機動戦士ガンダム ゴーストクロニクル series000 作:GhostWrider.Jp
「敵機撃墜!! ザクです! 先制しました! スコアはG1!」
最大戦速の強烈なG、敵艦隊の嵐の様な砲撃を受けての
音など聞こえるはずがないと錯覚しそうなこの状況で、その声はとてもよく聴こえてくる。声量に溢れていて、しかし何処か平静で、叫んでいるように感じない。
「よし!」
「や、やったわ!!」
ブリッジの最前席で舵を取る、エレン・マイラード中尉は叫びを漏らした。絶え間なく稲光る閃光に、
ブリッジ中央、階段上のシャフトに据えつけられたキャプテンシートに座るP004艦長=ロイデ・アームオン大佐だ。振り向いたエレンと視線を合わす事もなく、アームオンは厳しい顔つきで前方スクリーンを凝視している。この厳つい様と、さっき聴こえた安堵と歓喜の声はあまりにそぐわない。エレンはすぐに前に向き直ると、何か気のせいだったのだろうと思った。
艦長でもあんな声を出すんだな……
シャフトの上で、後方からブリッジ全体を見下ろすツインシートの一方、コミュニケーターシートを指定席にするアダム・ダムは驚いた。
間違ってませんよ、マイラード中尉。……今、よし! って言ったのは艦長です。
アダムとて、地震に揺れるクラブさながらのこのブリッジで、アームオンが叫ぶ姿を見届けたわけではない。彼のコミュニケーターとしての優れた耳が、どんな状況でも発声の主を聴き間違えないだけだ。
……やはり、あとはMS隊に託す事になるよな。バトラー中隊は
苦々しい表情で思考しているアダムの優れた耳が、ブリッジ右方の声に反応した。
「ミサイルセット!
次々と帰ってくるラジャーコールを一つたりとも聴き漏らさないように集中しながら、コマンド・オフィサー=シュアル・オファーはディスプレイを激しくタイピングしていた。そこには、敵艦隊の展開の様子が透視線画で表示されている。
ムサイ級3隻が正面に向けて、逆三角形を作り上げようとしている。その背後中央にザンジバル級が着いて、四面体の陣形を構築しているようだ。
急いで、私! なんて早い戦型構築! アンブッシュを見抜いていたからだとしても、判断も行動もすごく早い。時限信管の計算が間に合わない……
この敵なら、この戦型の意味は、
「敵機大破! 2機目、排除! ザクです! スコアは……G4!」
カインのオペレーションが吉報を叫ぶ。ブリッジが意気高揚の空気に包まれた。
「G4!?」
今度こそ、エレンもはっきりと分かるアームオンの声が響き──
「え? G4って? 新入りさんの!?」
──しかし、そんなことより遥かに大事件だとばかりに、エレンが疑問を口走り──
G4! って、
──アダムが理論的にそれを理解した時──
G4……そうだわ!
──クライマックスの速弾きに気迫こもるピアニストの様な、鬼気迫るタイピングを仕上げ、シュアルはサブミットを叩いた。
「ミサイルシフト!
瞬く間に、
「
ブリッジにミサイルが射出された振動が伝わってきた。ミサイルは機械的に発射管を抜けていくだけの無反動射出だ。大砲の様な爆発的な反動は全くない。24基一斉射出ならではの振動だった。
発射されたミサイルは、バーニアを噴射してコマンドされた軌道をライドして行く。シュアルは、24発全てがコマンドした通りに航行しているかをチェックした。大丈夫。正確に機動している。見つめながら
「敵機撃墜!! ザクです!
ブリッジが抑えきれない歓声に包まれる。カインのオペレーションも高揚を隠せない。
やはり! 艦を盾に狙撃展開している…………指示がなくても自分で判断して……優秀だわ。
シュアルの指がコンソールを滑る。瞬時にクラウザーのパーソナルコードを呼び出した。
・・・・・・・・
・・・・
「
ギュオスは、交信チャンネルのモードセレクターを弾いた。
「艦隊指令より
再びセレクターを『
「
『メイ少佐。自分は
すかさず、ゲルググ2番機=アルマンから通信が入った。
「今、成れ。
こともなげに言い放つギュオスの声は静かだ。
『ャ、
────制圧射撃は最も高度な援護射撃スキルだ。今、出来るように成れとは無理難題
『こちらベルセルク! ワーデン艦長より、メイ指令へ交信要求! 繰り返します! こちら──』
「なんだ?」
復唱させず。
ギュオスは即座に、ライフルチームのチャンネルをホールドしたまま、セレクターをフックした。やはり声は静かだ。しかし、その顔は
「少佐殿! 戦闘中に恐れ入ります!! 現在、我が方はMS戦で押されております! 敵に三乗倍するライフル隊は狙撃展開のまま──』
ギュオスはフックしている小指を離した。ワーデンの声が途絶え、セレクターが、
「アルマン、敵の前衛、G型3機を射圧しろ。既に制圧してある。回復させなければいい。それらしく撃ち込めば、制圧継続できるはずだ。任せるぞ」
そう言って、左右のスティックをツイストする。エイミングを開始した。狙撃ウィンドウには、鋭く回避運動をしながらスラスター全開で加速しているGm型が映っている。小指を戻し、フックする。
『──ったのは狙撃MSだと確認いたしました! 敵は我らを
「連邦は想像以上の精鋭だ。今すぐ
『そ──』
再び小指を離すと、
聴こえるぞ!
次の的を正面に据えてエイミングを開始する。小指がセレクターをフックした。
『──りますが、ライフル隊が
フックをリリースして、赤い命中予想値のままクラッチングをする。ワーデンの声が遮断され、撃ち込んだビームが敵機の勢いを寸断する。次の的と入れ替えて、エイミングを始める。セレクターをフックした。
「
言いながら放ったビームが、敵機Gm型をまた一つ制圧した。途切れること無く、次の的へのエイミングを開始する。
『し、しかし』
「それに、
電子音が鳴り『R3』のコールサインが点滅した。ゲルググ3番機からの通信要求だ。
「──そして、このタイミングでベルセルクがそのポジションに就こうとしている。
『……』
黙したワーデンをそのまま置いて、フックから指を離し、射撃する。Gm型が黙る。次のエイミングを始めながら、小指をフックに戻し──
「そして……私も根にもつ性格でな。
地獄の重力下に突撃し、地上制圧を成していった降下猟兵の戦いというものを、見せてやらないとな」
──スナイプ・ウィンドウに映るGm型に射圧を撃ち込み、挑戦的なトーンで静かに言った。
「ベルセルクは最大戦速のまま敵迎撃部隊を狙撃、これを駆逐して道をこじ開けてみせろ。何があろうと艦隊速度は緩めん。今度こそ、
『無論であります!』
ギュオスは、セレクターフックを解除した。点滅していた
『ライフル3より、ライフル1! 全機潜航突入用意完了! 指示を乞う!』
的を入れ替え、スティックをツイストするギュオスのヘルメットに、ゲルググ3番機からの通信が飛び込んできた。
「ライフル1より、
一瞬黙してクラッチングに集中する。放たれたビームが、狂いなくGm型を制圧した。
「その後はターンするな。高速離脱ベクトルのままで、射撃戦を展開しろ。ビームライフルの長大な射程を活かして戦え。いいか? このフェーズから、タイムリミットを切られるのは向こうに変わる」
再び、一瞬黙して射撃する。また一つ、Gm型が制圧される。
「二頭立てに迫れ。貴様達を、
P004MSチームの敷く六角形の迎撃ラインは、その頂点が、それぞれGm型2機一組で構成されている。ギュオスは、このタンデムのリーダー機を狙って射圧していた。先程、6機目を制圧した。ギュオスは敵機全体の様子をチェックした。
「その為の射圧は、今、完了した。奴等は迎撃ラインを進められていない。だから、ターンして貴様らを追うしかない。こちらが負っていた、艦隊突破のリスクは消滅だ。
貴様らは後進姿勢でMS戦をこなせ。やられなければいい。わかるな? 二頭立てを過ぎて、射界にその図体を収めたら、沈めろ。ミッションコンプリートだ。
全機、理解したな? オーバー」
帰ってくるライフル隊の返答がしっかりしているか、丁寧に聴き分けた。大丈夫だ。ギュオスの笑みが凄みを増した。
そして……約束通り、ガラ空きの背中に止めをくれてやるぞ、連邦MSども。
マルチ・タスク──
艦隊指令、MS隊長、主力パイロット、いくつもの役割を全て並行して完璧にこなせる卓越した能力。
MS乗りが指令官を兼任するという姿は、ジオン公国軍ならではの光景だ。しかし、そのジオンにあっても、それを実際に遂行出来る者は、少ない。
────ギュオス・メイ。
ジオン公国突撃機動軍将キシリア・ザビ直下勅命の機動艦隊ウルザンブルン指令官にして、サプレッサー級のMSパイロット。彼は、それを任ぜられた一人だった。
scene 011 阿修羅の戦士
Fin
and... to be continued