ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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やっと“彼”を出せました。


第八話 後輩は思春期

イッセーSIDE

 

 俺は今、友人である松田と元浜と共に、放課後の校舎を全力疾走していた。え? 何でそんな事してるのかって? ははは、そんなの…。

 

「待ちなさい! 兵藤ーーーーー!!」

 

「この変態三人組! 今日こそ引導を渡してやるわ!」

 

 俺達の後ろから恐ろしい速度で迫って来る女子二人から逃げる為に決まってるでしょうが!

 

 並走する松田が俺の方へ顔を向ける。

 

「おいイッセー! 女の子からのご指名だぞ! 今すぐ足を止めて相手してやれよ!」

 

「俺に死ねと!? つーかあいつらは女の子じゃねえ! 鬼だ!」

 

 修羅の如き形相で竹刀を片手に追って来るのは、同じクラスの村山と片瀬。二人とも剣道部に所属している。ええい、何で俺達がこんな理不尽な目に!

 

「くっ、まさかあの二人に覗きがバレるとは思わなかったぜ!」

 

「お前らがデカイ声出すからだろうが!」

 

 いや、ゴメン訂正。十中八九自業自得です。女子剣道部の部室を覗きました。だからあの二人に追われてます。でも仕方無い! 俺達は自分の情熱を押さえる事が出来なかっただけなのだから!

 

 俺…兵藤一誠はこの駒王学園の二年生。この学園は元女子高で、男女比率も女子の方が多い。そう、俺がこの学園に入学した理由はそれだった。

 

 たくさんの女の子と一緒に過ごしたい! それだけで俺は難関と言われた試験すら突破し、こうしてここにいる。俺はこの学園で俺だけのハーレムを作るのだ!

 

 しかし、現実は非情だった。ハーレムどころか、女の子と仲を深める事すら出来なかった。だってあの子達、俺の事ゴミクズみたいな目で見て来るんだぞ。そして気付けば、同級生の松田、元浜と合わせて『変態三人組』とまで呼ばれるようになってしまった。酷いよな、俺達はただ、教室でエロ本やAVを貸し借りしてただけなのに。

 

 そもそも、性欲は人間の三大欲求の一つで大事なものだぜ? 俺達を冷たい目で見る女の子達にだって性欲はある。清楚に見えるあの子も、クールなあの子も、もしかしたら夜な夜な火照った体を慰めてたりするんじゃないのか? あ、やべ、想像したら息子が…。

 

「イッセー! 走り方がキモいぞ!」

 

「ほっとけ!」

 

 と、とにかく! 俺は自分の心に正直なだけだ! おっぱい揉みたいし、乳首も吸いたい。なんと言われようと、それだけは譲れないのだ!

 

 それに、蔑まれてばかりの俺達だが、味方が一人もいないってわけじゃない。

 

「ッ! イッセー! あそこ!」

 

 角を曲がった所で、元浜が前を指差す。そこにはたった今思い浮かべようとした人物の後ろ姿があった。俺は躊躇い無くその人物の名を叫ぶ。

 

「神崎先輩!」

 

 俺の声に反応し、先輩が振り返る。その顔は俺達が来る事を予想していたかのようだった。

 

 この人は三年生の神崎亮真先輩。二大お姉様であるリアス・グレモリー先輩、姫島朱乃先輩と同じく、おそらくこの学園で知らない者はいないであろう超有名人だ。イケメンフェイスにクールながらも面倒見のいい性格、頭も良くてスポーツも万能。どこぞの完璧超人かって話ですよ。あれだな、ここまでくると嫉妬する気すら起きないな。

 

 おかげでリアス先輩と姫島先輩をもじって『駒王学園の頼れるお兄様』なんて呼ばれてたりもする。本人はそう呼ばれて困惑してるみたいだけど、俺は妙に納得したりする。なんか、先輩って凄く大人びてるというか、本当に俺と一つしか違わないのかって思う時があるんだよな・・・。

 

「ああ、やっぱりキミ達か」

 

「せ、先輩! 助けてください! 俺達追われてるんです!」

 

「追いついたわよアンタ…達…」

 

「観念しなさ…い…」

 

 村山と片瀬がすぐそばまでやって来たが、二人とも神崎先輩を見るなり目を見開き、先程までの修羅顔から一瞬で乙女の顔に変わってしまった。確認するまでも無いが、こいつらも神崎先輩のファンだ。

 

「こ、こんにちは、先輩」

 

 明らかに緊張している様子の村山。そんな彼女に対し、先輩はいつものクールな表情で挨拶を返す。

 

「こんにちは。キミ達、竹刀なんか持ってどうしたんだ?」

 

「えっ!? あ、それは…その…」

 

 困ってる困ってる。そりゃそうだよな。憧れの先輩に俺達ぶちのめす為に持って来ましたなんて口が裂けても言えないだろうし。

 

「そ、そう! 外で素振りをしようと思ったんです! たまには自然を感じながら竹刀を振るのも悪くないと思って…!」

 

「そうか。部活熱心なんだな」

 

「そ、そう言う事なので私達!」

 

「し、失礼します!」

 

 深々と頭を下げ、二人は逃げるように去って行った。ふう、どうにか助かったな。

 

「…さて、今回は何をやったんだ?」

 

 村山達の背中を見送った先輩が俺達の方を向く。事情を説明すると、先輩は呆れたかのような苦笑いを見せた。

 

 実を言うと、先輩にはこうして何度も庇ってもらってたりする。他のヤツらは庇うどころか、一度注意すると後は勝手にしろとばかりに何も言って来ないが、先輩は違う。こうして庇ってくれて、毎回毎回注意してくれる。改めて思うと、こんな風に真剣に向かい合ってくれる人ってかなり貴重なんじゃないのか?

 

「前にも言った気がするが、キミ達はもう少し自重した方がいい」

 

「で、ですが先輩! 先輩と違ってモテない俺達はこうして己の内の獣を満足させるしか方法が無いんです!」

 

 元浜の訴えに、俺と松田はその通りとばかりに頷いた。すると、何故か先輩は不思議そうに首を傾げた。

 

「誤解しているようだが、俺も彼女なんていないぞ?」

 

「ぬなっ!?」

 

「なん…だと…」

 

 愕然とする二人と違って、俺はどこか納得する気持ちがあった。完璧すぎて逆に近づけないというか…。あれだ、女子はきっとテレビの向こうのアイドルみたいな感じで先輩の事見てるんじゃないかな。「私、見てるだけで満足です」みたいな?

 

「な、なんて勿体無い! もし俺が先輩だったら、毎日のように女の子と(自主規制)や(自主規制)をするというのに!」

 

「俺だって(自主規制)とか(自主規制)さらには(自主規制)とかしたりするのに!」

 

 俺だったら…じゃない! こ、こいつら、いくらなんでも本人の前で言うか!? 見ろ! 滅多な事じゃ動じない先輩の顔が微妙に引き攣ってるじゃねーか! や、やばい、先輩を怒らせたら本人じゃなくてファンの女子全員に命を狙われる!

 

「お、おい! 俺達もそろそろ行こうぜ!」

 

「ん? ああ、そうだな。んじゃ、先輩、失礼します」

 

「そういや松田。お前最近新しいAVを仕入れたらしいな。久しぶりに観賞会でもしようじゃねえか」

 

「おお、いいな! ならウチに来いよ! イッセー、お前ももちろん来るだろ?」

 

「わ、わかった! わかったからとにかく一刻も早くここから離れよう!」

 

「あ、そうだ。よかったら先輩も…」

 

「だあぁぁぁぁぁ! もうっ!」

 

 俺は二人の首根っこを掴むと再び全力疾走を始めた。痛い! とか 擦れる! とか聞こえるが気にしてる場合じゃない。つーか先輩を巻き込もうとした事が広まったら本気でマズイぞ。

 

そうして、俺達は先輩の前から姿を消したのだった…。

 

イッセーSIDE OUT

 

 

IN SIDE

 

「…ブレないな彼等は」

 

 去って行く三人を見つめながら、俺はポツリと呟いた。彼等の噂はこの学園に来てすぐに学年の違う俺の耳にも届いた。

 

 曰く、常日頃からおっぱいおっぱい言ってる。

 

 曰く、平然と女子のパンチラ写真を撮影する。

 

 曰く、眼鏡を通すだけで女子のスリーサイズを看破してしまう。

 

 そんな彼らのあだ名は『変態三人組』。俺としては、そこまで言われてもスタンスを崩さない彼等はある意味凄いと思う。…まあ、見習おうとは思わないけど。そりゃね、男なら女の子に興味を持つのは当然だと思うよ? ただ、何事も限度というものがある。割と本気で、近い内に国家権力の方のお世話になるんじゃないのかと心配している。

 

 何でそんなヤツ等を心配してるのかって? 確かにそうだ。だけど、どうにもあの三人…特に兵藤君はついつい気にかけてしまう。というのも、彼、生前の俺の友達によく似ているのだ。いつも女の子の事考えてる所とか、いつも女の子のお尻を追っかけてる所とか、いつも女の子との出会いを求めてる所とか。あ、全部同じか?

 

 見た目も何となくだが似てる。そんな友達は、就職先でセクハラが問題となって僅か三ヶ月でクビになった。…あれ? これってヤバくね? フラグじゃね?

 

「…相変わらずですね、あの人達」

 

 手錠をはめる兵藤君の姿をやけにリアルに脳裏に浮かべていると、物陰から一人の少女が心底呆れたような顔で出て来た。って、何で塔城さんがここにいるんだ?

 

「神崎先輩の匂いがしたので」

 

 彼女は一年生の塔城小猫さん。学園のマスコット的存在として、男女共に人気のある女の子だ。あまりしゃべらない子だが、決して無感情というわけではない。というか、今のセリフ、俺そんなキツイ体臭発してんの? だとしたらすぐにでも制汗スプレー買いに行きますけど。

 

 でも、この子初めて会った時もこんな感じだった気がする。「懐かしい匂いがしましたから」とか言われた時はお線香とか焚いた覚えないですけど! と叫びたかったが、そういうわけでもないらしい。解せぬ。

 

 それからというものの、俺はどういうわけか、彼女に気に入られたみたいだった。俺としては、こんな可愛らしい子と知り合いになれたのでよかったが。…言っておくが俺はロリコンでは無い。あれだ、妹的な存在ってやつですよ。

 

「先輩、また図書室ですか?」

 

「ん? そうだが…」

 

「そうですか。なら、私はこれで」

 

 ぺこりと頭を下げ、塔城さんは去って行った。うーむ、何をしに来たのだろうか? まあ、気にしても仕方無いか。

 

 その後、一時間ほど図書室で勉強し、俺は帰宅した。玄関を開けると、リビングの方から黒歌がちょこちょこと駆け寄って来るのが見えた。

 

「ただいま、黒歌」

 

 そう言って頭を撫でれば、「にゃー」と甘えるような声をあげる黒歌。ああ、癒される。特別猫が好きだったわけじゃないのだが、今ではすっかり猫好きとなってしまった。黒歌、恐ろしい子!

 

 この一年で黒歌もずいぶん懐いてくれたと思う。たまに姿を見せなくなる時があるが、猫は気まぐれって言うし、いつも最後にはちゃんと帰って来てくれるのでそれでいい。

 

 それと、朝起きるといつの間にか俺のベッドに紛れ込んでる時がある。それ自体は大歓迎なのだが、そうすると何故かいつも同じ夢を見るのだ。内容はというと、和服姿のネコミミ美女と抱き合ったり、胸に顔を埋めたり逆にその美女が俺の胸に顔を埋めたりといったもので、触れあう肌とかの感触が夢にしては妙にリアルだったりする。そして目を覚ませば、隣には黒歌。…まさか俺、猫にまでムラムラするほど欲求不満なのか? いやしかし、この体になってから、アル=ヴァン先生の鋼の意思が働いてるおかげかそんな気分になった事はまだ一度も無い。それはそれで問題ある気もするが…。

 

「…気にしても仕方が無いか」

 

 偶然。そう、ただの偶然だろう。俺はそれ以上考えるのを止め、黒歌を抱きあげるとリビングへと向かった。さて、今日の夕飯はどうしようかな・・・。




ついに登場原作主人公イッセー君。まだ最初なので原作通りの性格ですが、これから彼がどう変わるかはオリ主次第。・・・まあ、そのままかもしれませんが。

今回はイッセー視点でオリ主が周りからどう見られているか少しだけ触れてみましたが、当然オリ主は自分がそんな印象を持たれているのを知りません。そして永遠に気付く事はないでしょう・・・。

しかしあれですね。この小説を書くにあたり、原作を最初から読んでるんですけど、リアスの挿絵に吹き出しました。見えてましたよ。最近のラノベってああいうのもOKなんですね。

ならば、それの二次創作であるこの小説もあんなシーンやこんなシーンを書かないといけないのか・・・。いや、きっと読者のみなさんは全員紳士! そんなのを求める人はいないはず!

感想、ご指摘等ありましたら、お気軽にお願いします。

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