ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

99 / 187
第九十五話 性癖なんて人それぞれです偉い人にはそれがわからんのです

ロキさんとフェンリルがいなくなった後、俺達は街に戻り、駒王学園近くの公園へ降り立った。・・・そういえば、最近レイナーレさん達に会ってないな。

 

「リョーマ!」

 

ラフトクランズモード解除と当時に、馬車から弾き出されたかのように飛び出して来たリアスが俺の右手を取る。続けて他のみんなも俺の周りを取り囲んだ。え、何?

 

「・・・信じられない。出血どころか傷一つついていないわ」

 

「ね、念のために私の神器を!」

 

俺の右腕を淡くて温かい光が包んだ。・・・ここまでされたらわかる。みんな俺がフェンリルに噛まれた事を心配してくれているんだ。まあ、実際は噛まれたどころかハムハムされて終わったんだけど。

 

「で、でも、今回ばかりは流石に肝を冷やしましたよ先輩」

 

「まさかフェンリルの牙をその身に受けながら、逆にフェンリルにダメージを与えるとは・・・あの鎧の防御力はどうなっているのだ」

 

「う、うん、流石神の戦士・・・と言えばいいのかしら」

 

(神か・・・。それを殺せる牙を無効化するという事は、ある意味神を越えているのではないじゃろうか。人を越え、悪魔を、天使を、そして堕天使を越え、ついには神すらも越える・・・。この世界において、この者の存在は最早“バグ”じゃな。この先、ワシ等の関係がどうなるかはわからんが、敵対すればラグナロクよりも凄まじい事になりそうじゃ)

 

「爺さん。なんとなくアンタが今考えている事はわかるが、あんまり考え過ぎると以前の俺や最近のサーゼクス達みたいになっちまうぜ。・・・そういう俺も一瞬懐かしい痛みに襲われちまったがな」

 

アザゼル先生がお腹を押さえている。寒空で冷やしちゃったんだろうか。そして紫藤さん、そっちの呼ばれ方はまだ慣れてないから勘弁してくれると嬉しいな。

 

「ともかく、フューリーのおかげでヤツ等を撤退させる事が出来た。お前等はもう帰って休め。フェンリルと対峙した事で想像以上に精神を消耗させているだろう。詳しい話はまた明日にでもしようや」

 

そういうわけで、次の日の朝から俺達の家に集合という事で解散となった。なんだか込み入った話になりそうだが、ウチじゃ狭くないだろうか。

 

「どうやら、ついにあそこの出番の様ね」

 

帰り道、リアスがやけに気になる独り言を漏らした。そして翌日、俺は彼女の独り言の意味を知る事となった。

 

予定通り、兵藤君達が朝の八時過ぎくらいから集まり始めた。それは別に問題は無い。ただ、それに混じって何故か支取さんと彼女の眷属の子達まで訪ねて来た。

 

「私が呼んだの」

 

はい! 犯人発見! リアスでした! しかも・・・しかもだ。支取さん達に続いて、さらに予想外の人物達が俺達の元へ姿を現した。

 

「よお、邪魔するぜぃ!」

 

「ここがフューリー殿のご自宅ですか。三階建てとは立派ですね」

 

「はあい、亮真。元気にしてたかしら?」

 

玄関に立つ美猴さん、アーサーさん、そして・・・ヴァーリさん。その後ろからアザゼル先生が現れた。

 

「すまねえな、フューリー。こいつら、どこから嗅ぎつけたか知らねえが、俺達がロキとフェンリルに遭遇した事知って真正面から訪ねて来やがったんだ」

 

「北欧の悪神に神殺しの牙・・・。うふふ、素敵じゃない。今からやり合うのが楽しみだわ」

 

「まあ、そういうこった。今回はいっちょ共同戦線といこうぜぃ」

 

「よろしくお願いします」

 

え、いや、こ、こちらこそと言えばいいのか? ともかく、こんな大所帯じゃリビングに全員入りきらないんですけど。

 

「大丈夫よ。地下室ならみんな入れるわ。さあ、みんなここから下りてちょうだい」

 

リアスが廊下の壁を触る。その途端、その部分が駆動音と共に横にスライドし、下へ伸びる階段が姿を現した。ってな、なんじゃこりゃあ!? こんなのがあるとか全っ然知らなかったんですけどぉ!?

 

「お、おお! すげー! 地下室だぜ兵藤!」

 

「なんか秘密基地っぽくてかっけえ! よし! 一番乗りは頂きだ!」

 

「あ、ずるいぞ兵藤!」

 

兵藤君と匙君が競った様に階段を駆け下りて行った。小学生みたいな反応の二人に苦笑しながら、他のみんなもそれに続いて行く。

 

「リョーマ? みんな行っちゃったわよ?」

 

「リ、リアス・・・。これは一体・・・」

 

「こんな事もあろうかと、増築する時に合わせて作っておいたのよ」

 

・・・ツッコミたい。キミはどこぞの宇宙戦艦の工場長か!? と声を大にしてツッコミたい。けど、元ネタの無いこの世界でそんな事をすれば首を傾げられるだけだ。だから我慢しろ俺。

 

たった今頭に浮かべていたものを全て追い出し、俺は最後尾で階段を下りて行った。下りて行った先には、確かに全員が揃っても十分なスペースがある大広間があった。・・・はは、本当に改造されてたんだな。

 

「さて、ここなら全員交えて話が出来るな。・・・その前に、ヴァーリ。お前等の目的は本当にロキと戦う事だけなんだろうな?」

 

「ええ。私達は私達の目的の為に動いているだけですもの」

 

「ならいい。だが、少しでも変な真似をすれば、その時点でとっ捕まえてやるから覚悟しとけ」

 

「心得ておくわ」

 

ひょうひょうとした態度のヴァーリさんに対し、アザゼル先生が溜息を吐く。・・・こういう例えは失礼かもしれないが、まるで自由奔放な娘に振り回される父親みたいだった。

 

「では本題へ移る。そもそも、今回の事の発端はオーディンだ。あの爺さんが来日した目的は日本の神々との会談なのだが、それをよく思わない連中が存在する」

 

「その一人がロキって事ですよね?」

 

「そうだイッセー。こうしてオーディンが他の神話体系に接触しようとしているのがヤツには許せないんだろうさ。ま、ヤツ等からすれば、自分達の領域を土足で踏み込んで、あまつさえ聖書を広げたこっちの神話が心の底からムカつくんだろうよ。ったく、たまったもんじゃねえよな。そういう文句はミカエル辺りに言えっての」

 

「つまり、自分達の主神が極東の神々と和議をするのを阻止しようと?」

 

「友好関係を結ぼうとする両者を実力行使で阻もうとする。・・・ある意味テロだな」

 

「それはつまり、ロキが『禍の団』と繋がっている可能性があるという事ですか?」

 

気付けば俺はそんな事を尋ねていた。みんなの視線が俺に集中する。それはいいんだが、どこか顔が引き攣っているのは何故だろう。そこまで変な質問をしたつもりはないんだが。

 

「その可能性は低いだろう。確認していない以上、ゼロとは言えんがな」

 

「そうですか。よかった」

 

「よかった?」

 

「ええ。もしも彼が連中と手を結んでいたとすれば・・・俺は自分を抑えられそうにありませんでしたから」

 

「「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」」

 

アーシアを攫った時点で絶許だが、その後に聞かされたオーフィスちゃんに対しての仕打ち。もうペロリストという単語を思い浮かべるだけで青筋が浮かびそうになる。構成員だろうが協力者だろうが、俺の前に現れたら全員ぶちのめすと心に決めてあるのだ。

 

(今のプレッシャー・・・最早“嫌悪”じゃなく“憎悪”ね)

 

(たぶん、ディオドラがアーシアに手を出そうとしなければここまではいかなかったんだろうなぁ。巨大どころか特大の地雷を踏み抜いちまったって連中は気付いてるのか?)

 

(最近は英雄派による神器所有者の誘拐等の事件が多発している。それもまた神崎君の心に火をつけているのでしょうね)

 

(私もテロに参加すれば、亮真も本気で戦ってくれるのかしら。・・・なんて、そんなやり方じゃきっと後悔しそうね)

 

「あー。その・・・お前の気持ちはわかるが、出来ればお前が出るのは最後の最後にしてくれるとありがたい(こいつに頼ってばかりじゃリアス達の為にならねえし、何よりも“ゆっくり”出来なくなっちまう)」

 

「・・・わかりました」

 

ともかく、ロキさん・・・いや、ロキはせっかくの平穏を乱そうとしている事は確定だ。これだけの面子がいれば、おそらく俺なんかの出番は無さそうだが、何かあればすぐに動けるようにしておいた方がいいかもしれない。・・・はは、少し前までの俺なら戦うなんて考えられなかったな。ペロリスト達との一件で自分がどこか変わった気がする。それがいいのか悪いのかはわからないけど、少なくとも、大切な友達を守れる為の力を持てたのは喜ばしい事だと思う。

 

「では、具体的なロキ対策についての話に移るぞ。案としては、まずロキとフェンリルに詳しい者に話を訊きに行く」

 

「あの、先生。ロキは必要だと思うんですけど・・・フェンリルはいいんじゃないですか?」

 

「あ?」

 

「そうだね。おそらくフェンリルについては心配する事は無いと思いますよ」

 

「ああ、あんな目に遭わされたのだ。神崎先輩を見るだけで戦意を喪失するのでは無いだろうか」

 

「・・・トラウマ」

 

「に、逃げる前のフェンリルは完全な負け犬の目をしていました。僕わかるんです。だって、僕がよくしてる目にそっくりでしたから!」

 

「そこは胸を張っていう所じゃないと思うわよ・・・」

 

アザゼル先生に向かって、兵藤君が口々に意見を述べていく。それってまた俺が遊び相手になれっていう事? いやー、みんなが真面目にしている時に一人だけペットと戯れるってのは何だかな。やれっていうならやるけど。

 

「おい兵藤、神崎先輩何をやったんだ?」

 

「・・・噛みついて来たフェンリルの牙を逆にぶっ壊した」

 

「へえ、そうなのかぁ・・・ってはいぃぃぃぃぃぃぃぃ!?!?!?!?」

 

「神喰狼の牙を!?」

 

「壊した!?」

 

「しかも噛みつかれた!?」

 

「だ、大丈夫だったんですか!?」

 

匙君達の驚愕した声が地下室内に反響した。俺は噛まれた右腕を軽く振って安心してもらえるよう答えた。

 

「あの程度の甘噛みなら特別問題になる様な事は無いさ」

 

「「「「「「「「「「甘噛み!?」」」」」」」」」」

 

今度はリアス達の声が反響する。ここなら近所迷惑にならずに思いっきり叫べそうだ。ストレスでも溜まったらここで発散するのもいいかもしれない。

 

「わかる。お前達の気持ちは心底理解出来る。正直、もうコイツ一人でいいんじゃね? とか何度も思ったさ。だが、ロキだって当然何かしらの対策を考えているはずだ。対抗手段は多いに越した事は無い」

 

「アザゼル先生。もしもまたフェンリルが出て来たら、俺でよければ“遊び相手”になりますよ」

 

どうもみんな相手するのが嫌みたいだし、消去法でいけばやっぱり俺になる。

 

(もう疑い様が無いわ。リョーマはS! はっきりわかるのね)

 

(今のセリフ、眼鏡をかけてもう一回言って欲しいにゃ)

 

(な、何? 今の神崎先輩を見てると何だか変な気持ちに。ッ、だ、駄目よ! 私はミカエル様のエースなんだから!)

 

(・・・どうして今のタイミングで朱璃とのあのめくるめく幸福な時間を思いだしてしまうのだ私は・・・)

 

(うふふ、やっぱり私達、相性抜群の様ね。それと・・・どうやら私の“お仲間”がいるみたいだわ)

 

「あっはっは! 心強すぎて涙が出て来るぜ! ともかく、五大龍王の一匹である『終末の大龍』ミドガルズオルムに会いに行く。イッセー、ヴァーリ、それに匙、お前達に協力してもらうぞ」

 

「了解ッス!」

 

「まあ、順当ね」

 

「お、俺もですか!?」

 

「ああ。龍門を開く為にヴリトラの力がいる。大方の事は俺達や二天龍がなんとかするからお前はそこまで気負う必要は無いさ。タンニーンと連絡がつくまではお前達は待機。俺とバラキエルはちょっくらシェムハザの所へ行って来るからな」

 

大広間から出て行くアザゼル先生とバラキエルさん。さて、二人が戻って来るまでどうしていようかな。

 

「部長、どうしますか?」

 

「そうね。とりあえずここからは自由時間としましょうか。ただし、すぐに戻って来れるようあまり遠くには行かない様にね」

 

「おっしゃあ。せっかくだから俺っちはラーメンを食いに行って来るぜ!」

 

「ちょっと! だから遠くには行かないで・・・って、何でテロリストに注意してるのよ私は・・・」

 

「ねえねえ、アーシアさん。よかったらお家の中を案内してくれない? ちょっと気になるんだよね」

 

「え、ええっと・・・リョーマさんがよければ」

 

「ああ、別に構わないよ。といっても、そこまで面白いものは無いと思うが」

 

「決まりね! じゃあまずはアーシアさんの部屋へ行きましょ! そしてその後は先輩の・・・」

 

そうして、みんな時間を潰す為にそれぞれ散って行く。それからしばらくしてアザゼル先生が戻って来た所で、兵藤君、ヴァーリさん、匙君が先生と一緒に転移魔法でどこかへ跳んで行った。

 

それから数時間が経ち、俺達は戻って来た兵藤君達から情報を手に入れる事が出来たとの報告を受けるのだった。




既に脅威として見られていないフェンリルェ・・・。これも神崎亮真ってヤツの仕業なんだ!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。