機動戦士ガンダム ゴーストクロニクル series000 作:GhostWrider.Jp
P004、
室の上座のやや高台には、4列16席のブースシートの居並びを見下ろす事が出来る様に、斜め向きに据えられたキャプテン・ブースシートが設置されている。そこに座るP004指揮官=ロイデ・アームオン大佐は、各個のブースシートで
「アームオン大佐、
これよりフェーズ1まで秘匿されていた幾つかの機密事項が開示されます。予定通り、ブリーフィングを進めてよろしいですか? 最終指令を下してください」
「進めてくれ」
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・・・・
「それはいくらなんでも無茶だぜ、
P004MSチーム、正式エース認定、G1=ジェット・イェット中尉は、努めて、静かに言った。
「
ホロの返答に、ジェットは口笛にならない風切り音を吹いた。
「それじゃ、お手並み拝見と行こうか」
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「補給なしの現状戦力で、どうしてMS一個打撃群もの防衛部隊を突破し、さらに要塞攻略まで完遂できる? これは俺の立場からも
後半を強調した、大きな声が響いた。P004MSチームリーダー、戦隊指令、Gm1=ガット・バトラー少佐だ。激したからではない。わざと大きい声を出したのだ。彼はずっとチャンバーの皆の様子を感じ取りながら
Gm1には白頭の鷲の紋章が描かれる。
白頭の鷲が描かれる意味は、その力強さと頼り甲斐、そして周囲にそういう思いを生む
「全員に類似の動揺があります。全員がほぼ同じ段階であなたと同様の質問をしたので、私の返答もほぼ全て同様になりました。しかし、それは回答としては端的だったようです。
P004に補給は計画されていませんが、フェーズ2は先行展開している4つの
「
バトラーはまた大きな声を上げたが、今度は意図したわけでは無かった。
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正しくを
宇宙世紀には既に、旧世紀に力の象徴であった空母という兵器は存在しなくなっていた。亜光速以上の弾速と絶対の照準精度を持つ攻撃AIエネルギー兵器が主力となり、どのような戦闘機であろうとも一瞬のうちに確実に撃墜されてしまうため、空母はその存在意義を失ったからだ。
しかし、ジオンが用いたミノフスキー戦術は一夜にしてこの宇宙世紀の戦術体系を無効にし、旧世紀さながらの
しかし、そのV作戦の立案実行者でもある時の英雄、エイブラハム・レビル将軍は、全く異なるアプローチで革新的な空母をも生み出した。それは既存の艦船を組み合わせ、艦隊全体で空母の機能を果たすという前衛的な発想だった。
最も防御力の高いマゼラン級デストロイヤーを先頭に置き、強力なiフィールドを展開、艦隊の盾として、後続全体を防護する。続いて、ビーム砲を活用するサラミス級コルベットを複数配置して艦隊の対空攻撃力を獲得。艦隊中程に、空母機能となる
この艦隊空母が連邦にとって、何よりも素晴らしかったのはその即効性だ。戦争開始後からスタートという誰もが最悪の劣勢を覚悟する極めて悪条件な後発挽回の過程を、文字通り、発想一つで一瞬にして解決したからだ。
さらに、新しく空母等を作るよりもずっと合理的で、時々の作戦規模に合わせて各種艦数を調整することにより、極めて柔軟な運用を可能にし、また、その効率はコストを劇的に下げ、かつ、新造艦に対応する為の乗員の再訓練も配置換えも必要としない。
後に、戦術の進歩等によって装備必須の新しい要素が発生しても、その能力を追加出来る艦船を加えるだけで常に最適の空母として機能し続けることも可能だ。
艦隊空母は以後の連邦の主力空母となる。
「イエス、
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「…………何故、直ぐに開始しない? それだけの戦力を投入するなら、P004が加わる意味は薄い筈だ」
P004MSチームサブリーダー、Gm2=キャスパー・テラー大尉は、思案深げにゆっくりと尋ねた。
「P004抜きでは艦隊空母は要塞攻略を行えません──」
「わからないな」
キャスパーの
「──
フェーズ1での、
「ああ。作戦開始前の
「P004の運ぶ機密がルウムに到着した時、ジオン突撃機動軍最重要極秘要塞、
それが彼等にとっての深刻な脅威であり、同時に、空域に展開する艦隊空母がP004の到着を待たなければならない理由です」
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「ちょ、ちょっと待て!! ……え、ええと? 一度に全部言うなよ────あたし達が運んでる機密がコードブラックだっけ? それはコードレッドよりヤバいって事か? だからジオンをガチで追い込む為にブラックになるまで空母艦隊は待つって事か」
P004
「──流石です、ラマン。大体はOKです。しかし、少々訂正が必要な部分もあります。敵の要塞はブラックヴォルトと言います。要塞ブラックヴォルトです。そして、我々が運んでいる機密とは実は要塞ブラックヴォルトが隠れている場所を示す地図なのです。宝の地図のようなやつですね。
それから、細かい様で重要なミスが一つだけありました。空母艦隊ではなく、艦隊空母です。これは、艦隊空母を更にシンプルに空母と
要するに、艦隊空母と言わなければならない規定だと覚えてください」
「そ、そうか、規定なら仕方ない。
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・・・・
「なるほど、と納得したいところだが──不鮮明だな。P004が運んでいる、敵要塞の座標特定に必要な機密ってのは、実際、何なんだ? 持ってまわった言い方をしている感じだが──そこまで言って、まだそれは内緒か?」
P004
「
「待て! ちょっとおい、準備はいいか? の確認くらいしてくれよ。ちょっと待て」
プロシューターは慌てて手を振った。
「イエス、プロシューター。では、始めるタイミングを教えて下さい。あなたは常に抜群に安定した
そして私にも、あなたは常に何事に対しても準備完了していると感じられています。今この新しい発見は、私達の以後のコミュニケーションに大いに役立つでしょう。今後は、完璧に思えるあなたのマインドセットの裏側に、ナイーブな本当のあなたがいるかもしれないと考慮するようにします」
「実際……そう言われると、微妙だけどな……まあ、そうしてくれ、
「では、始めます。その機密は『鳩』と呼ばれています。帰巣本能に類する能力です──」
ホロのこの解説を聞いた瞬間、プロシューターはかすかに痺れるような暖気が体に満ちるのを感じた。
「──
『鳩』とは、ブラックヴォルトが何処にあろうとそれを感じ取って、そこに辿り着く生体の能力です──」
……おいおいおいおい
プロシューターは口を開けかけた。
「──これはルウム13バンチで生まれ育ったが故に発生したと考えられる、奇特能力の発現形態の一つと思われます。そう、プロシューター、あなたの持つ
……まて、ちょっとまてよ、おい
「──P004
「マジかよ」
プロシューターはようやっと言葉を発した。同時に抑えていた何かが外れた様に、自分の鼓動を実感した。
「イエス、プロシューター。考慮するまでもなく、あなたの動揺が感じられます。
「そら……そうだろう…………」
・・・・・・・・
・・・・
「え!!!」
先にチャンバーに響いたバトラーの音量を軽く超える音声がこだました。
「……マ、マイラード中尉が!? その鳩!? 機密って……ジオンの? って、ことじゃないのか……そ、それって」
P004ファースト・コミュニケーションズ・オフィサー=アダム・ダム中尉は、大声を上げたことにも気づかず、ただ動揺していた。
「イエス、アダム。彼女はジオン突撃機動軍の非正規兵でした。任務は軍のVIP専用のブラックヴォルト送迎船の操舵手です。今回のサイレント・マッパー作戦に協力する事を条件に、現在、連邦軍中尉のIDを貸与されています。本作戦が終了した時に、亡命が受諾されるかの最終決定がされる事になっています」
「……じゃ、じゃあやっぱり、彼女はジオン兵なのか? な、なんで今まで隠して──いや、当然か? え? いや、おかしい、絶対──」
ここに至って、ようやくアダムは自分の声が不適切なほど大きくなっていることに気がついた。
「何故、最初に開示しなかった? 作戦の最初に、
分かっているのか? 艦の舵を握る人間がジオン兵だって、隠されていたって事になる。あの生死の賭かった追撃艦隊との決戦でP004の舵を握っていた人間がだ」
音量を絞って、アダムは続けた。しかし、気を抜くとすぐに声が大きくなりそうになる。アダムは珍しい程に感情的になっていた。
「その通りです、アダム。本来、作戦の開始時点で共有すべき事項ですが、
ホロの言い方に、アダムは自分の
「わかった。見せてくれ」
「イエス、アダム」
ブースの前方空間、アダムの1メートルほど先に、ホログラムが浮かんだ。起立して手を後ろで組んでいるアームオンだ。
「
そう言うと、アームオンの胸から上が映るぐらいに映像が寄った。アームオンの顔がよくわかる。アダムは、どこか安心して気が楽になっていく自分に気がついた。何となく何故だろうかと考えて、ふと、アームオンの目に、大丈夫だと言われているような気がした。
「マイラード中尉がジオンよりの亡命者であることを、このタイミングまで伏せたのは私だ。君達の動揺については、それは正当なものであるし、それが今回の困難な作戦に大きな悪影響を及ぼしてしまう事も理解している。それでも、あえてこうさせて貰った」
不思議な説得力だよな。 あの目のせいかな?
思い返せば、アームオンと話す時、アダムはいつもこういう気持ちになっていた様に思う。何だか最初から受け入れてしまうのだ。彼の言うことが至極正しく思える。
「何故そうしたかについて話そう。もし、本来そうするべきである様に、作戦開始前にこの事を君達に伝えていた場合、如何に優秀な者でも、いや優秀である程に、即座に彼女を完全に受け入れることは不可能だからだ。
P004の任務が、安寧な機密輸送であるならばそれでも構わない。しかし、この任務はまず間違いなく、そうはいかない筈だ。敵が追撃をかけて来るのは必至であるし、決戦に及ぶ事も覚悟しておかねばならない。と私は考えている。
もし、そのような事態になった時、P004の舵を握る者が、ジオンよりの亡命希望者であり、作戦の重要機密そのものであり、同時にジオンにとっては可能なら奪回したい存在ではないのかと思える人物であると言う認識は、非常にリスキーなマイナスファクターでしかない」
確かに……でも
エレンはP004でファーストクルーを張るには、やや実力に欠けるとアダムは思っている。それならば、そもそもファースト・ラダーに抜擢せずに、VIPルームで監護しておけば良くはないか? ルウムに着いてから、敵要塞に向かう時だけ舵を、いや、操舵手の横で航路指示だけさせれば良いのではないか?
「彼女をその必要な時まで保護監督して置く、と言うやり方を執る指揮官は多いだろう。むしろ、それが本筋かもしれない。しかし、私は作戦の終始に、マイラード中尉を正規操舵手として任務させる決定をした。
作戦のフェーズ1を完了して、どうだろう? 諸君は今、彼女が場合によっては亡命を取りやめて戻ることも可能な、最悪の場合、ジオンに帰属する尖兵の類を疑えるか?」
映像のアームオンが話を止めた。確かに、皆、そう嫌疑するのは難しいだろうとアダムは思った。追撃艦隊は寸分の緩みもなく、絶対的にこちらを殲滅しようとしていた。もはや機密の回収など端から微塵も考えていなかったとはっきり感じられる。あの決戦は生死を賭けていた。
その中で彼女がどう奮闘していたかもアダムは眼前で目の当たりにして来た。共に死線を潜り抜け、共に負傷し、共に医療科で映画も見た…………もう、自分には彼女を疑うことは出来ない。
「フェーズ1を最前列で共に越えた事実が、諸君に彼女を戦友として迎える準備を整えさせた筈だ。そして、その経験は彼女のP004操舵手としての実績も大きく高めた。その信頼は、敵要塞に迫る時に至って、彼女が舵を取ることへの種々の懸念を最早許さないだろう。これらは保護監督していた箱入りを出して来たのでは得られないものだ。どうだ? 私の賭けは成功したかな?」
大成功ですね。流石です。艦長。
笑いかける映像に、アダムもいつしか笑っていた。
scene 028 Free Fray in Brief Chamber One
Fin
and... to be continued