オラリオに失望するのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
その後ランクアップしたアレンを祝うつもりで訪れたら襲撃に来たと勘違いした門番に挑まれてフレイヤはその光景に腹を抱えて笑った。
元々よく顔を出していたからアーニャとは顔見知りで、アーニャも兄と互角のヴァルドに強くなるコツを教わろうと話しかけていたりしたのをアレンは見ていた。
「なあお主、この前も剣を買いに来ていたな? それならいっそ
「不要だ。俺の技量が剣に追いつかない、いたずらに壊して金を消費するだけだ」
「今は違うとでも?」
「少なくとも、俺の腕に見合い、その上で安いものを選んだつもりだ」
数日でボロボロにしておいて何を、と呆れ、なら剣の腕を見せてみろといった。
そして事実だった。当時の剣の腕なら、下手に高いものを買っても壊して損をするだけ。かと言って安い剣を買うとしたら、その腕を発揮できるモンスターに通らない。それが意味するのはただ金を稼ぐ目的でダンジョンに潜っているのではなく、強さを求めてより強大な敵を求めている証左。
「うはは! 面白い、これだけの短期間にここまで使い込まれる剣など見たことがないぞ。おいお主、手前はお主が気に入ったぞ。剣を打たせろ!!」
それが後にオラリオの歴史においても傑物の一人とされる英雄と、その専属鍛冶師の出会いである。
「専属鍛冶師?」
「は、はい。ヴェルフさんって言うんですけど、その人とパーティを組みたくて」
「好きにしろ。お前のパーティだ…………助言してやるとするなら、己の命を預ける防具、武具の制作者である鍛冶師との絆は無駄にはならん」
その言葉にヴァルドの装備を見るベル。確か、ヴァルドの装備は基本全部専属鍛冶師が作ったのだとか。
オラリオを離れている間の間に合わせは手に馴染まないとよく愚痴っていた。
「うん。僕も、この装備すっごく気に入ってるんです」
なんというか、ひと目見た時から心惹かれた。絶対これにすると魂が訴えかけるような……。
ミノタウロス戦で壊れてしまったが、同じ作者の作品を探していると偶然作者本人と出会い、専属契約を結ぶことになった。その際もらった新しい鎧も最初の鎧に負けず劣らず気に入っている。
「武器選びの感覚は大事にしろ。俺も、昔買っては使い捨てていた剣の殆どが今の専属鍛冶師の作品だった」
あくまで金稼ぎ目的、程度の品であったり昔打ったのが残っていたもの、とかではあったが。というかそういった物でもなければ彼女の作品に手が届かなかった。
「感覚、か………」
鎧に触れ、これがいいと感じた。勘のようなものだけど、事実その鎧に命が救われた。
「はい。ありがとうございます!!」
という師の言葉もありヴェルフ・クロッゾとパーティを組んだベル。リリは不満そうだ。ヴェルフの条件である『鍛冶のアビリティ』を手に入れるまで、とはつまり用が済めば解散する臨時パーティでしかないということ。
しかしベルは彼と組みたいと言うし、リリが我慢するしかない。
まあ特に問題なくパーティは機能したが。
「ベルおとうさん、ヴァルドおとうさん、いらっしゃいませ」
「どっちもお父さんのままなんだ」
「気にするな。知り合いの大人を父と呼ぶ娘は少なくない」
ベルも昔はそうだったので、むぐぐと昔を思い出し恥ずかしそうに顔を赤くする。まあ割と今も偶にしてるのだが、言わないでおくことにした。
「で、お前がヴェルフ・クロッゾか」
「う、うす!」
Lv.8にして、オラリオ最強の『
「そう畏まるな。俺など崇められる程の存在でもない……
敵は殺し尽くせても、救えなかった者達も多くいる。自分が救い、感謝してくる者達を蔑ろにする気はないが、救えなかった存在がいる時点でそう大層な存在だとは思えない。事実黒竜に勝てなかった
「いやぁ、そう言われましても…………あ、いや……ええと、すいません、敬語のままで良いっすか? 俺年下ですし」
「…………まあ、良いだろう」
無理強いする気はないので了承する。敬語程度はよく使われるし。
「これからもベルを頼む」
「は、はい! いやまあ、恥ずかしいことに俺のほうが助けられてんですが」
「それを恥と思えるなら十分だ。Lv.が上なら自分を守って当然、と頼り切るくせにパーティなのだから分け前を均等にしろなどという輩もいる」
自分は先を目指さないくせに、お前のLv.なら先に進めるだろと文句を言いより稼ごうとして、強いモンスターが現れればギャイギャイ騒ぐ輩はたしかにいるのだ。根性鍛え直してやったが。
「精進しろ。先を目指す意志があるのなら、人はどんな壁も乗り越えられる」
「………うっす」
と、頭を下げるヴェルフ。と、トテトテとノエルが歩いてきた。話が終わるまで待っていてくれたのだろう。
「ごちゅーもんはおきまりですか?」
「お、おお………じゃあ俺はこのチキングリル」
「僕はサーモンのアクアパッツァで」
「リリはパスタで良いです。小盛りで」
「日替わり定食」
「ごちゅーもんを、かくにんします。ちきん、ぐりる。さーもんの、あくあぱつあ、ぱすたのしょうもり、ひがわりていしょく、じょうですね?」
「……シル?」
「…………テヘ♪」
勝手に値段が上の『上』に変えられたのを聞きシルに目を向けるとシルはペロと舌を出して片目を閉じ自分の額を小突く。シルの
「あう!?」
バチンとデコを指で弾いた。もちろん手加減はした。してなければ今頃頭が砕ける。
おおぅ、と額を押さえるシルを見てノエルはオロオロとヴァルドとシルを交互に見る。
「ごちゅーもん、まちがえました?」
「………………」
不安そうに見つめるノエル。大方多くの冒険者がこの顔にやられ日替わり定食『上』を頼んだろう。そう察せる程の顔だ。なのでヴァルドは………
「ああ、『じょう』は必要ない。普通の日替わり定食だ」
「な!? よく見てヴァルド! ノエルはこんなに可愛いんだよ? 少しお金使うぐらい良いじゃない!」
「それがお前の教えた手段じゃないなら俺も考えた」
「ぶー、ヴァルドのケチ。ほら、ノエルも言ってやって!」
「えっと………けち?」
「ミア、少しシルを借りるぞ」
「好きにしな」
「あ、ちょ!? どこへ連れてく気ですか!? やめて、私に乱暴する気でしょう!」
「お前に料理を作らせてお前に喰わせる」
「ああ、それがきちんと罰と思える自分が憎い!」
そのまま厨房に連れて行かれるシル。シルの言葉にベルは「シルさん、美味しくないって解ってて僕にお弁当を?」と戦慄した。因みにベルに渡されているのはまだギリギリ人の料理と言える範疇だ。
「助けてアーニャ! 私このままだと私の料理をヴァルドに食べさせられちゃう!!」
「訳分からん懇願だな」
「でも理解できちまうニャ」
「はにゃにゃ、シル!? うう、でも悪いのはシルで………シルの料理は半端なくて? ヴァルドに喧嘩売るのはもっとやべーから………うにゃー!」
ルノアとクロエが呆れ助けを懇願されたアーニャは混乱で目を回す。
「仕事に戻るニャ!」
「あ、現実から目を背けた」
「アーニャが自分から仕事をするって言うなんてニャー」
「………? ……………あ! ごちゅーもん、もういちど、おねがいします!」
「あ、うん……」
ノエル、結構図太い子? いや、多分父や母と慕う二人が仲が良いと思ってるんだろうが。
「よいしょ………よいしょ………」
と、水を運ぼうとするノエル。周りがハラハラと見守っている。子供には重そうだが、懸命に運んでいる姿は微笑ましい。
「あ、ノエル! 駄目だよ、水は重いから私達が運ぶって」
「だい、じょうぶ…………できる、もん!」
「そうじゃなくて」
ヨロヨロと水を運ぶノエルに慌てて駆け寄ろうとするルノア。しかし僅かに遅かった。
「あっ!」
と、重み耐えられなくなりバランスを崩すノエル。ピッチャーに入った水は床にぶち撒けられ近くの男性にかかる。
「言わんこっちゃない! すいません、お客様!」
「あ、うぅ………」
「ノエル、大丈夫? あ、お客様、全べて此方の責任です。すぐにお召し物を………」
「……………くくくっ…………くっくっく………あはははは! いやはや、面白いお店ですねえ。気に入りました。ええ、気に入りましたとも。ははは!」
ルノアが慌てて謝罪する中、男は突然笑い出した。
「………おこって、ない?」
「私が? なぜ? こんなに愉快だというのに! それに、この上着、実はずっと喉がからからだったのです。貴方がお水をごちそうしてくれたから、喜んでいます。ほら、この通り………『ありがとう、ノエルちゃん!』」
口元を隠し雑な腹話術を行う男。子供に気を使ってくれたのだろうか?
「………ほんと?」
「ええ、ええ、本当ですとも。さて、私にもごちそうを頂けますか? 鳥の香草焼き、それも大盛りで……ああ、お持ち帰りでお願いします!」
「うん! ごちゅーもん」
と、パタパタ走り出すノエル。残ったルノアは申し訳無さそうに客に声をかける。
「本当にすいません、お代は結構ですんで。それと、お着替えも……」
「いえいえ結構ですよ。ここで着替えたら、私が嘘つきになってしまう。帰ってから着替えますよ。笑うか笑わせるしか取り柄がない私にはちょうどいい。なにより、いいお店が見つかって喜ばしい。賑やかで、あんなにかわいい店員までいる。実に愉快ではありませんか、今度はゆっくりここで食事を取りたいものです」
「そう、ですか………その時は、シルにも会ってやってください。今回の話聞いたら、謝ろうとすると思うんで」
ノエルの母親代わりのつもりだし、間違いなく謝るだろう。
「そうですか。ええ、解りました。私はヴィトーともうします。今後とも、よろしくお願いします」
ヴィトーはお持ち帰りの商品を受け取ると帰っていった。その後暫くして顔を青くしたシルが戻ってきた。
「うう、あんなの乙女に食べさせるなんて」
「自分で作った料理だろ。何故卵焼きをあそこまで未知の味に出来る」
「材料がおかしいのよ! コレが神様の言う下界の未知!?」
「お前の料理の腕が神秘の類だ。ん、待っていたのか。悪いな、俺は今から食事を摂る。先に帰っててくれ」
「あ、はい。じゃあ、また後で」
「おかあさん、だいじょーぶ?」
「うん、大丈夫だよノエル………というか自分の料理食べて大丈夫じゃないなんて言いたくない………」
因みに卵焼きは、見た目焦げてないのに外はザクザクで甘く、中はドログチャでしょっぱく、噛めば噛むほど味が口の中で未知のものへと変化する。塩は使っていない、ちゃんと砂糖を使ったのをヴァルドは見ていた。ウインナーを切って焼くだけのタコさんウインナーを不味く作れる女の料理は神秘に満ちている。
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