原作に登場しないモブだけど性悪すぎる悪役令嬢に悪の美学を叩き込んだらなんかバグった   作:苺1円

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虚言癖の聖女『1』

「聖女様、いい加減にしてもらえますか?いくらなんでも言っていいことと悪いことがあります」

「おねがいします、今回だけでも、今回だけでも信じてください」

 

異様な光景だった、修道服の女性が言葉にした聖女というのは教会の象徴とも呼べる存在で

 

神の使徒とさえ言われる聖女を粗雑に扱う人間など異端者として刑罰を受けてもなんらおかしい話ではないにも関わらず、女性は聖女の話にまともに取り合う気が見受けられない

 

そして聖女もまた、女性の言動を当然のものとして受け入れていたのが何よりの違和感だろう

 

だがきっと、悲しいことに、聖女と女性のやり取りにどれだけ余所者が違和感を覚えようとも教会の人間は口を揃えて言う

『また虚言か』

 

「このような真夜中に部屋を訪ねて、出てくる言葉は教会が焼け落ちる光景を視たなど、侮辱にもほどがありますよ?」

「っ!?私は皆様を救いたくて……」

「嘘を重ねるのはおやめください、聖女らしい言動などもう求めませんが、せめて教会の威信に泥を塗る行為だけはやめていただきたい」

 

聖女の心は最早限界だと涙を流していた、それでも自分に救えるものがあるなら救いたくて……

 

ただ、もう教会が積極的に協力してなどくれないことは理解している

 

間違ったことをしたつもりも、嘘をついたつもりもない、ただ今まで他者を思って行動したそれらが裏目に出ただけ

 

それでも……信頼を失うには十分すぎることも同様に理解できていた

 

「綺麗な胡蝶が優雅に飛べども、その羽ばたきで毒を撒き散らすなら誰も近寄ろうとは思いません」

 

それは揶揄なのだろう、綺麗な胡蝶が聖女のことを指しているのは容易に察せられる

 

闇夜においても美しいと判別できる金色の長髪も、何処か浮世離れした美貌も到底凡庸などとは言えない

優雅に飛ぶ、それは彼女が聖女という立場を得たことだろうか?

毒を撒き散らすとは……言うまでもなく

 

「どうぞ自室へお帰りください」

 

女性はキッパリと言い放った、聖女の頬を伝う涙が窓から差し込む月明かりに照らされて輝いているのが見えて、これ以上会話を続けても彼女を傷つける言葉しか自分は言えないだろうと悟ったことで罪悪感が刺激された

 

その優しさに聖女は感謝をしつつ、それでも何故か明確な拒絶の言葉に聞こえてしまったから、もう心はぐちゃぐちゃで……

 

「失礼しました」

 

自分は何処で道を間違えただろうか?

溢れて止まらない大粒の涙で瞼を腫らしながら、聖女は部屋を退出した

 

「聖女様も、また救いを求めているのかもしれません、もし彼女が嘘をつかないことを約束した暁には、我等が神のご加護を……

 

もし、王女様のように聡明な同年代の友人がいれば彼女の行動も変わっていたでしょうか?……いえ、やめておきましょう」

 

女性は自分の言葉を恥じた、無意識に聖女様と王女様を比較して優劣をつけてしまったことに

それは教会の教えで推奨されていないことだから

 

同時刻

とある宿屋の1室にて2人の会話は行われていた

片方は仮面を被り黒いローブをまとった青年

片方は何か特殊な技術でも用いているのか視界に捉えてもハッキリとその姿形を記憶できない女性

 

どちらも疑ってくださいと言っているような様相だが両名が知り合いならば話は別だろう

 

「虚言癖の聖女?なんだそれは」

「なんでも、最初にいくつかの出来事を予言してみせたことで教会が聖女として認定したけど、聖女になってからは適当なことしか言わなくなったとか、まあ予言とやらも偶然ということかな」

 

青年の問いに軽い調子で答える女性だが、その話は未だに世間では公表されておらず無理にでも探るか情報を入手する経路でもないと得ることができないもの、そんな情報を対価もなく開示したのに深い意味はない、本当にただの雑談

 

だからこそ、その女性の得体のしれなさが際立つ

 

それにしても偶然とは怖いものだ

だが、偶然でないならば、それはもっと恐ろしい何かではないだろうか?

 

「表で情報がない理由は……教会としても聖女がただの嘘つきでは不都合なわけだ」

「そういうこと、教会は近いうちに聖女の追放を考えてるなんて話だよ、真偽は定かじゃないけど、妥当ではあるよね」

 

青年からすれば目前にいる女性の嘘のほうが話題の聖女とやらよりも余程達が悪いだろうと睨んでいる、完全に真偽が定かではない噂話程度の情報を持ってくることなどしないのに、会話の中で違和感を抱けないほど自然に吐き捨てられた虚言

 

聖女が虚言癖なら彼女は間違いなく詐欺師だ

そして女性もそれを笑って肯定することだろう

 

「その聖女の名前は分かっているのか?」

「アリステア・マーガレット、皮肉な話だよね、献身を意味するアリステアと信頼を意味するマーガレットを合わせて虚言癖の聖女、なんてさ」

「………」

 

青年は自分の耳を疑った、虚言癖の聖女などという自身の記憶にはない話題で自身の記憶の奥底に刻まれた女性の名前を聞くなど

 

何が起こった?それを整理するには情報が足りない、そして目前の女性も特段興味はない話題であることは明白で、それはつまり裏の思惑で結末が変動したというわけではないことを指している

 

「いきなり沈黙されても困惑なんだけど?」

「悪いな、野暮用を思い出した」

 

女性にしては珍しい本当に困惑した様子だった

本題とは特に関係しない話題だったはずだが、何か青年にとっては核心を突くようなものがあったらしい、流れから予想するなら十中八九名前だろう

 

言葉を放った直後に青年の姿は消えていた、まるで手品のように唐突に、最初から存在していなかったと言われても納得してしまうほど突然に

 

なんとも笑えない話だ、対価もなく最上の情報を提供してしまったわけだから

 

「さて『希望の聖女という存在を聞いたことがあるか?』ね、聖女という称号を正式に扱える唯一の教会が虚言癖の阿呆を抱えてる現状で何処から出た話なのか興味があるけど………まあ放置かな、厄介事のニオイしかしないもの」

 

完全に未知の話から危険度や発生する利益を推し測るというのは困難だ、挑戦する価値は十分にあるし挑戦しない理由も十分にある

それでも即座に青年の行動や行先を調べないことを決定したのは

 

「自称は英雄世代における最弱、ただ私達からすればアイツラの中で最弱だろうと最強だろうと関係なく全員が理解不能の化物だよ」

 

好奇心は猫をも殺す、初対面のとき青年が口にした言葉、真理だろう、それで片腕を奪われた身として実感できないわけもなかった

 

……………

 

ところでバタフライエフェクトという言葉を知っているだろうか?本当に僅かな行動でも結末を極端に左右することがあるという例で使われる言葉

まさにピッタリだ、青年が僅かだと認識している行動は確かな猛毒を撒き散らした

『本来の歴史』において希望の聖女と呼ばれた彼女が………

この世界では虚言癖の聖女などと呼ばれている事実が、その証明だ




クオリティーの維持って大変(できてるか不明なのに何を言ってるんだろう?)
1章のプロローグをしようとしたら聖女曇らせRTAしてた、なんだこれ?
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