オラリオに失望するのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「…………落ち着いたか?」
「ええ……もうこの傷は、一生消えないでしょうが」
「私なんて同じ派閥の団員にも見られてますよ。いえ、お互い様ですけど」
正気に戻ったソフィとアウラは涙目で返す。きっと今日のことを思い出す度に身悶えするだろう。モテない女神達の書物の呪いを食らったリヴェリアもこうなっていた。
「だがこれで残る起点は一つだ」
「喋り方が戻ってきたな」
「ああ、これまでは夜しか力の一部を振るえなかったが、その力も大分戻ってきた」
と、幼女はローブを羽織り仮面を被った姿へと変わる。ボロボロのローブといい、何処か亡霊のような印象を与えてくる。
「!? そ、その人は結局何者なんですか?」
「ヴァルドの友だよ。或いは共犯者と言ってもいい………明確な犯罪行為はヴァルドが嫌うし我々もする気はないが、表向きにできない仕事を頼んだりしている」
「それをギルド職員の前で言いますか…………」
「犯罪行為ではないと言ったはずだ。それに、ギルドを介さず個人的に依頼を出すのも褒められた行為ではないが特段責められるものでもあるまい」
そう言われてしまえば何も言えないソフィ。ヴァルドが関わっているのなら、それは下界にとって害となることではないと思うが………。
「一先ず私のことは
「………ゴースト?」
ギルドでそんな噂を聞いたような、と首を傾げるソフィ。
「私は、君達がこの世界に取り込まれるのを見て自分から飛び込んだのだ………しかしそのせいか、力の一部を封じられ言うことも一々意味深になってしまっていた。まあ、ヴァルドには普通に通じていたが」
おかげでスムーズに事が進んだ。
なんでこの男はこうして言葉が足らずとも察せるのに自分の言葉が足らないのだろうか? いや、寧ろ足りていない自覚がないからか。
「とにかく、今は最後の番人を討ちに行くぞ」
「お待ち下さい、フィルヴィスは………」
と、アウラ。確執があるとはいえ、エルフである彼女は仲間であるフィルヴィスを見捨てられないのだろう。
「………恐らくフィルヴィスはお前たちより強く洗脳を受けている」
「え?」
「番人の守り人として現れる可能性が高い」
「それは………本当なのですか?」
フィルヴィスを『
「この中で一番現実を捨てたがっているのがあいつだからな。恐らく俺達と別れた後、教師達と合流した………」
「フィルヴィス…………」
「となれば、最後の戦いの場にいるか…………移動しよう」
移動しながら亡霊はこの世界についての見解を話す。
この世界は、取り込んだ者達の記憶を頼りに『登場人物』を模倣している。やたらと見知った顔が多いのはそういった理由だ。
強さの再現ができていないとはいえ、エルフの女王やヴァルドと5年近く共に過ごした相手である最強の魔道士を出さないあたり、出すには情報の濃さより数が必要なのかもしれない。
「この世界の趣旨は不明だが、彼等は『魔法学院』という枠組みに沿って行動する」
「それでは、ヴァルドが番人を倒し不安定になった世界全てが敵ということですか?」
「中には我々同様、囚われたものもいるだろう。が、今は頭痛に苦しみ、大した脅威にはなり得ない。無視していい」
そして、大した戦闘を行うことなく辿り着いたのは最上階。『13番目の部屋』……。その奥に、やはりフィルヴィスがいた。
「ついにここまで来たか、『歪み』とその仲間達」
そして、ティオネそっくりな校長。
そういえば本物の彼女の二つ名は【
「ボルト………いや、この世界の『上書き』を跳ね除けた『歪み』そのもの。やはりあなただけは早々に始末しておくべきだった」
「………………」
「世界の干渉に抗う貴方を取り込んでしまったが為に、私達の楽園は崩れつつある。とんだ招かれざる客だったわ、貴方達は」
「招いたのはそちらだろう」
勝手な言い分を、と睨みつけるヴァルド。
「どこの世界に下位精霊の集合体とはいえ神の分身たる我々の支配が一瞬も効かない挙げ句夢の世界そのものを崩壊させかねない化け物が宿った剣を持った奴を想像する者がいる!!」
「こうしてお前達の眼の前にいるだろう」
「…………………………ふざけんな!!」
この時ばかりは全員校長の叫びに同意だった。
「この世界は誰も傷つくことのない楽園だった。たとえ偽りの記憶と価値観を植え込まれたとしても、ここでは誰も傷つかない。現実の過酷から解放される。誰もが幸せでいられる、文字通り『夢の世界』だったのよ!」
「──真実を騙るなよ、堕ちた精霊達」
と、亡霊が校長の言葉を遮る。
「同意だな。上位とはいえ、同じ精霊と契約しているから解る。既に実態を失い夢を…己達の生きる世界を存続させるために生者から力を吸い上げているだけだ」
「この世界に取り込まれた者は、いずれ夢想に抱かれて死ぬことになる」
「「!?」」
「君達の言う楽園とは、一時の幸せと引き換えに死を引き渡す最悪の悪夢だ。その罪を自覚しろ、『夢想の食人花』ども」
己の戯言が見破られ忌々しげに亡霊を睨み付ける校長。事実としてこの世界に取り込まれた者達は、本来の自分を見失いやがて死に至る、自分が何者かも大切な者達も忘れてしまう悪夢でしかない。
「……妖異め。生者でも死者でもない異端者。何者だ、貴様は」
「なに、私は真実ただの
「つくづく神経を逆なでしてくれる………もういい、お前達はここで抹消する。記憶を改変することなく、楽園の養分にしてくれよう!!」
堕ちても、下位であろうと精霊の集合体。膨大な魔力を吹き出す校長。こいつを討てば、この世界は崩壊する。と……
「!!」
戦闘態勢に入ったアウラに向けられた魔法をヴァルドが片手で弾く。意識を校長に向けていたアウラは目を見開き魔法を放った相手を睨んだ。
「フィルヴィス! なんのつもりですか!?」
「まさか、この世界に洗脳されて!?」
「いいや、私は彼女──『闇の権能』に力を授かった悪の魔法使い。世界の理の外にいる………この身に洗脳は効かない」
ソフィの言葉に何処か自嘲するような笑みを浮かべるフィリウス。
「なら、なぜ……!」
「私は思ったんだ……ここで、ボルト先生とペロペロしていた方が幸せなんじゃないかって!」
「「「…………えっ?」」」
「闇の権能たる我がマスターの話通りなら、現実に戻っても汚れた体と辛い現実が待ってるだけ! なら、たとえ死す運命だとしても
最後の時までボルト先生とイチャイチャ愛し合っていたほうがいいじゃない!!」
「「いやいやいや! 絶対に後悔するから! 天国で絶対死にたくなるからっ!!」」
「うるさーい! アウラに私の気持ちなんかわかるもんか! ファミリアではすれ違うたびに団員に舌打ちされ、ディオニュソス様といるだけで睨まれる私の気持ちが!!」
と、少しだけ現実の愚痴が顔を出すフィリウス。
「いや、それは………えっと………」
すれ違いに舌打ちなどと恥知らずな行為こそしていないがフィルヴィスを嫌い特に止めず、睨むこともあるアウラは言葉を失う。
「しかも、しかもだ! ディオニュソス様に散々汚された後にヴァルドが戻ってきたんだぞ! こんな体で、愛してなんて言えない………抱きしめてほしいなんて言えるわけないのに!!」
「!? ディ、ディオニュソス様に汚さ………!? な、何を………一体何をされたというのですかフィルヴィス!!」
「私はこの世界で、現実のすべてを忘れるぐらいにそれはもうネットリたっぷり愛し愛されハスハスクンカクンカして! どろどろになるまでまぐわり合う!!」
「フィルヴィス〜〜!? お願いだから正気に戻って!! 貴方今正気に戻った瞬間死にたくなりますわよ!? 私も見てて辛い!」
「……………………」
洗脳した張本人である校長も『どうしてこうなった』と言いたげな顔をしている。
「【
「ああ…………フィルヴィス……お前は変わらず美しいままだ」
「!?」
一瞬で近づき、手を取り囁くヴァルド。フィリウスの顔がぼっと赤く染まり…………みるみる青くなっていく。
「う、うわあああああああああ!? 私は、私はぁ!? うわああああああ!! 殺せ、殺してくれぇ! 誰か私をおおお!!」
正気を取り戻した人間の中で一番酷い結果になった。まあ、知ってた。
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