機動戦士ガンダム ゴーストクロニクル series000 作:GhostWrider.Jp
ビィーーーー!!
デンジャーアラームの重く強い警報が鳴り響いた。警戒ランプが
『
『
間髪を入れず、僚機からの通信が入る。
「
アインの美しく力強い声はそれだけでも耳になんとも心地が良い。が、彼のそれは今、その戦歴により深く磨かれ、
長距離巡航推進ミノフスキー・ジェットの燐光を掻き消す、メインスラスターの爆炎が腰部から放出された。
二機の重MSが戦闘加速に入り、背部に半格納固定されていた
『
ナパームが
『
タイミングを合わせたかの様に、アップル2からの
「
ブリーフコールを返しながら──
「──
──アインはフットバーをスウィングさせた。
前衛後衛に距離を取って位置した二機のドムが
砲身に備わったスコープ状のブラックレンズにモノ・アイが灯る。
鋭い電子音が鳴り『
ドドン!!!
──ほぼ同時に強大な衝撃と無数に裂けて散る雷光の如き強閃光が
真に、センターブロー直撃を受けたと分かる吹き飛び方で
僅かな時間差でもう一発当たっていると解析できる、捻り力も掛かったブローフォースだった。
・・・・・・・・
・・・・
──
スコープを
貼りつけた様に、敵機中央にポインターを据え置きながら、
左舷のラマンも同じく第二メガ粒子砲の射線軸を敵機前衛の展開するiフィールド中心に捉えて、その時を待っていると分かっていた。だから、ほぼ完璧な初撃一斉砲撃によるセンターブロー二連撃同時着弾が狙えると踏んでいた。これは滅多には出来ない。そして、思惑違わず、そうなった。
『ぶっ飛びやがれ!!』
敵影中央で弾け散る命中拡散光を確認した時、ヘルメットにラマンの怒号が響いた。
間違いなく彼女もまた、プロシューターと同時に、センターブローを見舞ったと確認できる叫びだった。
────
そして同着の二発は、それぞれの発砲位置が違うために、着弾角に違いがある。
その為、仮に完全に着弾位置が一致したとしても、掛かる力の角度=衝撃のベクトルにはズレが生じる。
故に捻り力が発生し、操作不覚中の敵を錐揉み状に飛ばす事になる。
その
──
ブローされた敵機を連続的な動作で追照準すると、そのままの勢いでトリガーを引く。
砲口と標的を繋ぐビーム光が引かれ、やはり同じタイミングで左舷から伸びる命中光も見えた。
これまでの数多の戦闘で、プロシューターの記憶に刻まれた敵機撃墜の映像が、
ビームの閃光に貫かれ、打ちのめされる様にノックバックしながら千切れ砕ける機体の姿が、
一瞬の溜めを置いて巨大な閃光に呑まれて蒸発していく様子が、
網膜に先行再生されていた。
……──何だと!!
『え!! おい!? こ、こいつ!!』
驚きに目を見開いたプロシューターの耳に、ラマンの困惑の怒声が聴こえてくる。
襲うメガビームを展開保持したiフィールドで切り裂き散らして、綺麗な後退軌道と滑らかなローリング運動で着弾の衝撃と捻り力を収めていく
・・・・・・・・
・・・・
「
「
────12Gを超えるMSフルスロットルに耐え、その高G下での彼等の戦闘操縦を可能にしているのは、MSP耐Gドージング施術だけではない。パイロットシートに組み込まれた
MSを反転させ、敵に背を向ければ、その砲火から受ける衝撃を
ドムは
しかし、この砲は後ろに向けても良く、仮に撤退戦の時等では、他のMSでは追ってくる敵に向いての射撃等を行いながら、バック移動で後退しなければならないのに比べて、ドムは進行方向を向いた通常の前方加速で後退しながら、後ろの敵に向けた砲だけで応戦が可能だ。パイロットとガンナーの2名操縦はその効率を最大化する。iフィールドもメガビームキャノンの砲口輪郭部より照射されるから、機体がどちらを向いていようとも、砲口が睨む敵方向への展開が維持できる。
そして、この体勢で受ける敵ビームの衝撃はすべて、プラスGとなり、MSPにとって最も
プロシューターとラマンの
ナパームは
「
『
アインが応答した。少し、怪訝な声だ。ナパームは少し、待った。
『……
メインモニターに開いた二枚の敵機G型フォーカスのウィンドウを見比べていたナパームは、それを両横端に動かしながら正面、二頭立てを含む全体映像に視点を移した。
なるほど、確かに2機は両翼に展開しようとしている。明らかに二頭立てが照射保持するiフィールドの陰から出るつもりと見受けられる。
二頭立ては
二頭立ての砲手が
……僕を舐めているのかな?
「
ナパームの綺麗な顔が蒼白に染まった様に見えた。冷酷な視線を右のフォーカスウィンドウに投げる。
映像のG型はとても高度な
……普通、君が撃たれることはないだろうね。
ナパームは、無造作に
ポインターが瞬間移動したかの様に、ウィンドウのターゲットをマークする。と、さらりとトリガーを引いた。
・・・・・・・・
・・・・
ピピピピ!
警戒アラートが鳴り、P004の展開するiフィールドから出ようとしている
コンソールに
クラウザーから見える敵機は、綺麗に
この背を向けた
それは、この敵が一筋縄ではいかないという直感だ。突出した強敵を察知した戦慄への体の反応だ。
警戒アラートが、遂にエリアを出てしまった事を告げる連続音にピークした。左手の小指で十字を切る。刹那──
サイドモニターが発光で染まった。コックピットに強く陰影が描かれる。その、G2のサイドを
「うぅぉおおおお──」
掛かった! と、いう思いと、痺れる背骨から絞り出された様な恐怖の叫びが交錯する。
歴戦のパイロットにして回避運動のエキスパートたる自分だからこそ、ハッキリ分かる。この
つまり、敵はキッチリと
「ハアッ!!」
クラウザーは初めて、気合を
両手でスティックを思い切り引き、すぐに戻す。
G2が爆光に飛ばされた。フルスロットル、プラス、オールバーニアのエマージェンシースロットルだ。MSP耐Gドージングと
『
ブリーフコールが響いた。視線をライトサイドモニターに飛ばす。
・・・・・・・・
・・・・
「そんな!!」
ナパームは
「
閃光を背負って加速し出した標的に赤い文字列が投影され、マシンボイスがそれを読み上げる。
意識が、認識中枢が混乱して、狙撃時の感触と現実の結果が上手く結びつかない。ナパームの思考がフリーズする。それでも戦闘行動は止まる事は無く、体が勝手に、自動的に、続いての狙撃に
呆然とする意識で、頭上に閃くいつもの光芒を感じながら、その感覚のままにポインターを偏差する。ターゲットの進行方向そのままの先点だ。このG型は、ただひたすら真っ直ぐに最大加速で飛ぶ気らしい。
可笑しい様な、腹立たしい様な、鈍い屈辱感に顔を歪めて、ナパームは再びトリガーを引いた。
「
グラッ──と、横殴りの重力を受けたかの様な錯覚がナパームを揺らした。意味ある言葉にできない思いが渦巻き、更に思考を混濁させ、何を考えているのか自分で把握できない感じに包まれた。
「──
戦闘で築いてきた
左のフォーカスウィンドウにポインターをスナップインさせて、もう一機のG型に連射を浴びせかけた。
非命中の赤文字が連続サインされ、マシンボイスがトーンリザーブする。
「
息継ぎの様に、繰り引くトリガーを止めた時、マシンボイスが統合アナウンスを報告した。
「
再び──右の標的に視線を戻すと、困窮に耐えて、ナパームはトリガーを繰り絞った。
・・・・・・・・
・・・・
「チッチッチ!」
眩しい光跡を描いて真っ直ぐに飛ぶ
──敵が
────しかし……
ただ真っ直ぐに飛んでいるだけの2機に、敵の砲撃が全く当たらない事が、何とも気持ち悪い。
これは
Gm型6機も今、
"
高いビープ音が鳴り、減速開始の予定地点に近づいたことを告げる文字列が表示された。
ここから接敵減速をかけて、射程の短い
Gm1が左手を挙げた。ハンドサインを送る用意だ。
……予定変更──
Gm1が開いた手の指先をパラパラパラと3回開閉した。のを、キャスパーが読み取る。
続いて、掌を水平に倒すと、そのまま腕を真っ直ぐに突き出した。
──このまま進む……
最後に
……減速せずに突入するのか────言いたい事はわかるぜ、ガット。G型の攻められ方は心臓に悪いよな。最速でキメて、終わらせてやりたいと思うよ俺も。でもな──
キャスパーはGm2の左手を挙げた。
五指を開いて、5を示す。そして親指を折って、6を示した。
──Gm5、Gm6。
二本指に変えて、その手を左右に波振る。
──
四本指に変えて、円を描いた。
──他四機のアタックをフォローせよ。
Gm2が掌を上に向けて上下させ、四指を折って親指立てに変化させた。
これでいいだろう? Gm1。──という意味だ。
・・・・・・・・
・・・・
……そう思うか? キャス──
────
大気に満たされた有重力下では それは圧倒的に前者であり、広大な真空=宇宙空間では殆どの場合が後者だ。つまり、今の状況にとっては後者なのだ。
敵を確実に仕留める為の遅すぎない弾速を、1秒以内で着弾する速度と考える時、有効射程距離到達からの
(砲の初速m/s+接近相対速度m/s)/ 接近相対速度m/s だ。
現在の相対速度で強襲をかける場合、その時間は数秒ほどになる。これは、十分な時間とも言えるし、とても焦る短時間だとも言える。
バトラーを初め、
後ろの二人のプレッシャーはバトラーの思う以上なのかもしれない。それを、こういう事は自分よりもよく見えていると認めるキャスパーが言うのだ。
──そうだな、了解した。
バトラーは頷いた。
Gm1が、Gm2の行ったハンドサインを繰り返した。了承と再指示だ。
Gm5とGm6が減速に入り、後ろに離れていく。
だが、初撃で、最速で終わらすがな──
バトラーは敵の砲火に
・・・・・・・・
・・・・
P004は、絶え間ない衝撃に震えていた。艦橋のウィンドウ・スクリーンは、少し彩度を欠いた穏やかな宇宙空間を見せている。対閃光防御により一定以上の光量がカットされているからだ。
本当は厚い雷雲の中を飛んでいるかの様に、iフィールドで裂かれて弾ける無数のビーム被弾光で全周を埋め尽くされているのだ。
クルー全員が対ショックマスクに口を閉ざしている
くぅ! ぉ……思った以上に────厳しい!
不気味な船体慟哭が響き、空間が歪んだかと錯覚する衝撃振動の中、無秩序に乱雑に揺れるコマンド・ディスプレイ上で
必死の
「「
シュアルはボイスコマンドを無声発声した。
対閃光防御は砲撃のビーム光も見えなくなる為、敵が何処から何処へ撃っているのかを自然に視覚できないからだ。当然、P004からの砲撃や友軍機G型のビームライフル射撃光も見えない。
『『
マシンボイスが
LiFAS操作中のカスタムで、現在、コマンド・コンソールの情報はボイスアナウンスで伝達される様になっているからだ。
…………やっぱり、前衛だけ──
こちらはメガ粒子砲二門。単純比較では二倍の砲撃力、二倍の手数である。しかし、敵機を
このままでは長くは持たない──
いいえ、今、もういつ……──はぅっ!!
不意に崩れかけたアサルトフィデリティビームのコヒーレンスのリカバリーを、ギリギリで間に合わせた。
激しく脈打つ心臓を、無理矢理収める様に嘆息する。シュアルの心に悲壮な決断が浮かび出す。
半数を……切って──
システムの安定を守る。
可能な限り行いたくはない措置だ。しかし、いざという時は、決断しなければならない。でも──
その、いざって、いつ?
シュアルは苦しそうに目を細めた。
その時は、もう、来ているのだ。P004が砲撃を受け出した時に、もう既に。
…………急いで……
シュアルは唇を噛み締めた。
scene 036 イカロスの翼
Fin
and... to be continued