりゃ、あなただってリョーマの家の住人だからよ」

 

「でも、私みたいな無愛想な女、先輩だってきっと・・・」

 

『塔城さんは、普段物静かであまり感情を出さない子ですが、本当は姉思いの優しい子です。それに、黒歌とのやりとりでは、ハッキリ感情を現しますしね。頬を膨らませたり、甘えたり、一緒に暮らすようになって、彼女の可愛らしい一面がたくさん見れるようになりました』

 

「・・・」

 

小猫の姿が消えた。・・・と思ったら、温泉の中に口元まで沈みつつ、プクプク息を出しながらそっぽを向いていた。顔は見えないけど、うなじが真っ赤だから、きっと顔も同じ感じでしょうね。

 

『そーかそーか。くくく、いいぜ。なら、次は朱乃だ』

 

『え? ですが、彼女は俺の家には』

 

『いいじゃねえか。ついでに言っちまえよ。・・・その方が都合がいい連中もいるしな』

 

「さすが、アザゼル先生はわかってますわね」

 

今度は朱乃か。・・・というか、今のアザゼル先生のセリフ。もしかして、聞いてるのバレてる?

 

『よくわかりませんが・・・。とにかく、姫島さんについてですよね。彼女を一言で表すなら“大和撫子”という言葉以外に無いでしょう。上品で奥ゆかしく、家事も万能ですし。部室で淹れてくれる彼女のお茶は密かな楽しみなんですよ』

 

騙されてる! 騙されてるわよリョーマ! この子の本性はそんなご立派なものじゃないのよ! その微笑みの仮面に隠す“S”の顔こそがこの子の本質なのよ!

 

『以前、彼女の家にお邪魔した時にも、目の前でお茶を点ててもらいましたが、あれは美味かった。また飲んでみたいです』

 

「まあ、リョーマったら。私と一緒になれば、毎日でも点ててあげますのに」

 

「ちょ、ちょっと朱乃! 家にお邪魔したってどういう事!? 聞いてないわよ!」

 

詰め寄る私に、朱乃は涼しい顔で答えた。

 

「当然よ、言ってないもの」

 

「なっ!? あ、あなたね! というか、さっきリョーマって呼んだわよね! いつの間に!?」

 

「彼を家に招いた時よ。あの時、リョーマは私を優しく・・・うふふ、これ以上は二人だけの秘密という事で」

 

「そんなの駄目に決まって・・・!」

 

『彼女と結婚出来る男は凄く幸せでしょうね』

 

リョーマの爆弾発言がまたしても時を止めた。その中で、朱乃が立ち上がり、勝ち誇ったかのように高笑いをあげ始めた。

 

「おほほほほ! リアス、安心してちょうだいね。結婚式には呼んであげるから!」

 

「ふざけんじゃないわよ! いい!? リョーマは結婚出来る男は幸せだって言っただけで、あなたと結婚するって言ったわけじゃないんだからね!」

 

「でも、そう言うって事は、彼自身も私をそう言う対象として見てるって事でしょ? なら両思いじゃない」

 

「寝言は寝て言いなさい!」

 

「ええ!? もしかして朱乃さんもリョーマさんの事を!?」

 

「気付いてなかったのにゃ、アーシア?」

 

一気に騒がしくなった私達を大人しくさせたのは、ゼノヴィアのこの一言だった。

 

「そんなに大声を出すと、神崎先輩に聞かれるんじゃないのかな」

 

その瞬間、私達は一斉に口を噤んだ。おそらく、リョーマは私達が聞き耳を立てている事に気付いていない。もしバレたら印象が悪くなってしまう。私達は最後までこうして黙って見守るしかない。

 

『そんじゃ次で最後だ。本当ならセラフォルーやカテレア辺りについても聞きたかったが、それはまた次の機会にとっておくさ』

 

そう言って、アザゼル先生は最後の名前を口にした。

 

『ゼノヴィアはどうだ?』

 

「わ、私か?」

 

面食らうゼノヴィア。小猫と同じで、まさか自分まで呼ばれるとは思っていなかったでしょうね。

 

『ゼノヴィアさんは・・・。変わりましたね。あの日、部室で初めて彼女と出会った時と比べて、とても表情が豊かになりました』

 

「そ、そうなのか?」

 

「はい。ゼノヴィアさん、毎日がとても楽しそうですよ」

 

アーシアにそう言われ、ゼノヴィアは困惑しつつもどこか嬉しそうだった。

 

「そ、そうか。自分ではよくわからないのだが。・・・先輩は、私の事をよく見てくれているのだな」

 

・・・ん? 気のせいかしら。今建たせてはいけないものが建った気がする。

 

『ですが、今のゼノヴィアさんこそが、本来の彼女だと思います。これからも、彼女の素敵な所をたくさん見つけられたらいいと思ってます。リアス達に負けず劣らず、ゼノヴィアさんもとても魅力的な女性ですから』

 

「先輩・・・」

 

いつものクールさはどこへやらとばかりに、乙女の様に頬を赤らめるゼノヴィア。いやまあ、実際に乙女なんだけど。あれよね、のぼせちゃっただけよね。旗が建ったわけじゃないわよね?

 

『なるほどねぇ。ありがとよ、フューリー。・・・おーい! お前らも聞いてただろ!』

 

「「「「「「ッ!?」」」」」」

 

『先生に感謝しろよ! 後は精々頑張りな!』

 

や、やっぱりバレてた!? でも、先生、ひょっとして私達の為に?

 

『アザゼル先生、何を・・・。って、まさか』

 

『そのまさかさ。今のお前のセリフはバッチリ女湯へ届いてたんだよ』

 

『なん・・・だと・・・!?』

 

『くくく。いやあ、傑作だったぜ・・・っておい! 何やってんだ!』

 

アザゼル先生の声色が一変する。何かあったのかしら?

 

『せ、先輩! こんな所で剣出してどうするんですか!?』

 

『イッセー! 木場! こいつを止めろ!』

 

『お、落ち着いてください、先輩! アザゼル先生も笑い者にする為に言わせたわけじゃ!』

 

『ギャスパー! 『神器』を使え!』

 

『む、無理ですよぉ! 僕の『神器』でも先輩は止められないんですからぁ!』

 

『いいからやれ! やってくれ! やってください! お願いします!』

 

「・・・黙祷」

 

私の指示で、朱乃達が揃って黙祷を捧げる。誰にって? それはもちろん・・・。

 

『アッーーーーーー!!!』

 

たった今断末魔を上げたアザゼル先生に決まっているでしょ。

 

リアスSIDE OUT

 

 

ヴァーリSIDE

 

「はっ・・・!」

 

「どうしたんでぃ、ヴァーリ?」

 

「どこかで素敵なイベントが起こっている気がする!」

 

「?」




オリ主だって、時には味方にもキレますよ。

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