機動戦士ガンダム ゴーストクロニクル series000 作:GhostWrider.Jp
第一波強襲は、
それは、狙われたら最後という絶対不可避の狙撃力を持つ敵に対する、P004の用意した対抗策の肝心の要であり、勝利を決定する核心の攻撃だ。つまり、絶対にキメないといけない一撃だという事だ。
そして
彼は、敬慕するコマンダーの凛々しい声を思い浮かべていた。
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・・・・
Gm4は、Gm3の意図を理解していた。自分達の標的となった敵機前衛にマトを絞り、それを観察していた。
標的は、
P004の
その為に機動がランダムで、図らずも回避運動をしているかの様だ。が、しかし
それは、P004攻撃部隊上位メンバーの
この
必中射程とされる
それには速過ぎず遅過ぎず、近過ぎず遠過ぎずの
Gm3の移動ベクトルが、その為の動きであることを確認して、Gm4はそれに合わせた微調整に動いた。
もう少しで標的が有効射程に入るだろう。それまでに、
数秒内に、
Gm4はもう一度、初めての戦法である
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・・・・
Gm3とGm4に同時に響いた音は
通常、このアラームは敵機出現を知らせる警報だ。しかし、今はGm型の
母艦の損傷は艦載MSにとって絶対的優先事項である。
艦載のMSは、母艦を失えば死ぬ。単機での友軍艦や拠点等への帰還は、航続能力的に不可能だからだ。たとえ自身が戦闘で生き残っていても、後の確実な漂流死を迎えるだけなのだ。
生粋の艦載MS乗りである彼等は、咄嗟に母艦を気にかけて、後方の
『
バトラーの号令がヘルメットに
────
いざその時に、この判断を明確に実行出来る準備の為に、P004MS隊員は
Gm3、Gm4もそれは完了している。しかし、いざ本番、その事態が発生した時に発せられた命令は、隊長機による攻撃命令だった。
この様な
優秀な指揮官ほど、想定外の命令を下す頻度は高く、その命令内容が瞬間的な迷いを生みやすい傾向のものである事も多い。そして、暗愚な指揮官にもまた、耳を疑う様な命令が多くあるのも事実だ。
何が本当に正解だったのかは、後からならはっきり分かる事が多い。しかし、その場で適切解を掴む為には、高度な経験と強い武運が必要なのだ。
……今、
母艦の状態には度肝を抜かれたが、冷静に判断すれば、ここでそれを考えるべきでは無い。
Gm3は
……敵の絶対狙撃力とて、照準動作は必要だ。
だが、この突然にして全く想定外の筈の
こちらは今、有効射程距離に入り、予定通りの照準をかける準備は完了している。最速の照準をして射撃すれば先に勝利で終われる筈だ。
Gm4も
彼等は即時に判断し、最速で照準に入ったという感覚だった。実際にはロスタイムはあったが、それでも1秒程度のものだった。
熟練の技が、スルスルと照準を絞り込んでいく。
『イジェクト! イジェクト! イジェクト!』
ロックオン完了直前に聴こえたこの通達が、彼等が引き返せる最後のチャンスだった。
彼等は照準を継続した。二人のその判断は、高い経験により下された正解だった。ただ、武運が足りなかった。例外的な戦局の臭いを嗅ぎとって、正解を超えた最適解を導き出す程の武運が無かった。
ロックオンの電子音が響くGm3のコックピットが焦熱の閃光に包まれた。全てが蒸発し消えて行く。
Gm4は必殺の気合いを注いだ
まさか! これ程早く!?
敵機撃墜を逃した無念を、僚機被撃墜を喰らった驚愕が塗りつぶした。
「
Gm4のコックピットに響いた最後の音はマシンボイスのレポートだった。メガビームの奔流がGm4の重心を貫き、瞬く間に灼熱の光が機体を飲み込み、膨らんでいった。
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・・・・
今、
『
バトラーの攻撃命令に、二人は緊張した。
想定外の
バトラー中隊に配属されて、これまで、その指揮に従って間違った事は一度もなかったからだ。二人にとって、バトラーはそれまでの戦歴でも経験の無い、圧倒的に信頼できる指揮官だった。
彼等は攻撃続行に気持ちを切り替え、戦闘に集中した。
1秒に満たない緊迫の時が経ち、ターゲットの敵機二機のいずれにも損傷、無力化の様子が見て取れなかった時──第一波の攻撃が失敗したと判断しなければならなくなった時、 二人は強い焦りを感じた。
第二波が仕事をする時は、第一波の攻撃で敵機に仕留め損ないがあった時だ。確実にそれを仕留め、仕上げるのが任務だ。その為に、第二波は充分な減速=充分な照準時間を得られる接近を行なっている。
しかし、このシフトがアドバンテージになるのは、
敵から認知されていない一方的な攻撃条件であるからこそ、充分な余裕のある接近照準が可能なのであって、もし敵に見つかっているのなら、当然そんな
今、第二波は、アドバンテージを失った状態で仕事をすべき状況になってしまった。だがしかし、キメなければならない。自分達に懸かっているのだ。そう──二人は気負っていた。
『イジェクト! イジェクト! イジェクト!』
バトラーのこの緊急命令を、彼等は、攻撃に失敗して絶対不可避の狙撃に狙われる事になった第一波の四人へのものだと思ってしまった。そして、先行の四機が次々に撃たれるであろうその間が、自分達が敵機を仕留めるべき機会であり、P004の命運を背負ったラストチャンスだと判断したのだ。
これはひとつの正解であり、勇断と言えるものだった。危うい戦闘の勝利の決め手となり、歓呼に湧く仲間に
だが、
Gm5とGm6が巨大な閃光に変貌したのは、それから数秒後の事だった。
・・・・・・・・
・・・・
『
ナパームの悲鳴がヘルメットに響く。アインは兵装ダイヤルをループした。
あのG型のパイロットめ……
──勝ち筋が、見えているな。
ナパームに撃ち抜かれた敵機Gm型が変貌した4つの巨大な閃光に照らされて、フォーカスウィンドウに映るG型のディテールがくっきり見える。
その胸部には、連邦MSがエース機に描く
……あれは、
G型の構えるビームライフルの銃口が閃光を放つ。
──手強い。
抜けて行くビームを丁寧に送りながら、アインは深い戦闘没入を意識した。
……鋭い狙いだ、しかし…………
次々に撃ち込まれ、
ナパームと同じ
卓越の回避機動の使い手か、それとも……
G型は
──いずれにしても……貴様を殺らねば、勝たせてはくれんだろうな。
アインは視線を操作して、フォーカスウィンドウのG型の構えるビームライフル部分に
……正確な狙撃だ────それ故に、見やすい。
一流の狙撃手は皆、その照準動作に明確化されたステップワーク=癖が存在する事をアインは知っている。
その癖を読み取れば、狙いが決まって撃つタイミングを把握する事が出来る。すると──
こういう事が、出来るのだよ。
G型の照準ステップの癖に読み合わせて、アインは両手のスティックを全力で引き、そして直ぐに戻した。機体がフルスロットル、プラス、オールバーニアの最大加速に飛ぶ。
そのタイミングぴったりに撃ち放たれたG型のビームが、エマージェンシースロットルの直線加速の後方を抜けて行く。
1秒満たずにエマージェンシースロットルを解除すると同時に、
繰り返す度に、G型との距離は大きく詰められていった。
────
敵の照準を
敵の照準シークエンスを把握する事による、羽根の軽さと風の
彼等がジオンのトップ・ガンとして名実を得る、
間断なく襲い来るビームライフルを
本当なら、先に撃ち込んだ
驚かされなければな。
二頭立てのフォーカスウィンドウを視線で操り、中間視野に配した。アインの予想通り、狂った様に三次元回転する姿が見て取れた。フリゲート級の戦闘艦が、大波に飲まれ捻られる小舟の様に踊っている。まず見ることの無い光景だ。
もんどりうって回転する船体に対し、左右二門のメガ粒子砲が旋回フォロー出来ていない事を確認する。
素早く
しかし、既に中のクルーは全滅だろう。この有様ではな……
アインは
──バーニア……ではないか。
二頭立てが、船体各所から姿勢制御バーニアを噴射している。何とか回転を制御して立ち直ろうと足掻いている。生きて戦っているクルーが、居るのだ。
「ほう──……よくもあの、
思わず、驚きを口走った。
『ヴェルだよ』
ナパームが答えた。
ヴェル……?
G型への集中を戻し、
その名は確か、胸糞悪いキシリア
その耐衝撃能力の高さを──揺れにとても強い子だと、自分の自慢のように語る嬉しそうなナパームの姿が思い出された。……なるほど──
ヴェル・ヴェイル、と言ったか──……ん?
いや待て、ならば『鳩』ではないか。
この度、ブラックヴォルト侵攻作戦を敢行する連邦が、ジオンから奪った機密。要塞へのルートを示す、唯一の羅針盤。作戦の要諦。
敵は、その機密に操舵を預けていると言うのか? 亡命をしたとはいえ、元ジオン兵に──
面白い……ロイデ・アームオンだったな。
アインは、まだ見ぬ
・・・・・・・・
・・・・
アインが二頭立てへの驚きを口走った時、ナパームもそれを見ていた。
コパイロットとして、アインと連れ添って随分になる。彼は、アインの戦闘時の思考や行動傾向をいつの間にか理解していた。そして自然と、それに沿う様に動いていたからだ。
ヴェル…………そこに居たんだね……
『
アインの通信が聞こえてきた。ナパームは関心も無さそうに、ただ二頭立てを見つめている。
『
僚機からの返信を聞き終えると、やっと、視線を二頭立てから離した。
君の最後を見なくて済むのが……救いかな。
能面のような無表情が、死体の様な視線を動かして二頭立てのフォーカスウィンドウを視界の端へ追いやると、代わってG型のウィンドウを中央に配置した。正面を向いて姿勢をテンションすると、まるでそれに合わせたか、それを待っていたかの様に、機体の加速度が増してG負荷が上昇する。
アインの本格的な戦闘機動を感じながら、チラリと、もう一度だけ二頭立てを見た。
・・・・・・・・
・・・・
……鉄の、味がする。
エレンは息苦しさに肩を躍らせた。口内最適圧フィット機能で、違和感を感じない筈の耐ショックマスクが、無理やり頬を張らせる拘束具の様に不快だ。その器具の表面に塗られているかの様な、鉄の味のぬるりとした液体が喉に溜まるのだ。溺れかけて必死で息をする様に、
エレンはマスクを取ろうとした。途端に、脱臼の様な激しい痛みが肩に走り、手が止まる。
苦しげな顔を強く
「……! ……、…………」
クルーに呼びかけようと叫んだ
その行為が、頭部の割れ裂かれた様な痛みを発火させる。エレンは涙なく泣いた。
止め処無く天地が回っている。この程度の回転が、堪らなく苦しい。
吐き気が酷く、気持ちが悪くてどうしようもない。耳鳴りが止まらず、視界がはっきり定まらず、頭がうまく回らない。いったい自分はどうなってしまったのか?
高強度の
船体の回転を掴めない。感覚が麻痺しているみたいで感じ取れない。どうカウンターしたらいいのかが分からず、的確なバーニアを選べない。
闇雲に噴射をかけてみては、回転が弱まったかを感じようとするのだが、よく、分からない。
誰も、起きていないのだろうか? ブリッジ最前列の操舵席からは、後ろは見えない。
いつもの様に、しなやかに体を
…………こっちに来てる!
敵機が一機、P004に向かって加速している。右手が取れて無いようだが、戦えない感じには見えない。と、その時、敵がモビルスーツの剣を引き抜いた。恐しげな光を放つ刃が、長々とのびている。
自分のあらい息遣いが、恐怖と焦りを掻き立てる。エレンは
砲手からの応答が帰ってこない。ボタンライトがレッドのままだ。エレンは何度も何度もプッシュした。
お願い! 起きてぇぇ!!!
スクリーンに映る敵機周辺に表示される種々のインジケーターが、全てP004への肉迫を警告する。警戒アラームがブリッジに響き、被弾警告がアナウンスされる。
必死でボタンを押し続けていたエレンの手が止まり、敵機を見つめる瞳が、いっぱいに見開かれた。そして──
突然に敵のモビルスーツの左手が千切れた。消えゆく光る刃が回転しながら飛んでいく。
右脚が抉られて半円状に消失すると、バランスを失って体勢を崩したその体を次々と破壊が削り取り、瞬く間に巨大な爆発に変貌させてしまった。
血汗と乱れ髪の張り付く唖然とした顔を下げると、手の下のボタンがグリーンに光っていた。
・・・・・・・・
・・・・
「ブリッジ! 生存者! 応答せよ! こちらはカイル・カムジン大尉!」
「
続いて、全
壁面
『
カイルのインカムに報せが聞こえた。席を代わったMPからだ。先のカイルの呼びかけに、今、応答があったと言う事だ。
エレン・マイラード中尉! 彼女が!!
・・・・・・・・
・・・・
────総員、対ショック、対閃光防御!
交戦開始前のアームオンのこの全艦命令を聞いた時、カイルは、彼が予測、示唆している事態の深刻さを強く理解した。
彼等は憲兵という名目でP004に配置されているが、本来は、
今回、カイル以下のアームオン部隊は、サイレントマッパー作戦の為にP004に乗り込み、通常は憲兵の任務に就いている。
作戦の必要性から異例のMSPドージングを受けている彼等は、通常クルーとは比較にならない耐G性能を備えていた。しかし、それでも直ぐにカイルは、全員にコマンドスーツの着用と
案の定、と言うべきか。その未曾有級衝撃は突然に実現した。それは、戦闘艦に乗り込んでの任務も数多く経験してきたカイルの戦歴でも、全く別格の凄まじい衝撃だった。
完全対応の体勢だった筈のMPに、数名の一時的失神者が出た程だ。そして、その後にP004が陥った三次元回転による異常Gは、彼等の行動を不能にした。
側面壁が30度を超える傾斜地面になった様に一方角に押し流された。体重は何倍にもなり、押し潰される圧力に立つ事は疎か、動く事もままならない。
横Gのサイコロの目は、不運にも、
あの衝撃を受けて、今、動ける者は自分達だけだろう。
敵の追撃は? 今にも敵の攻撃を受けて、P004は撃沈されるのではないか?
乗組員の生死は? 今、彼等の救命は、秒を争う状況ではないのか?
カイルは、何とか動けないかと苦闘しながら、部下に、同様の無理を号令し続けていた。
急に重力方向が変化して、カイル達は新たな地面となった壁に転がり落ちた。出口位置が、さっきよりは緩やかになった斜面の上の壁に変わった。体を押さえ付けるGも軽くなっている。
何故かを考えるより早く、カイル達は動いていた。スーツの吸着パッドを駆使して斜面を
カイルを先頭とする一群は、対空砲管制室へ向かった。
途中、艦にかかっているG方向が悪変して、通路の前後が重力の上下に変わり、転落の危機に晒されたり、折角軽くなったGの押さえつけが再び増して、移動の障害になったりした。
それらは、おそらくブリッジで艦の回転を収めようとしている者に、正常なカウンター操作がうまく行えない状況が起こっている事を、カイルに理解させた。
対空砲管制室へ這いずり込むと、
カイル達がシートに体を押し付けて、重力に逆らいながらベルト固定を完了し、
「
八門の
灯が、グリーンに変わった。
・・・・・・・・
・・・・
カイルは、ブリッジに立つ満身創痍の操舵手の姿を思い浮かべて、深い敬意を送った。
・・・・・・・・
・・・・
「
マシンボイスが
『
ナパームが驚愕を叫んだ。
「……
アインは冷たく言い放った。視線はフォーカスウィンドウのG型に集中している。
すると取るべき戦術は、回避運動を切り捨て、直線加速での最速接近となる。ナパームを良く知る奴等故に可能な決断であり、それは正解だ。──だが、焦っている。
あの時、
一旦無力化した者が、短時間で回復してくるなどという都合の良いことは、まず起こらない。無力化が確認できた主砲の回復よりも、未確認の対空砲が生き残っている可能性を警戒すべきだったのだ。
二頭立ての全ての砲手が
しかし奴等は、避けられない狙撃力に狙われる事を怖れて、それを見落とした。
土壇場で
そして………ここでそれを──
アインの思いを打ち切らせる様に、メインモニターで敵機が構えるビームライフルの描く残像の軌跡が、敵の照準が決まった事を告げる癖の形を見せた。アインがエマージェンシースロットルを発動する。
ハーキス・ハイロット、ガナン・ガナー。……さらばだ。
機体がフルスロットル、プラス、オールバーニアの最大直線加速に飛ぶ間に、アインは一瞬の黙祷を捧げた。それを最後に、戦闘没入に意識を戻す。
「
エマージェンシースロットルから
『……
ナパームの返事に意気を感じなかったが、アインはそれ以上は気に留めず、深い考察に潜った。
あのGm型隊は、姿を消して侵攻して来た……と考えれば理屈に合う。新兵器クラスの
……G型二機が発揮した、こちらの攻撃がすり抜ける様なあの無敵機能も、その応用と思えば理解も可能というもの…………
………………二頭立てのあの光る翼がその中枢装置で……MSが、その効果の実行ユニットだとすれば…………二頭立てを無力化しての効果解除は……やはり、そういう事ではないのか?
謎解きに思考を沈めながら、戦闘する意識は鋭く加速させている。アインは、G型を追い詰めていく速度が鈍化し始めている事に素早く感づいた。
「………
『
ナパームが的確なレポートをフォローした。
……奴め……自分が撃っている間に直線加速されて、相対距離が詰められているカラクリを見抜いたという事か。
何故、自分が撃つタイミングを読まれているのかまでは、解けていないようだが……
……こういう奴は、危険だ。先に確実に、仕留めておかねばならない。
「
『
「
アインは不敵に言い放った。
scene 039 明暗の影
Fin
and... to be continued