ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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お待たせして申し訳ありませんでした。


第六十三話 ボッチのグルメ

はてさて、俺のその場しのぎの発言からレストランへ行く事となってしまったわけだが、どういうわけか、タクシーに乗り込んだ途端にカテレアさんの機嫌が悪くなってしまった。あ、ちなみに眼鏡はカテレアさんの家を出る前に装着済みです。けど、その後すぐにカテレアさんが突然洗面所に用があると言って二分くらい帰ってこなかったのが少し気になった。

 

それと、今更ではあるが、有名人であるはずのセラフォルーさんがどうして騒がれなかったのかというと、どうやら彼女も認識阻害の魔法とやらを使っているとの事だ。普段なら特に気にしないそうだが、今回は俺がいるという事で配慮してくれたのだとか。

 

それはそれとして、現在タクシーの中は俺とセラフォルーさんが後部座席に座り、カテレアさんが前に座っている。どうやら、彼女はこの席順が不満らしい。

 

「くっ、どうして私が前に座らなくてはならないのですか・・・!」

 

「だって、そのレストランって運転手さんも知らない隠れた名店ってヤツなんでしょ? だからカテレアちゃんにナビゲートしてもらわないといけないじゃない」

 

「それはそうですが・・・あ、そこを右に曲がってください」

 

「かしこまりました」

 

カテレアさんの指示通りにタクシーを走らせる年配男性運転手。常にニコニコ笑顔で返事をするあたり、流石プロだと思った。

 

「ところで、今から行くレストランはどんな所なんですか? カテレアさんのお気に入りとの事ですが」

 

せっかくなので聞いてみると、カテレアさんも指示しながら答えてくれた。

 

「親子三人で営んでいる本当にレストランです。見つけられたのは本当に偶然なのですが、以来何度かお邪魔させて頂いている所なんです」

 

へえ、聞くだけでも何か期待出来そうだな。これは今から楽しみだ。

 

そんな風に会話を交わしていると、タクシーがゆっくりと停車した。どうやら目的地についたようだ。降車した俺の目の前に小ぢんまりとした建物が建っていた。

 

「あは、かわいいお店だね」

 

お気に召したのか、セラフォルーさんが笑顔を見せる。一方のカテレアさんはというと、俺達をエスコートしようと一歩前に出ようとした。とそこへ、店の扉が開き、中から紫色の長髪をツインテールに纏めたエプロン姿の少女が姿を現わした。

 

「さーて、お掃除お掃除っと! って、あれ、カテレアさ・・・ッ!?」

 

少女がカテレアさんに気づく。だが様子がおかしい。俺とセラフォルーさんを見るなり固まってしまった。ひょっとして、認識阻害効果が発揮されてない? だとしたらマズイ気がする。

 

「ごきげんよう、レイラ。今から席は空いて・・・」

 

「お、おおおおおおお父さーーーーーん!!! お母さーーーーーん!!! カテレアさんがぁ! カテレアさんが本当にお連れ様を連れて来たよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

血相を変えて店の中へ駆け込んでいく少女。扉が閉まっているのに、中から「ホントか!?」とか、「アンタ幻でも見たんじゃないのかい!?」とか聞こえてくる。そして、ドタドタと大きな足音が響いたと思った次の瞬間、再び扉が激しく開かれ中からコックさんの格好をした男性と、少女と同じくエプロン姿の恰幅のいい女性が飛び出してきた。

 

突然の出来事に、今度はこっちが固まってしまう。そんな俺達を見て男性と女性が愕然とした表情を見せる。いや、ホント、何でそんなに驚かれないといけないんですかね。

 

「お、おお・・・! 本当に連れがいるぞ! しかも二人も!」

 

「て、店長? どうかしましたか・・・」

 

「カテレアちゃん!」

 

突然、感極まった様子で女性の方がカテレアさんを抱き締めた。傍から見てもかなりの力が込められているのがわかる。現にカテレアさんがめっちゃ苦しそうだ。

 

「ぐえぇ・・・。ちょ、ちょっと、おかみさん。離してくださ、苦し・・・」

 

「よかった! 本当によかったよ! アンタは一人じゃなかったんだね! こんなにいい男と可愛らしい子を連れて来るなんて! アタシは嬉しくて涙が止まらないよ!」

 

・・・推測するに、どうやらこの二人はカテレアさんが俺達を連れて来た事が相当嬉しいようだ。もしかして、そんなにお客さんが少ないのだろうか、この店は?

 

「ちょ、ちょっと待ってください。どうして私に連れがいることにそんなに驚くのですか? さっき連絡した時に今回は三人だと伝えたじゃないですか」

 

戸惑いを隠せないカテレアさんの問いに、少女が答える。

 

「だって、カテレアさんっていっつも一人で食べに来てたじゃないですか。そのくせ、他のカップルや親子連れのお客さん、友達同士のお客さんをいつも羨ましそうに眺めてましたし、だから私達、カテレアさんってそういう人がいないんだなぁって。さっき連絡してもらった時も、てっきり、孤独をこじらせすぎてとうとうエア友達を作り出してしまったとばかり・・・」

 

なんという事でしょう。カテレアさんはこの親子にボッチだと思われていたのです。・・・あれ、おかしいな。自分の事じゃないのに自然と涙が・・・。

 

「めでたいねえ。常連の奴らから影で“お一人様”と呼ばれていたカテレアちゃんに友達がねえ。・・・へへ、タマネギ切りすぎたかな。俺も涙が止まらねえぜ!」

 

「あなた達のトンデモ誤解にむしろ私が泣きそうですわよ! それとレイラ! 私は妄想はしますがエア友達などというものを妄想した事など一度もありません! そして私をそう呼んでいた方々はいつか絞めます! ええ、絶対にだ!」

 

体を震わせ、全身で怒りを表現するカテレアさんと、そんな彼女に抱き着きながら泣いている女性。そしてその傍でそっと目元を拭う男性と、それを眺めながら「よかったね、カテレアさん」と瞳を滲ませる少女。凄く・・・シュールです。

 

「あはは~。カテレアちゃん、昔から友達少なかったもんね~。だから勘違いされちゃうのも仕方ないかも」

 

ちょおっ!? 何起爆剤ブッ込んでくれるんですかセラフォルーさん! ああほら! 女性がさらに抱きつく力を強めてるし、そのせいでカテレアさんの体からボキボキとか聞こえて来てる!! しかも女性がしちゃいけないようなぐったり顔になってるから!! 誰か止めて!!

 

「お、お母さん! カテレアさん口から泡吹いてるよ!?」

 

「え? あ、いけないいけない。ちょっと力を入れすぎたかね」

 

少女に止められ、女性がようやくカテレアさんから離れる。アレをちょっととか・・・本気出したらラフトクランズの装甲も潰されるかも。「〇〇ブリーカー! 死ねぇ!」なノリで。もちろん、実際に試したとしてもそんな事にはならないだろうが、そう思ってしまうほど、女性の抱きつき攻撃(じゃないけど)は衝撃的だった。

 

「おうふ・・・」

 

崩れ落ちるカテレアさん。あれ、ヤバくね!? と思ったのも束の間。女性がカテレアさんを仰向けに寝かせると、その胸に手を当てる。次の瞬間・・・。

 

「ふんはあ!!」

 

「ぐえっ!?」

 

瓦でも割りそうな掛け声と共にカテレアさんの胸を押す女性。そして、それを受けて潰れたヒキガエルのような声をあげるカテレアさん。一瞬体をビクッとさせたが、それだけだった。

 

「ありゃ、おかしいねえ。今ので目覚めるはずなんだけど」

 

「力が弱かったんじゃない? もっと強くしたら?」

 

「そうかい? ならもっと力を入れて、目覚めるまで続けてみるかね」

 

コォォォォォォ・・・なんてどこぞの世紀末救世主みたいな呼吸をしながら集中する女性。あれ? 起こすんだよね? 殺る気じゃないよね?

 

「ふんっ! はあっ! とおっ!」

 

「たわばっ!? あべしっ!? ひでぶっ!?」

 

「ほあたぁっ!!!」

 

「うわらばっ!? ・・・って、殺す気ですか!!!!」

 

「あ、起きた・・・」

 

何度目かの痙攣の後、カテレアさんがガバッと起き上がった。

 

「さあて、カテレアちゃんも起きた事だし。そろそろお店にご案内しないとねぇ! そっちのお兄さんとお嬢ちゃんには色々お話が聞きたいしね」

 

「ふ、カテレアちゃんのお祝いだ。今日はいつも以上に気合い入れて作らないとな!」

 

「はーい! 二名様ごあんな~い!」

 

「ちょ、待ちなさい! 私を置いて行かないでくださいよ!」

 

少女に背中を押され、俺とセラフォルーさんは店の中へと足を踏み入れた。少し遅れて、カテレアさんも入店する。その後、出された料理に舌鼓を打ちつつ、女性達からの質問に答えながら、楽しい食事会の時間は過ぎて行くのであった。




オリジナル展開になると途端に更新速度が下がる。つまり、私にオリジナルは荷が重い・・・と、オリジナル作品を三作も書いてる私が通ります。

ただ、ネタだけはあります。最近買ったモンハンと閃の軌跡で遊んでいたら思いついた、某ストリートファイター姉さんを筆頭としたあのキャラ達の番外編とか。

・・・次にあなたはこうツッコむでしょう。「その二つ関係ないじゃん!」と。

追記:カテレアさんへの励ましのお便りは感想にてお願いします。

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