オラリオに失望するのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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18階層

 まずはリリが倒れた。

 この中で一番ステイタスが低いからと自分より周りを優先して残り少ないアイテムを回し、疲労が溜まった結果だ。

 続いてヴェルフ。怪我の痛み、出血に加えて、避けきれなかった接敵時にヘルハウンドが交じっていた場合、なれない魔法を使ったから。

 

「自分を、置いて行ってください………元はと言えば、自分達が貴方達にモンスターを押し付けようとしたばかりに」

「助けようとしたのは、僕です」

 

 ヴェルフとリリを腕に抱え、命を背負う。置いていけとほとんど力の入らない腕で背中を押すから縛り付けた。

 

「命さんの索敵が、命綱です」

 

 半分本当で、半分嘘。命を置いていけば機動力は上がるし、いざ接敵した時も二人を地面に落とし対処できるが、背負って縛り付けている命は文字通り荷物になる。

 意識が朦朧としてきた彼女の索敵も、ベルが耳で感知できる範囲だ。連れて行くメリットはない。

 寧ろ全員置いていけば、ベルは確実に生き残れる。

 

「………ふざ、けろ!!」

 

 見捨ててたまるか。諦めてたまるか。

 誰に戦い方を教わったと思っている。誰に地獄を見せられてきたと思っている!

 師も、母も、この程度でへこたれるような生易しい鍛え方なんてしていない!

 命が意識を失ったのか、背中の重みが増す。それでもベルは歩き続ける。

 本来の歴史より育てられたベル・クラネル。ヤマト・命という索敵能力持ち。2つの要素が合わさり、ベルはゴライアスが生まれる前にその階層へと辿り着いた。

 モンスターの生まれない安全階層(セーフティポイント)。ただし、それはつまりゴライアスの雄叫びで様子を見に来たアイズが来ないということ。

 ベルは森の中から聞こえる話し声を頼りに今にも気絶しそうな体を引きずり歩く。

 

「誰ですか!? そこで止まりなさい!」

 

 ダンジョン内で闇討ち、謀殺……よくある話だ。故にその声の少女はベルに向かい叫び、現れたベルを見て目を見開く。

 

「ベ、ベル!?」

「………レフィーヤ、さ………」

 

 見知った顔に緊張が解け、ふらりと倒れるベル。慌てて支えるレフィーヤ。ボロボロの姿に最悪な想像が過るも、息をしている。ホッと一息吐く。

 

「…………4人パーティ………」

 

 18階層に来るには珍しいとも言えない編成。ただし、それは全員上級冒険者の場合。リヴィラの街にLv.1がいるように、Lv.2複数とLv.1のパーティもあるが、それはもっと数がいる。

 小人族(パルゥム)の少女はサポーター。一人だけ火精霊の護符(サラマンダーウール)をつけていない少女は………途中で保護したとか?

 だとするとこの赤毛の青年がLv.2?

 その場合どう考えても18階層に来るのはおかしい………。

 

「レフィーヤ、さん………」

「びゃい!?」

 

 考え事をしていたが、聞こえてきた声に正気に戻る。

 

「おねがい、です………皆を………助けて、ください」

 

 

 

 

 

 レフィーヤが担いできた冒険者を見たフィンは、テントで休めることを良しとしてくれた。驚くことに赤毛の青年はLv.1………黒髪の少女が大怪我を負っていたことを考えると、Lv.1だけで中層に来たか、或いはベルが………

 

「Lv.2になっているだろうね………」

 

 仕事があるレフィーヤのかわりにベルを診ていたアイズに、フィンが言う。

 リリは一度見たことがあり、赤毛の青年………ヴェルフは椿と同じ【ヘファイストス・ファミリア】で普段は一人で潜っている。黒髪の少女は知らないが、格好からして彼女と合流したのはダンジョン内でだろう。もう仲間はいないと判断し、探索は出していない。

 

「下層を、目指してたのかな?」

「ヴァルドや君じゃないんだから…………いや、そうか。ヴァルドが目をつけた弟子だし……」

 

 ランクアップした当時、下層に向かおうとしたアイズはリヴェリアにより止められた。危険だとか適正だとか言われて『師匠は下層に行ったのに』と呟いたアイズに拳骨。心配をかけるなと言われ、その時は大人しく引き下がった。

 ちなみにその後ヴァルドはリヴェリアにより叱られていた。

 

「どっちにしろ、怪我人を担ぎここまで来たのは称賛に値する。今は休ませてあげよう」

「うん………」

 

 フィンが天幕から出ていき、アイズはベルの頭をそっと撫でる。自らの師が選んだ英雄候補。自分の弟弟子……。

 アイズが一年、師が半年かかった記録を大きく抜いた冒険者。

 

「もう、こんなところに来ちゃったの?」

 

 称賛と、嫉妬。困惑に驚愕。

 色んな感情が混じっている。

 自分の言えた義理ではないが、無茶をしちゃ駄目、と心の中の小さなアイズが叱責する。

 

「うぅ………」

「あ……」

 

 と、ベルが呻き、目を開く。すぐに飛び起きた。

 

「ヴェルフ、リリ! 命さん!?」

 

 慌てて周囲を見渡し寝かされている三人に気づきホッとし、倒れかける。慌てて支えるアイズ。

 

「あ、ありがとうござざざざ!? あ、あ、あ、アイズしゃぁん!?」

 

 倒れかけていたとは思えない速度でバビュンと離れるベルに嫌われてる? と小さなアイズが涙目になる。顔を赤くして狼狽えるベルに、取り敢えず落ち着いてもらおうと話しかける。

 

「ここは、【ロキ・ファミリア】の天幕の中。レフィーヤが貴方達を見つけてきたの」

「レフィーヤさんが……そう、ですか…………あの、皆は」

「女の人の怪我が酷かったけど、ポーションのおかげでもう治ったよ。次に酷かったのはベル………安静にしなきゃ、駄目」

 

 と、そこまで行ってこれは膝枕チャンスなのではとベルを見るアイズ。無理するようなら無理矢理寝かしつけて………と思ったが、多少ふらつく程度のようだ。

 

「フィン……団長に、目を覚ましたら連れて来るようにって…………歩ける?」

「は、はい。なんとか………」

 

 立ち上がったベルに少し残念に思いながらも天幕の外に出る。ベルもそれに続き、【ロキ・ファミリア】の団員達が睨んできた。アイズに甲斐甲斐しく世話されていたのが怒りを買ったのだ。と………

 

「ベル、起きたんですか!?」

 

 駆け寄ってくるエルフの少女。レフィーヤだ。

 

「レフィーヤ………」

「…………歩いて大丈夫なんですか? 杖のかわりになりそうなものでも探してきますけど」

「大丈夫。あの………ありがとう、僕達を運んでくれたみたいで」

「冒険者は助け合いですから………それに、貴方は私の好敵手(ライバル)なんですからあんなところで死なれては困ります」

「そう、だよね………まだまだ、僕達が追い付きたい人に追いついてないから」

 

 グッと拳を握りしめるベル。ランクアップしたようだが、それで傲慢になってたり、今回の件で折れてしまうようなら活を入れてやろうと思ったが必要ないようだ。

 

「あ、そういえば……あの言葉を果たせたんですね………」

「あの言葉?」

「忘れちゃったんですか? ほら………」

 

 ランクアップしたということは、これはあの宣言通り………

 

「あ〜! アルゴノゥトく〜ん!!」

 

 と、ティオナがベルに抱き着いた。

 

「へ、ア、アルゴノゥト……!?」

 

 ティオナが読んだその名は、とある英雄譚のタイトルにして英雄の名。そして、ベルのスキル名。ステイタスを知られた!? と慌てるベル。

 

「そ、ミノタウロス倒してたから! あたしの好きな英雄譚を思い出したの!」

「あ、そういう………」

 

 バレたわけじゃなかった。ホッと安心するベル。

 

中層(ここ)に居るってことはランクアップしたの? 可愛い顔してやるじゃない、あなた」

「あ、そういえば! 世界記録保持者(レコードホルダー)だね! 師匠さんを超えたんだ、すっごーい!」

「あ、ありがとうございます……………あの、すいませんレフィーヤ。それで、何だっけ?」

「ナンデモアリマセン」

「え、でも………」

「ナン・デモ・アリマセン!!」

「ひぃ!? ごめんなさい!?」

 

 プンプン頬を膨らませ去っていくレフィーヤ。何を怒っているんだろうと、アイズとヒリュテ姉妹は首を傾げた。

カーリー・ファミリアのバーチェがどうなるかは決めてるんですよ。アルガナはどうしよう

  • フィンに任せる
  • ヴァルドに調き─鍛錬されたティオネが勝つ
  • ヴァルド「戦士の作法を教えてやろう」
  • 船止めるためにぶん投げた石で船ごと沈む
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