ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜 作:ガスキン
唐突だが、生前の俺は男子校出身だった。だから女の子との出会いも少なく、それが彼女の出来なかった理由だったんじゃないかと思う。…はい、わかってます。出会いがあったって彼女が出来ると決まってるわけじゃないって事くらい。
そんな俺が、今ではグレモリーさんを始めとする何人もの女の子と友達になれた。やっぱりこれもアル=ヴァン先生のイケメンフェイスとボディのおかげなんですかね。あふれ出る騎士(笑)のフェロモンが女性を引き付けるとか…うん、無いな。
今だってこうして見知らぬ女性三人に絡まれてる。ははは…どうしてこうなった。おかしいな。ほんのついさっきまで俺は予約した一セット六個入りの限定シュークリームを手に入れてホクホク気分で家に帰ろうとしてただけなのに。二十四にもなって予約してまでスイーツ食べようとするなんてキモい? 愚かな。『スイーツ男子』という言葉があるのを知らないのかな?
家を出る。
店に着いてシュークリームを買う。
家まで我慢出来なかったので途中の公園でベンチにでも座って一つだけ味見しようと立ち寄る。
いざ食べようとした所で女性三人組が通りかかる。
その内の一人が俺の持つシュークリームを見て羨ましそうな顔で立ち止まる。
嗜めようとした別の女性のお腹が可愛らしい音を鳴らせる。
真っ赤になった女性と最後の一人の女性もシュークリームに目を向ける。←今ここ。
(な、何だ何だ? もしかしなくても食べたいのか?)
「「「じー…」」」
(止めて、そんな目で見ないで。駄目だぞ。これは限定スイーツだ。それを見ず知らずの他人に渡すなど…!)
「「「じー…」」」
(渡す…なんて…)
「「「じー…」」」
「…よければ食べるか?」
おうふ、プレッシャーに負けて言ってしまった。アル=ヴァン先生。こんな小心者な俺をお許しください。そんなチキンな俺を尻目に、二人の女性…青いロングヘアの女性と金髪ツインテールの女性がシュークリームを手に取る。残った黒髪の女性(さっきお腹を鳴らせた)が「に、人間ごときに施しは受けないわ」とか言ったが、その直後またお腹を鳴らせ、なんか泣きそうな顔でシュークリームに手を伸ばした。
にしても今の言葉…まさかこの人中二病発症中なのか? いかん、いかんぞ。今は楽しいかもしれんが、近い将来必ず後悔する時が来るんだから。だいたい、寝ようとしてベッドに横になった瞬間とかにふと思い出したりして。
ただ、三人の中で、黒髪の女性が一番可愛らしくシュークリームを頬張っていたのはしっかり記憶しました。んで、食べている間、無言で見つめるのもあれなので、ちょっと話しかけてみた。
まず、彼女達の名前はそれぞれ、黒髪の女性がレイナーレさん。青のロングヘアの女性がカラワーナさん。そして金髪ツインテールの女性がミッテルトさんというらしい。髪の色から何となく予感していたが、やっぱり外国の人だったようだ。
次に、この街に何をしに来たのか聞いてみた。レイナーレさんは話したくなかったみたいだが、黙って見つめ続けると諦めたように話してくれた。ちゃんと目を見つめてお願いしたおかげだな。だが直後、彼女の口から語られた話に、俺は不覚にも感動して泣きそうになってしまった。
なんか『神の子を見張る者』とか『セイクリッド・ギア』とか仰々しい専門用語のオンパレードで理解するのが大変だったが、俺なりに纏めると次の様な感じだ。
まず、彼女達はこの若さで就職しているそうで、この街に来たのは仕事の為との事。カラワーナさんとミッテルトさんはレイナーレさんの部下で、後一人ドーナシークさんっていう男の人もいるんだとか。
レイナーレさんはその就職先の社長さんに想いを寄せているらしい。だけど、一般社員である自分は想いを伝えるどころか、近付く事すら難しい。しかし、今回の仕事を成功させれば、社長さんに近付けるかもしれないと奮起し、部下の三人を連れてやって来たんだって。
健気…その一言に尽きる。想いを寄せる相手に近づきたくて自分に出来る事を頑張る。こんな素敵な女性に想われるその社長さんが心底羨ましいと思った。採用したのは正に運命だったのかもしれない。
そして、そんな上司の恋を応援する部下達。なんというか、理想の関係だよね。
ちなみに、その仕事っていうのは、とある物を手に入れる事と、危険物の駆除だとか。便利屋みたいな仕事なのかな? 今ここにいないドーナシークさんは一人で駆除の仕事に出ているそうだ。
とにかく、レイナーレさんの乙女っぷりにいたく心を揺さぶられた俺も彼女の恋が叶うよう応援する事にした。すると、どうしてか、三人が戸惑った様子を見せる。そりゃあ、会ったばかりの人間に真剣な顔で応援しますとか言われたら困るだろうけど、それでも言わずにはいられなかった。
「ふ、ふん! 人間なんかにそんな事言われても嬉しくないわよ!」
などと言いつつそっぽを向くレイナーレさん。乙女な上に照れ屋らしい。僅かに見える頬がうっすら赤くなってるのがこちらからでもハッキリ確認出来た。けど、告白する前にその中二病は治した方がいいと思うな。カラワーナさんとミッテルトさんも優しい顔でレイナーレさんを見つめている。
その後、彼女達を見送り、俺も公園を後にした。結局残ったシュークリームも全部彼女達にあげてしまったが後悔は無い。いやー、今の時代にもああいう女性っているんだなぁ。心が洗われるようだよ。
ホント、彼女の恋が実る事を切に願う。社長と一般社員…結ばれるには色々困難が待ち受けてると思うけど、ああいう健気な女性は幸せになるべきだと思う。つーかしろ、この世界の神様!
『呼んだか~?』
いえ、あなたじゃないです。
翌日、登校した俺をちょっとした騒ぎが待ち受けていた。
「嘘よ! どうしてお姉様があの男と!」
「ああ、夢なら早く覚めて!」
何事かと覗いてみると、そこには並んで歩く兵藤君とグレモリーさんの姿があった。いや、そんなに騒ぐ事か? ただ先輩と後輩が一緒に歩いてるだけにしか見えないけど。
「あ、お兄様!」
おおう、ターゲットがあの二人から俺になった。
「お兄様! お願いです! お姉様をあの変態から救い出してください!」
「あの身の程知らずに正義の鉄槌を!」
「むしろ私を殴ってください!」
おい、最後の子。何で理由も無いのにキミを殴らにゃならん。心の中でツッコんでいると兵藤君とグレモリーさんは玄関の前で別れていた。
「俺も行くか」
未だ騒ぎの収まらない周囲を余所に、俺も二人に続いて玄関へと向かうのだった。
堕天使達とオリ主の出会い。ちなみにイッセー君の所にはドーナシークさんが向かいました。夕麻ちゃんなんて最初からいなかったんや。そしてドーナシークは犠牲となったのだ。
あとですね、アンケートのコメントを見ていると、なんかみなさん、私がイッセーのハーレムにこだわってるんじゃないかと思っているようですけど、別にそういうわけじゃないですよ? ただオリ主が独占するのを好ましくないと思う方がいるかと思っただけで、私としてはオリ主にみんな落とさせる覚悟はあります。