Bio Hazard Side <b>    作:白風 海斗

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8月7日
あの日から2週間が経っていた。
身体の傷はすでに消え、周囲の私に対するぎこちない気遣いもなくなった。
人々にとって、それはもう過ぎ去ったことなのだ。
しかし私は目を閉じるたびに、それが鮮明によみがえってくる。生肉を食らう人のなれの果て、怪物に生きながらむさぼられる仲間の悲鳴。
心の傷は今も消えてはいないのだ。





8月9日
ブラッドはあの事件以来、私達から距離を置くようにしているようだ、あの恐ろしい洋館の事も、何も話そうとはいていない。
以前のあの冷静で、かつ知的な彼はどこに行ったのだろうか、アンブレラ相手に戦う事が、生き残る道だと言うのに。




8月13日
クリスは最近もめごとを起こすことが多くなった。
あまり他の署員と口をきかなくなり、いつもいらいらとしている。
今日も口喧嘩からブラッドに殴りかかって胸ぐらを掴み、壁へと押し付けるまで発展した。私が止めるまでも無く、クリスは落胆したように去っていった。
クリスはどうしてしまったのか・・・。





8月15日
深夜、謹慎を命じられているクリスに呼ばれ、私は彼のアパートをたずねた。
クリスは私を部屋に通すとすぐに数枚の紙片を押しつける。それは“G”とだけ題された、ウィルス研究論文の一部であった。クリスは、「ブラッドが教えてくれた」彼は重々しく口を開くと「悪夢の続きだ」といった。「まだ、あれは終わっていない」と。
彼はあの日以来、休息もなく戦いつづけていた。
そしてもうひとりの彼も、彼なりのやり方で戦っていたのだ。私にも告げずに。





8月24日
今日、クリスとジョセフは欧州へ旅立つために街を離れた。バリーはエンリコと共に一度家族をカナダへ送り、その後に追うといっていた。私はブラッドと共にラクーンシティに残ることになる。この街に残る研究施設が重要な施設であることを知らされたからだ。
クリス達には一ヶ月ほど遅れるが、欧州のどこかで彼らと落ち合うことになるだろう。その時こそ、私達S.T.A.R.S.の本当の戦いは始まるのだ。
それはありきたりの九月だった



人々に立ち向かう勇気さえあれば・・・



アンブレラに逆らおうとする者はいない



それが破滅への選択なのに・・・



愚かさのつけを払う事になるだろう



許しをこうにはすべてが遅すぎる



運命が流れはじめたとき



それをとどめることはできないだろう



誰にも・・・



最後の九月が過ぎ去ろうとしている



それを理解しているのは私達だけだ・・・




主産業の八割以上がアンブレラが支えているこの街は正しく“アンブレラの街”と言えるであろう。

この街でアンブレラに逆らえるものはいない、住民は大半がアンブレラ関係者かその家族だ。
私達S.T.A.R.S.も市警察の一部門ながらアンブレラがスポンサーであった。
アンブレラが作り出した悪魔は確実にこの街を犯し始めている。

それに気付いていたのは三ヶ月まえの“あの事件”を生き延びた私達ぐらいだろう。


16

私、ジル・バレンタインはラクーンシティからの脱出するために動き出した。

火の海と化したアパートの扉をこじ開けると、間一髪。

ホールは爆発し、扉は吹き飛んだ。

中から体中を焼かれながら火から逃れようとする人々

 

いや、彼らはもう人とは呼べないかもしれない。

 

その人形(ひとがた)は、体表に対して三割以上のやけどを負っている。

 

普通なら生きてはいまい。

 

弛緩しきった声帯が何とも表現し難い低いうなり声を上げる。

 

それは聞く者が聞けば“あ”

また違うものが聞けば“お”

と知性の感じられる事の無い鳴き声のようだった。

 

私は迷う事なく、彼らの眉間へと向けて手に持ったベレッタを撃つ。

 

普通の拳銃に比べて早いスパンで放たれる弾丸は次々と歩く死者へと吸い込まれるように当たって行く。

 

辺りのゾンビを倒した所で、事故車やバリケード、火災が行く手を阻む中。唯一通れそうな高さのコンテナを乗り越えた時、私は自身の迂闊さを呪った。

 

通りの右側から、反対の左側から。

溢れるようにゾンビ達が出てきたのだ。

 

コンテナを登って戻ろと言うにもそこからもゾンビ達が迫っている。

 

ハンドガンで戦うにも、数が多すぎる。

弾が切れるのが先か、数に押し切られるのが先か……私は一瞬、死を覚悟した……

 

「ジル!!伏せろ!!」

大声が響き、誰か、を確かめる間もなく体を地面に倒した。

 

 

 

声がした方に目をやるとショットガンを構えたブラッドが見えた。

 

一発 二発 三発 四発

装填されているのはスラッグらしく。

銃声と共にゾンビが次々と倒れて行く。

 

ショットガンをこちらに放り投げるとストラップで下げていたクルツを横向きに持ち替え、掃射。

 

ハンドガンと同じ九ミリ弾が次々と吐き出されて対象の肉を引き裂く。

 

私も地面を滑ってきたショットガンを受け取ると銃剣の要領でそのままの姿勢でショットガンを突き出して顎に突き出す。

 

ゴリッと骨が砕ける感覚がグリップを通して伝わるが気にする事ではない。

 

体のバネを使い起きあがると残った弾丸を奴らに撃ち込む。すかさず隣に立ったブラッドがクリップでまとめられたショットガンの弾を寄越した。

 

装填するとポンプを引き、薬室に弾丸を送り込む。

 

真正面に突っ立ったゾンビにタックルをかけて転ばせるとショットガンで吹き飛ばす。

 

その間に迫っていたゾンビをブラッドがデザートイーグルの50口径と言う馬鹿げた拳銃でブチ抜く。

 

こうして多数いたゾンビ達はあっという間に全滅した。

 

「ありがとうブラッド助かったわ」

 

「どういたしましてお姫様、ってな」

 

洋館事件以来この言い回しが気に入ったのかおどけたようにブラッドが言う。

 

「………」

 

口にするまでもなく、嫌みを込めて彼を睨む。

 

「………あやまるよ……だから睨むのは止めてくれ……」

 

わかればよろしい

 

再びゾンビが群を成して迫ってきた。

 

私がショットガンを構えるとブラッドが

「相手をするより逃げた方が早い!!」

 

そう叫ぶが速いか、傍らのドアにデザートイーグルをぶち込み扉を吹き飛ばした。

 

「ジル!!こっちだ!!」

ブラッドが両手に持ったクルツをゾンビに向かって乱射しながら先に行くように促す。

 

もはや肉の壁と化したゾンビの前に、私は一目散に駆け出した。

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