オラリオに失望するのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

38 / 87
街娘のデート

「何をしている、ガネーシャ?」

「ヴァ、ヴァルド!? 違うんだ、聞いてくれおハナちゃんは悪いモンスターでは!」

「きしゃあああああ!」

「…………思い切り威嚇してきてますよ?」

 

 市壁を飛び込えたオラリオ近郊のセオロの森の中。何やら人影があったので追ってみると、ガネーシャがモンスターを育てていた。調教(テイム)したモンスター、というわけでは無さそうだ。

 

「そ、それは、おハナちゃんは恥ずかしがり屋なんだ。大丈夫、この二人は怖くあぶな!?」

 

 ガキンと歯が閉じる。ギリギリで回避したガネーシャ。筋肉は無駄ではないらしい。ヴァルドは枝をひろい再びガネーシャに噛みつこうとする植物型モンスターを切り捨てた。枝は砕けた。

 

「ぬう、無念! 仲良くなれると思ったのに!」

「モンスターと無条件で仲良くなれるのはアーディぐらいだ」

「しかし、この経験を活かしてくれることを祈ろう! 俺はめげないガネーシャだ!」

「反省はしないと?」

「うむ! 俺はポジティブなガネーシャだあああ!!」

「そうか」

「ん? げぇ、シャクティ!?」

 

 ガネーシャはそのままシャクティに連れて行かれた。

 

「何、今の?」

「気にするな、最近暖かいからな」

「うーん。でも、ヴァルドはどう思う? モンスターと仲良くって」

「殺し合わずに済むならそれに越したことはない」

「ふ〜ん?」

 

 なにか引っ掛かることでもあるのかマジマジとヴァルドを見つめるシル。しかし答えは出なかったのでそのまま大人しく運ばれる。

 因みに現在、彼女はヴァルドに片腕で抱っこされている。落ちないように首にしっかり手を回していた。

 

「着いたぞ」

「わあ、懐かしい!」

 

 セオロの森の中にポツンと存在する小さな泉。昔は川と繋がっていたのだろう、魚がチラホラと見える。

 木々が開け、陽光が風に波打つ泉に反射する。中々幻想的な光景だ。

 

「夜ともまた別の趣がある」

「あれ、夜来たことあったっけ?」

「リヴェリアと………」

 

 と、そこまでいって口を閉ざす。これ以上は自分にとってもリヴェリアにとっても知られたくない情報があるからだ。主に呪いの書に関する。あれからシリーズを探しているが、恐らくまだあるのだろうな。

 

「デートなのにどうして他の女の人の名前出すかな?」

「…………まあ、わざとの時もある」

 

 その結果変な癖になり、こうしてうっかりをすることも。

 

「わざと、ね。まあヴァルドに本気で恋する人も多いもんね」

 

 それに応える気がないが、かと言って例外を除けば好意的な相手に冷たくして傷つける事も出来ないのでこの様な中途半端な態度をとるのだ。

 

「いっそ傷つけてくれた方が、安心する人だっているんだよ〜?」

 

 ツンツンとヴァルドの頬をつつくシル。ヴァルドは自覚してるのか文句を言わず目を逸らす。

 

「ヴァルドって強いのに変なところで臆病だよね。()()()()()遠慮してるっていうか」

「………()()()()()()()したことはないが?」

「あー…………ほら、私って勘の鋭い女の子だし」

 

 テヘペロ、と舌を出すシル。まあ、『彼女』なら勝手に気づきそうではある。

 

「世界に遠慮。言い得て妙だな…………何れなされる『救世』。確かに俺は、そこにいる自分が想像できん」

「…………………」

 

 そこに当然オッタルもいるのだろう。ベルやアイズもいるのだろう。フィンやリヴェリア、ガレスだって。今より強くなり、世界を救うのだろう。

 想像は容易く、そしてそこに自分はいない。

 

「………ふーん」

 

 ヴァルドの言葉に立ち上がったシルは靴と靴下を脱ぐと泉に入り、パシャパシャと水面を蹴る。

 

「う〜ん…………うう〜ん…………よし、踊ろうヴァルド!」

「…………はあ?」

「ヴァルドが好きな英雄も、難しい顔してる女の人に踊りを誘うんでしょ?」

 

 突然の提案に訝しんだヴァルドは、しかし続く言葉に目を細め、やがて諦めたようにため息を吐くと腰を掛けていた岩から降りて靴と靴下を脱ぎ捨てる。

 

「『さぁ、踊りましょう、麗しいお嬢さん。愉快に舞って、私に笑顔を見せてください』」

「ふふ。笑顔を見せるのはヴァルドの方でしょ?」

 

 ヴァルドが差し出した手を引き、踊りだすシル。

 木漏れ日をスポットライトに、鳥や虫、葉擦れの音を演奏に、水が跳ねる音が周囲に響く。

 

「ねえヴァルド、貴方は世界を救うわ」

「………………」

「だって貴方は、この世界が大好きだもの。資格なんて、それで十分なんだよ」

「…………」

「貴方がこの5年の間救った国だって、資格があるから救ったんじゃない。救いたいから救ったんでしょ?」

「………何でも知ってるな」

「何でもは知らないよ、知ってることだけ」

「………」

 

 クフフ、といたずらっぽく笑うシル。

 

「…………今更だけど、ヴァルドはどうして私とは仲良くしてくれるの?」

「?」

「美の女神様でも顔を殴ったり関わるな〜って言ったりするのに」

「彼奴等は縛ろうとしてくる」

 

 美の女神とはそういうものだ。美しいという価値観そのものである彼女達は、自分の側に侍るものは勿論、誰もが己を優先するものだと思っている。笑いかければ誰もが従う。誰もが己を求めると。

 

「う〜ん。イシュタル様はともかく、フレイヤ様や、今はもう居ないけどアナト様とかはそうでないかも」

「己の側に仕えた人間が己以外を優先することを何時までも許容できるとは思えん。奴等は我儘だからな」

「そうかな? そうかも」

「お前と仲良くするのは………面白そうだったからだな」

「え、私面白れー女?」

 

 意外な応えに首を傾げるシル。俗っぽい返答だと思うのは、ヴァルドにそういう知識があるからだろう。

 

「言葉が悪かったな。お前が面白そうにしていたからだ…………」

「……………………」

「おまえの言うとおり、俺はこの下界が好きだ。だから、楽しんでいたお前に共感を覚えた。それだけだ」

「…………………なんか違う」

 

 ヴァルドの言葉に踊るのをやめ俯くシルは、ポツリと呟く。

 

「なに?」

「笑顔にするんだもん! こういう上品な踊りじゃないよね。もっと愉快に踊りましょう!」

 

 トントンと跳ねるように、先程より激しく踊るシル。ここに観客が居れば愉快に手拍子でも贈ることだろう。

 

「ヴァルド! きっとね、世界を救う戦いに貴方もいるの。オッタルさんと難しい顔して、ベートさんやアレンさんに噛みつかれて、フィンさんから作戦の全容を伝えられて、成長した【剣姫】さんやベルさんと一緒に戦って、皆で世界を救って戻ってくるの。私達は、宴の準備をして、ご飯を作ってそれを待つの!」

「………最後のはいらん。こっそり自分の料理を混ぜるな」

「!! もー! 余計なこと言わないの! わ、私だってちゃんと美味しい料理つくれるもん!」

「ウィンナー焼いただけで不味くなるお前が?」

「あ、あれはその……焼き加減間違えただけだもん。今は平気だよ! よし、ヴァルド。魚取って!」

 

 私の腕前見せてあげる、というシルにヴァルドは仕方無く魚を二匹捕まえ持っていたナイフで内臓を抜き取る。

 

「ほら、塩だ」

「フフン。焼くだけなら私でもできるもんね」

 

 ヴァルドが焚き火の用意して、二人でそれぞれ焼く。焼いた時間は同じ。焼き方に差はあれど、味にそこまで差は出ない筈。

 

「ん………!」

 

 ヴァルドが焼いた魚を受け取ったシルは一口食べて目を見開く。

 身はふんわりしていて噛みやすく、噛めば噛むほど塩が魚の脂と混じり深みを増していく。

 一方ヴァルドは、オッタルとランクアップを祝うわけでもないのになぜこんな目に、と魚を見つめていた。しかし現実逃避しても仕方ないので一口齧る。ガリグチョっと妙な音がした。

 

「………………」

「ど、どうヴァルド?」

 

 ヴァルドも一口喰い、首を傾げる。

 

「…………味がしない」

「え? 嘘、ちゃんと塩もふったのに」

「全く味がしない…………いくらなんでもこれは………いや、まさか」

 

 と、ヴァルドは一つ心当たりに気付く。

 

「俺の発展アビリティに、毒など身体に害となるものを無効化するものがある。それが発動したのかもしれん」

「なるほど。つまり私の料理は味だけで害になるって事かぁ…………って、いくらなんでも酷くない!?」

「だがそれ以外に味がない理由が思いつかん」

「普通に味付けが薄かっただけだよ!」

 

 そう言ってシルは自分が焼いた魚を一口食べ…………気絶した。

 

 

 

 

 

「あれはこの世の味じゃない……」

 

 ヴァルドに膝枕されながらシクシク泣くシル。流石にショックを受けたらしい。

 

「安心しろ。ベルに提供してるのは、辛うじて喰える。味も感じるから害にはなってないのだろう」

「安心させる要素ある!?」

「…………………すまん」

「謝られると余計惨めだよぉ」

 

 さめざめと泣くシルの頭を撫でてやりながら、ヴァルドは何と声をかけるか、と考え込む。

 

「………先程お前が言った世界を救う場所に俺が居る、と言ったのは………お前で二人目だ」

「初めてじゃないんだ。リヴェリア様?」

 

 シルの言葉に無言の肯定を返すヴァルド。

 

「で、何があった?」

「え?」

「お前が急に、予定もなくデートに誘うのは良いことがあった時や嫌なことがあった時だ。ベルがアイズと修行した姿でも見たか?」

「…………なんで、嫌なこと前提?」

「それなりに付き合いも長い。それぐらいは解る」

「…………もう大丈夫。スッキリした」

「そうか」

 

 

 

 そして翌日。店の準備をしつつ、ふと外を見るシル。今日もベルはアイズ達と特訓しているのだろう。冒険者の特訓、自分に関われない時間。

 

「……………」

 

 パン、と両頬を叩くシル。

 

「よおし、今日も一日がんばるぞお!」




因みにギルドの接触禁止も流石に公共施設の入場禁止はできないので、アミッドのだし汁温泉が出来るとオッタルとヴァルドがサウナで我慢比べをして、ロイマンが慌てて向かって監視するという………………話を何時か書きたい

なんか思ったより筆が進んでヒロインも増えたので聖夜祭デート再アンケート

  • 家族仲良く リヴェリア、アイズ
  • 一度実家へ アルフィア、ベル
  • 聖夜祭だろ シル、ノエル
  • 夫婦水入らず リヴェリア
  • 義母義父のみで アルフィア
  • 街娘と日常を シル
  • 最も美しい女神(ヴァルド評) アストレア
  • 聖夜と言ったら聖女 アミッド
  • ツンデレ大和撫子 輝夜
  • 一人で過ごす男達の為に オッタル
  • 一人で過ごす男達の為に アレン
  • あるいはこんな世界 ディース姉妹
  • 聖夜祭は店も大忙し 豊穣の女主人
  • 何やらおかしな実験に フェルズ
  • ダンジョンデートだ 椿
  • ドロドロ依存 フィルヴィス
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。