ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

90 / 187
TS曹操というと、やはりみなさん彼女の事を思い浮かべるんですね。ちなみに、既に登場しているアーサーも、当初はTSさせる予定でしたが、ヴァーリさんだけでもうやり過ぎでしたし、何よりどう考えても某腹ペコ騎士王にしかならないので没にしました。


第八十六話 来るべき時が来てしまったようです

リアスSIDE

 

英雄派・・・『禍の団』の一派閥であり、最近になって私達の住むこの街へ襲撃を行っている連中だ。そのほとんどが人間であり、神器所有者である。聞くところによると、この街だけでは無く、各勢力の重要拠点への襲撃も多発しているらしい。

 

最初、敵の目的は私達の研究及び攻略かと思ったけれど、ひょっとしたら、本当の目的は神器所有者を私達にぶつけさせる事で“禁手”に至らせる事ではないかとの話が眷属達から持ち上がった。

 

イッセーは腑に落ちない様子だったけれど、相手からすればイレギュラーばかり揃った私達との戦闘は尋常じゃない経験になると思う。現に、先程まで戦闘を行っていた相手の中にいた影使いの男は転移魔法で消える直前にそんな反応を見せていた。

 

・・・とにかく、私達だけであれこれ考えても仕方が無い。後日アザゼル先生に改めて問うという事でこの日は解散した。

 

「ただいま」

 

小猫と共に帰宅した私はリビングへ向かった。すると、何やら難しい顔で椅子に座っているリョーマがいた。

 

「あ、お帰りなさい、部長さん、小猫ちゃん」

 

「ただいまです」

 

「すぐにご飯の支度をするにゃ」

 

「ありがとう黒歌。・・・ところで、リョーマはどうしたの?」

 

二人に尋ねてみる。なんでも、ついさっきまでセラフォルー様とカテレアが来ていて、リョーマにある依頼を持ちかけてきたのだとか。それを快諾したリョーマだったけれど、その依頼というのがどうも彼には予想外だったみたいで、二人が帰った後から今までずっとあの調子らしい。彼があそこまで悩むなんて・・・おそらくカテレアが無茶なお願いを言ったんでしょうね。セラフォルー様も止めてくだされば・・・あ、駄目だわ。リョーマに関する事だとあの二人もの凄い一体感を見せるから。

 

「リョーマ、何をそんなに悩んで・・・」

 

声をかけようとしたその時、机の上に一冊の本が置かれているのに気付いた。リョーマの視線はその本に向けられている。もしかしてこれが悩みのタネなのかしら? ええっと、タイトルは・・・。

 

「魔装騎士~THE KNIGHT OF FURY~第一話台本・・・」

 

・・・ナニコレ? 読み上げたタイトルに呆気にとられた私に対し、ここでようやくリョーマが口を開いた。

 

「ああ、リアス、塔城さんも帰ってたんだな。すまない気付かなくて」

 

「え、ええ、たった今ね。それよりも・・・」

 

「この分厚い本は何なんですか?」

 

「・・・見ての通り台本だよ」

 

「ああ、うん、それは表紙を見てわかったわ。私達が知りたいのは、どうしてこれがここにあるのかって事よ」

 

「ひょっとして、セラフォルー様が・・・?」

 

「正解よ白音。あの二人、ご主人様に今度新しく始める特撮ドラマに出演させる気にゃ」

 

「まさか、リョーマ本人に主役を?」

 

首を横に振るリョーマ。曰く、初回だけの特別出演で、アクションシーンだけを担当して欲しいと言われたのだとか。まあ、主役を任されても撮影の度に冥界に行くのも大変だし、妥当かもしれないわね。

 

「ご主人様が公に姿を見せて初めての作品だから今までよりもずっと面白いものにしたいって言ってたにゃ。だから視聴者を引きこむ為に、初回は本人でアクションシーンを撮りたいんだって」

 

「なるほど。そういう事だったの。それで、リョーマ自身はあまり乗り気じゃないと?」

 

「いや、そういうわけじゃないんだ。ただ、あまりにも予想外な事だったから戸惑っているだけで・・・」

 

「確かに急な話だけど、でもご主人様も悪いと思うよ。内容を聞く前から頷いちゃうんだから」

 

「だ、だが、カテレアさんには仮眷属として力を貸してもらった恩を返さないといけないと思ってだな」

 

「うん、まあそんな事だと思ったけど。ご主人様はもう少し疑う事を覚えるべきにゃ」

 

「うぐ・・・」

 

他人に言い包められているリョーマって初めて見るわね。でもまあ、今の様子じゃやってもいいと思ってるみたいだし、本人がその気なら外野が言う事は無いわね。

 

(・・・なにより、私自身もちょっと楽しみだしね。あの作品は子どもの頃好きだったし。・・・そのモチーフとなった人物と話すどころかこうして一緒に生活してるなんて、改めて考えると凄い事よね)

 

「リアス? どうかしたか?」

 

「いえ、何でも無いわ。それで、撮影はいつなの?」

 

「一週間後だ。けど、明日改めて打ち合わせをしたいから冥界に来てくれと言われた」

 

「平日なのに?」

 

「そんなに時間はかからないらしいからな。放課後迎えに来てくれるそうだ」

 

「わかったわ。とりあえず、頑張ってね」

 

「ああ」

 

本音を言えば私も行きたいけど、英雄派がいつ攻めて来るかわからない以上、不用意にこの街を空ける事は出来ない。

 

(・・・だけど不安だわ。カテレアがまた暴走しないといいのだけれど)

 

食器を用意しつつ、私はそんな事を考えていた。

 

リアスSIDE OUT

 

 

 

IN SIDE

 

という事で、セラフォルーさんに連れられてやって来ました冥界。前回インタビューを受けたテレビ局の小さな会議室に通されると、そこにはカテレアさんがいた。

 

「ようこそお越しくださいました、フューリー様。どうぞおかけください」

 

促されて席に着き、持って来た台本を目の前に置く。二人の前にも同じ物が置かれている。

 

「まずは、今回のお話を引きうけて頂いた事への感謝を改めて申し上げさせて頂きます」

 

「そうだね。フューリーさん、ホントにありがとう」

 

「いえ・・・」

 

正直今から既に不安だ。果たして本当に俺なんかにアクションシーンなんか出来るのだろうか。そりゃまあ、今の俺ならある程度の動きなら出来ると思うが、求められるのは演技力なんだろうし・・・。

 

「昨日少しだけ説明させてもらったけど、フューリーさんにはアクションシーンを担当してもらいたいの。といっても、別に難しく考えずに思うままに立ち振る舞ってくれればいいから」

 

思うままって・・・いいのだろうか。こういうのって殺陣とかそういうのでキッチリ決まってるんじゃないのか? じゃないと普通に怪我とかしそうなんだけど。

 

「そこら辺は私達もちゃんと備えるつもりです。何が起こっても大丈夫なよう、医療スタッフも用意しますし、スタントマンも屈強な者達を集めました。さあ、入って来てください!」

 

「失礼しまッス!」

 

野太い声と共にドアが勢い良く開かれ、そこからガタイのいい男性達が何人も姿を現した。

 

「フューリー様。この者達が、今回あなた様と共にアクションシーンを行うスタントマン達です」

 

「お会い出来て光栄です、フューリー様!」

 

「「「「「光栄ッス!」」」」」

 

声がでかい! そして熱い! なんか部屋の温度が上昇した気がする。

 

「話は聞いてやす。フューリー様とガチでやりあえる日が来るとは、今日までこの仕事をやって来て本当によかったッス!」

 

「ウチのガキに自慢出来ます! お前の父ちゃんは伝説の騎士にブッ飛ばされたんだぞって!」

 

「俺も、田舎の両親にいい報告が出来そうです!」

 

「・・・という風に、みんな了承済みだから、フューリーさんは気にせずやってくれていいからね。あ、でも、一応手加減はしてあげてね」

 

「わ、わかりました」

 

何人か匙君やヴァーリさんと同じような臭いがしないでもないが・・・うん、それだけ仕事熱心な方々という事で納得しておこう。

 

「ほほほ、騒がしいと思ったら、何やら面白そうな話をしておるではないか」

 

そこへ突然老人の声が聞こえて来た。みんなが一斉に部屋の入口に目を向けると、そこには見憶えのある老人の姿があった。

 

「久しぶりじゃの、フューリー」

 

「あなたは・・・オーディンさん?」

 

間違いない。あの時手助けしてくれたオーディンさんだ。さらに、その後ろにはこれまた見憶えのある銀髪の女性、そして初めて顔を見る堕天使の男性が立っていた。

 

「オーディンのおじいちゃん! どうしてここに?」

 

「なに、サーゼクスに少々話があっての。まあそれ自体は既に済ませたんじゃが、せっかく冥界に来たのじゃから少し観光しようと思ってのぉ。そしたらサーゼクスからここで面白い事があると聞いてわざわざ来てみたんじゃよ」

 

「おかげでかなり目立ってしまいましたけどね」

 

「・・・すまん」

 

「あ、いえ、別にバラキエル殿が悪いわけでは」

 

「やれやれ、護衛してくれとる者を悪く言うなど感心できんぞロスヴァイセ」

 

「元はと言えばオーディン様の所為でしょうが!」

 

突然ハリセンを持ち出したかと思えば、それでオーディンさんをどつく女性。けど、肝心の本人は全く意に介していない様子だった。って事は、どつかれるのが日常茶飯事だったりするのだろうか。

 

「何を言う、ワシよりも乗り気じゃったのはロスヴァイセじゃろうが」

 

「な、何を言っているのですかオーディン様。私は別に」

 

「とぼけても無駄じゃ。ワシは知っておるぞ。この少年、お主の理想とする勇者そのもの・・・」

 

「そぉい!」

 

オーディンさんが何か言いかけた瞬間、女性が先程よりもさらに強力な一撃をオーディンさんに叩き込んだ。見間違いでなければ、オーディンさんの頭から煙が立ち昇っている。

 

「ところでフューリー。お主の本名は?」

 

「何事も無かったかのように話を変えないでください!」

 

「ああもう、お主は黙っとれ。それで、教えてもらえるかの?」

 

「神崎亮真です」

 

「うむ、憶えたぞ。ではこちらも改めて名乗らせてもらおう。ワシはオーディン。北欧の主神じゃ。そしてこちらがヴァルキリーのロスヴァイセじゃ。ほれ、お主からも挨拶せんか」

 

「ロ、ロスヴァイセです。あなたの勇名はこちらにも流れて来ています」

 

「俺達、以前レーティングゲームの会場で会いましたよね。あの時は失礼な態度をとってしまいすみませんでした」

 

「い、いえ、事情は後から聞きました。こちらこそ、お友達の所へ急いでいたのを邪魔してしまい申し訳ありませんでした」

 

「こやつ、あの時の事をずっと気にしておってな。いつか謝りたいとか言っておったが、よかったではないか」

 

「だから! あなたは! そういう事を! 軽々しく!」

 

「ほほほ、そう何度も食らいはせんぞ」

 

ロスヴァイセさんのハリセンの連撃を、最小限の動きで全て回避するオーディンさん。

 

「・・・フューリー殿」

 

そんな二人の様子を眺めていると、さっきからジッと佇んでいた堕天使の男性が声をかけて来た。

 

「私はバラキエルと申す。その、突然こんな事を聞かれても戸惑うかと思われるだろうが、教えて頂きたい。あの娘は・・・姫島朱乃は元気でやっているだろうか」

 

「朱乃ですか?」

 

「ッ・・・! 既に名前で呼ぶほどの仲なのか・・・!? いや、どこぞの馬の骨などに任せるよりもフューリー殿ほどの御人であれば。だが、しかし・・・」

 

おーい、聞いてますか? ・・・駄目だ、何やらブツブツ呟きながら完全に自分の世界に入っちゃってる。というか、そもそも何で堕天使の彼から朱乃の名前が出て・・・いや、待てよ。バラキエル。バラキエルって確か朱乃の・・・。

 

「・・・まさか、朱乃のお父さん?」

 

「んなっ!? き、貴殿にお父さんと呼ばれる筋合いはまだ無い!」

 

アッハイ。ならバラキエルさんで通しますけど、今の反応・・・やっぱり間違い無い。

 

「今日という今日は言わせてもらいます! オーディン様! あなたには女性に対するデリカシーというものが圧倒的に足りません!」

 

「のう、セラフォルーの嬢ちゃん。ワシもこの話に出演させてくれんか」

 

「うーん、ゴメンね。もう役は一杯なの。でも、アクションシーンは公開収録する予定だから、時間があるのなら是非とも見に来て欲しいな」

 

「そうかそうか。じゃが、一人で行くのもなんじゃしな。どこかに一緒に来てくれる者がいればいいのじゃが」

 

「・・・コ、コホン。オーディン様をお一人にはさせられないので、私が一緒に・・・」

 

「いや、バラキエルがおるし、必要無いかの」

 

「・・・」(ジワァ)

 

「と思ったが、やっぱり連れて行くか。ロスヴァイセ、ついて来るか?」

 

「し、仕方ありませんね。ヴァルキリーである私がオーディン様から離れるわけにはいきませんし、お供させて頂きます」

 

何か知らんが、話は纏まった様だった。それから当日の撮影場所の説明や、その他細かい所の話を聞いていると、いつの間にか一時間はとっくに過ぎていた。

 

「それじゃ、大体の話は終わったし、そろそろ解散しよっか。フューリーさんもお家に帰してあげないとね」

 

「そんじゃ、俺達はお先に失礼します! フューリー様! 当日はよろしくお願いします!」

 

「「「「「しゃす!」」」」」

 

「では、ワシらもそろそろ帰るか」

 

「はい」

 

「それでは失礼する」

 

スタントマンのみなさんに続いて、オーディンさん達も退室していった。俺はセラフォルーさんが帰還の魔法陣を準備している間を利用してカテレアさんに話しかけた。

 

「そうだカテレアさん。今悪魔の駒は持ってますか?」

 

「もちろん。いつも肌身離さず持っていますわ。・・・ひょっとして、この場でお返しさせて頂いた方がよろしいのでしょうか?」

 

「はい。それのせいでいつまでも周りに俺の眷属扱いとして見られるのも嫌でしょうし」

 

「では、お返ししますわ」

 

カテレアさんが胸のポケットから取り出した『僧侶』の駒を受け取る。これで一つ目だ。

 

「・・・意外。カテレアちゃんがそんなにアッサリ返しちゃうなんて。私はてっきり色々理由をつけて手放さないだろうと思ってたのに」

 

準備を済ませたセラフォルーさんがカテレアさんを驚いた表情で見つめている。それに対し、カテレアさんはどこか余裕のある顔で答えた。

 

「心外ですね。これはあくまでもお借りした物なのですから、お返しするのは当然ではありませんか」

 

「それはそうだけど・・・」

 

「それに・・・ふふ、私はもう眷属などという立場に甘える必要はありませんからね」

 

(あ・・・この目は残念な事を考えてる時の目だ)

 

さて、とにかく本番は一週間後だ。必要無いとは思うが、一応台本にも目を通しておこうかな。

 

魔法陣の中央に立ちながら、俺はそんな事を考えるのだった。

 

SIDE OUT

 

 

 

その頃、冥界のとある建物の一室に数人の悪魔が集まっていた。

 

「・・・確かなのか?」

 

「ああ、間違い無い。当日はセラフォルー・レヴィアタン。そしてあの忌まわしき騎士も来るらしい」

 

「では、次の標的はその会場とする。『禍の団』の一員として、人間ごときに惑わされた愚かな者達の目を覚まさせてやろうではないか」

 

彼らの中では自分達の行いこそが正義だった。故に、その盲目的な正義の行いが自分達に何をもたらすか、それに気付く事はないのだった。

 




なんだかロスヴァイセさんがめんどくさ可愛い人になってしまった気がしないでも無い。

とりあえず、次回から本編を進めます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。