ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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最近執筆意欲が湧いてしょうがない。具体的に言うと二章を書いてた頃みたいに。


第七十六話 幸せの形

「・・・どういう意味ですか?」

 

用意したお茶を一口、サーゼクスさんは俺の質問に答えた。

 

「言葉通りの意味だよ神崎君。キミとディオドラ君でレーティングゲームを行い、勝った方の主張を受け入れる。実に単純明快な方法だと思わないかい?」

 

「待ってくださいお兄様! それはつまりアーシアを懸けて勝負させるという事ですか!? だとしたら私は認めません! この子の人生を何だと思っているんですか! 私はそんな答えが聞きたくてお兄様に相談したんじゃありません!」

 

サーゼクスさんの答えを聞いたリアスがソファーから立ち上がり声を荒げる。それを聞いたサーゼクスさんは困った様な表情を浮かべた。

 

「あはは。グレイフィアにも同じような事を言われたよ。あの時のアッパーは痛かったなぁ・・・」

 

おどけた口調でそう言うサーゼクスさんだったが、その表情がふいに引き締まった。

 

「誤解させてしまっているようだが、いくらなんでもそんな事で彼女の今後を決めさせるつもりは無いよ。神崎君が勝てばアーシアさんへのアプローチを止めさせる。ディオドラ君が勝てば今後もアプローチを続けさせるという事でどうだろう。悪魔というのは元々欲が深い。口で言った所で納得出来ない事ってのは多いのさ。ましてや、個人の恋愛に魔王が口を出すべきじゃない。それはリーアだってわかっているだろう?」

 

「それは・・・」

 

「ディオドラ君にこの話を持ちかけたら二つ返事でOKをもらったよ。自分がいかに頼れる男かどうか、アーシアさんに証明するんだそうだ。・・・神崎君、キミはどうだい? 僕の案を呑んでくれるのかな?」

 

「・・・」

 

「リョーマ・・・」

 

「ご主人様・・・」

 

「・・・少し、考えさせてください」

 

あまりに突然の事で頭が追いついていない。何より、先日のアスタロトさんとの会話の答えを俺はまだ出せていない。こんな状態で返事をするわけにはいかない。てか、何で俺がレーティングゲームをせにゃならんのですか。こちとら眷属ゼロのボッチですよ?

 

「わかった。また返事を聞きに来るよ。その時までに答えを出しておいてくれ」

 

そう言ってサーゼクスさんは帰って行った。具体的な期日は言われなかったが、あの様子じゃきっとすぐに聞きに来るんだろうな。

 

だが、事態は俺の意思など関係無く進んでいた。数日後、サーゼクスさんでは無くセラフォルーさんが家に来た。そして、彼女の持参した雑誌の表紙に大きく書かれたそれを見て、俺は己が目を疑った。

 

―――フューリーVSアスタロト 聖女を巡りレーティングゲームで激突!

 

「な、何よこれ・・・!」

 

リアス達も信じられないといった様子でそれに目を落としている。戸惑いを隠せない俺達にセラフォルーさんの説明が入る。

 

「この雑誌、冥界でも有名なゴシップ雑誌なんだけどね、なんでも匿名のタレコミがあったそうだよ。その内容がやけに具体的だったから事実関係も確認せずに載せちゃったんだって」

 

いやそれダメだろ! 素人の俺でもわかるわ! つーかタレコミ!? どこの誰が!?

 

「この雑誌が発行されたのは一昨日。だけど、異様とも思えるスピードでたった二日で冥界中に広がっちゃってるの。それこそ、誰かの意思が介入しているかのように。この雑誌、普段はあまり評価は良くないみたいなんだけど、もうたくさんの悪魔がフューリーさんがついに戦うんだって信じちゃってるみたい」

 

「・・・誰がこんな事を」

 

思案顔の塔城さんにリアスが当然だとばかりに答える。

 

「そんなのディオドラに決まってるわ。リョーマが返事を先延ばしにしたから逃げられない様にしたのよ。まさか、こんな姑息な手を使って来るなんて・・・!」

 

「そのタレコミをした相手の正体はわかってるの?」

 

「ううん。どうやら完璧に証拠が残らない様にしてたみたい。私も調べてみたけど有力な情報は得られなかったの」

 

「そんな・・・」

 

「ともかく、これでフューリーさんは勝負を受けざるを得なくなってしまった。これだけの悪魔があなたのレーティングゲームを見たがっている。もし、今さら中止にしてしまったら、その期待はそのまま不満へと変わってしまう。そうなれば最悪暴動になる恐れがあるから」

 

「ぼ、暴動・・・!?」

 

「アーシアちゃん。悪魔っていうのはね、娯楽に飢えているの。その飢えを満たせるものを目の前でちらつかされた挙句没収されちゃったら・・・我慢なんて出来るわけないと思わない?」

 

「ご主人様、これ見て。ご主人様だけじゃない。アーシアの写真まで載ってるにゃ。これってあのパーティーの時のヤツだよね」

 

黒歌に倣って記事に目を通す。そこにはアスタロトさんとアーシアの関係までもが書かれていた。

 

「な、なんでこんな事まで・・・!?」

 

教会を追放された所が書かれた部分でアーシアの顔が強張った。記事から感じられる得体の知れない恐怖が彼女を襲ったのだろう。

 

「怖がらせてゴメンね。でも黙っておくわけにもいかないから、こうして知らせに来たの。サーゼクスちゃんも落ち込んでたよ。自分が余計な事を言わなければって」

 

「いえ、よく知らせてくださいました、セラフォルー様。今後については、これからしっかり話し合っていきたいと思います」

 

「そっか・・・。うん、わかったよ。なら私はそろそろ戻るね。大丈夫! 色々言っちゃったけど、普通に考えてフューリーさんが負けるわけないもんね!」

 

「・・・」

 

「フューリーさん?」

 

「え? あ、ああ、何ですか?」

 

「・・・何でも無い! 応援してるからね!」

 

セラフォルーさんを玄関まで見送り、俺達はリビングへ戻った。だけど、誰も言葉を発せない。どうも声を出し難い雰囲気だったから。

 

だけど、そうやって無言でいる間にも時は過ぎて行くし、腹も減る。夕食の準備や風呂の準備のため、気付けば俺達は解散していた。

 

そして、今日は何の担当でも無かった俺は自室へ籠った。ベッドに横になりながらセラフォルーさんが置いて行った雑誌を手に取る。

 

『なんや、久しぶりに様子を見に来たら、またえらい沈んどるやないか』

 

・・・オカン?

 

軽く懐かしさを感じてしまったその声に思わず起き上がる。間違い無い、今のはオカンの声だ。

 

『アンタのそんな顔、初めて見るわ。なんか悩みでもあるんか? それならウチに話してみ。ズバッと解決したるわ!』

 

・・・そうだな。それもいいかもな。こうして一人で抱え込むより、誰かに聞いてもらった方がスッキリするかもしれないし。

 

「実は・・・」

 

俺はオカンに全てを話した。アスタロトさんの指摘・・・俺がアーシアを縛っているかもしれない。彼女の幸せを邪魔しているのは俺なのかもしれない・・・と。

 

そうして俺が吐き出した悩みに対し、オカンは短くこう言った。

 

『はあ・・・アンタ、アホやな』

 

いや、アホて・・・。確かにそうかもしれないけどもう少し言い方というものが。

 

『あんなあ、あの子の幸せをアンタやそのアスタロトちゃんとかいう子が勝手に決めたらアカンやろ。何が幸せで何が不幸せか。それを決めるのはあの子自身やないの』

 

アーシア・・・自身?

 

『せや。人の幸せなんてそれこそ人それぞれやろ。お金をたくさん持つ事が幸せという子もおれば、好きな人と一緒に過ごせるだけで幸せだと感じる子もおる。あの子には、あの子なりの“幸せの形”があるはずや。それを知りもせんと、勝手に幸せだ不幸せだなんて語るもんやないで』

 

・・・あまりにも的を射過ぎた言葉に思わず目から鱗が落ちる気分になった。言われてみればそうだ。俺の思う幸せとアーシアの思う幸せは違う。なんで・・・なんでこんな単純な事に気付かなかったんだろう。

 

『・・・どうやら、気付いたみたいやな。なら、アンタがやるべき事は一つや。あの子の“幸せの形”、それをしっかり聞いて来るんや』

 

ええ!? いや、それはちょっと、心の準備が・・・。

 

『ええから行き! キメる時はキッチリキメるのがアンタやろ!』

 

はいい!

 

俺は弾かれるように部屋を飛び出した。目指すはアーシアの部屋だ。

 

扉の前に立ち、ノックをする。やべえ、緊張して来た。

 

数秒も経たずに扉が開き、アーシアが顔を見せる。彼女も俺が来た事に驚いたのかちょっと目を丸くしていた。

 

「リョーマさん。どうかしましたか?」

 

「ああ。少し話がしたい」

 

「そうですか。ではどうぞ中へ」

 

部屋にお邪魔し、ベッドに二人並んで腰をかける。その状態のままお互いに黙って顔を見合わせる。ええい、しっかりしろ俺!

 

「あの・・・お話というのは?」

 

「アーシア。正直に答えて欲しい。俺を気遣ったりする必要は無い。ただキミの思っている事をそのまま答えてくれればいい」

 

「な、なんでしょう?」

 

「キミは・・・キミの“幸せの形”を教えて欲しい」

 

「幸せの・・・形?」

 

「アーシア。俺はキミが幸せを手にするまでずっと傍で見守ると誓っている。だが、この前アスタロトさんと話をした時に言われたんだ」

 

「そ、それってあの温泉の時の・・・!」

 

「え?」

 

「な、何でもありません! そ、それでなんて言われたんですか?」

 

何故か少しだけ頬を赤くしたアーシアに困惑しつつ、俺は言葉を続けた。

 

「アーシアの幸せを邪魔しているのは俺自身だと。俺に対する恩こそが、キミを縛りつけているのだと。衝撃だったよ。何も考えられなくなるくらいにな」

 

「・・・」

 

「そして、本当にアーシアの幸せを願うなら、キミを解放するべきだと言われた。だからアーシア。聞かせてくれ。キミの本当の気持ちを。もし、アスタロトさんの言う様に俺がキミを縛っているのだとしたら俺は・・・」

 

「えい!」

 

ぺちん! とおよそ今の雰囲気に相応しく無い間抜けな音が室内に。音の発生源はアーシアからだった。彼女は右手を押さえながら涙目で俺を見つめていた。

 

「あうう。リョーマさんのおでこ固すぎますよぉ・・・」

 

「アーシア・・・?」

 

「こ、コホン! それよりもリョーマさん! 私は怒ってますよ!」

 

「え?」

 

両手を腰に当てながら、私、怒ってます! 的なオーラを発するアーシア。ぶっちゃけ全然怖くない。むしろ可愛い。

 

「確かに、リョーマさんは私の恩人です。だけど、私があなたのお傍にいたいと思うのはそれだけじゃありません!」

 

「な、ならどうして・・・?」

 

「リョーマさんと出会って、私の周りは変わりました。一人ぼっちだったはずの私が、部長さんを初めとするたくさんの人達に囲まれて笑いながら毎日を過ごせている。今の幸せも、今の日常も、あなたと出会わなければ得られなかったものです。あなたのお傍にいられたから、私は幸せを手にする事が出来たんです」

 

「俺の傍にいたから・・・? なら、俺はキミを・・・」

 

「そうです。リョーマさんは私の幸せを邪魔なんかしてません。あなたが私に幸せを与えてくれたんです。私の“幸せの形”は・・・あなたのお傍にいる事なんですから!」

 

「ッ・・・!」

 

愕然とする俺に対し、アーシアはムッとした顔を笑顔に変えて続けた。

 

「リョーマさんは難しく考え過ぎなんです。私も部長さんも黒歌さんも小猫ちゃんも、みんな同じ気持ちですよ。単純にあなたと一緒にいるのが好きなだけです。リョーマさんはもう、私達の日常にとって無くてはならない人なんですから」

 

「アー・・・シア」

 

「な、何だか偉そうに語っちゃってすみません。わ、私、小猫ちゃんのお手伝いして来ますね!」

 

突然立ち上がり、逃げるように部屋を出て行くアーシア。主のいなくなった部屋で、俺はその場に縫いつけられた様に動けなかった。

 

『どうや? 聞いてみてよかったやろ?』

 

・・・ええ。本当に。アーシアの本心が聞けて本当に良かった。彼女の幸せな日常。そこには確かに俺も存在していた。

 

俺も同じだ。俺の日常に、最早彼女は無くてはならない存在だ。彼女だけじゃない。リアスも黒歌も塔城さんも。朱乃もゼノヴィアさんも、兵藤君も木場君もヴラディ君もアザゼル先生も。みんなみんな、俺の日常を彩ってくれる大切なピースだ。この中の誰か一人でも欠けてしまえば、俺の日常は色を失う。そして、それは決して代えが利かない。

 

「・・・覚悟を決めるか」

 

正直、今までは巻き込まれてばかりだった。だけど、今回は違う。俺だけの問題じゃない。アーシアの未来がかかっているんだ。

 

先生。アル=ヴァン先生。こんなどうしようもない俺ですが、頑張ってみようと思います。戦いに対する不安はありまくりですが、彼女を守るため、俺の全てをかけて戦ってみせます。

 

「さて、ならやるべき事は決まっているな」

 

俺はアーシアの部屋を出てリビングへ向かった。そして、電話の受話器を手にある人物へ連絡を入れた。

 

「・・・もしもし、アザゼル先生ですか? 実はお願いしたい事が・・・」

 

アスタロトさん。あなたがアーシアを想う気持ちはとても大きいんだろう。だが、それでも、彼女の幸せの為、そして俺の日常を守るため、負けるわけにはいかない!

 

SIDE OUT

 

 

 

リアスSIDE

 

リョーマが帰って来ない。時刻は既に午後十一時を回っている。彼は学校から帰って来るなり出て行ってしまった。夕食時にも帰って来なかったので心配になって連絡したら、荒い息遣いで自分の事は気にしないでくれと返事が返って来た。むしろより心配になったのだけれど、それからは連絡がつかなかったのでどうしようもなかった。

 

部屋でリョーマの帰りを待っていると、ふいに玄関が開く音が聞こえて来た。きっと彼が帰って来たのだ。こんなに心配かけて、恨みごとの一つでも言ってやろうと部屋を出ようとすると、足音がこちらに近づいて来た。

 

「リアス・・・いるか?」

 

「ええ。入っていいわよ」

 

ドアが開き、リョーマが姿を現す。そして、私は彼に対して口を開こうとして・・・固まった。

 

リョーマは全身汗だくだった。着ているジャージは所々破けているし、顔や手足も汚れている。明らかにタダ事じゃなかった。

 

「ちょ、ちょっと! どうしたのリョーマ!? その姿!?」

 

「え? ああ、これか。気にしないでくれ。走り込みをし過ぎて汚れただけだ」

 

「走り込みって・・・まさかこの時間まで?」

 

学校から帰ったのが五時前。という事は・・・約六時間!?

 

「いや、流石にそこまでは」

 

「そ、そうよね。いくらなんでもそんな・・・」

 

「走りこみだけじゃ意味無いからな。アザゼル先生に頼んで修練の場所を用意してもらってそこでひたすら素振りや技の型の反復練習などをやっていた」

 

「え? ・・・え!?」

 

待って待って。という事はつまり、今までの時間の全てをトレーニングに費やしていたって事!? 間違い無くディオドラとの勝負に向けてのものでしょうけど、いくらなんでも気合い入れ過ぎじゃない!?

 

「ね、ねえリョーマ。とりあえず色々聞きたいんだけど、まずはお風呂にでも入ってゆっくり・・・」

 

「リアス・・・キミに頼みがあるんだ。俺に・・・俺にレーティングゲームについて教えて欲しい」

 

深々と頭を下げるリョーマを見て私は思った。

 

(ディオドラ・・・。あなた、起こしちゃいけないものを起こしてしまったのね)

 

ここ数日の件ですっかり評価を下げた相手に対し、私は憐れみに似た感情を向けるのだった。




アーシアは天使! 異論は認めません。

さて、これでオリ主は覚悟を決めたわけですが、本気になった彼がどれほど滅茶苦茶なのかは最後のリアスとのやり取りでわかって頂けたと思います。

次回は、他のキャラの視点からオリ主の徹底ぶりを書いて行こうと思います。
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