ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜 作:ガスキン
第七十五話 恩という名の呪縛
ディオドラ・アスタロトさん。冥界の会合で見かけた時は、大人しそうな少年だったのに、まさかこんなにも情熱的な人だったとはなぁ。
ポストに入っていた大量の手紙を机に置き、俺はそんな感想を抱いていた。アスタロトさん来訪から数日。既に二学期へと突入している現在、アーシアに対するアスタロトさんのラブコールは激しさを増している。
こんなラブレターなんて序の口だ。他にも映画のチケットや食事の誘い。果ては豪華なドレスや宝石など、贈り物は実に多種多様だ。宝石なんて一つ売れば当分生活に困る事は無さそうなくらい価値がありそうだった。
だが、それらに対し、アーシア本人はどうも困っているみたいだった。さらに言えば、ウチの女性陣の反応も悪かった。なんでも、物を贈れば靡くだろうという考えが透けていて不快なんだとか。うーん、やっぱり女心というのは難しいんだなぁ。
さらに、イベントはこれだけでは無かった。二学期に入ってすぐ、なんと兵藤君の幼馴染で、以前ゼノヴィアさんのパートナーだった紫藤イリナさんが転校して来たのだ。
しかも彼女、天使になってしまったのだとか。あのミカエルさんのエース天使になれたと凄く喜んでいた。何でも、『悪魔の駒』と人工神器の技術を応用して転生天使という存在へ変わったらしい。これは是非ともウチの天使にも使ってくれませんかね! なんて思っていたら、近い内に俺にその転生天使になるためのトランプが贈られる話になっていると紫藤さんから伝えられた。
どうも、俺がサーゼクスさんから『悪魔の駒』を贈られた事が知られているらしく、それならこっちからも贈っちゃえみたいな話になったんだとさ。そんなノリでいいんですかね天界のみなさん。そして、きっとまたオカンによって魔改造されるんだろうな・・・。
そんな感じで、学園生活に新たな仲間が増え、九月の一大イベントである体育祭に向けて練習を重ねる日々が続く中、またしてもアスタロトさんが訪ねて来た。てっきりアーシアに用事かと思ったら、なんと俺と話がしたいのだとか。というわけで、彼を連れて近くの公園へ向かう事になった。
玄関口でリアス達から気をつけろと言われたが、何に気をつけないといけないのだろう。腑に落ちないものを感じながら、俺は玄関を出た。
公園についてすぐ、アスタロトさんは自分とアーシアの過去について語り始めた。そこでわかったのだが、彼はアーシアが教会を追放された原因・・・彼女が助けた悪魔その人だった。その時、教会の人間であるにも関わらず、悪魔である自分を助けてくれたアーシアに特別な感情を持つようになったのだとか。
「恩を返す為に結婚を求めたわけじゃありません。僕は純粋に彼女を愛しています。こうして再び彼女と出会えたのは運命だと僕は思っています」
そう語るアスタロトさんの表情は真剣そのものだ。アーシアの事を心底想っているのだと感じられるくらいに。だけど、なんでだろう。どうして・・・。
(こんなにもアル=ヴァンセンサーが反応しているんだ)
さっきから俺の中で警鐘が鳴り続けている。目の前にいるアスタロトさんに対する変な警戒心が拭えない。何故? こんなにも優しそうな少年にこんな気持ちが湧くのだろう。
「フューリー様。お聞きしてもよろしいでしょうか?」
「何を?」
「僕は僕とアーシアの出会いをお話させてもらいました。よろしければ、フューリー様と彼女の出会いも話して頂けませんか?」
俺とアーシアの出会いと言えば・・・やっぱりあの変態共との事だよな。あんなプレイに巻き込まれてしまった彼女の事を考えると、あまり言い触らすべきじゃないとは思うが、彼に先に話させてしまった以上、こちらも話すのが筋だろう。
そういうわけで、俺は彼女とのいきさつを簡単にだが話した。全てを語り終えた時、アスタロトさんは俺に対して深々と頭を下げていた。
「ありがとうございます、フューリー様。アーシアを守ってくれて」
「いや、俺は当然の事をしただけで・・・」
「ですが、今のお話で確信しました。フューリー様。あなたの傍にいる事はアーシアの為にはなりません」
・・・一瞬何を言われたのか理解出来なかった。呆けた俺に対し、アスタロトさんが続ける。
「あなたはアーシアが幸せになるまで傍で見守り続けるとおっしゃった。ですが、それは結局はアーシアをあなたの元に縛り続ける呪縛になるとは思わないのですか?」
「呪縛・・・?」
「アーシアはきっと、あなたに多大なる恩を感じているはずです。そして、その恩に報いるまではきっとあなたから離れようとはしないでしょう。それこそ、自分の幸せなど二の次にしてね」
そんな馬鹿な・・・と言いかけて口を噤む。アーシアの性格を考えろ俺。周りがほんの少し手助けしたりするだけで深々と頭を下げる様な子だぞ。俺は俺の感情で変態共を叩きのめしただけだ。だが、もし、アスタロトさんの言うようにアーシアが俺に対してそんな風に思っているのだとしたら。彼女の幸せを邪魔している最大の原因は・・・俺?
「あなたが本当にアーシアの幸せを願うならやるべき事はただ一つ。彼女を解放する事です。そして、僕なら彼女を幸せにしてあげられると確信しています。彼女の望む物は全て与えてあげます。そして何より、僕は彼女を愛している!」
無言を貫く俺に、アスタロトさんは勝ち誇った様な顔を見せる。この時、俺は初めて彼に対して不快な感情を抱いていた。そんな俺の気持ちなど露知らず、アスタロトさんのセリフは続く。
「一度アーシアと話をしてみてください。そして、それを踏まえた上で答えを出せばいいと思います。僕の方は彼女を受け入れる準備は出来ていますから」
そう言い残し、アスタロトさんは振り返る事無く立ち去って行った。残された俺はしばらくその場から動く事は出来なかった。
―――アーシアの幸せを望むのなら、彼女を解放しろ。
アスタロトさんの言葉が何度も何度も頭の中で繰り返される。結局、俺が家に戻ったのはそれから一時間後の事だった。
「お帰りなさ・・・ど、どうしたのリョーマ!?」
帰宅した俺を出迎えてくれたリアスが俺の顔を見るなり慌てふためいた。どうしたって・・・こっちが聞きたいんだが。
「何でも無いよ」
「何でも無いって顔じゃないわ。何か嫌な事でもあったの?」
「リョーマさんが帰って来たんですか?」
廊下の向こうからアーシアが顔を覗かせる。俺は咄嗟に顔を背けた。・・・らしくないのは承知している。だが、今は彼女の顔がまともに見れなかった。
「リアス。すまないが部屋に戻らせてもらう」
「え? あ、リ、リョーマ?」
答えを聞かず、俺は自室へと戻った。ホント・・・らしくないな。
・・・・・・・
・・・・・
・・・
それから数日後、アスタロトさんからのプレゼント攻撃は未だ続いている。それに我慢出来なくなったのはリアスだった。
「もう限界よ! これだけはしたくなかったけれど、お兄様に事情を説明して止めさせるわ!」
そう言ってリアスがサーゼクスさんに連絡してさらに数日。返って来た答えに俺達は目を丸くした。
「事情はわかった。・・・どうだろう。ここはレーティングゲームで決着をつけてみては?」
バトルで解決って。どこの少年誌ですか!?
ドヤ顔で訪ねて来たサーゼクスさんを前に、俺は心の中で盛大につっこむのだった。
さて、新章に突入したわけですが、なんだこの中途半端シリアスは・・・。どうしてこうなった。
「今は雌伏の時・・・!」
ここで某ネタキャラのセリフを使わせてもらいますが、最初は溜めこみます。溜めて溜めて、そして最後には・・・。な感じで書いて行こうと思います。