ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜 作:ガスキン
どうも最近二年生の子達の気分がどこか浮かれている様に見えていたが、そういえばそろそろ修学旅行の季節だったな。夕食時にアーシアから話題を出されてようやく気付いたわ。ちなみに旅行先は京都だ。
「リョーマさん達は去年どこへ行かれたんですか?」
「俺達も京都だったよ」
「ええ、日本好きな私としてはとても楽しい旅行だったわ。・・・あ、思い出しついでだけど、リョーマ、あなた三日目の自由時間に何をしていたの? 女の子達があなたの姿が見えないって騒いでいたから憶えてたんだけど」
三日目? 三日目というと・・・ああ、あの時は“あの子”の相手で丸一日潰れてしまったんだっけ。路地裏を歩いていたら突然声をかけられて、何故か一緒に京都散策する事になって、途中で変な仮装集団に追いかけられたりして大変だった記憶がある。まあ、最終的にはお母さんに引き渡してめでたしめでたしだったんだが。
「・・・色々あったんだ」
「その色々を聞きたいんだけれど・・・まあいいわ。とにかく、京都はとても素晴らしい所よ。あなたもしっかり楽しんで来なさいね、アーシア。班はもう決めているの?」
「いえ、まだです。出来たら、ゼノヴィアさんや桐生さんとご一緒させて頂けたら嬉しいんですけど・・・」
それはいい。やっぱり気心知れた子と一緒の班の方が楽しいしな。そうなると、兵藤君も一緒の班になってもらった方がいいかもしれないな。
アーシアは控えめな子だから、ひょっとしたら自分からは中々誘えないかもしれないし、俺から言っておくべきか。・・・我ながらお節介だと思うが、せっかくの修学旅行なんだ。素敵な思い出をたくさん作ってもらいたい。
「みなさんのお土産もちゃんと買って来ますから楽しみにしててくださいね」
「にゃはは、今からお土産の話なんてアーシアらしいにゃ」
「あの・・・出来たらお菓子を・・・」
「ふふ、私達の事を気にしてくれるのは嬉しいけど、一番はあなたが楽しむ事よ。それを忘れないようにね」
「はい!」
そんな感じで、京都の話題で盛り上がりつつ、夕食の時間は過ぎて行くのだった。
SIDE OUT
イッセーSIDE
朝のSHRが終了し、担任が教室を出て行く前にこんな言葉を残していった。
「そろそろ修学旅行の班を決めとけよ」
班決め・・・修学旅行を楽しめるかどうかの重要なファクターである。男なら可愛い女の子と一緒に班を組む事こそが全て。本来であれば俺もそんなお気楽な気持ちで班を決めたのだろう。
だが・・・俺にはそんな事は許されない。何故なら、俺は“あの人”から勅命を受けたのだから。
「アーシアちゃん! 俺と一緒の班にならない!?」
「いや、俺とどう!?」
「いやいや俺でしょ!?」
アーシアに殺到しようとする野郎ども。だが、俺、そして俺と同じく勅命を受けたゼノヴィアはそれよりも早くアーシアの元へ辿り着いた。
「「・・・アーシア」」
「ど、どうされたんですか、お二人とも?」
「アーシア。俺とゼノヴィアと一緒に班を組んでくれ」
「おい兵藤! 抜け駆けは・・・ッ!?」
抗議して来たヤツを一睨みで黙らせる。抜け駆けがどうした。こちとら命がかかってんだよ!
『兵藤君。ゼノヴィアさん。キミ達にアーシアの事をお願いしたい』
登校してすぐに神崎先輩に呼び出されたと思ったらいきなりそんな事を言われた。お前らは知るはずもねえがな、先輩はアーシアの為なら上級悪魔相手でも無双しちまうんだぞ。そんなにも大切に思っている子が自分の目の届かない場所へ行ってしまう事が心配なんだろう。だから、この言葉の本当の意味は・・・。
『旅行中、アーシアに悪い虫がつかない様に守ってくれ』
になる。そしてもしも、本当にもしもの話だが、アーシアが他の野郎どもの所為で大変な目に遭ったとかそういう話が先輩に耳に届いたりしたら・・・。
『イッセー。それ以上考えたらいけない』
この時のゼノヴィアは顔が青かった。おそらく、俺と同じ事を考えていたんだろう。こうして、俺達はアーシアの護衛とも言える役目を先輩に任命されたのだった。
「ほ、本当に私と一緒に班を組んで頂けるんですか?」
「もちろんさ。なあ、ゼノヴィア」
「ああ。是非とも」
「は、はい! こちらこそよろしくお願いします!」
よし! これで第一関門はクリアだ! けど、問題はここからだな。
「そういう事なら俺達も一緒だな!」
「抜け駆けは許さんぞイッセー!」
やっぱりと言うべきか、松田と元浜が湧いて出て来た。
「俺達も同じ班でいいよねアーシアちゃん!」
「一緒に色々回ろうぜ!」
鼻息荒くアーシアに迫る二人の肩をガッチリ掴む。ちょっと力入れ過ぎて肩に指が食い込んでいるが問題は無い。
「痛だだだだ!? おい! 何すんだイッセー!」
「・・・よく聞け、松田、元浜。お前らが何を企んでいるかしらんが、アーシアにちょっかい出そうとしてみろ。・・・その時は一片の躊躇いも無くテメエ等をブチ殺すからな」
「「ファッ!?」」
一応クギを刺しておくが、こいつら相手には意味が無いだろう。警戒しておかないとな。・・・それにしても、何も知らないってのはある意味幸せだとよくわかる。
「はいはーい。そういう事なら私達も一枚かませてくれない?」
「あ、桐生さんにイリナさん」
「桐生にイリナか・・・。イリナは大丈夫として桐生は・・・まあいいや。お前もあまりアーシアに変な事教えるなよ」
「何でアンタにそこまで言われないといけないんですかね?」
「お前だからな」
「楽しい修学旅行にしようね! ・・・ところで、どうしてゼノヴィアはそんなにも気迫のこもった表情をしてるの?」
「・・・後で教えよう。味方は多い方がいいからな」
「?」
そりゃいい。こうなったらイリナも巻き込んでやる。死ぬ時は一緒だからな。
高校生活のビッグイベントである修学旅行。そんなイベントに、俺やゼノヴィアはまるで一大決戦に備えるかのような心持ちで臨む事になりそうだった。
イッセーSIDE OUT
IN SIDE
夜、アーシアが兵藤君達と一緒の班になれた事を報告して来た。それはもう心から嬉しそうにだ。やっぱりお願いしてよかった。また改めて兵藤君達にはお礼を言わないといけないな。
「ただ、イッセーさんもゼノヴィアさんも凄く真剣な顔をしてました。イリナさんもです。どうしてでしょう」
うーん、多分だけど、どんな風に観光名所とかを回ろうか考えてたんじゃないだろうか。三泊四日って長いようで短いからな。ちゃんと計画たてないと楽しめない。昨日の夕食の時もリアスがそれで失敗したって言ってたし。兵藤君、こういうイベントとか凄く好きそうだから、今から色々イメージしてたりして。あと紫藤さんも。ゼノヴィアさんは意外だけどな。
そしてその翌日の放課後。リアス、アーシアと一緒に家路を歩く俺の耳に、つい最近聞いた憶えのある声が聞こえて来た。
「ほほほ。この街は可愛い子が多いのぉ。いい目の保養になるわい」
「その目つきは不審者にしか見えないので止めてください!」
「この声は・・・」
思わず声のした方へ振り向く。果たして、そこには声から連想した人物達の姿があった。
「オーディン・・・さん?」
「ん? おお! フューリーではないか! いやはや、これからお主の家にお邪魔しようと思っておったのじゃが。見た所お主達も帰宅する途中なのじゃろう。せっかくじゃし同道させてもらおうかの」
俺の顔を見るなり破顔しながら、その人物・・・オーディンさんはそんな事を言って来たのだった。
オリ主・・・一緒の班になって色々手助けしてあげて欲しい。
イッセー・・・無事に帰さないとわかってんだろうな?
「お願い」という言葉でここまでの見解の相違がみられます。日本語って難しいね。