機動戦士ガンダム ゴーストクロニクル series000 作:GhostWrider.Jp
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突破戦闘の艦隊指揮を預かる艦長=オルドー・ゼスト大尉は、静かに掌打を構えた。ブリッジ上方スクリーンには、今まさに3番艦を盾にした
艦隊指令=ギュオス・メイ少佐の
……完璧だ。もう
と、思いかけて、オルドーはその考えを捨てた。自嘲気味に少し笑った。
さあ、大詰めだ。
上方スクリーンに『PLASED』の文字が浮かんだ。オペレーション映像のムサイ級二艦のポジショニングムービーが、配置の決まりを告げて動きを止めた。
バァン!
到達すべき敵の居るエリアにはほど遠く、こちらにほど近い。MS交戦エリアよりも手前だ。ブリッジに
…………!
オルドーは、
「スクリーンを! 戻せ!! 対閃光防御解除!」
ブリッジを囲むウィンドウスクリーンが彩度を戻した。光量カットが無くなり、ブリッジが眩しく照らされた。すごい明るさだ。
細めた目を光に慣らしながらオルドーが見つめた先には、メガビームより遥かに強い光が多数、まるで花火大会のフィナーレのように輝いていた。
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・・・・
「キャナーシフト!
P004のブリッジに、凛々しいコマンドが響き渡った。コンソールに向けていた顔を上げて、シュアルが唇を覗かせた。
「
ブリッジ前方に向けて、肉声がコマンドした。シュアルの視界前方に居るのは2名だ。
「え! え?」
「中尉! 加速停止!」
アームオンは、遠く敵艦隊の前方面に拡がる多重発光を見つめていた。咄嗟に反応できずに戸惑うエレンへ、指示を被せる。
「イ、イエッサー! メインロケット! 鎮火します!」
クルーを押さえ付けていたGが一瞬で消えた。ブリッジが静寂に包まれた様に感じる。シュアルの言う通り、P004は雷光に包まれることも地震に突き揺らされる事も、無くなっていた。
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・・・・
はぁ、と息を吐きながら、ラマンは、ゆっくりと目を開けた。激しい揺れに、焦点の定まらないスコープが見えた。
「て、てめえ! 何も止まってねええええ! バカ野郎ーー!」
頬の火照りを感じながらラマンは怒鳴った。
『……
プロシューターが半確信の疑念を返してきた。
「ば、バ、バカ野郎ぉ!! そんな事するか! バカ野郎ォ!」
髪まで火照るかのような熱さを感じながら、ラマンは叫んだ。
『集中しろ! 何も考えずに、狙撃だけに集中しろ! お前は、必ず出来る!!』
「い、今、してんだ! 邪魔すんな!」
スコープを最大広角にしても、激しく飛び回るゲルググをロストしないように追うだけで困難を極めた。口癖の呪詛を連呼しながら、ラマンは必死のキャプチャーを続けた。
時折、何か閃くような感覚が走る。その感覚を受け入れるようにスコープを振ると、先回りした様に、飛んでくるターゲットをスコープ内に捉える事が出来た。この現象は、つい先程ムサイ級ターゲット4だけを集中して砲撃していた時から始まって、どんどんその発現頻度を増やしていたが、死戦の最中にあってラマンはまだ、その意味を自覚していない。
いつの間にか、閃きが連続的に発光していた。狙っているゲルググは、もうスコープから出られなくなっている。もっと、
突如、それは起こった。視界がカーッと明るく染まり、ターゲットのゲルググを
「と! 止まったああああ!」
『ああ。
「え!?」
あたし、目覚めた? んじゃ? 言いかけたセリフをラマンは口篭った。その時──
『キャナーシフト!
コマンドがヘルメットに響いた。
『ラジャー! MC1!』
すかさず、プロシューターの応答が聞こえてくる。
「ラジャー! MC2!!」
呆け気味だった表情を一瞬で引き締めて、ラマンも応答した。
『
「
プロシューターのコールに呼応して叫ぶ。スコープに捕えた、ターゲットナンバー1が振られたゲルググへの
──!
脳天で閃光が弾けた。流れるようにスコープを振る。中心に瞬く照星に、ナプキンが飛び込んできて、止まった。次の瞬間、それは膨らむ閃光に変貌していった。
不意に体が前のめった。スコープにヘルメットをぶつけた。
「
顔を
……ああ、加速Gも消えたのか。だから、こんな狙い易いのか。
「
三つ目のターゲットをコールした時、またしても弾ける閃光を垣間見た。
この光はなんなんだ?
一瞬、ラマンは意識を取られた。はっと気がついて意識を戻すと、無意識に撃っていたらしい、第二メガ粒子砲のメガビームがターゲット2を撃ち抜いていた。
閃光に変わっていくターゲット2からスコープを離して、ターゲット3を探す。コンソールに3の光点がない。ログを見る。プロシューターの撃墜スコアがついていた。全ては、あっという間の出来事だった。
・・・・・・・・
・・・・
「ふぅ、実際、ギリギリだったな……」
スコープからコンソールに視線を移して、プロシューターは小さく呟いた。サーチするエリアをぐんと先方に飛ばしてMS交戦エリアをスポットする。光点の絡む様子から、瞬時に次に狙うべきターゲット群をセレクトした。9つの光点に新たなターゲットナンバーが振られる。再びスコープを覗き込んだ。
「……
『
ラマンのコールが聴こえた。
完全に無理ゲーだと思っちまってたな……諦めてはいなかったが。……実際、ラマンは急速に覚醒している。もし、
いや、それはいい。実際、ミサイルセットの事を、マーヴェラスしてた事を、完全に忘れちまってた。──今、する事じゃないが、
────ミサイルセット!
スコープ上で標的のザクを追い詰めながら、その時の記憶がリフレインしていた。
──あれは、交戦が始まってすぐだったな……先制の撃墜を
・・・・・・・・
〜話はその時へ
・・・・
『ミサイルセット!
クラウザーのヘルメットにコマンドが聴こえた。
──マーヴェラス?
湧いた疑問を他所へ飛ばした。次の瞬間、クラウザーの指先がクラッチングステップを叩いた。G4がビームライフルを放ち、第2候補の
大破……だが機動力を失った。あいつはもう戦力外だ。次!
第3候補の
「ディレイ! マイナス、コンマゼロ7!」
「
クラッチングディレイの精度の再調整をしてエイミングに集中する。あっという程の間に、命中予想値が白色に光った。クラウザーの指先がクラッチングステップに跳ねる。鋭く伸びたビームラインが、敵機中央を貫通した。瞬時にダメージレベルが計測されて、『
『G4!!! ベスジョブ!!』
G1からだ。孤軍奮闘のクラウザーにとって、涙喜の激励だ。口元が緩む。第4候補の
聞いた事のないコードネーミングだ。おそらく、この艦だけで振られたシークレットコードだろう。コマンドは出ている友軍機に届かせるために広域通信を使う。チャンネルはプリテンドしているが、敵に傍受されないとは限らない。シークレットコードを用いるようなミサイルセットとは、なんだ?
ふと、狙う第4候補の命中予想値が、なかなか白色に
クラウザーは左の小指で
『G4シフト!
「
突如、聴こえてきたコマンドに少々びっくりしながら、クラウザーは冷静に返答した。見るとパーソナルコード通信だ。
「成功が見込めず、死ぬだけと判断されるコマンドは拒否できる。この艦でも同じ筈だ」
──戦闘中に潜航突入するなど聞いた事もない。潜航突入とは動力炉を停止して、スラスター移動する事だ。熱源探知が
一機だけフォーメーション外の余所者を、厳しい戦力差の戦闘に、大穴狙いの捨て駒として使おうとしている様に思える。
そうは思いたくはないがな。
『……危険ですが、効果は絶大です。成功の見込みは充分にあると考えます。敵艦隊は
なんだって?
今、追い迫る敵艦隊は最大戦速のはずだった。そんな激しい加速Gの中で、そんな難しい戦型構築が出来るものなのか? 咄嗟にそう考えたクラウザーだったが──
いや、奴等なら出来るかもしれない……
すぐに、そう思い直した。クラウザーは、一度、かの敵とまみえている。奴等の強さを身を持って知っている。艦の戦闘レベルは良くはわからない。しかし、高いと考えるべきで、かつ、それが自然だ。あの凄まじい戦闘力を誇るMS達の部隊なのだから。
『──本艦と敵艦隊の艦砲戦力差は単純比で10倍です。今、辛くも砲撃戦を成立させていますが、それもジリ貧と考えられます──』
10倍……敵艦隊は4隻の筈だが、そんなになるのか。ランチェスター法則はなんだっけ? 実損は戦力差の二乗か。4隻の二乗だと16……倍──どっちにしても即死フラグじゃないのか?
『──理解してください。今、直ぐに、勝利を見込める決定打を打たなければ、全滅します』
……………………
自分が突入を始めたら、もう自軍に狙撃は居ない。3スコアのリードもそこでストップだ。敵は8機の
……やはり、成功の見込みは限りなく低く、死ぬ確率はほぼ確実としか考えられない──クラウザーは口を開いた。
「……了解した。潜航突入に入る」
何を言ってるんだ? 俺は!
鼓動が高鳴る。なのに、クラウザーはすでに動力停止を操作していた。どうしてだろう?
──理屈じゃない。何故だ。あのコマンダーの、真摯な口調のせいか?
真実は、それが正解だという気がしているのだ。冷静さの内側で、クラウザーは激しく動揺していた。
稀に、本当に危険な戦闘中に、脳天を貫く閃光が走る時がある。今、密やかに、それが発現していることに、クラウザーは気がついていなかった。
scene 017 光芒一閃 そして、追憶へ
Fin
and... to be continued