オラリオに失望するのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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ヴァルドは英雄神話の時代に生まれてたら複数の精霊と契約して複数の奇跡を操りながら、天界で見てる神々も『一番の奇跡は普通の人間なら人生に1度か2度あればいい『覚醒』を何回も行ってることだよな〜』と笑い話にする(現実逃避とも言う)。
性格の悪い奴(酔っ払いとか)が試練と嘯き変な代償あるアーティファクトとか送ってくるだろうけど何故か呪いを克服するか利用する。どうやってって? 気合と根性と本気。
あとアルゴノゥトにあったらサイン求めて周りを困惑させる。


雄牛を倒すだけの物語

「勝負だ!!」

 

 己を奮い立たせる咆哮の後、通じるはずもない宣言に雄牛は大剣の一振りを以って応える。

 避けられる距離にないその一撃を剣で受け、勢いを逃がすように、威力を奪うように回転し蹴りの威力へと変換する。

 肉の薄い頬へと爪先がめり込みミノタウロスは首の向きを無理矢理変えさせられ、ベルが視界からハズれる。

 その一瞬の死角を利用し、斬りかかる。

 

「──っ!」

「ぅしっ!」

 

 斬れた。斬れた! 斬れた!!

 圧倒的な格上との命のやり取りに、技量を活かしきれていなかった。力を込めきれていなかった。

 だが今は違う。斬れる、傷つけられる! なら、倒せる!!

 

 

 

 

「あん時のガキか…………」

 

 ミノタウロスから逃げ、酒場では言い返すこともなく、しかしキラーアントの大群と戦っていた少年。Lv.2のミノタウロス……いや、あの異常な身体能力は強化種。

 駆け出しが、ただでさえ格上の強化種と切り結んでいる。

 

「ねぇ! あの男の子Lv.1なんでしょう? 助けなきゃ殺されちゃうよ」

「…………誰がだよ」

「え?」

 

 ティオナの言葉に苛立つように返すベート。視線は動かない。が……

 

「お、お願いします…………」

「うお!」

 

 そんなベートに縋り付く小さな人影。

 アイズに途中まで連いてきていた小人族(パルゥム)の少女だ。

 

「………冒険者様、お願いします………ベル様を、ベル様を助けてください………あ、うぅ………!」

 

 彼女も怪我をしている。その場で崩れ落ちる少女をリヴェリアが支え傷を癒やしていく。

 

「まだ無理をするな。傷は癒えても失った血までは戻らない」

「………あたし、行くよ。こんなにボロボロになっても仲間のために頑張った小人族(パルゥム)ちゃんの為にも……」

「恩には必ず報います………リリは何でも、何でもしますから………冒険者様、ベル様を助けてください」

「…………必要か?」

「はぁ!?」

 

 こんな時まで何を、とベートを睨み、しかし固まる。目の前の戦いに目を奪われたからだ。

 

「あれって………Lv.1、だよね?」

 

 ミノタウロスの剛腕によって振るわれる大剣に、速度が乗り切る前に己の剣を当て、速度が乗れば逸らし、捌いていく。

 渡り合っている。普通のミノタウロスではない、武器を使いこなし、身体能力も下手をすればLv.3に届きかねない怪物に、Lv.1が………。

 

「ガキが(おとこ)かけてんだ、雌が邪魔してんじゃねえよ」

 

 黙ってみていろ、と、吐き捨てる。黙っていろというのには自分も入っているのかベートも無言でその戦いを………『冒険』を眺める。

 

 

 

 図体に騙されるな!

 ただでかいだけだ!

 この怪物より速い動きを知っている。この怪物より素早い一撃を覚えている!

 情けない妄想でもない。格好悪い虚栄心でもない。

 ただ夢を見ているだけの、分不相応の願いでもない!

 

 僕は──英雄になりたい!!

 

 師から受け継ぎ神様を通して生まれ変わった剣!

 エイナから与えられた知識!

 義母から受けた恐怖への耐性!

 アイズや師から培った技術!

 その全てを持って、全部全部全部、余すことなく全部振り絞って、此奴を倒せ!!

 

 

 

「…………………」

 

 誰もが見入る。

 圧倒的な戦いではない。攻撃を当てているが浅く、捌ききれなかった剣戟で体に傷を増やしていく、ともすれば逆に負けてしまいそうな冒険者と怪物の戦い。

 第一級へ至った彼等から見て余りに拙い『技量』。

 都市最強の片翼となった彼等からして『経験』の足りない『駆け引き』。

 ヴァルドの言う通り、その技術に学ぶべきものはない。

 ヴァルドの言う通り、その駆け引きに称賛に値するものはない。

 

「ウヴオアアアアアアアアアア!!」

「ウアアアアアアアアア!!」

 

 雄叫びが走る。一人と一匹の決闘……。人とモンスターの殺し合い。有史以来繰り返されてきた光景にして、英雄譚の一頁。

 

「………っ!」

 

 ベートは毛が逆立つような感覚を覚えた。こんな、どちらかが自分に挑んでくれば鼻で笑ってしまいそうな稚拙な戦いに、体が疼く。

 

「………………」

 

 フィンは無意識に槍を握る手に力を込めていた。

 Lv.1とは思えない、それでも強化種のミノタウロスに遥かに劣る身体能力で渡り合う少年。

 一瞬の怯えが、一度の遅れが取り返しの付かぬ敗北に繋がる刹那の攻防を延々と繰り返すことが出来るのは………勇気。

 臆することなく全霊を懸け、挑む強い精神。

 【勇者(ブレイバー)】を名乗る自分が魅せられるほどの勇気。

 

「………いいね、彼は………凄くいい」

 

 見込みがないと追い返した?

 ふざけるなよ、見る目がない。あれは、あれこそが冒険者に最も必要な資質だろう。

 

「『アルゴノゥト』……」

 

 ポツリとティオナが呟く、英雄譚にして主人公の英雄の名。

 英雄を夢見る青年が、人の悪意と数奇な運命に翻弄されるお伽噺。

 騙され利用され嘲笑われて、友人の知恵を借り、精霊から武器を授かり、牛人を倒し姫を救う物語。なし崩しに英雄になった、滑稽な童話のお話。

 

「あたし、あの童話好きだったなあ………」

 

 ティオナは胸に手を当て、宝物を見るかのように少年と牛人の戦う光景を眺める。

 少女の面影を残す彼女の顔を、静かに浮かぶ懐古の笑みが彩った。波紋を広げるように周囲の者の耳朶を打つその声は、アイズの記憶を呼び起こす。

 

『この物語は好き?』

 

『俺はこの物語が好きだ。お前は?』

 

 そう尋ねながら、自分はこの物語が好きだと、母が自分に読み聞かせてくれた。

 周りを受け入れ始めた頃を見計らい、師が自分に読み聞かせてくれた。

 

(…………わからない、わからないよ)

 

 解らない。

 自分には、解らない。

 でも……ああ、それでも。目が離せない。

 

 

 

 それはきっと、英雄譚の一(ページ)

 

「【ファイアボルト】!!」

 

 緋色の雷が宙を迸りミノタウロスに当たり爆発する。

 

「速い! 超短文詠唱!?」

「ていうか、詠唱してた今!?」

 

 速攻で発動した魔法に目を見開くティオナとティオネ。ミノタウロスは鬱陶しそうに煙を払い突撃する。

 攻撃が軽い。詠唱の長さが威力に直結する魔法の特性上、間違いなく最弱の威力であろう魔法。熱や冷気に強いミノタウロスには通じない。

 

「ミノタウロスを斬るにも力が足りてねえ」

「手詰まりだって言うの!?」

「まだそう決めるには早い……けど…」

 

 斬れ味は十分。技量も活かせ始めた。だが、力が圧倒的に足りない。

 

「づう…………ああああ!!」

「オオオオオ!!」

 

 振り下ろされる剛剣に合わせ、剣を振るう。

 

(力が、足りないなら………寄越せ!!)

 

 相手の力を利用した斬撃。一歩間違えれば弾き飛ばされる、刹那の技巧でミノタウロスの腕に赤い線を走らせる。

 

「ヴオ!!」

 

 大剣を落としたミノタウロスは拳を振るう。大剣より、遥かに軽い!

 武器を取らせに行かせないとベルも無数の斬撃を叩き込む。ミノタウロスは岩石の如く固く握りしめた拳を剣に叩きつけた。

 

「ゥ──オオオオオオオ!!」

 

 調子に乗るなと全身を怒らせ獣の本能を呼び覚ます、生来の体に宿った暴力。

 後退しそうになる体を地面にめり込んだ足が支え、拳と剣がぶつかり合う。

 

「アアアアアア!!」

 

 体が軽かった。頭が冴えていた。五感が研ぎ澄まされ、しかし目の前の戦いにのみ注がれる。

 思いが燃え上がる。

 前へ! 前へ! もっと前へ!!

 

「【ファイアボルト】!!」

 

 零距離の魔法の爆発。一匹と一人の体は互いに吹き飛び、距離が開く。

 

「フゥーッ、フゥーッ…………ッ!! ンヴウウウオオオオオ!!」

 

 ミノタウロスは原形を殆ど失った拳で()()()()()()()()。追い詰められたミノタウロスが行う行動。全身のすべての力を使い放つ突進(ラッシュ)。数多の冒険者を殺してきた、ミノタウロスという怪物が持つ切り札。

 ベルもまた、剣を構える。

 呼吸を止めたかのように、一瞬、周囲の空気が限界まで張り詰めた。

 ベルの眼差しとミノタウロスの眼光がかち合う。刹那……

 

「あああああああああああああああああああああああああああああッッ!!」

「ヴヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」

 

 突っ込んだ。

 

「……若い」

 

 真っ向からの突撃を断行したベルに、リヴェリアは目を細める。

 

「馬鹿が!」

「駄目です、ベル様ぁ!!」

 

 青い感情を非難するベートの罵倒と、張り裂けるようなリリの悲鳴。

 一瞬で縮む間合い。響き渡る………筈の金属音は、ない。

 

「!?」

 

 剣を弾き飛ばす筈の角は何に当たることなく、ベルにかわされる。あの位置では、剣を引くなど間に合うはずがない。

 そもそも、剣を持っていなかった。

 角を振り上げた状態で固まるミノタウロスの視界の端に一筋の光が落ちる。

 真っ向勝負に見せかけ、ベルが直前に真上に投げたヘスティア・ソード。

 

「あああああああ!!」

 

 柄を掴み、渾身の力でミノタウロスの体に突き刺す。一点に集中した力はミノタウロスの皮膚を貫き内臓にまで達した冷たい金属の感触は一瞬で灼熱の業火へと変わる。

 

「【ファイアボルト】!!」

 

 ボンッ! とミノタウロスの体が膨張する。剣が貫く傷から火炎がガバっと溢れ出し、体内を緋色の雷光が駆け巡る。

 

「【ファイアボルトォ】!!」

 

 更に肥大。

 ミノタウロスの上半身が風船のごとく肥大化した。

 鼻腔と口腔から緋色の炎が勢いよく噴出した。

 

 それはきっと、英雄譚の一(ページ)

 冒険者ならば誰もが夢見た戦い(すがた)。忘れて、失って──それでも

 

「ガバ、ゲッホ………グッ…………ォオオオオオオ!!」

 

 喉を焼かれ焦げた血を吐きながらミノタウロスは咆哮し、振り上げた巨腕をベルへと直下させる。ベルの体を一撃で肉塊に変える鉄槌。超膂力で放たれる肉のハンマーが頭皮に触れる、その僅差。

 

 それでも憧れ、胸の奥で燻ぶり続ける

 

「ファイアボルトォォォォッ!!」

 

 ──真っ白な情熱(ほのお)

 

「──────────ッ!!」

 

 爆散。

 凄まじい断末魔が炸裂し、ミノタウロスの上半身が粉々に弾け飛んだ。

 体内で圧縮されていた熱塊はダンジョンの天井にまで届く緋色の柱となり立ち上る。

 辛うじて原型をとどめた下半身が崩れ落ちる。

 降りしきる血と肉の雨。

 音を立てて猛牛の破片が地面に転がる最中、巨大な魔石とミノタウロスの角が地面に落ちた。

 

「勝……ち………やがった」

 

 呆然とベートは呟いた。信じられないものを見るかのように、ベルを見つめる。

 自分が一人であのモンスターを倒せるようになるまで、どれだけ時間がかかった?

 

「……………っ!!」

 

 ギチッと、歯が擦れる音が響く。どうしようもない苛立ちと羞恥が、全身を隅々まで行き渡る。

 

「……精神枯渇(マインドゼロ)

「立ったまま気絶してる」

 

 立ったまま動かないベルにティオネとティオナの姉妹は呆然と呟きを零す。リリが慌ててベルに駆け寄り、ベートはベルの背中が殆ど見えているのに気付く。

 

「──! リヴェリアッ、あいつの【ステイタス】を教えろ!」

「………私に盗み見をしろというのか。大体………」

 

 同派閥にして彼の師であるヴァルドがいる。

 

「………構わんさ、見えている範囲でならな」

 

 『魔法』や『スキル』のスロットは窺えず、目の届かないアビリティ欄も幾つかある。それを好きに見ろというヴァルドに呆れながらも興味はあるのか、リヴェリアは【神聖文字(ヒエログリフ)】を読み解いた。

 

「おい、まだかよっ!」

「待て、もうすぐ読み終わ……」

 

 リヴェリアは中途半端に言葉を区切る。ベートは訝しげにし、聞き耳を立てていたティオナ達も不思議そうに彼女を見る。

 

「………くっ、ふふ、はははっ」

「何なんだよ、オイ!? ったく……アイズ、お前もちっとは【神聖文字(ヒエログリフ)】が読めんだろ! なんかわからないのかよ!?」

 

 心底おかしそうに笑うリヴェリアに悪態をつき、問答の先をアイズに向けた。

 

「………S」

「………はっ?」

「全アビリティ、オールS」

「「「オールS!?」」」

 

 ベートとティオナ達が驚愕の声を揃える。彼らは今度こそ、言葉を失った。

 実際のところは魔力を始めとしたアビリティ欄はインナーの陰に隠れて判然としないのだが、似たようなものだろうとアイズは解釈していた。

 実際はSどころか限界突破(SS)

 あり得ざる光景に、その方法を知りたくなる。

 

「そこまでだ、約束を違えるな」

「それ以上は道理に反する」

 

 『スキル』の欄を見ようとインナーに手を伸ばしたアイズの手を、リヴェリアとヴァルドが同時に掴む。

 

「……………ごめん」

「…………煽った俺も悪かった」

 

 そう言いながら手を放し、ベルと血を流しすぎて気絶したリリを抱えるヴァルド。

 

「………よくやった、ベル」

「お、とう…………さ…………?」

「誰が父親(おとうさん)だ………」

 

 と、どこか呆れたようにこぼすその顔は、母親(ママ)と呼ばれた時のリヴェリアの顔に似ているな〜とティオナは思った。

 

「俺はこのまま地上に戻りアミッドの下まで運んでくる。お前達はお前達の『冒険』をしろ」

 

 そう言うとヴァルドはベル達に負担をかけない最大速度で走り去る。

 

「………なーんかやな感じ〜。あんなに頑張ったんだからもっと笑顔で褒めてあげても良いのに。無表情でよくやった、って」

「いや、彼奴は相変わらず身内に甘い」

「え〜?」

 

 リヴェリアの言葉に何処が〜? と言いたげな声を出すティオナ。

 

「治療施設ならバベルにもある。わざわざ【ディアンケヒト・ファミリア】に向かわねばならない程の傷でもないだろうに」

「…………あ」

 

 言われてみれば、そうだ。早く治してあげたいのか、忘れてたのか。

 

「そっかそっか、良い人だね!」

「あっさり掌返してんじゃねーよ………」

「しかしおとうさん、か………となると母親は…………リヴェリア、落ち着いてくれ」

「何の話だ、私は別にどうも思っていない」

「魔力が溢れてるんだけど」

 

 フィン達の会話を聞きながら、アイズはヴァルドの去った方向を見る。

 

「…………………」

 

 初めてのランクアップをするに至った激闘を終えたアイズに、リヴェリアは『愛したい』と言ってくれて、母の面影に重なったことをヴァルドに話した。母の面影と重ねたことを、ヴァルドにだけ話した。

 ヴァルドは『そうか』としか言わなかった。別に何かを期待していたわけではない…………ないのだが………

 

「……………良いなぁ」

 

 冒険を終えた少年に対する称賛。それと同時に、微かな嫉妬。漏れ出た言葉の意味は、アイズ本人にも解らない。




因みにヴァルドがフレイヤファミリアに入ってepisodeフレイヤをやった場合、幹部の会議で皆が護衛やると言い出したらどうぞどうぞとダンジョンに向おうととして幹部に睨まれ侍女が受け取った手紙に名指しされててさらに幹部に睨まれる。
もちろん合流したあとフレイヤを睨むがフレイヤは楽しそうに笑う。

砂漠での王女と英雄の物語とかepisodeリューならぬ暗黒期終盤の黒拳、黒猫のクロクロコンビとの出会いやグラン・カジノは本編でそのうち書きたい

なんか思ったより筆が進んでヒロインも増えたので聖夜祭デート再アンケート

  • 家族仲良く リヴェリア、アイズ
  • 一度実家へ アルフィア、ベル
  • 聖夜祭だろ シル、ノエル
  • 夫婦水入らず リヴェリア
  • 義母義父のみで アルフィア
  • 街娘と日常を シル
  • 最も美しい女神(ヴァルド評) アストレア
  • 聖夜と言ったら聖女 アミッド
  • ツンデレ大和撫子 輝夜
  • 一人で過ごす男達の為に オッタル
  • 一人で過ごす男達の為に アレン
  • あるいはこんな世界 ディース姉妹
  • 聖夜祭は店も大忙し 豊穣の女主人
  • 何やらおかしな実験に フェルズ
  • ダンジョンデートだ 椿
  • ドロドロ依存 フィルヴィス
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