オラリオに失望するのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
穢れた精霊は自分に向かってくる者達と奥に控えるヴァルドに首を傾げる。
ヴァルドは途轍もなく強い。同族の力を纏った時点で、
『……………』
不思議に思うも、しかし自分にとって都合がいい。まずは鬱陶しい蝿共を駆逐する。
精霊の魂を汚すモンスターとしての本能が自身に向かう人間達の殺戮を選ぶ。
「げぇっ! こっち見た!」
「来るぞ!」
ヴァルドから視線をそらしこちらを睨む穢れた精霊に思わず叫ぶアリーゼ。無数の触手が振り下ろされる。
「散開!!」
アリーゼの合図と同時に全員がバラける。無数の触手を持とうと、穢れた精霊の瞳は2つ。同時に捉えられる数には限りがある。
『────!!』
散らばった冒険者に対して出鱈目に振るわれる触手の鞭。闇雲に振ろうと、その威力は第一級冒険者を吹き飛ばすほどの威力を秘めている。
思うように進めなくなった冒険者達に対して精霊は唄を歌う。
『【地ヨ唸レ】』
「シル………俺達の後ろに下がれ」
「うん………」
広大な空間に満ちた大気を揺らす魔力の波動。ヴァルドが剣を振り、氷の障壁を生み出す。
「………心配か、ノエル?」
『うん………』
ヴァルドの血に宿ったノエルは、ヴァルドの視界を通してみた光景に対して不安を覚える。
大精霊たる自分とその力を遺憾無く発揮出来るヴァルドがいれば、あのダンジョンに囚われた同胞の力の欠片を倒すのは訳ないはずなのに。
「俺一人では全てを救えない。手が届くだけ守っていても、守られるだけの者達に世界は救えない………」
彼女達は庇護すべき民ではなく、ともに戦う仲間。彼女達を助けたいし、死んでほしくない。だが、だからといって彼女達の冒険を否定することはしない。
「手を出すな。これは、彼奴等の冒険だ」
『…………うん』
『【来タレ来タレ来タレ大地ノ殻ヨ黒鉄ノ
溢れ出す膨大な魔力。真なる精霊であらずとも、強化種という特性で無理やり英雄時代の精霊の御業を再現する精霊の分身。
第一級冒険者が数人揃おうと、早々耐えられるものではない。
だが、如何なる魔法も発動させなければ良い。
「歌うの、やめるにゃー!!」
銀の光が縦横無尽に駆け回る。
近付けぬために振り回された触手が銀槍に斬り刻まれる。
「はっや………まじで【
速度だけなら第一級でも通用する神速を持って疾走るアーニャを見て思わず呟くライラ。先程槍を見て兄様と呼んでいた………。
表舞台から姿を消した【
「そういや一時期ヴァルドとの関係が噂されてたな」
【
「そのまま触手切り払っとけ!!」
と、アーニャにより数が減らされた触手の鞭。その隙間を見抜きありったけの爆薬を投げつけるライラ。完全に赤字だ。ヴァルドに請求してやる。
『!! 【降リ注ゲ天空ノ斧破壊ノ厄災】』
「これでも止められねえのかよ!!」
2つの花が盾の如く爆発を防いだ。圧倒的な魔法に、堅牢な防御。まるで砲台だ。
『【代行者ノ名ニ】────!?』
余裕の笑みを持って詠唱を唱え終えようとしたその時、花の盾に衝撃が走る。
「歌うんじゃねえええええ!!」
アーニャの切り開いた道を駆け抜け、ライラの爆薬の煙を炎幕代わりに接近したルノアが拳を力の限り叩きつける。
アーニャがLv.4として破格の敏捷を持つなら、ルノアは破格の力を持つ。それでも相手は階層主を超える怪物。拳の骨がきしむ。肌が裂け、血が滲む。
「うらあああああ!!!」
『【オイテ命ジル我ガ名ハ】──』
叩きつけるれる連打の雨に、わずかに開いた花の隙間。そこに飛び込む投げナイフが精霊の口に刺さる。
『──────ァ』
「!!」
詠唱が止まり、魔力の手綱が離れる。練られた魔力が暴走し、精霊の体は内側から弾け飛ぶ。
膨大な魔力故に肉が弾け欠損するほどの暴発。
ルノアも吹き飛ばされ、慌ててアーディが抱え治癒魔法を使う。
『コノ──!!』
「わひゃ!!」
膨大な魔力を持って回復した精霊がルノア達に向かって蔓を振るう。ルノアを抱えて回避しきれず、剣で受ける。亀裂が走った。2600万ヴァリスが!
『【吹キ抜ケロ氷雪ノ吐息代行者タル我ガ名ハ
「!!」
『【ホワイト・ウェーブ】』
迫りくる白銀の津波。
短文詠唱とは思えぬ高威力、広範囲の氷結魔法。ヴァルドとノエルの一撃に劣ろうとも上級冒険者を屠るには十分な威力。
「【ルミノス・ウィンド】!!」
その吹雪に風を纏った複数の光弾がぶつかり合い相殺する。
『──!?』
精霊は再生させた花の盾で攻撃に備える。勝ち誇った顔で新たな詠唱を唱え、盾の内側の人影に気付き腕を振るうも擦り抜け、反対の方向から喉に先程口に飛び込んできたナイフと同じ型のナイフが突き刺さる。
「ワンパターンなのよ、貴方」
獲物を甚振る猫のように微笑むクロエが
『!!』
喉に刺さり再生を阻害するナイフ。鏃のような返しが付き抜けないそれを己の首の肉ごと抉り取る精霊は、しかし遅い。
既に接近していたアリーゼに気付き、魔法から物理攻撃に切り替え蔓を振るい……
「づぅ!!」
「ライラ、ナイス!!」
ライラが下から盾で受け流すように逸らす。その衝撃でライラの盾が砕け、おそらくは手の骨も砕けただろう。
『─────!!』
喉が再生しきらず、悲鳴をあげることすら出来ない精霊の顔が恐怖に歪み、アリーゼの炎に覆われた剣が胸に突き刺さる。
「【
『!!!』
突き刺さった剣から炎が流れ込み、爆発する。
魔石ごと上半身を失った精霊の体が灰に還るのを見て、ヴァルドはふぅ、と息を吐いた。
「ノエル、もう良いぞ」
『うん……』
ヴァルドの体を覆っていた霜や冷気が剥がれ、ノエルが姿を表す。
「ノエル、怪我人を頼む」
「うん!」
怪我人の方へとかけていくノエルがある程度離れると、ヴァルドはシルへと向き直る。
「恨んでも構わん」
「…………ノエルが、ヴァルドの戦いに巻き込まれるから?」
「ああ」
「…………私が文句言わなくても、自分で自分を責めるくせに」
ふん、と不機嫌そうな顔をするシル。
「間違えないでヴァルド、貴方が道を示して、ノエルが選んだことだよ。あの子が選んだことを、貴方が否定しちゃ駄目」
「…………………」
「それに……
「その信頼を裏切らぬよう精進しよう」
「うん、頑張れ」
なんか思ったより筆が進んでヒロインも増えたので聖夜祭デート再アンケート
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