オラリオに失望するのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
金髪の貴公子。そう評しても違和感のない美形の神が花屋によっていた。名をディオニュソス。整った顔立ちの神々の中でも紳士的な雰囲気も併せ持つ彼に女性店員達が頬を赤く染めていた。
「女性に送られるんですか?」
「私も神様に花をいただきた〜い」
「ふふ。なら私は花よりも美しいお前達を頂いていこうかな」
じゃれ合う店員達は満更でもなさそうに、期待のこもった視線を向ける。
「そんな目をしていると、本当に食べてしまうぞ?」
囁かれた甘い言葉にきゃあ、と黄色い悲鳴を上げる女性店員。
「何をしているのですか、ディオニュソス様」
と、不意に聞こえてきた声にディオニュソスが固まる。振り返れば呆れたような顔をしたフィルヴィスが立っていた。
「フッ。お前がここで嫉妬しないあたり、あの英雄の方がお前にとって心を占める割合が強いのかな?」
「っ! そんなことはありません!」
ディオニュソスの言葉に頬を赤くして顔を逸らすフィルヴィス。
そんな様子にディオニュソスはそうか、と楽しそうに笑いフィルヴィスがギロッと睨まれ肩をすくめる。
「ここに来たということは情報をつかんだのだろう? 向こうで聞こう」
そう言うと歩き出すディオニュソス。フィルヴィスもその後に続く。
第一墓地。
都市南東に位置する共同墓地の一つで、冒険者の墓地とも呼ばれ花々しい功績を残した冒険者、とりわけ『古代』から『英雄』と称えられた者達の墓には巨大な
ただ、この墓地の殆どは空だ。ダンジョンという過酷な場所から死体を持ち帰れないことが殆どだからだ。
地上で殺されたディオニュソスの
「…………………」
花を添えるディオニュソスは、そこになんの意味もないことを知っている。神が現れる前の『古代』から続く地上の文化だ。そこに鎮める無念も報われる者もいない。
祈るべき冥福など天界の神のさじ加減一つで、中には神に愛され輪廻から外れ、神に抱きしめられ続けている魂もある。或いは天界で神が戻るのをひたすら待ち続け忘れ去られた魂や、嘗ての眷属の魂を待ち続ける神もいる。ディオニュソスの子達は、きっと輪廻に戻りまたこの地上に戻ってくるだろう。全く別の存在として……それでも花を添えるのは、彼なりの誠意と謝意だ。
「24階層の情報が、公開されていない、か………」
「はい。該当するそれらしき
周囲に誰もいない中、二人は話を始める。
フィルヴィスが先日向かった『リヴィラの街』では『モンスター大量発生』の話題で揺れていた。ギルドから解決策が提示されるまで20階層以降の探索は控える動きがある。
「ヴァルドがいましたが、未だ解決に至っていないことから行動に移していないのかと」
「ふむ………やはり彼の後ろにギルドがいるのかな? だとしても、目的は何だ?」
それをしないということは、異変を長引かせたい? いや、こうして情報を集められてしまう状況になって長引かせるメリットはないはず。
「問題は彼が関わっていることだが………」
「彼奴は、無意味に人が傷つくことに手を貸したりはしません」
「無意味でないとしたら? それこそ、試練とかね」
「……………その場合、
逆に言えば、
「いかがなさいますか、ディオニュソス様」
「………巻き込んでみるか」
「…………また来おった」
黄昏の館にて、嫌そうな顔をするロキの出迎えに胡散臭い爽やかな笑みを浮かべるディオニュソスの姿があった。
「気になる情報を仕入れたんだ。何処かで腰を落ち着けてゆっくり話さないかい?」
言外に、しかし図々しく『ホームの中に入れろ』というディオニュソスに『とっとと帰れ』と言わんばかりのロキだったがフィルヴィスの持つ極上の葡萄酒を見て通し、門番達が白い目を向けた。
「で、なんや? 気になる情報っちゅうのは」
塔の前の狭い庭園に卓と椅子を準備させたロキは早速尋ね、ディオニュソスは24階層でモンスターの大量発生が起きたこと、そして以前にも30階層で似たような異変があったことを話す。
30階層といえば以前ヴァルドが向かった場所だ。時期的にもだいたい同じ。解決したのはヴァルドだろう。彼ならまあ余裕か。
「ギルドは、ウラノスはこのことを表沙汰にしないために【剣聖】を使ったと見ている。そうなると、24階層が謎ではあるけどね」
「やっぱりギルドは信用できんか?」
「どうにもね、きな臭いことがあるのは確かだよ」
「ヴァルドが手ぇ貸しとんなら万が一もないと思うんやけどなあ」
「そうかな?」
「………あん?」
ピクリとロキは糸目を僅かに開く。
「7年前の『大抗争』を覚えているか? 多くの冒険者が死んだ……だが同時に、多くの冒険者が殻を破った………もし今のオラリオに失望している彼が──」
「やめい」
「ロキ、私はその可能性も考えるべきだと………」
己の言葉を遮るロキに苛立ったようなディオニュソス。しかしロキが止めたのは、彼ではない。
「
「────!?」
何時の間にか添えられていた剣。振り返れば酷く冷たい目で睨む女性冒険者。フィルヴィスの前にも一人の男性冒険者が。
その二人だけではない、周囲に何時から居たのか、【ロキ・ファミリア】構成員が数名ディオニュソス達を睨んでいた。
敵も多い【ロキ・ファミリア】の
事実ディオニュソスの首に剣を添えている女性は第一級冒険者、【
「あんなあディオニュソス。此処どこだと思ってんのや……【ロキ・ファミリア】、ヴァルドの弟子が何人かいるんやで? そこでヴァルドを人殺し扱いってお前………潰すぞ」
怒っているのは何も眷属だけではない、とディオニュソスを睨むロキ。ディオニュソスはすまない、と目を伏せる。レミリアは剣を引き、ロキの後ろに控えた。
「そんで? 結局うちに何させたいんや自分」
「ははは。何か解ったら連絡すると言ったろ? 他意はないさ」
「………………」
嘘だな。要するに戦力を向かわせて探ってこいと言ってるのだ。
「生憎うちはお前んとこと違ってでっかいぶん敵も多いんや。
もちろん嘘だ。レミリアなら24階層程度余裕だろう。
「【剣姫】はいないのかい? 彼女に向かってもらえば百人力だ」
「アイズたんなら…………」
と、不意に空から何かが落ちてくる。ロキに当たる前にレミリアが受け止めロキに渡す。どうやら手紙のようで、上空では鳥が円を描いて飛び、直ぐに飛び去った。誰かの使い魔だろうか?
ロキは手紙の内容を見て、頭を押さえた。
「アイズが24階層に行きおった」
優雅に紅茶を飲んでいたディオニュソスは思わず吹き出しフィルヴィスとレミリアもギョッと目を見開く。
こういうところは
「ベート、あとレフィーヤ呼んで。至急や」
「どうする気だい?」
「ベート達にアイズを追わせる。後、Lv.3数名戻してレミリアも行ってもらう」
「私もですか?」
「どんな形にせよヴァルドが関わってる事自体は確かや。あの馬鹿が何隠してるかついでに探ってきい」
この騒動、少なくともリヴィラ襲撃とは無関係ではないだろう。で、あるならヴァルドが手を出さないなどありえない。あの男はそういう奴だ。
「3人だけで大丈夫かい? もちかけておいて何だが、24階層の件は危うい気がするぞ」
「………………」
ヴァルドの推定でLv.6の魔導士か魔法剣士……アイズはLv.6になったばかり。Lv.5が2名と魔法の火力だけなら第一級にも引けを取らないレフィーヤの援軍なら本来は中層など過剰もいいところだが………。
「………フィルヴィス、ロキの子とともに24階層に向かえ」
「!? で、ですが私は貴方の護衛で………!」
「聞けフィルヴィス、私情でロキを巻き込んだのは私だ。私も唯任せるだけでなく誠意を見せなくてはならない。何より私はロキの信頼がほしい。信頼は行動で勝ち取らなければ……解るだろう、フィルヴィス」
「……っ」
言葉に詰まるフィルヴィスは、しかしまだ納得していないというような顔をする。
「………しかし私は、彼奴以外とパーティなど…」
「フィルヴィス」
「…………………解りました」
広い大空洞だった。
中層域に位置する階層の最奥。冒険者は疎か凶暴なモンスターの雄叫びも聞こえないそこは、モンスターの体臭でも血の匂いでもない、肉が腐ったような、昆虫を引き寄せる匂いが充満し、湿った空気が漂う。
「…………それは役に立つのか?」
「さあー、そればかりはねえ。何せ初めての実戦投入だし? むしろ使えたかどうかを聞きたいんだよねー」
赤髪の女の言葉に気怠そうに返す男。女がギロリと睨むと肩を竦める。
「怖い顔するのやめてよねー。僕別に君を怒らせたいわけじゃないんだから………まあ、少なくとも
「………………」
「できれば感想をレポートに纏めてほしいけど、まあ無理だよね………」
はぁ、とため息を吐くと男は踵を返す。その男の護衛なのだろう、数名が男についていく。
その背を睨み、しかしすぐに興味の失せた女は果実に食らいつく。
「必要とは思えんがな、『彼女』の生み出したモンスター達の改造品など」
「奴は強い。既存の量産品共では足止めにもならん」
「ふん、【剣聖】か…………『彼女』に選ばれた私達に勝る存在などいるものか」
そんな女に話しかけたモンスターの
ヴァルドの弟子達
一部を除いてもLv.3が混じっている、他の中規模【ファミリア】なら団長をしていてもおかしくない戦力。ただし大半はついていけなかった。それでも慕っている。
因みにレミリアの神々からの二つ名とは別の呼び方は『忠犬』
ヴァルドが幹部になれと言わない限りなるつもりはない。団長であるフィン以上に慕ってるのでティオネとよくもめる。
ヴァルドに頭を撫でられると数分間強さが1.5倍になる。ちなみにアイズは1.7倍。
なんか思ったより筆が進んでヒロインも増えたので聖夜祭デート再アンケート
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