ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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第六十一話 お出掛け

リアス達の為のモーションデータは完成したが、その後もソフトで色々遊んでいたらすっかり夜になっていた。なので翌朝、俺はモーションデータを持って再度アザゼル先生の部屋を訪問した。再生された映像に満足そうな笑みを浮かべ、先生はパソコンを閉じた。

 

「いいじゃねえか。よし、これで準備は完了だな」

 

「では、早速みんなに技の練習を?」

 

と思ったのだが、先生は首を小さく横に振った。

 

「そうしたいのは山々だが、必殺技に気をとられ過ぎて本来のトレーニングメニューが疎かになったら本末転倒だ。そうだな・・・とりあえず一週間くらいは間を空けるか。少しでも能力が上がっていた方が、技も覚えやすくなるかもしれないしな」

 

なるほど、一理ある。最悪どっちも中途半端になったりしたら悔やんでも悔やみきれないだろうしな。とはいえ、予定も何も無い俺は一週間も何をしていたらいいのだろう。・・・いっその事、俺も特訓とかしてみようかな。

 

独り言のつもりだったが、アザゼル先生の耳には俺の言葉が届いていたようだった。それはいいんだが、何で引き気味な感じで「止めてくれ。人外から化物になる気か」なんて言われにゃならんのですか。以前クレイジー神父にも言われましたが、化物は言い過ぎでしょ。

 

・・・そういえば、あのクレイジー神父今頃何やってんだろう。変態共が一掃されたから、流石に彼も心を入れ替えてチャンバラごっこから卒業してるとは思うけど。

 

「特訓なんかより、お前には別の予定があるじゃねえか。ちょうどいい機会だ。この間にカテレアに会って来いよ」

 

あ、そうだった。それがあった。よくわからんが、向こうが俺に会いたがってるんだったっけ。そういう事なら先生の言う通り、カテレアさんに会いに行ってみるか。

 

「わかりました。ならそうさせてもらいます。といっても、俺は彼女の居場所を知らないのですが・・・」

 

「それなら心配するな。セラフォルーが同行する事になってるからな。アイツに連れて行ってもらえ」

 

どうしてセラフォルーさんが? と疑問を口にする俺に、アザゼル先生は短く「保険だ」と答えたが、それが益々俺の頭を混乱させた。どうして訪問するのに保険が必要なのだろう。・・・ひょっとして、俺がカテレアさんを襲うとか思われてたりする? そうならないように魔王である彼女をお目付け役に?

 

「連絡は俺から入れておいてやるよ。アイツの予定次第だが・・・まあ、お前が絡んでるから二、三日ほどで何かしらの動きがあると思うがな」

 

そう言って、アザゼル先生はリアス達の様子を見に行くと部屋を出た。主がいない部屋にいつまでもいるわけにもいかないので、俺もすぐに先生の後に続くのだった。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

それから三日後、アザゼル先生の予想通り、セラフォルーさんがグレモリー邸にやって来た。今日は見慣れた魔法少女の格好じゃなく、シンプルな黄色いワンピースを身に纏っていた。

 

そんな彼女を出迎える俺とアザゼル先生。まさか、本当に来るとは・・・。驚く俺を、先生はしてやったとばかりに小突いて来た。

 

「な? 俺の言った通りだろ?」

 

「凄いですね、アザゼル先生。でも、どうしてわかったんですか?」

 

「むしろ何でお前がわからないのかが俺には不思議でならんのだが」

 

「?」

 

「こんにちは、フューリーさん! ついでにアザゼルちゃんも」

 

「ええ、こんにちは」

 

「俺はついでかよ・・・」

 

「カテレアちゃんに会いに行くんだよね? なら、早速出発しよっか!」

 

「え? 今からですか?」

 

「うん。だってその為に来たんだもん」

 

「そうですか・・・すみません。気を遣わせてしまったみたいで」

 

セラフォルーさんだって忙しいだろうに、俺の用事に巻き込んでしまって申し訳無い気持ちで一杯だった。

 

「う、ううん! そんなの気にしないでいいよ!」

 

「だよなぁ。むしろお前からしたら望む所だもんなぁ」

 

「え?」

 

「ア、 アザゼルちゃん!」

 

「くくく、まあそういう事だ。変な心配なんかせず、気楽に行って来い。・・・っと、その前にコイツを渡しておかないとな」

 

そう言って、アザゼル先生は懐から眼鏡を取り出した。見た感じ、何の変哲も無い普通の眼鏡の様に見えるが。この人の事だ。きっと何か便利機能が搭載されているのだろう。

 

「この眼鏡には認識阻害機能が付いてあってな、かけた者は周囲から別人として認識される。フューリーであるお前が街に出れば下手したらパニックになる恐れがあるが、それがあれば大手を振って歩けるぜ」

 

おお、またしても凄い機能じゃないですか! やはり天才は一味違うぜ。

 

「最も、リアス達の様に既にお前と縁を結んでいる相手には効果が無いんだが、今回は関係無いか。ちなみに度は入ってないからな」

 

渡された眼鏡を早速装着する。うーむ、特に変わった感じはしな『カシャ!』・・・カシャ?

 

「・・・何やってんだ、セラフォルー」

 

呆れ顔のアザゼル先生の目線の先で、セラフォルーさんは高そうなカメラのシャッターボタンを連打していた。

 

「愚問だよアザゼルちゃん! 眼鏡をかけたフューリーさん・・・これを撮らないで何を撮るっていうの!」

 

答えながらもボタンを押す手を止めないセラフォルーさん。・・・写真に残しておきたいほど滑稽なのだろうか、今の俺は。勘弁してくださいよ。眼鏡って似合う人と似合わない人がいるんですから。

 

「えへへ、カテレアちゃんにいいお土産が出来たなぁ(それと、今度のお披露目会後に発行する写真集にも追加しないと・・・)」

 

・・・妙な胸騒ぎがする。例えるなら、密かに進行していた恐ろしい計画が、もう取り返しのつかない所まで来てしまったかの様な・・・。

 

そんな気持ちを抱いていると、セラフォルーさんはカメラを仕舞った。とりあえず、本来の目的を果たす為にも、そろそろ出掛けよう。

 

「それでは、行って来ます先生。セラフォルーさん、案内お願いします」

 

「おう。・・・頑張れよ」

 

「よ~し! 出発進行~!」

 

謎の励ましを背に、俺はセラフォルーさんと共にグレモリー邸を出発した。邸宅を出てすぐに説明されたが、カテレアさんは今、ルシファードの高級住宅街で一人暮らしをしているそうだ。元々望んで旧魔王派に属していたわけじゃなく、さらに情報提供にも応じてくれたので、サーゼクスさんから色々融通してもらったらしい。

 

なので、会合の時と同じように、駅から列車でルシファードに向かう事になったが、駅まではリアスのご両親のご厚意で馬車を利用させてもらえる事になった。

 

その車内。向かい合って座ったセラフォルーさんに、話しかける。

 

「そういえば、今日はいつもの服では無いんですね」

 

「え? あ、うん。へ、変・・・かな?」

 

「まさか。とても可愛らしくて似合っていると思いますよ」

 

どこからどう見ても文句のつけようが無い可憐な少女だ。おそらく、俺以外の誰かに聞いたとしても、同じ答えが返って来るだろう。

 

―――褒める時はキチンと褒める。下手な照れは相手に失礼。

 

ふと、母さんの口癖が脳裏を過った。

 

「ほ、ホント!?」

 

「え、ええ」

 

突然立ち上がるセラフォルーさんに戸惑いながら頷く。馬車の中で立ったら揺れたりした時に危ないですよ。

 

「きゃっ!?」

 

と思っていたら、タイミングを狙ったかのように馬車が揺れ、セラフォルーさんがバランスを崩した。反射的に倒れそうになった彼女に向かって手を伸ばし引き寄せた次の瞬間、彼女はすっぽりと俺の胸の中に収まった。女性らしい柔らかな感触と、柑橘系のいい香りがする。香水か何かだろうか。

 

「大丈夫ですか、セラフォルーさん」

 

「う、うん、大丈夫・・・へ?」

 

ゆっくりと顔を上げたセラフォルーさんと目が合う。十数センチまで迫る美少女の顔にドキッとしながらも、表面上は何とか冷静に振る舞う俺だった。

 

「あ、あわわわわ・・・! フュ、フューリーさ・・・近っ・・・顔・・・近っ・・・!」

 

瞬く間に顔を真っ赤にし、セラフォルーさんは片言な言葉を数回発した後・・・。

 

「・・・きゅう」

 

気絶した。それはもう見事に、完全に、あっという間に。

 

「セ、セラフォルーさん?」

 

「・・・」

 

肩を揺するも反応が無い。どうしよう。というか、何で気絶? ・・・まさか、引き寄せる時にどこかで頭をぶつけたのか!? まずい、すぐに『友情』をかけないと!

 

すぐさま『友情』を使用しセラフォルーさんを横たわらせながら手を握り締める。頼む! 目を、目を開けてくださいセラフォルーさん!

 

そうやってその時が来るのを、俺は必死になって祈り続けるのであった。

 




すぐに修行を始めさせようと思いましたが、ちょっと予定を変えてみました。元々オリ主一人で残念さんに会いに行く展開でしたが、前回の魔王少女が不憫とのご意見があったので彼女と一緒に行かせる事にしました。

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