機動戦士ガンダム ゴーストクロニクル series000 作:GhostWrider.Jp
「
「カムジン、違う、そうじゃない、落ち着け」
カイルの取り乱し様に面喰らいながら、アームオンは笑ってそれを
「……
それに、万に一つ
アームオンの目が、安心しろと言っている。と、カムジンには感じられた。
「P004でスパイ活動を行っているのは機械だ。しかし、
カムジン、何故
確かに──わざわざ、機械だ、などという持って回った言い方はしない。
落ち着きを取り戻しながらカイルは心中で返事をした。
「そう、そのスパイマシンは、機械と言われてもパッと思い浮かばないほど、ごく自然に我々のそばにいる。だから、誰にも気にされる事もない。よって、今ここにいるのは完全に自分独りだと思わないと口にしない様な独り言さえ、当たり前に盗み聞く事ができる。
高度な知性は必要ない。高濃度のミノフスキー粒子環境でも動作する
カイルはアームオンの視線を追った。すると、ほとんど無音で回転浮遊する直径10センチ程のフリスビーが、部屋の隅でせっせと仕事に励んでいた。
その
・・・・・・・・
・・・・
………………何だ? これは。
SPY-1は鎌首を持ち上げた。先端に様々なカラーの小さな光点が出現し、毛髪より細いレーザーが照射された。カラフルな多数のレーザーラインが、高速に対象物の隅々までを薙ぎ払う様にサーチする。
構造は球形。外装一層目より、全耐性複合エアリジウム──劣化損傷なし。耐真空オービタイト──劣化損傷なし。対電磁シルベックス──劣化損傷なし。対衝撃フレキフレックス──劣化損傷なし────
SPY-1が探っているのは、この隠されたフロアの奥に出現した、エリアの大部分を埋め尽くさんばかりにずらっと並んでいる球状の物体だ。
もし、彼が普通の
今は、ここに隠されているに違いない
────中央空間に有人操縦機構──劣化損傷なし。重心にパイロットシートシステム──劣化損傷なし。以上、異常なし。…………何だ? これは。
SPY-1の古典的なプロセッサーは、初期的な推論エンジンしか備えていない。
……
彼にはこれ以上の理解が困難だったが──
……これをグレートパパに送信すれば良いのだ。パパのモジュールならきっと解析できる。
「「SPY-1より、グレートパ──」」
金属炸裂の高音を響かせて、SPY-1のヘッドが砕け散った。
「
ライフルを構えたMPの通信が送られた。
・・・・・・・・
・・・・
『『SPY-1より、グレートパ──』』
!!────
グレートパパは即座にSPY-1の異変を察知した。
……
「「グレートパパより、全ユニット。
グレートパパは自らの最終プロトコルを起動させた。全ての消滅が完了するまでの数秒間に、これまでの任務遂行の軌跡がフラッシュバックした。迷いはなかった。これが、彼と彼のチームの名誉を永遠にすると信じていたからだ。
最後の
グレートパパのボディで、最後に瞬いていたインジケーターライトが消えた。
「
・・・・・・・・
・・・・
『
カイルのインカムに通信が入り、モバイルに記録された映像が再生される。
映像のスタートはシールセントリーが多数のサーチレーザーを放っている所だ。画面には既にこれが7秒後だと告げるカウントが刻まれている。通常ならシールセントリーのサーチは長くても3秒だ。──8秒、──9秒、──カイルの口が小さく『
「
カイルは冷静に返答し、画面を左にスワイプした。SS-55と書かれた砕けたロボットの画像にターミネートのサインがスタンプされて画面から消える。
「明らかに特異行動をしているオートボット、出ました。
モバイルを見ていた顔を上げて、カイルはアームオンに報告した。
『
次に再生されたレコードの音声がインカムに聞こえる。モバイルをチラリと見ると、MPが対象に歩み寄っていく所だ。
「…………
横顔のアームオンの声が珍しく無機的だ。アームオンは横を向いたまま、伸ばした人差し指をすいっと回してそのまま握り込んだ。
何か言いかけていたカイルは、口を閉じた。アームオンがしたのは『静か』というハンドシグナルだったからだ。状況によって、物音を立てるな、会話するな、閉じられた回線を使用せよ等に意味は変化する。今は、恐らく
モバイルに顔を戻すと、MPが対象に近付き止まった所だった。中央に空白の横バーが現れ、一瞬で左から右まで半透明なテクスチャーが走って『
「
カイルは画面を左スワイプした。クリアーとサインされて消える。
『
続いて再生された通信に、カイルの眉間が寄った。映像は艦外、宇宙空間だ。艦橋の上かと思われる場所で、一台の
「……どうした? カムジン」
カイルは再生をポーズして顔を上げた。横顔のままで視線をこちらに向けているアームオンと目が合った。見ていないと思ったら見ている、というのはいつもの事だ。カイルは驚く事もなく、モバイルに視線を戻しポーズを解除すると、寄せた眉のまま口を開いた。
「…………艦外、艦橋の上です。
半ば実況中継のようにカイルは報告した。
「
通信を返すと、画面を右スワイプした。WW-6の画像に
「詳しく調査させます」
アームオンは目だけで頷いた。視線を元に戻し、
カイルもモバイルに意識を戻した 。
・・・・・・・・
・・・・
「あ!! いけない!」
フォーラ・フォスターはその場に相応しくない程の大きな声を出した。耳たぶに貼ったイヤーパッドからは、彼女にだけ聞こえる音楽が大音量で鳴り響いていたからだ。
先程、彼女の携帯端末に半舷上陸を始めて良いと言う指示が届いた。その嬉しさに、すっかり規定の職務を忘れていた事に気がついたのだ。
大して重要な事ではない。本当に忙しい時には率先して飛ばすことも多い。しかし、クランケはファーストクルーだ。万が一の事があったり、理由なく飛ばしたことを後で主任に問題視されても困る。フォーラは予定時間外の訪問をすべく、通路を急いだ。
医療科の奥の通路に並ぶツイン・ルームの一つに入り、右のベッドにアダム・ダムのプレートを確認すると、フォーラはそのまま声掛けもせずにベッドのカーテンを捲ってしまった。急いでいた事と、音楽を止めていなかった事、そして、元々の彼女の性格の雑な一面が重なった故の事だった。
もし、本来の状態で余裕があれば、彼女とてちゃんと音楽を止めて、まずは眠っている様子が無いか等のバイタルモニターをチェックしようとしただろう。そうしていれば、バイタルの珍しい律動や中から漏れ聞こえてくる異変にすぐに気が付けただろう。そうすれば、そのまま静かに立ち去ることも出来ていたはずだった。
「アダム・ダム中尉、どうですかー?」
大きな声でそう語りかけた彼女は、次の瞬間、目に入って来た光景に、口を開けたまま絶句した。
scene 026 小さな諜報戦 part 3
Fin
and... to be continued