ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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第八十三話 日常への帰還

アザゼルSIDE

 

「・・・終わったな」

 

「・・・ああ」

 

フューリーとシャルバ・ベルゼブブの戦いはフューリーの勝利で幕を閉じた。“皇帝機”という支えを失った『禍の団』の連中は例外無く戦意を失いその場に崩れ落ちていた。連中の拘束は他の悪魔やウチのヤツ等に任せておいて大丈夫だろう。

 

「にしても、まさか瞬殺するとはなぁ。モードFだっけか? ありゃあとんでもねえな。シャルバのヤツ、よくもまああれだけの猛攻を受けて死ななかったもんだ」

 

「おそらく手加減したんだろう。普通に考えてあの力に耐えられるはずが無い」

 

手加減なんて言葉で片付けられるもんじゃねえと思うが・・・まあフューリーだしな。もうアイツが何をやらかそうがこの一言で全部受け入れてやるよ。

 

「アレが神崎君の真の力・・・。彼の騎士としての本当の力なのだろうか」

 

「俺にゃあ騎士っつーか、破壊神に見えたぜ。あの力で暴れまわられたらとんでもない事になりそうだな」

 

「止めてくれ。想像しただけでここが・・・」

 

サーゼクスが胃の辺りを押さえる。ああ、懐かしい。今のコイツはかつての俺そのものだ。ならば、同じ経験をした先輩としてアドバイスしてやろう。

 

「・・・考えるな。感じろ」

 

「?」

 

キョトンとするサーゼクス。まあいい。いずれコイツも俺と同じ境地へと至るはずだ。その時は二人で酒でも飲もうや。俺のとっておきを出してやるからよ。

 

「まあ、そこまで心配する事も無いと思うぜ。これで連中も嫌というほど思い知っただろう。ヤツの身内に手を出したら最後、次は自分が第二のシャルバになるとな」

 

こんだけ派手にアピールしたんだ。アーシアの安全は十二分に保証されただろうよ。余程イカれたヤツでもなけりゃ攫う気なんて起こさねえだろうさ。

 

「終わった。行く」

 

俺がサーゼクスへありがたい助言をくれてやった直後、タンニーンの頭の上でフューリーの戦いを見守っていたオーフィスが立ち上がった。

 

「おっと、どうやらお姫様が騎士に会いに行くつもりらしいぞ。どうする、俺達も行くか?」

 

「ああ。というか行かないと私の知らない所でとんでもない事が決められてしまいそうだからな」

 

さて、そうと決まれば・・・ん、ありゃあ・・・。

 

「あの馬鹿娘、いなくなったと思ったらこんな所で再会するとはなぁ」

 

眷属達の元へ降り立ったフューリーの元へ近づく“白”の姿に、俺はついそんな事を口走るのだった。

 

アザゼルSIDE OUT

 

 

 

IN SIDE

 

・・・人間、その気になれば何でも出来るんだな。テンションがおかしかったのは認めるが、まさかあんな激しい動きの攻撃をちゃんと成功させられるとは思わなかった。

 

はっ、そうか、だからスパロボの必殺技には気力制限がついていたのか。やっぱりノリと勢いってのは大事なんだなぁ。

 

何にせよ、全てはアガレスさんを含めたみんなのおかげだ。あんな動き、イメージだけに頼っていたらとても成功させられるものじゃない。・・・これで調子に乗るつもりは無いが、みんなのおかげで得る事が出来たこの力・・・少しは自信を持ってもいいのかな。

 

「リョーマさーーーーん!」

 

おっと、天使様がお呼びだ。俺は槍と大剣を仕舞い、声のした方へ降りて行った。・・・視界の端に素っ裸で真っ黒なおっさんの姿が映ったがあえて無視した。

 

俺が地面に足を着けると、アーシアを筆頭に、今回俺に力を貸してくれたみんなが、誰一人欠ける事無くそこにいた。

 

「みんな。無事でよかった」

 

「お帰りご主人様! とってもカッコ良かったにゃ!」

 

「はは、ありがとう。・・・ところで、何でカラワーナさんがカテレアさんを背負ってるんだ?」

 

「いえ、その、気絶してしまいまして」

 

え、気絶!? まさか、他のペロリストから何かされたのか!? ・・・どこのどいつだ。見つけ出してぶちのめしてやる。

 

「心配しなくてもいいよご主人様。この女、ご主人様とシャルバ・ベルゼブブの戦いに興奮し過ぎて気絶しただけだから」

 

「・・・そうなんですか?」

 

「え、ええ。神崎様のお姿がさらに変化したのを見た直後、奇声をあげながらその場にばたりと」

 

レイナーレさん達がそろって頷く。いや、割と本気で意味がわからないんだけど。ま、まあ、大事じゃないのならそれでいいか。

 

「それで神崎様、これからどうしますか? 既に残った『禍の団』のメンバーの拘束は始まっています。私達の手が無くとも一時間もせずに全員の確保は完了するでしょう」

 

「そうですか。なら、ここにいても仕方無いですし、一度戻って・・・」

 

「あら、そんなに急がなくてもいいじゃない」

 

突然の背後からの声に振り返れば、そこには露出強モードのヴァーリさんの姿があるではありませんか。・・・久しぶりに見るけど、やっぱり危ないなアレ。

 

「ヴァーリ。何をしに来たにゃ。ひょっとして、アンタも今回の件に絡んでいたの? だとしたらアンタも同罪にゃ」

 

「それは誤解よ。私とディオドラ達は何の関係も無いわ。今回は別の用事があったのと、純粋に亮真の戦いを見届けようと思っただけ。・・・来てよかったわ。亮真の新たな力を目にする事が出来たもの」

 

うん、今の言葉で確信した。ヴァーリさんはやっぱりペロリストに染まって無い。後はどうにかして彼女をあの組織から抜けさせるだけだ。

 

「ヴァーリ。久しぶりね」

 

「ええ。そっちも元気そうで何よりだわ」

 

親しそうに挨拶を交わすヴァーリさんとレイナーレさんを見てアーシアが可愛らしく首を傾げる。

 

「レイナーレ様、ヴァーリさんとお知り合いなんですか?」

 

「ええ、アザゼル様の下で働かせて頂けるようになってすぐに知り合ったの」

 

「まさかあなた達が亮真の眷属になっているとはね。ふふ、よかったじゃない。本当に身を捧げたかった人のものになれて」

 

「「「なっ!?」」」

 

「亮真、レイナーレ達はちゃんとあなたの役に立ったのかしら」

 

「もちろん。彼女達がいたから俺はアーシアを助ける事が出来たんだ」

 

「・・・だそうよ、レイナーレ。だからそんなリンゴみたいな顔でプルプルしてないで素直に喜んだらどう?」

 

「ヴァ、ヴァーリ! あなた本当に何をしに・・・!」

 

「フューリー」

 

ニヤニヤするヴァーリさんにレイナーレさんが詰め寄ろうとしたその時、上空からそんな声が聞こえた。みんな揃って空を見上げると、そこにはおよそこの場には似つかわしくない幼い少女の姿があった。

 

「キミは・・・って、カテレアさん・・・!?」

 

俺が声をかけようとした瞬間、気絶していたはずのカテレアさんが両手に魔力を帯びさせながら俺と少女の間へ割って入って来た。

 

「い、いつの間に!?」

 

ビックリしているカラワーナさんを置き去りに、カテレアさんは顔を強張らせながら少女へ向かって声を発した。

 

「カテレア。久しい」

 

「あら、旧魔王派の鼻つまみ者だった私の事を覚えていてくださったのですね。世界最強のあなたに名前を呼んでもらえるなんて光栄ですわ」

 

「カテレアさん。その子は・・・?」

 

「我の名はオーフィス」

 

オーフィスちゃんか。・・・ん? 待てよ。それって確かペロリストの親玉の名前じゃないか。なんてこった、こんなに可愛らしい子なのに、よりにもよって変態共のトップと同じ名前だなんて・・・!

 

「う、うそ・・・『無限の龍神』が・・・『禍の団』のトップがどうしてここに!?」

 

・・・ファッ!? え、ま、まさか、名前が同じってわけじゃなくて、この子がペロリストの親玉なのか!? でも、確かオーフィスって男だったはずじゃ・・・!?

 

いや、待て俺。この際そんな事はどうでもいい。重要なのは、ペロリスト共のトップが女の子だったって事だ。どう考えたってこんな少女がペロリストを率いているはずが無い。・・・ならば答えはただ一つ。この子はただ連中に担ぎあげられているだけだ。いや、担ぎあげられているだけならまだしも、下手すればこの子自身に手を出しているのかもしれない。

 

ああ、前世の友人よ。お前はホモォじゃなくロリコンだったんだな。お前が言っていた「オーフィスたんprpr」という言葉の意味がよくわかったよ。・・・もしも今、目の前にいたら俺は躊躇い無くお前をぶん殴っていただろう。

 

「オーフィス。あなたどこにいたの? いきなりいなくなるから探したのよ」

 

「それは違う。ヴァーリの方が我の前から消えた。だから我は一人でアザゼルに会いに行った」

 

迷子になったのは自分じゃ無くそっち。・・・ああ、なんだろう。今のやり取りでちょっとほっこりしてしまった。

 

「・・・まあいいわ。それで、何か用かしら?」

 

「ヴァーリじゃない。我の目的はフューリー」

 

「俺?」

 

初対面の俺に用事って一体なんなんだろう。まさか、ウチの連中をボコったお礼に来たとか言わないよね。

 

「アザゼルが言った。我がフューリーの日常に入ればフューリーは我に手を貸すと。だから日常に入る方法が知りたい」

 

ん? ・・・ん? いや、え、どういう意味か本気でさっぱりなんだが。目線でアーシア達に助けを求めても、彼女達も戸惑ったように首を振るだけだった。

 

「待て待て。オーフィス。お前はもう少しわかりやすい説明のやり方を覚えるべきだ」

 

オーフィスちゃんの言葉に何も返事が出来ないでいると、そこへアザゼル先生とサーゼクスさんが二人並んで姿を現した。

 

「アザゼル様。ご無事で何よりです」

 

「はっ、この俺があんな連中にやられるわけねえだろ。お前らこそ、中々の動きだったじゃねえか。褒めてやるぜ」

 

「ありがとうございます。それで、その、先程オーフィスが口にした言葉なのですが・・・」

 

「ああ、つい口が滑っちまってな。悪い悪い」

 

なんだろう。気のせいだろうが、アザゼル先生の適当加減が増した気がする。

 

「フューリー、オーフィスは自分の望みを叶える為にお前に協力して欲しいんだとよ」

 

望みを叶える為に俺の日常に入りたい? その言葉が出るって事は、俺が友達に囲まれる現状を幸せに感じているのだとこの子もわかっているはず。・・・ひょっとして、この子の望みって。

 

「・・・キミは『禍の団』の連中からどういう扱いを受けているんだ?」

 

「我は『禍の団』に力を貸す。代わりに『禍の団』は我の望みを叶える」

 

「なら、『禍の団』はキミの望みを叶えてくれそうか?」

 

「・・・」

 

無言・・・それが答えだった。わかった。わかってしまった。この子は孤独だったんだ。そしてこの子の望みっていうのは、その孤独を消し去ってくれる友達が欲しいって事だったんだ。だから俺の日常に・・・あの輪の中に入りたいなんて言ったんだ。

 

だとしたら『禍の団』っていうのは変態どころか血も涙も無い畜生の集まりだな。この子を利用するだけ利用してこんなささやかな願いすら叶えてあげないなんて。

 

「・・・わかった。なら教えてあげるよ。俺の日常に入る方法を」

 

「どうすればいい?」

 

俺はオーフィスちゃんの目線まで腰を落とし、微笑みながら告げた。

 

「いつでもいい。遊びに来てくれ。そうすれば、キミの望み(友達が欲しい)は叶うよ」

 

「遊ぶ? フューリーは我と遊びたいのか?」

 

「ああ。俺はキミと遊びたい。仲良くなりたいんだ」

 

「ま、待ってくれ神崎君。いくらなんでもそれは・・・!」

 

「だーっはっはぁ! 『無限の龍神』と遊びたいなんて言うヤツは初めてだぜ!」

 

(確かに、オーフィスは孤独・・・ううん、自分が孤独だという事すら認識出来ていない。亮真、あの短いやりとりだけでそれに気付くなんて・・・。ふふ、本当にお人好しなんだから。本当に呆れちゃうくらい・・・)

 

仰天するサーゼクスさんに、大笑いするアザゼル先生。そして思案顔のヴァーリさん。そんな三人の視線を一身に受けつつオーフィスちゃんが口を開く。

 

「・・・わかった。今度遊びに行く」

 

「うん。待ってるよ。それと、帰ったら『禍の団』の連中に伝えておいて欲しい」

 

「伝える? 何を?」

 

「次に俺の前に現れたら、その時は覚悟しておけ・・・とな」

 

今の俺には多少なりとも戦う力がある。見かけたら速攻で駆除してやるからな。

 

(おやおや、向こうが手を出すとかいう問題じゃねえな。今回の件で『禍の団』はフューリーの明確な排除対象に認められたようだ。よかったな『禍の団』。精々楽に逝ける事だけは願っとけよ)

 

さて、オーフィスちゃんとも約束出来たし、今度こそ戻ろうかな。アザゼル先生かサーゼクスさんに頼めば送ってもらえたりするんだろうか。

 

「・・・そろそろ来る」

 

空を見上げながらポツリとオーフィスちゃんが呟く。気になったので彼女の視線を目で追おうとした刹那、何かが弾ける様な音と共に空中に巨大な穴が出現した。

 

「な、何ですかアレ!?」

 

「大丈夫。心配しないで見ておくといいわ。さっき私は用事があるって言ったわよね? その正体がアレよ」

 

ヴァーリさんの言う正体・・・それはとてつもなくデカイドラゴンだった。かつてのドライグさんやアルビオンさん、そして今のタンニーンさんよりもずっと大きかった。

 

「『真なる赤龍神帝』グレートレッド・・・『真龍』と称される偉大なるドラゴンよ。次元の狭間を住処とし、永遠にそこを飛び続けているの」

 

「何故?」

 

「さあ、私には『真龍』の考えなんてわからないわ。・・・もしかしたら、オーフィスみたいにあなたに興味が湧いて見に来たのかもしれないわね」

 

いや、流石にそれは無いって。オーフィスちゃんと違って、興味を持たれる理由が無いし。

 

結局、グレートレッドさんの姿が見えなくなるまで、俺達は黙って見守り続けた。うーん、最後にもの凄いものを見てしまった。いい思い出が出来たな。

 

「さてと、目的も果たした事だし、そろそろ帰りましょうか、オーフィス」

 

「ん・・・」

 

「それじゃあね、亮真。それに他のみんなも。これから忙しくなるでしょうけど、精々頑張ってね」

 

去り際のそう言い残し、ヴァーリさんとオーフィスちゃんの姿は魔法陣の向こうへ消えて行った。

 

「さーて、それじゃあ俺達もそろそろ帰るか。後の事は部下に任せてあるしな」

 

「そうだね。私も戻ってやらなければいけない事がある。神崎君、ついでといっては悪いが、キミ達も家まで送り届けてあげるよ」

 

「お願いします」

 

「あの、リョーマさん」

 

転移の準備を待っていると、アーシアが話しかけて来た。

 

「どうしたんだ、アーシア?」

 

「私・・・今回の事で改めて自分の気持ちを確かめる事が出来ました。だから、その、今まではお傍にいるだけよかったんですけど、これからは隣に並んで歩けるように頑張りますね!!」

 

「え?」

 

「あ、準備が出来たみたいですね。行きましょうリョーマさん!」

 

「いや、待ってくれ。今のはどういう・・・」

 

「えへへ・・・教えてあげません!」

 

そう言ってはにかむアーシアは・・・やっぱり天使だった。

 

SIDE OUT

 

 

 

それから一ヶ月の後、とある国のとある村にて、一人の神父が子ども達へあるお伽噺を話していた。

 

「こうして、悪い皇帝は騎士によって倒され、囚われていた聖女様は騎士と共に幸せに暮らしましたとさ」

 

最後に神父がそう締めくくると、周りに座っていた子ども達から大きな拍手が送られた。

 

「騎士様すげー!」

 

「聖女様よかったね!」

 

「やっぱり悪い事したらバチがあたるんだね!」

 

「そうですね。キミ達はお話に出ていた皇帝みたいになってはいけませんよ?」

 

「「「はーい!」」」

 

元気よく返事をする子ども達の様子に、神父も柔らかな笑みを浮かべる。そこへ、子ども達と一緒に話に耳を傾けていた親達が神父へ声をかけた。

 

「いやあ、相変わらず神父様のお話は面白いなぁ。いい年なのについ夢中になっちまったぜ」

 

「なんて言ったらいいのかしら、話に臨場感があるっていうか、まるで本当に神父様が体験した事なのかと思っちゃったわ」

 

「ふふ、ありがとうござます」

 

「ええ! 神父様、騎士様に会った事あるの!?」

 

「じゃあ聖女様にも!?」

 

「教えてよ神父様~!」

 

「おやおや、さて、どうでしょうかね」

 

「いいじゃん! 教えてよ“フリード”様ぁ!」

 

名前を呼ばれ、神父は困った様に天を見上げた。

 

「ふふ、仕方ありませんね。これは僕だけの秘密にしておきたかったのですが、特別にキミ達にだけは教えてあげましょう。僕が出会った本物の“騎士”のお話をね」

 

再び子ども達に語りだす神父の名はフリード・セルゼン。その穏やかで優しい顔には、最早かつての狂気は欠片も存在していなかった。




さて、これで六章は終わりとなります。お付き合いくださった皆様、ありがとうございました。

ここからは裏話ですが、実は、この小説はこの六章で完結させるつもりでした。ですが、せっかくここまで書いて終わらせるのも惜しくなったので、もうしばらく続ける事にしました。なのでみなさん、いつ終わるかわかりませんが、よければ今後も読んで頂けると嬉しいです。

あ、あと真面目なオリ主の再登場は未定です。次回からはまたいつものオリ主に戻ります。

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