ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜 作:ガスキン
二時間ほど兵藤君の特訓に付き合い、俺とアザゼル先生はグレモリー邸へと舞い戻った。兵藤君からは引き止められたが、アザゼル先生が「教えるべき所は教えた。ガキじゃねえんだから後は一人で頑張れ」とバッサリ切り捨てた。先生、彼はまだ高二です・・・。
とはいえ、アザゼル先生の言った通り、この二時間で技の流れは覚えられたみたいだし、これからは彼なりに技を磨きあげていくだけだ。頑張れ兵藤君。キミなりのジェット・マグナムの完成を応援してるからな。
「あ、リョーマさん、アザゼル先生、お帰りなさい!」
最初に出迎えてくれたのはアーシアだった。彼女は顔をほころばせ、駆け足で近寄って来た。
「イッセーさんの様子はどうでした?」
「ああ・・・タンニーンさんと一緒に頑張っていたよ」
実際は野生化するくらい追い込まれていたが、それだけは口が裂けても言うわけにはいかない。兵藤君の名誉の為にも、この事は墓まで持っていこう・・・。
あの時の兵藤君はある意味凄かった。あれほどまでに見事に吹っ飛ばされたのは、前回の合宿で塔城さんにふっ飛ばされた時以来だ。・・・どうも俺は不意打ちというか、突発的な出来ごとに弱いのかもしれない。まあ、塔城さんの時は不意打ち云々じゃなくて単純に油断してただけか。いやだってさ、あんな可愛らしい子があんな力を秘めてるなんて普通わかるわけないだろ。その後で『戦車』の特性について教えてもらったから納得出来たけど。
でも、クレイジー神父の時はちょっと違ったんだよな。あの時もいきなり襲われたけどギリギリで回避出来たんだっけ。なんか急に悪寒が過って勝手に体が動いた憶えがある。言葉じゃ上手く表現出来ない感覚だけど、これまでも何度か言い様も無い悪寒に苛まれた事があったし、兵藤君に吹っ飛ばされる直前も寒気を感じた。
・・・ひょっとして、危険が迫るとセンサーみたいに反応するのだろうか。マンガとかだと武道の達人みたいなキャラに不意打ちかましても、まるで最初からわかってたかのように対処してしまうし、アル=ヴァン先生ならそのレベルに達していてもおかしくはない。つまり、彼を模したこの体も危険を察知する能力が優れているのかもしれない。
よし、今後あの感覚の事を『アル=ヴァンセンサー』と呼ぶ事にして、これから先センサーが反応したら何かが起こると思って行動するようにしよう。最初から身構えておけば、何か起こった時に棒立ちにならずに済む。
考えてみろ。兵藤君だったからよかったものを、もしあれがペロリストだったら? そんでもって、その場にアーシアがいたら? 吹っ飛ばされた隙に彼女が攫われでもしたら?
万が一・・・いや、億が一でもそんな事はあってはならない。アーシアが幸せになるまで見守り続ける・・・彼女がウチに住む様になってから俺はそう誓った。
「リョーマさん? 難しい顔をしていますけど、何を考えているんですか?」
「アーシア。俺はもう同じ過ちは繰り返さない。これから先、何があろうとも、必ずキミを守ってみせる」
「ふ、ふええ!? な、何ですか急に!?」
顔が真っ赤になるアーシア。突拍子も無くこんな事を言われて混乱するのは当然だろう。でも、こうして口にして誰かに聞いてもらっておかないと、すぐに忘れてしまいそうだかから勘弁してもらおう。
「おいフューリー。イチャつくのは勝手だが、お前の役目を忘れるなよ」
その言葉に益々顔を赤くするアーシアとは対照的に、俺は冷静だった。だって、今のは決意表明みたいなものだ。それがどうしてイチャつく事になるのか。
「ええ、わかってますよ。では誰から見に行きますか?」
「そうだな・・・。まあ順当にリアスから見に行くか」
「わかりました」
「部長さんの所に行くんですか?」
「ああ。朝にアザゼル先生から必殺技の説明があっただろう? その事でそれぞれに話をしにな」
「そうですか・・・」
「そういうわけだから、俺達はそろそろ・・・」
「あ、あの! ちょっとだけでいいんで、私にお時間を頂けませんか! 私もちゃんと特訓している事をリョーマさんに確かめてもらいたいんです!」
やけに気合いの入った表情をしつつ、グッと拳を握るアーシア。アザゼル先生の方をチラリと見遣ると無言で頷かれた。どうやら待ってくれるようだ。正直、彼女がどんな特訓をしていたのか密かに気になっていたのでありがたかった。
「わかった。俺でよければ見せてもらうよ」
「ありがとうございます! それではですね、私から少し離れた所に立っててください」
指示通り、アーシアから二メートルくらい離れた場所に移動する。うーむ、果たして何が始まるのだろうか。
「ところでアーシア。アザゼル先生はキミにどんなトレーニングを命じたんだ?」
「あ、はい。私は神器の強化を目指してのトレーニングです」
「神器の強化?」
「アーシアの神器は触れるだけで対象を回復させる。その回復速度も大したものだ」
俺の疑問にアザゼル先生が説明をしてくれた。
「だが、この“触れる”ってのが曲者でな。お前・・・は心配ないか。他のヤツ・・・例えばイッセーなんかが怪我をしたのに、わざわざ近づかないと回復が行えない。戦う力を持たないアーシアが戦闘の中に飛び込むのは危険過ぎる。だからこそ神器の強化・・・触れるだけじゃなく、回復の効果範囲を広げる特訓を考えた。俺の計算では、この特訓によって、アーシアは回復のオーラを飛ばす事で離れた相手でも回復出来るようになる」
おお、それは凄い! さりげなくdisられた気がするが、そんな事もどうでもいいと思えるくらいの凄さだ!
「という事は、もしかしてアーシア。キミがこれからやろうとしているのは・・・」
「はい! まだまだ完璧とは言えませんが、回復のオーラを飛ばせるようになりました! 今からリョーマさんに向けて飛ばしますから見ててください!」
そう言って、アーシアは祈るようなポーズをとったあと、胸の高さで両手を重ねてそれをグッと突き出した。
「むむむむ~~~・・・えいっ!」
可愛らしい掛け声(おそらく本人は気合いの籠った声だと思っている)と共に、突き出した手に小さな光の球が出現した。それはゆっくりと手を離れ、これまたゆっくりした速度で俺の方へ飛んで来た。音をつけるなら“ふよふよ”といった所だろうか。
そうして飛んで来た光の球が、俺の胸元に当たると、そのまま吸いこまれるように胸の中に入って行った。瞬間、温かい何かが全身を行き渡るのを感じた。まるで、彼女の優しさが直接注ぎ込まれているような気分だ。
「ふう・・・。えへへ、まだこれくらいしか出来ないですけど、いずれはもっともっと遠くまで飛ばせるようになって、みなさんのお役に立てるよう頑張ります!」
はにかむアーシア。・・・もう、あれだな。どうしてこう、彼女は一々やる事が可愛らしいのだろう。
限界だった。俺は無言でアーシアに近付くと、断りも無く彼女の頭を撫でまくった。余計な言葉はいらない。ただ彼女の頭を撫でたいと、この時の俺はそう思った。
「え、あ、あの、リョーマさん?」
「ありがとう、アーシア。これで後十年は戦えそうだ」
(これは・・・褒めて頂いているのでしょうか? リョーマさんはたまに私には理解出来ない事を言われる時がありますけど、今のも何か私なんかでは考えの及ばない意味があるのでしょうか・・・)
確信した。彼女の神器は『友情』に加えて『激励』の効果もあると! 今の俺なら何でも出来そうだ!
(い、いつまで続けるのでしょうか。あ、でも、私としては嫌とかじゃなくて、むしろリョーマさんに触れてもらって嬉しくて・・・あうう、誰にいいわけしてるのでしょうか私は・・・)
「・・・おーい、誰かコーヒー持って来てくれ。ブラックの濃いヤツをな」
その後、痺れを切らしたアザゼル先生に強制的に引きはがされた俺はアーシアと別れ、特訓を行っているであろう他の子達の所へ向かうのだった。
今回からオリ主パワーアップ計画を始動します。リアス達の特訓に合わせ、オリ主の意識をちょっと変えさせます。・・・まあ、あくまでも基本は騎士(笑)のままですが。
ちなみに、アル=ヴァンセンサーはオリ主に関係する事であれば遠くの危険も察知します。具体的に言うとミリキャス君関係で・・・。
それと、ふと思いついたので、オリ主が周りの人物達をどう思っているのか記しておこうとおもいます。たまにはこういう遊びもいいかなと思いまして。
リアス・・・誇り高くて優しい女性。家ではもう少し露出の少ない服を着て欲しい。
朱乃・・・大和撫子。以前に比べて距離(物理的)が近くなった気がする。
アーシア・・・天使。幸せになって欲しい。あと手を出そうとする連中(変態及びペロリスト)は潰す。
小猫・・・物静かだけど、姉思いの優しい子。特訓が始まってから目を合わせてくれないのでへこんでいる。
ゼノヴィア・・・初対面時はアレだったが、話してみるといい子。そんな彼女を追放した教会は最早完全な敵。
黒歌・・・最早家族と言っても差し支えないレベル。ただ、人の姿で猫の時みたいな甘え方をしてくるので色んな意味で辛い。
イッセー・・・熱血君。何故か慕ってくれているので、前世の友人みたいにならないよう見守る。
祐斗・・・友情に厚い少年(震え声
ギャスパー・・・自分はノーマルである!
とりあえず今回はこれだけ。他のキャラについてはまた考えます。